第4章 最後の元帥
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『チィ~!!!』
テラスにチィとティキが居るのが見えて思わずそう声を上げて手を振ってしまったが…大丈夫だっただろうか。
『…もしかして大事な話してたかな?』
「大丈夫ですよ、姫様」
「レイ、ロード様が手を…」
ユエにそう言われ、レイは再度大きく手を振った。
『さっきまでシェリルとロードしか居なかったのにねぇ…お庭一周してる間に二人共来てたんだねぇ』
「そうですね。結構ゆっくりしてしまいましたから…あぁ、姫様、薔薇にドレスを引っ掛けない様に気を付けて下さいな」
“え?”と思ったが、確かに少し先には薔薇が沢山植えてあった。
『ホント、ティナってば目が見えてないとは思えないよねぇ』
「ふふ、慣れですよ。香りや気配で察するんです…良かったらやってみて下さいな」
難しそう…正直出来る気がしなかった。
「レイ~!」
ロードがそう私を呼びながら走ってくる。
ティキの腕をしっかり抱えているものだから、ティキは少し走り難そうだった。
「レイ~、快楽のノアのティッキーだよぉ」
「ティキ・ミックな」
“初対面相手に名前伸ばすな”と言うティキの態度に違和感を覚えたが、理由は直ぐ分かった。
そうか…会った事がある気でいたけど、意識の無いティキに私が一方的に会っただけだった。
『初めまして、ティキ・ミック』
“レイ・アストレイだよ”と言って微笑んだレイを見て一瞬固まったティキは、次の瞬間ニッコリと微笑んだ。
「よろしくな、姫さん」
=休息=
「くれぐれもあちらで粗相のないように、クロス元帥」
黒の教団本部、水路…
珍しくスーツを着たクロスは、飛んで来たティムキャンピーをそっと指に止まらせた。
「お前は俺の母ちゃんか」
「本当に大丈夫ですか?こんな時でなければボクもついて行くんですが…」
「話をしに行くだけだ。俺を心配するなんて珍しいじゃねぇか、コムイ」
「違いますよ。途中で貴方がバックレたりしないかが心配なんです」
コムイの言葉に、クロスは楽しそうに声を上げて笑った。
『大丈夫よ、コムイ』
コツンコツンとヒールの音と共に現れたのはアイリーンだった。
『クロスは逃げたりなんかしないわ』
“それに”と続けたアイリーンはニッコリと微笑んだ。
『仮に逃げたりなんかしたら怒るわ』
クロスは、フフッと楽しそうに笑ったアイリーンの腕を引くと頬にキスを落とした。
と言ってもアイリーンが避けたから頬になったのだが…
『…何をするの』
「浮気すんなよ」
『浮気も何も…』
「クロス元帥!セクハラしてないで行きますよ」
ルベリエにそう怒鳴られ、クロスはチッと舌打ちをした。
「女性をそんな扱いするとモテませんよ」
「チッ、テメェに言われたかねぇよ…」
『まあ、有難う御座いますルベリエ長官』
ニッコリと微笑んだアイリーンは、クロスにだけに聞える様に声を落とした。
『何かあったら呼びなさい』
「何かなきゃいけねぇのか」
『……分かったわ』
“なるべくね”と続けたアイリーンは、クロスから離れるとコムイの隣に並んだリーバーの腕に自分の腕を絡めた。
「…どういうつもりだ」
『この子とバク、気に入ったわ』
リーバーの顔色が赤くなったり青くなったりする中、アイリーンは楽しそうにクロスに手を振った。
『いってらっしゃい、クロス』
アイリーンはクロスとルベリエの乗った舟に手を振りながら二人を見送った。
「アイリーン…何でわざわざあんな事…」
「そうだよ、アイリーン…わざわざあのバカを煽らなくても」
『あの人、面倒臭くなると手を抜く事があるじゃない?』
「って言うかバックレるよね」
コムイの言葉に楽しそうに声を上げて笑ったアイリーンは、上の階へ続く階段を上りながら話を続けた。
『あの人の事だから本部の片付けや引越し作業をするのが嫌でゆっくり帰って来るつもりよ…きっとね』
瓦礫の撤去も荷物の整理も…自分の部屋の片付けさえも嫌がる人だ。
『でも私が仕事もせずに遊んでると思えば、さっさと仕事済ませて帰って来るわ』
“あの人、私とレイに弱いもの”そう言って笑うアイリーンは、きっとクロスが自分に弱い理由を分かっていないんじゃないかと思う。
