第4章 最後の元帥
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「レイ!」
黒いドレスに長い黒髪、褐色の肌…
額に聖痕のあるこの少女は私の友人だ。
強くて可愛くて人懐っこい…皆に好かれる自慢の友人だ。
「レイ!」
振り返ったレイは、ただ真っ直ぐに私を見ていた。
いつものショートカットも可愛いが、長い髪も良く似合っている。しかし…
「何でそんな格好してるの?誰かに見られたら大変よ?」
ニッコリと笑ったレイは次の瞬間、片手で私の首を鷲掴みにした。
「ぇ…」
『何馴れ馴れしく呼んでるの?』
ギリギリと締められ持ち上げられる。
酸素を失った体は急速に落ちてゆく…一つ一つと機能が停止していくのが分かった。
「レイ……な…ん、で…」
『何で?』
馬鹿にした様に笑ったレイは、空いた手で長い髪を掻き上げた。
『ノアがエクソシストを殺すのは当たり前でしょ?何さっきから敵に馴れ馴れしく話しかけてるのよ』
「な……レイ…、わ…たし、は…」
『よくも私の家族を傷付けたわね』
そうだ。
何を甘い事を考えていたんだろう。
覚えてようが覚えてなかろうが、レイが私達を許すわけない。
だって私達はレイの家族を傷付けたんだから…
例え覚えていたとしても許してくれるか分からない。
覚えてない今なら…
『死になよ』
=傷付ける覚悟=
『リナリー、居たよぉ!!』
呼ばれて振り向くと、兄さんの首根っこを掴んでずるずると引き摺りながら歩いてくるレイが見えた。
片手で兄さんを引き摺り、もう片手で私とリーバー班長に手を振るレイの笑顔は爽やかで、少しも重そうじゃない。
「あ゙ぁ、室長!!」
「もう、どこ行ってたの兄さん!」
『灯台下暗しっていうか…』
「灯台下?」
『私の部屋に居たんだよ。元々探すつもり無い所だもん、そりゃあ見付かるわけ無いよ! 』
「はぁ?!」
「もう、女の子の部屋に勝手に入るだなんて!」
人の部屋に…しかも女の子の部屋に無断で入って隠れるなんて!
『別に良いんだけどさ…よく私の部屋なんかに隠れよう何て考えたよね。しかも呑気にお茶飲んでるんだもん、思わずお腹抱えて笑っちゃったよ』
「ちょ、レイ?!」
楽しそうに笑ってそう言うレイに反応してコムイが慌てて声を上げたが、もう遅かった。
「ほぅ?仕事サボってお茶っすか。しかもレイの部屋に忍び込んで」
「い、いやお茶は脳のリフレッシュに…」
「女の子の部屋に無断で入るなんて犯罪よ、兄さん」
「犯罪者は独房に閉じ込めて仕事漬けにしてやるか」
「ひ…リ、リーバー班長そりゃないよ!!」
「シスコン、仕事しろ」
「兄さん、仕事して」
「ゴメンナサイ」
涙目のコムイの隣にしゃがみ込んだレイは、楽しそうにニッコリと微笑んだ。
『怒られちゃったね、コムイ』
「うわ~…煽ったの無自覚だね、レイ」
漸く捕まえたコムイを引き摺りながら帰って行くリーバーを見送りながら、リナリーはレイに棒付きキャンディーを一つ手渡した。
「ごめんね、レイ…任務から帰ったばっかりで疲れてるのに」
『大丈夫だよ~、私の任務なんて適合者探しばっかりだし、誰よりも頻繁にホームに帰って来てるし!』
“ある意味一番サボってるもの”と言って笑うレイは元帥だ。
その分、任務はキツいし多いし、何より単独が多い。
強いからと言っても疲れてはいるだろうに、優しいレイは私達に付き合ってくれる。
「気持ちの問題もあるし、私はここに居る時くらいはレイにゆっくりして欲しいの」
『ん~…それは大丈夫だよ、リナリー』
「ぇ…」
『私は覚悟を決めてるから』
「カクゴ…」
『いっぱい考えて、逃げるのは止めたの。逃げるのを止めて、理想を描いて、犠牲になる数え切れない何かと、救済出来る数え切れない何かを天秤に掛けて、覚悟を決めた。
