このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

以ぐだ

【最初と最後を指定する診断メーカーより】

淡い夢を見ていた。それは幼い頃の話だけど。いつか王子様が迎えに来てくれる、とか。それとも緑の服を来た少年が子どもだけの国にへと連れていってくれる、とか。
でも現実はそう甘くはなかった。家族とは折り合いが悪く家には居場所がない日々。ただ、毎日はやくこの家から出ていきたかった。小さい頃夢見た御伽のキャラクターたちが迎えにくることはないとわかる。だから私は己の足で出ていくことを目指していた。
そんなとき見つけたのが人理継続保障機関カルデアのマスター適性検査。マスター適性があればカルデアの寮に住めるという部分しか頭に入ってなかった私はマスターに、魔術師になることの重大性も分からず藁に縋る気持ちで受けた。
マスター適性があると診断された時、大喜びで帰りにちょっと高いアイスを買った。これは私から私へのご褒美だ。おめでとう、私!
家族にはカルデアへと飛び立つ前日まで伏せていた。けど、身支度をしている姿を見られていたから何も言わないだけで何処かへと行こうとしてることはわかっていたのではないかと振り返るとそんなことも思ったりする。前日に家族に告げたとき、引き止めないから好きなところに行けばいいと言われやっぱり愛されていなかったことを痛感した。

そうしてカルデアに旅立ってからの日々は激動の一言だ。色んな時代に行き色んな人たちと出会った。誰もが知る英雄に出会った。皇帝ネロに会ったときは皇帝ってことは王子様みたいなもんだよね、と幼い頃夢見た王子様と重ね合わせてみるまでもなくかけ離れていてビックリしたり。マリーアントワネットに会ったときはこれが本当のお姫様っていう人物なんだと感嘆したり。
でも一番出会えて心強かったのはロンドンで出会ったモードレッドだ。モードレッドはお父さんであるアーサー王を倒した経歴を持っている。どの時代にも家族と折り合いの悪い人はいたんだなと心の励みになった。聖杯を取り戻す一時だけの交流だったけどきっと忘れない思い出のひとつになる、そんな予感がした。
キャメロット攻略途中に久しぶりに英霊召喚システムフェイトを起動した。これからもっと激化していく戦いの中何か希望となるような英霊が現れないか、そんな期待を抱いての行動だった。
そして召喚できたのが岡田以蔵さんだ。一目みてこの人なら、どこまでも一緒にいけるような気になった。
彼はどんなに心を開いてくれても自分は人斬りしか才がないと言う。剣技の才能があるだけ十分すごいことだと私は散々言い聞かせた。だって私は平凡な平和ボケした女子高生でなんとかマスターをこなしてるだけだ。私一人ではワイバーンも倒せない。
それに彼は十分すぎるほど活躍してくれている。それならもう、人斬りしか才能がないなんてそんなことはないでしょう?以蔵さんにだって人類史のために未来を切り開いていくだけの力がある。
たしかに一人ではグランドオーダーは無理だ。私には今までの仲間も必要だけど以蔵さんだって必要だ。何故だか以蔵さんを見ているともう無理かもしれないと思い始めてたグランドオーダーも出来てしまう、そんな気持ちにしてくれる。だから私たちの未来はきっと明るい。信じさえすればなんだって出来るはずなんだ。
夢はもうみない。夢は自分の力で掴んでみせる。自分たちの力を信じたとき再び、物語はここから始まる。

【最初と最後指定する診断メーカーより2】

あの子になりたい、なんて思うのは人類史を救うという一人で背負うには重すぎる使命を果たそうとしているマスターが思ってはいけないことなんだろうか。もし私がナーサリーライムやバニヤンだったら。あの子たちのように真っ直ぐすぎるほど素直な態度になれたら少しは目線を合わせて話せたかもしれない。
今日も一つため息を零した。今までただ必死に人類史を救うことだけを考えていたのに。こんな恋する乙女みたいになってしまうのもすべてつい最近召喚に応じてくれた岡田以蔵という英霊のせいだ。
一目見た時からどうしても胸の鼓動の速まりを止められないでいる。俗に言うヒトメボレってやつだ。
最初はよかった。相手がつっけんどんな態度を取るから顔を見て話せてたのに。連日戦闘で顔を合わせているうちに態度が柔軟してきてから困ってしまった。愛おしそうに笑いかけられるともう、堪らなくなって顔を見れなくなる。
遂に今日は、のう、マスター。いつになったら目を合わせてくれるがか?と聞かれてしまった。
ごめんね、悪気はないから。その優しい瞳になれるまであと少しだけ待っていて。
1/4ページ
スキ