第4章 最後の元帥
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ふらふらだった。
「ジョニー!遅いぞさっさと作業位置につけっ!」
「すっ、すみませーん」
いつもの仕事+卵の解析に、エクソシストの団服の修理。
眠気を誤魔化して、点滴をしながらの作業…
「あ──!!!バク支部長ダメっすよ今日は入ってきちゃ!」
「馬鹿者、僕は優秀な科学者だぞ。どうせ人手不足なんだろうが是非手伝ってやる」
「そうよ、どきなさい三下」
「オレらの仕事なんスから~」
班長や室長なんかと比べたら全然だなんて分かってる。
こんな量の仕事でふらふらしてるオレなんか…
「…………………え…?」
一瞬だった。
気付いた時にはそれはそこにあった。
腹部から突き出た細長いそれ…
オセアニア支部長、アンドリュー・ナンセンの手から伸びた細長いそれは、突き抜いたオレの腹部からズルリと抜けていった。
嘘だろ…そんな…
「そうだね仕事だ」
「ぉ…おい!」
バク支部長の声が遠い…視界が歪み倒れる中、ニコリと笑ったナンセン支部長の顔が歪み、綺麗な女性の顔へと変わるのが見えた。
「ワタシも仕事だ」
部屋の入り口を覆った黒い壁から溢れ出る無数のアクマ…
ここは黒の教団本部なのに…
「私は変身能力をもつ“色”のノア、ルル=ベル」
何でこんな事に…
「お前達とはすぐ“さよなら”なんだけど、挨拶はちゃんとしなさいと主は言うから」
何で──…
=悪夢の中で=
「おまちど~ん!カレーにミートローフ、Aセット、ミートスパ、スープご飯にラザニア出来たわよ~」
朝の食堂にジュリーの元気な声が響き渡る。
厨房の団員の仕事ぶりときたら…流石のモノだった。
複数の注文を一気に上げ、ジュリーの完成の声に反応した面々は殆ど待つ事も無く、それぞれの朝食を持って席に移動する。
『やっぱり皆、手捌きが見事ね』
厨房の端を借りてせっせと料理をしていたアイリーンの言葉に、ジュリーはアハハと笑った。
「じゃなきゃやってらんないわよ、この職場~次、タコスとドリアとラーメンね!」
『人数多いものね…何でも作ってくれるし』
品書きが無く、何でも好きなモノを作ってくれるというのだから待ち時間が多少長くても納得出来る。
なのに、全然待たない挙げ句厨房はこのくらいの忙しさで済んでるのだから、皆の腕が良いのは明らかだ。
「栄養は勿論だけど…好きなもん食べないと力でないでしょ」
『あぁ、成る程ね』
「それに今日はアンタがアレン達の分を作ってくれてるから楽な方よ」
『アレン、凄く食べるものね』
「それに神田が蕎麦以外の物を食べるのも始めてみたわ」
ジュリーと楽しそうに笑いあったアイリーンは、何種類もの料理を何層にも積み上げたワゴンを、崩れない様にこっそり魔法で支えながら押して厨房を出た。
団子に結い上げていた髪を解くと、本日二回目の道をワゴンを押しながら歩く。
『御待たせ』
アイリーンが向かった先の席には、アレンとラビ、ブックマン、ハワードが座っていた。
アレン達の周りには空になった皿が積み上がり、その中でアレンが最後の三皿の料理を片付けにかかっていた。
良かった、食べきる前に次を持って来れた。
「待ってたさ、アイリーン!」
「あ、済みません、アイリーン」
「はぁ…君は食べ過ぎですよ、アレン・ウォーカー」
「若いの」
『……』
ハワードも良く食べてると思うのは気の所為かしら?
ラビは育ち盛りの男の子らしい量だし、アレンの尋常じゃない量は寄生型だから仕方無いけど…ハワードの量はラビを越えてるしそれに……みんなお菓子かケーキだ。
よく朝からあんなに沢山甘いモノを…
「アイリーン、俺のパフェは?」
ラビの言葉に、ワゴンから料理を降ろしていたアイリーンはピタリと動きを止めた。
『……ぁ』
「…アイリーン、もしかして忘れたんさ?」
溶けちゃうから最後に作ろうと思っててすっかり忘れていた。
『…忘れてないわよ!溶けちゃうからアレンのご飯を運んだ後に作ろうと思ってたのよ』
「“……ぁ”って言ったさ」
『ぅ…』
アイリーンは手早く空いた皿をワゴンに乗せ、運んできた料理をテーブルに並べると、ワゴンに手を掛けニッコリと笑った。
『直ぐに作ってくるわ』
そう言ってワゴンを押して駆け出したアイリーンは、厨房に戻ると直ぐに作業に取り掛かった。
髪を結い上げ、手を洗い、必要な物を冷蔵庫や食器棚から取り出すと、アイリーンは直ぐにパフェを作り上げた。
手早く後片づけを済ませたアイリーンは再びパフェを片手に本日三回目となる道を駆け抜けた。
『ラビ、御待たせ…って、あら?』
席には誰も居なかった。
しかしテーブルに残された食べかけの皿が、アレンがまだ食事中なのを物語っている。
どう言う事だ…?
『ねぇ、アレン達は?』
そう近くの席の探索部隊に聞くと、探索部隊は興味なさげに口を開いた。
「あぁ、さっき四人揃って飛び出して行きましたよ」
飛び出して行った?
