第4章 最後の元帥
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83
『バク、リーバー』
それは、何フロアも下の階を巻き込んで抉る様にぽっかりと空いていた。
『これは…どういう事?』
出掛ける前には確かにあったモノ達がきれいに消え去った…第五研究所だったそこに残された少しの足場にバクやリーバー達は血塗れで倒れていた。
「あ…あぁ…」
小さく声をもらしながらカタカタと震えていたジョニーは、アイリーンをその視界に捕らえると、青い顔を更に青くした。
「あ、アイリーン…」
拙い…久し振りに湧き上がってくるこれは…
『ジョニー、クロスは?』
「アイリーン…どうしよう、俺、タップを助けたかっただけだったんだ…だけど、俺、逃げ切れなくて、班長達が呑まれた俺を引っ張って…でも呑まれて、アイツが吹っ飛ばして!!」
『ジョニー、要点を得て簡潔に』
アイリーンがそう言って床に座り込んだジョニーの頭にそっと触れると、ジョニーは表情を歪めて大粒の涙を流した。
「ッ…あ、アクマがレベル4になって皆を吹っ飛ばしたんだ」
レベル4…
あれだけの数がいれば、レベル4に進化するモノがいても不思議は無いが…
『クロスはどうしたの?』
「何もかも吹き飛んで…それからは、アレンしか見てないんだ」
『レベル4ねぇ…』
アイリーンは長い銀髪を揺らしてしゃがみ込むと、指の腹でジョニーの涙を拭った。
『ねぇ、ジョニー』
抑えられないかも知れない…
『どこに行ったの、そのこ』
「け、研究室の外」
『そう…』
すくっと立ち上がったアイリーンは、小さく息を吐いた。
『御仕置きが必要ね』
=残虐のカタチ=
「まだひとがいた」
神田の胸倉を掴んだまま宙に浮いたレベル4は、そう言って視界の端に見付けたルベリエを見てニヤリと笑った。
「そこでなにをやっているのですか」
「っ…」
ルベリエはレベル4に撃たれたヘブラスカを呼び続け、レベル4は神田を宙へ捨てる様に落としてルベリエの元へ向かった。
『ユウ!!!』
瞬間響いた声と共に、地面へと落ちていく神田を止めたのは長い銀髪に緋色の瞳の女性、アイリーンだった。
空中で神田を抱き止めたアイリーンは、神田をぎゅっと抱き締めると、ゆっくりと地に降り、壁を背にして床に座り込んだラビの隣に座らせる。
『…ユウ…ラビ』
「アイ…リー…ン…」
「アイリーン…無事だったんさね」
『ユウ…』
「……あ?」
『怒らないでね』
そう言って困った様に笑ったアイリーンは、神田に口付けた。
「な、アイリーン?!!」
慌てふためくラビと、目を見開いて驚く神田を無視したアイリーンは、暫くすると漸くその唇を神田から離した。
そしてそっとラビの額にキスを落とす。
「…何で俺はデコなんさ…」
不機嫌そうに“ズリィさ”と言うラビに、アイリーンは小さく笑った。
「っ……どういうつもりだ」
「術だろ?少し身体が軽くなったさ」
そう、術だ…即席の治癒術を使う為に額に口付けた。
でもユウはラビの様にいかないから唇に口付けた……命を削っているユウを治療しても意味が無いからだ。
ユウには…
「アイリーン?」
黙ってたらそうラビに声を掛けられた。
その赤い髪と表情に私の古い記憶が揺さぶられる。
『この記憶が私を…』
「は?」
『私、覚悟はしてたのよ』
「覚悟?」
『ここは戦場…何かが死ぬのは悲しいし大嫌いな事だけど、沢山逝ってしまうのは決められた事であり私が全てに手を貸す事は出来無い』
全てを感知する事も、全てに目を向ける事も、全てを救う事も、全てを護る事も…
関わった子達を贔屓しないのも…無理だ。
だって…
『理解していても私も人間…我慢出来無い事も勿論あるのよ』
見たモノ全てが、それぞれ私の古い記憶を呼び覚ます。
だから…
せめて手の届くものを助けたくなってしまう。
手を出してしまう。
ゆっくりと立ち上がったアイリーンは、一瞬で数階上の階の吹き抜けの端と端を繋ぐ連絡通路の橋に倒れたリナリーを足蹴にするレベル4の目の前へと移動した。