アイリーンはアレンくん達が鍛錬をしているのを見に行くと言って楽しそうに駆けて行った。
「しっかりしてるんだか、抜けてるんだか…分からない人だよね」
「本当に…可愛らしいとは思いますけど、若干クロス元帥が不憫になります」
「本当ですね」
「うおぉぉ!!?」
「い、居たんだ、リンク監査官」
ビックリした…てっきりリーバーくんしか居ないと思ったのに…
リンク監査官の存在とリーバーくんの声…二重にビックリしてしまった。
「私は長官と話していましたので」
そういえばさっき、アイリーンが僕らの後ろに手を振ってる気がしたけど…少し遠くに居るリンク監査官に振ってたのか。
「では、アレン・ウォーカーの監視がありますんで」
“失礼します”と言って自分達を追い抜いて階段を上って行ったリンクが見えなくなると、リーバーは溜め息を吐いた。
「ホント…堂々と“監視”って言いますね」
確かに…でも方舟を操れるのは14番目に奏者の資格を与えられたアレンくんだけだ。
監視するのは当たり前だろう…隔離されないだけマシだとも言えるかもしれない。
「さ、室長、仕事戻って下さい」
「はいはい」
「書類山積みですよ」
「書類か~…その前に方舟に行っても良いかな?」
「方舟ですか?」
「ちょっと…気になる事があるんだよね」
本当はもっと早く確認するつもりだったんだけど、襲撃の所為で大分遅れてしまった。
無言で階段を上り続けていたコムイは、暫くするとピタリと足を止めた。
「………」
「室長?」
「神田くん連れ出したら、婦長に怒られるかな?」
「神田ですか?」
「本当はリナリーが適役なんだけど、あんまり無理はさせたくないし…」
「神田は良いんすね」
「何事もリナリーが優先だよ、リーバー班長!」
“あー…はいはい”と呆れ顔なリーバーを連れたコムイは、途中で少しボロボロになった神田を連れて方舟へと入った。
相変わらず南国の町並みの様な景色が綺麗だ。
「で、キミは何でそんなにボロボロなんだい?」
「うるせぇ」
アレンくんもボロボロだったから手合わせという名の喧嘩をしていたのだろう。
で、アイリーンに止められたんだろうけど。
「で、俺に何をさせよってんだ、こんな所連れて来やがって」
真っ白な町並みを眺めながら石畳の道を歩いていたコムイはピタリと足を止めて神田とリーバーを振り返った。
「いや、それがさぁ~バクちゃんが変な事言うもんだから」
「変な事?」
「小さな女の子を見たって言うんだよ」
「……」
「女の子?見間違いじゃないんすか?」
「んー…天使かもってちょっと面白い事も言ってたよ」
「ここは無人だって確認した筈っすよ…しかも小さな女の子で天使って」
まあ、確かに可笑しい話だ。
小さな女の子がこんな所で一人だなんて…そこまで考えて違和感に気付いた。
何か視界の下の方に…
「あぁああぁぁ!!!」
コムイの叫び声にビクリと肩を震わせたリーバーも、コムイが指を差した先を見て同じく声を上げた。
神田の腰にリボンを付けた金髪を肩で揃えた、白いワンピースの少女が抱き付いていた。
蒼い瞳が空の様に綺麗で、まるで天使の様な少女だった。
「リーバー班長、天使居た!居たよ、小さな女の子!!」
こんな直ぐに見付かるとは思わなかった。
「なんだ、お前…出て来ちまったのか」
「…何、神田くん知ってたの?!」
不機嫌そうに眉間に皺を寄せた神田くんを恐がるどころか、少女は嬉しそうにニッコリと笑った。
「おにいちゃん、きたから」
「だからってお前なぁ…」
「おにいちゃんはわたしをまもろうとしてくれた…きっとやさしいヒトだもん」
嬉しそうに笑う少女に神田くんが文句を言う事はもう無かった。
「で…俺は何の為に連れて来られたんだ」
「いや~…もしバクちゃんの言う通り何か居るなら捕まえてもらおうかと」
神田くんならリナリーの次にすばしっこいし良いかと思ったんだけど、必要無かったな……いや、向こうから神田くんに会いに来てくれたんだからある意味連れて来て正解だったか。
“チッ”と舌打ちをするあたり、神田くんはこの子をボク等に見せたくは無かったんだろうけど…
「ボクはコムイ、こっちはリーバー……キミのお名前は?」
そう訪ねると、少女は神田くんを見上げた。
「…こいつ等は大丈夫だ」
少女はボク等の方を見ると、ニッコリと笑った。
