はぁっ





息が白い。
寒い。

冬だ。
西ブロックの弱者を殺す、冬。







はぁっ







「みて、ネズミ。息が白い」




はぁっ





口から零れる白い雲。
おれの隣を歩く、雪のような白髪の少年は嬉しそうに雲を作る。




「何が楽しいんだか…温室育ちのおぼっちゃんには付き合いきれないな」
「ふふっ」




紫苑の小さな笑いと共に細く雲が出来上がる。








「寒い、紫苑。早く帰ろうぜ」
「そうだね」





手が差し出される。



「ネズミ?」
「……」




無言で差し出された手を取る。


温かい。

この心地好い温かさを最初に教えてくれたのは紫苑だった。






「帰ったらきみが作ったスープが飲みたい」
「そうだな」







西ブロックに来たばかりのときは柔らかかった紫苑の手。今はひび割れが出来ているほど、変わってしまった。
その感触を確かめるように紫苑の手を弄ぶ。







春が来て、NO.6が内側から崩壊したときおれたちはどうしているのだろう。
ふと、そんなことが頭を過ぎった。




いつまでもこの手を握りしめていたい。






――くすっ。





「…ネズミ?どうしたんだ、急に」




完全に、紫苑に感化されてる。
明日を無事に迎えられるかも分からないようなこの地で、春のことを考えている。







「なんでもない」




紫苑の髪に口づける。




「や、やめろよネズミ…外で、そんなの…恥ずかしい」


頬を染めた紫苑はとても…色っぽい。
その顔にぞくりとし、下腹部に血が集まるのを感じた。



「…もうだめ、我慢できない。帰ったらスープの前にあんただ」
「…は?」
「ほら、早く帰ろうぜ。…おれの理性がぶっ飛ぶ前に」
「…っ! ま、待てよネズ」
「悪いのはあんただ。責任はとってもらうからな」
「…そんなぁ……」









End.

→あとがき。
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