そして何かを話そうとしたレベル4を思い切り蹴り飛ばした。
アイリーンに蹴り飛ばされたレベル4の身体は、吹き飛んで壁に激突した。
軽く飛び上がったアイリーンが橋の細い手摺りへと立つと、砂煙を上げる穴の開いた壁から、不機嫌そうな表情のレベル4が顔を出す。
「っ…」
『さっさと壊して皆を治療する予定だったのよ』
「なんだ、おまえは」
『でも止めた』
「…おまえ、げんすいか!」
アイリーンは、おもちゃを見付けたとばかりに楽しそうに突っ込んでくるレベル4の懐に潜って顎を蹴り上げると、その腕を掴んでまた壁へ叩き付ける様に投げた。
『お前の魂には悪いが、私はお前の人格が酷く嫌いだ』
クロスやアレンは見当たらないし、リーバーやバクは意識が無かった。
ラビとユウはまともな武器さえ持たない…挙句、女の子であるリナリーを足蹴にするなんて‥
「ずいぶん“じしんか”ですね。クスクス…いいですよ、あそんであげます」
楽しそうに笑いながら再び突っ込んできたレベル4の次々と繰り出される攻撃を受け流しながら、攻防を繰り広げていたアイリーンは、困った様に眉を寄せた。
「なんですか、もうつらくなってきましたか?」
答えずに攻撃を受け流し続けていたアイリーンは、レベル4の拳を掴む様にして止めると、小さく口を開いた。
『少し厭きたのよ』
瞬間、アイリーンはレベル4の左肩に手刀を下ろした。
左肩の間接からブツッと斬れる様に腕が外れる。
「え…」
『これでも結構怒ってるのよ、私』
「おまえ!!」
『私のお気に入りさん達をボロボロにした罪は重いわよ』
そう口にしたアイリーンは、斬り落としたレベル4の腕を捨てると、今度は自分から仕掛けた。
『簡単に死ねると思うな』
攻撃を繰り返しながらそう言って、思わずフフフと小さく笑った。
私はここまで充分我慢をした。
大量の怪我人と、死人…
そしてボロボロになってそれらを護ろうとする皆……吐き気がする。
此の子くらい好きにしたって良いだろう…
『あぁ、大丈夫…目をくり貫いたり、舌を斬ったりみたいな事は流石にしないわ』
そう言って再度レベル4の懐に潜り込んだアイリーンは、ニッコリと笑った。
『唯、ゆっくりと壊すだけよ』
「っ……ぅ…うあぁあぁぁぁぁ!!!」
青くなったレベル4が我武者羅に襲い掛かって来るのをアイリーンはニヤリと口角を上げて笑って受け入れた。
『お前は遊び過ぎたもの…最後まで見届けて私を罵りなさい』
目は潰さない。
最後まで自分の末路と自分を壊す私を見て居られる様に…
舌は抜かない。
貴方をこんな風に壊す醜い私を罵れる様に…
頭は潰さない。
最後の最後まで恐怖を味わえる様に…
本当は皆が受けたもの全てを返したいけど、我慢して上げる。
さて…
どこから壊そうかしら。
『大丈夫…最後の最後には、ちゃんとイノセンスで送って上げるわ』
レベル4からの攻撃を受け続けていたアイリーンは、そう口にしてぎゅっと拳を握ると、レベル4に殴り掛かった。
空中を滑る様に進みながら、殴り、蹴りを続け、振り上げた両手を繋いでレベル4の頭に叩き落す。
落下するレベル4の身体は、連絡通路の橋にぶつかって止まり、アイリーンは橋にめり込んだレベル4を首を鷲掴みにして持ち上げると、空中に向かって放り投げる。
そしてまた攻撃を続けた。
その身に当たるレベル4の攻撃に一瞬たりとも怯みもせず、唯攻撃し続ける。
『次は右足を貫こうかしら』
「…!」
『それとも指を一本ずつ落とす?』
「ッ…にんげんごときにぃぃ!!」
そう叫んで自分を蹴り離したレベル4を追い掛けたアイリーンは、その動きをピタリと止めた。
自分から逃れたレベル4が、目の前にルベリエを首を掴んで突き出したからだった。
『…大丈夫よ…大人しくなさいね、ルベリエ』
「おまえのまけですよ」
『……』
「おまえはひとの死によわい」
ニヤリと気持ち悪い程に笑うレベル4は、困った様に眉を寄せたアイリーンに向かって手を突き出した。