いざという時に怖じ気づいたとしても、私には弱い私を叱ってくれる…傷付いたら優しく撫でてくれる大事な家族がいる』
“だから大丈夫”と言って笑うレイが何だか同じ年頃の女の子に見えなかった。
『それに私は唯の休憩よりも楽しい方が好きだよ』
「レイ…」
『だからね、リナリー!教団のハプニングは愛おしくて大歓迎♪』
レイは…レイは…
『でもね』
「なに?」
『家族を傷付けたのは許さない
「っ…!」
何ともいえない浮遊感を感じてリナリーは目を覚ました。
頬を伝う冷や汗をそっと指の腹で拭う。
「…………ゆ、め…」
懐かしい夢だった。
けど最後だけ…
「レイ…本当は何て言ってたっけ…」
こんな夢を見るだなんて、レイの記憶が抜け落ちたのがショックだったのか、それとも…
「……カクゴ…」
それとも…決め損ねているのか。
答えはたった一つだった筈なのに…
《敵襲!!エクソシスト及び本部内全団員へ!》
「!?」
《第五研究室にアクマ出現!現在元帥一名、エクソシスト二名が応戦中》
何をしたいか、何をすればいいのか、何が出来るのか…
何も分からないのに私は走り出す。
「違う…」
分からないんじゃなくて、何も“決めてない”んだ。
《元帥及び以下のエクソシストは至急方舟三番ゲートのある間へ》
皆を助けたい…その為にはヘブラスカの所に行ってイノセンスと同調 しなくてはならない。
何をしたいか、何をすればいいのか、何が出来るのか…
本当は決まっているのに決心がつかない。
覚悟ができない…
強くなったと思っていたのに、それはイノセンスのおかげだった。
イノセンスを持っている事に安心し、イノセンスの力に頼り、自分自身が強くなったつもりでいた。
イノセンスを持たない私は、信じられないくらい弱く臆病で無力だ。勿論、見た目にもそれは明らかだ。
だって、私は誰よりも先に辿り着ける存在だった筈なのに…
響き渡る助けを求める声…
そこにもう、私の名前は無い──…
「レイ!」
黒いドレスに長い黒髪、褐色の肌…
額に聖痕のあるこの少女は私の友人だ。
強くて可愛くて人懐っこい…皆に好かれる自慢の友人だ。
「レイ!」
振り返ったレイは、ただ真っ直ぐに私を見ていた。
いつものショートカットも可愛いが、長い髪も良く似合っている。しかし…
「何でそんな格好してるの?誰かに見られたら大変よ?」
ニッコリと笑ったレイは次の瞬間、片手で私の首を鷲掴みにした。
「ぇ…」
『何馴れ馴れしく呼んでるの?』
ギリギリと締められ持ち上げられる。
酸素を失った体は急速に落ちてゆく…一つ一つと機能が停止していくのが分かった。
「レイ……な…ん、で…」
『何で?』
馬鹿にした様に笑ったレイは、空いた手で長い髪を掻き上げた。
『ノアがエクソシストを殺すのは当たり前でしょ?何さっきから敵に馴れ馴れしく話しかけてるのよ』
「な……レイ…、わ…たし、は…」
『よくも私の家族を傷付けたわね』
そうだ。
何を甘い事を考えていたんだろう。
覚えてようが覚えてなかろうが、レイが私達を許すわけない。
だって私達はレイの家族を傷付けたんだから…
例え覚えていたとしても許してくれるか分からない。
覚えてない今なら…
『死になよ』
=傷付ける覚悟=
『リナリー、居たよぉ!!』
呼ばれて振り向くと、兄さんの首根っこを掴んでずるずると引き摺りながら歩いてくるレイが見えた。
片手で兄さんを引き摺り、もう片手で私とリーバー班長に手を振るレイの笑顔は爽やかで、少しも重そうじゃない。
「あ゙ぁ、室長!!」
「もう、どこ行ってたの兄さん!」
『灯台下暗しっていうか…』
「灯台下?」
『私の部屋に居たんだよ。元々探すつもり無い所だもん、そりゃあ見付かるわけ無いよ! 』
「はぁ?!」
「もう、女の子の部屋に勝手に入るだなんて!」
人の部屋に…しかも女の子の部屋に無断で入って隠れるなんて!