わたしは…
「わたしはレイだよ」
おいてきぼりのレイ──…
『チィ~!!!』
テラスにチィとティキが居るのが見えて思わずそう声を上げて手を振ってしまったが…大丈夫だっただろうか。
『…もしかして大事な話してたかな?』
「大丈夫ですよ、姫様」
「レイ、ロード様が手を…」
ユエにそう言われ、レイは再度大きく手を振った。
『さっきまでシェリルとロードしか居なかったのにねぇ…お庭一周してる間に二人共来てたんだねぇ』
「そうですね。結構ゆっくりしてしまいましたから…あぁ、姫様、薔薇にドレスを引っ掛けない様に気を付けて下さいな」
“え?”と思ったが、確かに少し先には薔薇が沢山植えてあった。
『ホント、ティナってば目が見えてないとは思えないよねぇ』
「ふふ、慣れですよ。香りや気配で察するんです…良かったらやってみて下さいな」
難しそう…正直出来る気がしなかった。
「レイ~!」
ロードがそう私を呼びながら走ってくる。
ティキの腕をしっかり抱えているものだから、ティキは少し走り難そうだった。
「レイ~、快楽のノアのティッキーだよぉ」
「ティキ・ミックな」
“初対面相手に名前伸ばすな”と言うティキの態度に違和感を覚えたが、理由は直ぐ分かった。
そうか…会った事がある気でいたけど、意識の無いティキに私が一方的に会っただけだった。
『初めまして、ティキ・ミック』
“レイ・アストレイだよ”と言って微笑んだレイを見て一瞬固まったティキは、次の瞬間ニッコリと微笑んだ。
「よろしくな、姫さん」
=休息=
「くれぐれもあちらで粗相のないように、クロス元帥」
黒の教団本部、水路…
珍しくスーツを着たクロスは、飛んで来たティムキャンピーをそっと指に止まらせた。
「お前は俺の母ちゃんか」
「本当に大丈夫ですか?こんな時でなければボクもついて行くんですが…」
「話をしに行くだけだ。俺を心配するなんて珍しいじゃねぇか、コムイ」
「違いますよ。途中で貴方がバックレたりしないかが心配なんです」
コムイの言葉に、クロスは楽しそうに声を上げて笑った。
『大丈夫よ、コムイ』
コツンコツンとヒールの音と共に現れたのはアイリーンだった。
『クロスは逃げたりなんかしないわ』
“それに”と続けたアイリーンはニッコリと微笑んだ。
『仮に逃げたりなんかしたら怒るわ』
クロスは、フフッと楽しそうに笑ったアイリーンの腕を引くと頬にキスを落とした。
と言ってもアイリーンが避けたから頬になったのだが…
『…何をするの』
「浮気すんなよ」
『浮気も何も…』
「クロス元帥!セクハラしてないで行きますよ」
ルベリエにそう怒鳴られ、クロスはチッと舌打ちをした。
「女性をそんな扱いするとモテませんよ」
「チッ、テメェに言われたかねぇよ…」
『まあ、有難う御座いますルベリエ長官』
ニッコリと微笑んだアイリーンは、クロスにだけに聞える様に声を落とした。
『何かあったら呼びなさい』
「何かなきゃいけねぇのか」
『……分かったわ』
“なるべくね”と続けたアイリーンは、クロスから離れるとコムイの隣に並んだリーバーの腕に自分の腕を絡めた。
「…どういうつもりだ」
『この子とバク、気に入ったわ』
リーバーの顔色が赤くなったり青くなったりする中、アイリーンは楽しそうにクロスに手を振った。
『いってらっしゃい、クロス』
アイリーンはクロスとルベリエの乗った舟に手を振りながら二人を見送った。
「アイリーン…何でわざわざあんな事…」
「そうだよ、アイリーン…わざわざあのバカを煽らなくても」
『あの人、面倒臭くなると手を抜く事があるじゃない?』
「って言うかバックレるよね」
コムイの言葉に楽しそうに声を上げて笑ったアイリーンは、上の階へ続く階段を上りながら話を続けた。
『あの人の事だから本部の片付けや引越し作業をするのが嫌でゆっくり帰って来るつもりよ…きっとね』
瓦礫の撤去も荷物の整理も…自分の部屋の片付けさえも嫌がる人だ。
『でも私が仕事もせずに遊んでると思えば、さっさと仕事済ませて帰って来るわ』
“あの人、私とレイに弱いもの”そう言って笑うアイリーンは、きっとクロスが自分に弱い理由を分かっていないんじゃないかと思う。
アイリーンはアレンくん達が鍛錬をしているのを見に行くと言って楽しそうに駆けて行った。