「しね」
ラビ達の声が…遠くに響く──…
『バク、リーバー』
それは、何フロアも下の階を巻き込んで抉る様にぽっかりと空いていた。
『これは…どういう事?』
出掛ける前には確かにあったモノ達がきれいに消え去った…第五研究所だったそこに残された少しの足場にバクやリーバー達は血塗れで倒れていた。
「あ…あぁ…」
小さく声をもらしながらカタカタと震えていたジョニーは、アイリーンをその視界に捕らえると、青い顔を更に青くした。
「あ、アイリーン…」
拙い…久し振りに湧き上がってくるこれは…
『ジョニー、クロスは?』
「アイリーン…どうしよう、俺、タップを助けたかっただけだったんだ…だけど、俺、逃げ切れなくて、班長達が呑まれた俺を引っ張って…でも呑まれて、アイツが吹っ飛ばして!!」
『ジョニー、要点を得て簡潔に』
アイリーンがそう言って床に座り込んだジョニーの頭にそっと触れると、ジョニーは表情を歪めて大粒の涙を流した。
「ッ…あ、アクマがレベル4になって皆を吹っ飛ばしたんだ」
レベル4…
あれだけの数がいれば、レベル4に進化するモノがいても不思議は無いが…
『クロスはどうしたの?』
「何もかも吹き飛んで…それからは、アレンしか見てないんだ」
『レベル4ねぇ…』
アイリーンは長い銀髪を揺らしてしゃがみ込むと、指の腹でジョニーの涙を拭った。
『ねぇ、ジョニー』
抑えられないかも知れない…
『どこに行ったの、そのこ』
「け、研究室の外」
『そう…』
すくっと立ち上がったアイリーンは、小さく息を吐いた。
『御仕置きが必要ね』
=残虐のカタチ=
「まだひとがいた」
神田の胸倉を掴んだまま宙に浮いたレベル4は、そう言って視界の端に見付けたルベリエを見てニヤリと笑った。
「そこでなにをやっているのですか」
「っ…」
ルベリエはレベル4に撃たれたヘブラスカを呼び続け、レベル4は神田を宙へ捨てる様に落としてルベリエの元へ向かった。
『ユウ!!!』
瞬間響いた声と共に、地面へと落ちていく神田を止めたのは長い銀髪に緋色の瞳の女性、アイリーンだった。
空中で神田を抱き止めたアイリーンは、神田をぎゅっと抱き締めると、ゆっくりと地に降り、壁を背にして床に座り込んだラビの隣に座らせる。
『…ユウ…ラビ』
「アイ…リー…ン…」
「アイリーン…無事だったんさね」
『ユウ…』
「……あ?」
『怒らないでね』
そう言って困った様に笑ったアイリーンは、神田に口付けた。
「な、アイリーン?!!」
慌てふためくラビと、目を見開いて驚く神田を無視したアイリーンは、暫くすると漸くその唇を神田から離した。
そしてそっとラビの額にキスを落とす。
「…何で俺はデコなんさ…」
不機嫌そうに“ズリィさ”と言うラビに、アイリーンは小さく笑った。
「っ……どういうつもりだ」
「術だろ?少し身体が軽くなったさ」
そう、術だ…即席の治癒術を使う為に額に口付けた。
でもユウはラビの様にいかないから唇に口付けた……命を削っているユウを治療しても意味が無いからだ。
ユウには…
「アイリーン?」
黙ってたらそうラビに声を掛けられた。
その赤い髪と表情に私の古い記憶が揺さぶられる。
『この記憶が私を…』
「は?」
『私、覚悟はしてたのよ』
「覚悟?」
『ここは戦場…何かが死ぬのは悲しいし大嫌いな事だけど、沢山逝ってしまうのは決められた事であり私が全てに手を貸す事は出来無い』
全てを感知する事も、全てに目を向ける事も、全てを救う事も、全てを護る事も…
関わった子達を贔屓しないのも…無理だ。
だって…
『理解していても私も人間…我慢出来無い事も勿論あるのよ』
見たモノ全てが、それぞれ私の古い記憶を呼び覚ます。
だから…
せめて手の届くものを助けたくなってしまう。
手を出してしまう。
ゆっくりと立ち上がったアイリーンは、一瞬で数階上の階の吹き抜けの端と端を繋ぐ連絡通路の橋に倒れたリナリーを足蹴にするレベル4の目の前へと移動した。
