愛故に、
綺麗な、白い髪。
綺麗な、紫の瞳。
綺麗な、赤の蛇行跡。
あんたは本当に綺麗だよ、紫苑。
真っ白で、真っさらで。
何も、知らない。
壁の中で大切に大切に育てられた、天使。
色々なことに この手を染めた、こんなおれとは大違い。
本当に、すごく…綺麗。
それこそ、「純真無垢」みたいな言葉は、あんたのためだけに存在するんじゃないか って たまに思ってしまうほど。
でもさ、だからかな。
あんたを目茶苦茶に壊して、おれで一杯にしたくなる。
おれで一杯になったあんたは、きっと苦しそうに息をするんだろうな。そうなったら、おれがあんたを救ってやる。
…――あの日のように。
そんなことを思いながら、おれの中にあった種を全て紫苑の中に注ぎ込む。
二人とも、何度も果てた。
幾度果てたか数えるのが無駄な行為になるほど、おれは紫苑を貪り喰った。
真っ白な紫苑は、二人分の精液によって更に白く汚れていた。
ひゅっと細く息を吸った紫苑は、その虚ろな目におれを映した。
「…苦しいか」
首に巻き付く赤い蛇行跡に指を這わせ、そう静かに問うと「大丈夫」と口を動かした。
「大丈夫」を音に変えることも出来ないくらい、おれに破壊された紫苑。
ごめんな、酷いことして。
そう、本当は謝るべきなんだ。
でもこんな紫苑を見ると、おれの醜く歪みきった支配欲と独占欲、そして征服欲はたっぷりと満たされる。
ああ、おれ、最低。
それでも、あんたはいつまでも おれを信じ切った眼差しを向けてくる。
どうしてそんな風に、簡単に、他人を信じるんだ。
「なあ、愛してる、紫苑…」
僅かに微笑む紫苑の細い首に、指先を添えて。
甘美な死を、あんたにあげる。
少しずつ、少しずつ指先に力を込める。でも、絶対に苦しめたりしない。
おれの大事な紫苑。
死ぬほど甘ったるい、素晴らしい永遠をあんたにあげる。
優しい旋律を口ずさめば、紫苑は柔らかい表情をして。
あいしてる、と口を動かした。
「ああ、愛してるよ紫苑、愛してる、愛してる――…愛してる」
とどめを刺すように、一瞬だけ、強く首を絞める。
達するときのようにびくり、と体を震わせて――おれの大切な紫苑は、永遠に動かなくなった。
ほら、気分は如何、陛下?
他人の手によってあんたが死ぬのは耐えられないんだ。
だから、だから。
おれが、自分の手で永遠にしてあげたんだ、あんたのために。
あんたもそれを望んでた、そうだろう?
少しだけ待ってて、紫苑。
すぐに逢いに行くから。
おれは、おれと共に生きてきた折り畳みナイフを首に当てた――
毒々しい赤が、部屋中に飛び散り、紫苑の体を赤く染めたのを見た………気がした。
End.
→あとがき
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