「しっかりしてるんだか、抜けてるんだか…分からない人だよね」
「本当に…可愛らしいとは思いますけど、若干クロス元帥が不憫になります」
「本当ですね」
「うおぉぉ!!?」
「い、居たんだ、リンク監査官」
ビックリした…てっきりリーバーくんしか居ないと思ったのに…
リンク監査官の存在とリーバーくんの声…二重にビックリしてしまった。
「私は長官と話していましたので」
そういえばさっき、アイリーンが僕らの後ろに手を振ってる気がしたけど…少し遠くに居るリンク監査官に振ってたのか。
「では、アレン・ウォーカーの監視がありますんで」
“失礼します”と言って自分達を追い抜いて階段を上って行ったリンクが見えなくなると、リーバーは溜め息を吐いた。
「ホント…堂々と“監視”って言いますね」
確かに…でも方舟を操れるのは14番目に奏者の資格を与えられたアレンくんだけだ。
監視するのは当たり前だろう…隔離されないだけマシだとも言えるかもしれない。
「さ、室長、仕事戻って下さい」
「はいはい」
「書類山積みですよ」
「書類か~…その前に方舟に行っても良いかな?」
「方舟ですか?」
「ちょっと…気になる事があるんだよね」
本当はもっと早く確認するつもりだったんだけど、襲撃の所為で大分遅れてしまった。
無言で階段を上り続けていたコムイは、暫くするとピタリと足を止めた。
「………」
「室長?」
「神田くん連れ出したら、婦長に怒られるかな?」
「神田ですか?」
「本当はリナリーが適役なんだけど、あんまり無理はさせたくないし…」
「神田は良いんすね」
「何事もリナリーが優先だよ、リーバー班長!」
“あー…はいはい”と呆れ顔なリーバーを連れたコムイは、途中で少しボロボロになった神田を連れて方舟へと入った。
相変わらず南国の町並みの様な景色が綺麗だ。
「で、キミは何でそんなにボロボロなんだい?」
「うるせぇ」
アレンくんもボロボロだったから手合わせという名の喧嘩をしていたのだろう。
で、アイリーンに止められたんだろうけど。
「で、俺に何をさせよってんだ、こんな所連れて来やがって」
真っ白な町並みを眺めながら石畳の道を歩いていたコムイはピタリと足を止めて神田とリーバーを振り返った。
「いや、それがさぁ~バクちゃんが変な事言うもんだから」
「変な事?」
「小さな女の子を見たって言うんだよ」
「……」
「女の子?見間違いじゃないんすか?」
「んー…天使かもってちょっと面白い事も言ってたよ」
「ここは無人だって確認した筈っすよ…しかも小さな女の子で天使って」
まあ、確かに可笑しい話だ。
小さな女の子がこんな所で一人だなんて…そこまで考えて違和感に気付いた。
何か視界の下の方に…
「あぁああぁぁ!!!」
コムイの叫び声にビクリと肩を震わせたリーバーも、コムイが指を差した先を見て同じく声を上げた。
神田の腰にリボンを付けた金髪を肩で揃えた、白いワンピースの少女が抱き付いていた。
蒼い瞳が空の様に綺麗で、まるで天使の様な少女だった。
「リーバー班長、天使居た!居たよ、小さな女の子!!」
こんな直ぐに見付かるとは思わなかった。
「なんだ、お前…出て来ちまったのか」
「…何、神田くん知ってたの?!」
不機嫌そうに眉間に皺を寄せた神田くんを恐がるどころか、少女は嬉しそうにニッコリと笑った。
「おにいちゃん、きたから」
「だからってお前なぁ…」
「おにいちゃんはわたしをまもろうとしてくれた…きっとやさしいヒトだもん」
嬉しそうに笑う少女に神田くんが文句を言う事はもう無かった。
「で…俺は何の為に連れて来られたんだ」
「いや~…もしバクちゃんの言う通り何か居るなら捕まえてもらおうかと」
神田くんならリナリーの次にすばしっこいし良いかと思ったんだけど、必要無かったな……いや、向こうから神田くんに会いに来てくれたんだからある意味連れて来て正解だったか。
“チッ”と舌打ちをするあたり、神田くんはこの子をボク等に見せたくは無かったんだろうけど…
「ボクはコムイ、こっちはリーバー……キミのお名前は?」
そう訪ねると、少女は神田くんを見上げた。
「…こいつ等は大丈夫だ」
少女はボク等の方を見ると、ニッコリと笑った。
わたしは…
「わたしはレイだよ」
おいてきぼりのレイ──…