『別に良いんだけどさ…よく私の部屋なんかに隠れよう何て考えたよね。しかも呑気にお茶飲んでるんだもん、思わずお腹抱えて笑っちゃったよ』
「ちょ、レイ?!」
楽しそうに笑ってそう言うレイに反応してコムイが慌てて声を上げたが、もう遅かった。
「ほぅ?仕事サボってお茶っすか。しかもレイの部屋に忍び込んで」
「い、いやお茶は脳のリフレッシュに…」
「女の子の部屋に無断で入るなんて犯罪よ、兄さん」
「犯罪者は独房に閉じ込めて仕事漬けにしてやるか」
「ひ…リ、リーバー班長そりゃないよ!!」
「シスコン、仕事しろ」
「兄さん、仕事して」
「ゴメンナサイ」
涙目のコムイの隣にしゃがみ込んだレイは、楽しそうにニッコリと微笑んだ。
『怒られちゃったね、コムイ』
「うわ~…煽ったの無自覚だね、レイ」
漸く捕まえたコムイを引き摺りながら帰って行くリーバーを見送りながら、リナリーはレイに棒付きキャンディーを一つ手渡した。
「ごめんね、レイ…任務から帰ったばっかりで疲れてるのに」
『大丈夫だよ~、私の任務なんて適合者探しばっかりだし、誰よりも頻繁にホームに帰って来てるし!』
“ある意味一番サボってるもの”と言って笑うレイは元帥だ。
その分、任務はキツいし多いし、何より単独が多い。
強いからと言っても疲れてはいるだろうに、優しいレイは私達に付き合ってくれる。
「気持ちの問題もあるし、私はここに居る時くらいはレイにゆっくりして欲しいの」
『ん~…それは大丈夫だよ、リナリー』
「ぇ…」
『私は覚悟を決めてるから』
「カクゴ…」
『いっぱい考えて、逃げるのは止めたの。逃げるのを止めて、理想を描いて、犠牲になる数え切れない何かと、救済出来る数え切れない何かを天秤に掛けて、覚悟を決めた。
いざという時に怖じ気づいたとしても、私には弱い私を叱ってくれる…傷付いたら優しく撫でてくれる大事な家族がいる』
“だから大丈夫”と言って笑うレイが何だか同じ年頃の女の子に見えなかった。
『それに私は唯の休憩よりも楽しい方が好きだよ』
「レイ…」
『だからね、リナリー!教団のハプニングは愛おしくて大歓迎♪』
レイは…レイは…
『でもね』
「なに?」
『家族を傷付けたのは許さない
「っ…!」
何ともいえない浮遊感を感じてリナリーは目を覚ました。
頬を伝う冷や汗をそっと指の腹で拭う。
「…………ゆ、め…」
懐かしい夢だった。
けど最後だけ…
「レイ…本当は何て言ってたっけ…」
こんな夢を見るだなんて、レイの記憶が抜け落ちたのがショックだったのか、それとも…
「……カクゴ…」
それとも…決め損ねているのか。
答えはたった一つだった筈なのに…
《敵襲!!エクソシスト及び本部内全団員へ!》
「!?」
《第五研究室にアクマ出現!現在元帥一名、エクソシスト二名が応戦中》
何をしたいか、何をすればいいのか、何が出来るのか…
何も分からないのに私は走り出す。
「違う…」
分からないんじゃなくて、何も“決めてない”んだ。
《元帥及び以下のエクソシストは至急方舟三番ゲートのある間へ》
皆を助けたい…その為にはヘブラスカの所に行ってイノセンスと
何をしたいか、何をすればいいのか、何が出来るのか…
本当は決まっているのに決心がつかない。
覚悟ができない…
強くなったと思っていたのに、それはイノセンスのおかげだった。
イノセンスを持っている事に安心し、イノセンスの力に頼り、自分自身が強くなったつもりでいた。
イノセンスを持たない私は、信じられないくらい弱く臆病で無力だ。勿論、見た目にもそれは明らかだ。
だって、私は誰よりも先に辿り着ける存在だった筈なのに…
響き渡る助けを求める声…
そこにもう、私の名前は無い──…