Kiss me!
最近気付いた、紫苑のクセ。
ちらりと紫苑に目を遣れば…ほら、またやってる。
本に夢中になりながら――綺麗な指先で、自分の唇を何度も触る。
その度にあの柔らかな唇が形を変える。
「…おい、紫苑」
「なに?」
「また触ってる」
「…あ」
どうやら完全に無意識らしい。
見てるこっちとしては、やりきれない。
何と言うか…妙な色気みたいなものが漂って、うっかりその後を想像しちゃったりなんかしたら、しばらくトイレに篭るハメになる。
「その癖、どうにかならないの」
「…うーん…」
そしてこれは、つい昨日発見したこと。
紫苑が唇を触るのは、唇がさみしいとき。
――つまり、しばらくキスしていなかったりすると、唇を無意識に触っているようで。
余計に質(たち)が悪い。
「紫苑、あんた気付いてるか?」
「へ?何に?」
「その癖」
「ああ…無意識で」
「ばか。あんたほんと、ばか」
とぼけた顔で見つめる紫苑の後頭部に手を回し、手触りの良い髪に指を差し入れる。
それでも尚きょとんとした表情のままの彼を引き寄せ、唇を重ねた。
「んっ…!?」
驚く紫苑を余所に――ただ唇を合わせただけのキス。
ちゅ、と音をたてて唇を離すと、当然といえば当然なのだが、状況が飲み込めないらしい紫苑は口を半開きにしていた。
「気付いてないだろ」
「いやだから何に…」
「あんた、キスしてから二日くらいは唇を触ったりしないんだよ。三日間キスをしなかったら、唇を触るようになった」
「えっ…と、つまり」
「キスしたいって無意識に思ってるんじゃないの、って話」
おれは無意識に にやりと笑って、紫苑の頭を強く引き寄せた。
「ん…ッ、」
鼻に掛かった甘い声。
その声に気を良くしたおれは、唇同士の愛撫から一歩先へ。
舌先で唇をなぞれば、躊躇うことなくそこは開かれ、ねっとりと舐め上げながら舌を進める。
「ふ……ッん、ん」
キスが深くなるにつれ、紫苑がおれにしがみついてくる。
はふ、はふ、と時折息を吸いながら、ぎゅうっと服を握りしめる紫苑が愛おしい。
静かな室内には、ちゅくちゅくという水音と紫苑の甘い声だけが響いていた。
お気に入りである紫苑の髪を指先でまさぐりながら、紫苑の弱い所ばかりを舌で愛撫する。
なんとなく……単なる思い込みかもしれないが、紫苑がいつもより積極的な気がする。
舌を絡め、互いの歯や顎裏を探り合う。
「んぅっ…んんっ……ッふ…」
どちらのものとも分からぬ甘い唾液が口端を伝う。
舌を――奥へ、深く、深く。
角度を変えて何度も…紫苑を味わった。
たっぷりと紫苑を堪能したのち、唇を離せば銀糸が二人を結ぶ。
紫苑の口の端についた唾液をぺろりと舐めてやれば、彼は顔を真っ赤にした。
「はっ…も、ネズ…!」
「なに?たまにはいいだろ」
「じゃなくてッ…!」
赤い顔のまま、恥ずかしげに俯く紫苑。
もっかい…とか言ったらすごく可愛いのに、なんて思っていると――紫苑が発した言葉は、そんな想像を遥かに上回るものだった。
「……勃った。きみのせいで……、だから…っ、」
――…抱いて?
「…なッ、え、あの、…え」
「…頼む。…っひ、一人でスるくらいなら、二人でシた方がいいだろっ」
羞恥を隠すように無理矢理 唇を塞がれ、おれを押し倒そうとする紫苑。
「…ん、ちょっ…あんた、発情期じゃないんだから」
「きみのせいで、今はそういう気分なんだ」
ぐいぐいと腰を押し付けられたら、もうおれだって我慢の限界だ。
紫苑からかけられる力を上手く使って、逆に彼を組み伏せる。
「じゃあ、遠慮なく」
「んッ…あ!」
先程までのキスの延長のような、激しいセックスだったのは言うまでもない――
end
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やらしくちゅっちゅしてる二人が書きたかったのですが…いかがでしょう(笑)
2013.01.20
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