夜に紛れて
夜行バスの中。
ネズミが提案した、一泊三日のプチ温泉旅行。
エンジンの心地好い振動が止まり、バスがサービスエリアに着いたことを知る。
「紫苑」
「ん…」
「サービスエリアに着いたけど。トイレ行く?」
「…行かなー…い」
周りの乗客はトイレ休憩や買い物に、と続々と降りていく。
しばらくすると人の動きがなくなり、車内に静けさが戻る。
さてもう一眠り、と思ったところで、右手の指の隙間にするりとネズミの左手が絡まった。
「なに? ネ――」
顔を右に傾けるのとほぼ同時に、柔らかいもの――ネズミの唇で、ぼくの唇が塞がれる。
ネズミは半分ぼくに乗り掛かるような体勢で、身動きがとれない。
「ん…っ」
啄むようなキス。
数回重なった唇は、あっさりと離れる。
「ちょっ…!バスの中なんだぞっ」
小声でネズミに抗議すると、彼は余裕の表情で再びキスをしようとする。
「だっ…、だめだってばネズミッ!」
「なんで」
「何でじゃない!ぼくたち男同士だしッ、そんな…こんな場所で、キス、なんて」
「別にいいだろ」
「…ぼくは良くない」
「バスの中でキス、なんて、そこらのカップルは皆してるぜ」
「男同士でも、か?」
「関係ない。 何、あんたは男女じゃなきゃ愛せないって言うのか」
「そ…、ういうわけじゃ、ない…けど…」
「おれはあんたが好きだよ。だから触れたいし、キスしたいし、セックスもしたい」
「バ、バスの中で言うなよっ」
「キスして、紫苑」
めちゃくちゃだ。
だけど、彼の言うことも正論だと、思う。
確かにぼくだってネズミのことは好きだし――キスだって、したい。…バスの中では恥ずかしいけれど。
そんな気持ちを伝えたくて、彼の頭を少し乱暴に掻き抱く。
――ちゅッ
「…なに、今のがキスのつもり? 不合格」
「ふ、不合格って、」
「キスってのは、こう、だろ」
軽く合わさった唇。
そのまま、下唇を軽く噛まれる。
「っふ…」
ぴりり、と伝う甘い刺激に――明日の夜、旅館の部屋で起こるであろうことに期待が膨らんだのだった。
end
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夜行バスの中でいちゃいちゃ!
飛行機や列車とかも考えましたが、夜行バスってのが萌えるなぁと笑。
近くの席の腐女子はニヤニヤ間違いなしですね!←
その後の温泉いちゃいちゃも機会があ…れば……(笑)
2013.02.22
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