そして何かを話そうとしたレベル4を思い切り蹴り飛ばした。
アイリーンに蹴り飛ばされたレベル4の身体は、吹き飛んで壁に激突した。
軽く飛び上がったアイリーンが橋の細い手摺りへと立つと、砂煙を上げる穴の開いた壁から、不機嫌そうな表情のレベル4が顔を出す。
「っ…」
『さっさと壊して皆を治療する予定だったのよ』
「なんだ、おまえは」
『でも止めた』
「…おまえ、げんすいか!」
アイリーンは、おもちゃを見付けたとばかりに楽しそうに突っ込んでくるレベル4の懐に潜って顎を蹴り上げると、その腕を掴んでまた壁へ叩き付ける様に投げた。
『お前の魂には悪いが、私はお前の人格が酷く嫌いだ』
クロスやアレンは見当たらないし、リーバーやバクは意識が無かった。
ラビとユウはまともな武器さえ持たない…挙句、女の子であるリナリーを足蹴にするなんて‥
「ずいぶん“じしんか”ですね。クスクス…いいですよ、あそんであげます」
楽しそうに笑いながら再び突っ込んできたレベル4の次々と繰り出される攻撃を受け流しながら、攻防を繰り広げていたアイリーンは、困った様に眉を寄せた。
「なんですか、もうつらくなってきましたか?」
答えずに攻撃を受け流し続けていたアイリーンは、レベル4の拳を掴む様にして止めると、小さく口を開いた。
『少し厭きたのよ』
瞬間、アイリーンはレベル4の左肩に手刀を下ろした。
左肩の間接からブツッと斬れる様に腕が外れる。
「え…」
『これでも結構怒ってるのよ、私』
「おまえ!!」
『私のお気に入りさん達をボロボロにした罪は重いわよ』
そう口にしたアイリーンは、斬り落としたレベル4の腕を捨てると、今度は自分から仕掛けた。
『簡単に死ねると思うな』
攻撃を繰り返しながらそう言って、思わずフフフと小さく笑った。
私はここまで充分我慢をした。
大量の怪我人と、死人…
そしてボロボロになってそれらを護ろうとする皆……吐き気がする。
此の子くらい好きにしたって良いだろう…
『あぁ、大丈夫…目をくり貫いたり、舌を斬ったりみたいな事は流石にしないわ』
そう言って再度レベル4の懐に潜り込んだアイリーンは、ニッコリと笑った。
『唯、ゆっくりと壊すだけよ』
「っ……ぅ…うあぁあぁぁぁぁ!!!」
青くなったレベル4が我武者羅に襲い掛かって来るのをアイリーンはニヤリと口角を上げて笑って受け入れた。
『お前は遊び過ぎたもの…最後まで見届けて私を罵りなさい』
目は潰さない。
最後まで自分の末路と自分を壊す私を見て居られる様に…
舌は抜かない。
貴方をこんな風に壊す醜い私を罵れる様に…
頭は潰さない。
最後の最後まで恐怖を味わえる様に…
本当は皆が受けたもの全てを返したいけど、我慢して上げる。
さて…
どこから壊そうかしら。
『大丈夫…最後の最後には、ちゃんとイノセンスで送って上げるわ』
レベル4からの攻撃を受け続けていたアイリーンは、そう口にしてぎゅっと拳を握ると、レベル4に殴り掛かった。
空中を滑る様に進みながら、殴り、蹴りを続け、振り上げた両手を繋いでレベル4の頭に叩き落す。
落下するレベル4の身体は、連絡通路の橋にぶつかって止まり、アイリーンは橋にめり込んだレベル4を首を鷲掴みにして持ち上げると、空中に向かって放り投げる。
そしてまた攻撃を続けた。
その身に当たるレベル4の攻撃に一瞬たりとも怯みもせず、唯攻撃し続ける。
『次は右足を貫こうかしら』
「…!」
『それとも指を一本ずつ落とす?』
「ッ…にんげんごときにぃぃ!!」
そう叫んで自分を蹴り離したレベル4を追い掛けたアイリーンは、その動きをピタリと止めた。
自分から逃れたレベル4が、目の前にルベリエを首を掴んで突き出したからだった。
『…大丈夫よ…大人しくなさいね、ルベリエ』
「おまえのまけですよ」
『……』
「おまえはひとの死によわい」
ニヤリと気持ち悪い程に笑うレベル4は、困った様に眉を寄せたアイリーンに向かって手を突き出した。
「しね」
ラビ達の声が…遠くに響く──…