髪を解きながら話を聞いていたアイリーンは、礼を言うと、パフェを探索部隊によこして走り出した。
嫌な予感がした。
だから迷わずに第五研究室に向かったが、そこにはもう入り口等存在していなかった。
『壁…これは…』
入り口があったそこに存在する真っ黒に塗り潰された壁の様なそれに手を触れてみる。
少し力を込めてみるが、反応は無かった。
『下手に力ずくで開けたり、術で侵入して影響が出ても困るしな…』
アイリーンは、壁に額を当てるとそっと目を閉じた。
遮られててはっきりとは分からないが…中にかなりの数“いる”
科学班の気も今朝よりも少ない…大分殺 られたか。
ギリッと歯を噛みしめたアイリーンは、ふっと短く息を吐くと自分の影へと沈んでいった。
ジョニーを呼び続けてどれくらい経っただろう。
もしかしたら実際は何分も経っていないかもしれない。
でも俺には…俺達には、それが長く長く感じられた。
いきなり現れたアクマの大群。次々と襲われる部下達…
悪夢でしかなかった。
第五研究室の広い床に横たわり、何列にも並ばされた傷を負わされた科学班員の呻き声や啜り泣く声が直ぐ耳許で響いてる様だった。
ジョニーの付けているヘッドホンの無線機に呼び掛け続けていると、微かにジョニーの声が聞こえた。
よかった…最初に腹部に傷を受けていたが、どうやら無事の様だ。
ガサガサという物音が聞こえるという事は誰かと代わるんだろうか…
「……もしもし、聞こえますか…?」
《その声…リーバー班長か》
そっと声を掛けてみれば、そう聞き覚えのある声が耳に響いた。
「バク支部長スか、よかった…奴らの所為なのか電波が悪くて…この研究室の外に連絡が取れません」
《無事なのは君だけか?》
「いえ、自分以外に五人…今即席ですが結界装置を造ってます」
対アクマ武器を持たない俺達にはそれくらいしか出来無かった。
《こっちもだ部品が少なくて性能が悪いのが一台だけだがな》
「似たようなもんです」
瞬間、色んな声が響き渡った。
黒い壁から抜け出る様に出て来た数体の髑髏の顔をもつそれは、床に並べられた科学班の頭に触れると次々に顔に×を書いていった。
そして×を書かれた科学班員は次々と…
頭を潰されていった。
途中で途切れる断末魔の悲鳴、迫る恐怖に震える声、止めどなく溢れる涙を抑えられない泣き声…
全てがかんに障った。
「あいつら…っ」
《行くな、リーバー!》
「ッ…くそっ、くそ…ッ!!」
《我々が奴らに向かって行っても状況は何も変わらん!装置を造る手を止めるな!今は少しでも生き残る為の最善を尽くせ!!》
「………っ!」
《希望をもて!外に連絡が取れなくてもウォーカーの左目があるだろう。アイリーンだっている…耐えるのだ》
この状況下で目を持つアレンは兎も角、アイリーンをおす理由がよく分からなかったが、バク支部長はきっとアイリーンの何かを知っているんだと思った。
《タップ…!》
ふいにそう無線機越しにジョニーの声が聞こえた。
「班長、タップが!!」
慌てて物陰から研究室のホールを見ると、髑髏がタップの額に触れていた。
「タッ…」
そう声を上げた瞬間だった。
悲鳴を上げながら火を付けた様に燃え上がったタップは、一瞬で黒こげになった。
我慢なんか…もう出来無かった。
「班長…?」
リーバーは物陰から歩いて出て行くと、持っていた銃を取り出し、髑髏頭に向かって一発撃った。
やはり唯の銃じゃ効かないみたいだが、関係無い。
「科学班班長のリーバー・ウェンハムだ。デキのいい脳ミソが欲しいんなら俺をやれよ」
「班長…!」
「班長ぉ…」
涙でグチャグチャになった顔の部下達は、小さく震えていた。
コイツらが殺られるのを見ているだなんてやっぱり出来無かった。
「タップこんな姿に…」
上体を起こした黒こげのタップの顔は髑髏になっている。
殺されるか、こんな形で仲間にされるかだなんて…最悪だ。
「…俺の部下をテメェらにやるなんざ冗談じゃねぇ」
「“班長”大歓迎だねェ!じゃあお前、二体目だ」
一瞬で目の前まで来た髑髏の二本の指が額に触れる瞬間、俺はぐっと目を瞑った。
「…?」
しかし何の衝撃もこなかった。
そっと目を開くと、目の前では髑髏が真っ二つになっていた。
髑髏を引き裂く大剣、視線を上にずらせば…待ち望んでいた人物がそこにいた。
「ア…アレン…?」
『駄目よ、リーバー』
その言葉と共に後ろから腕が伸び、抱き付かれた。
首に回らせた少し冷たい細い腕、視界の端…肩口に映る銀色…凛と美しい声。
その声は…
『そんなの格好良過ぎるわ』
皆を助けるものだと信じたい──…
ふらふらだった。
「ジョニー!遅いぞさっさと作業位置につけっ!」
「すっ、すみませーん」
いつもの仕事+卵の解析に、エクソシストの団服の修理。
眠気を誤魔化して、点滴をしながらの作業…
「あ──!!!バク支部長ダメっすよ今日は入ってきちゃ!」
「馬鹿者、僕は優秀な科学者だぞ。どうせ人手不足なんだろうが是非手伝ってやる」
「そうよ、どきなさい三下」
「オレらの仕事なんスから~」
班長や室長なんかと比べたら全然だなんて分かってる。
こんな量の仕事でふらふらしてるオレなんか…
「…………………え…?」
一瞬だった。
気付いた時にはそれはそこにあった。
腹部から突き出た細長いそれ…
オセアニア支部長、アンドリュー・ナンセンの手から伸びた細長いそれは、突き抜いたオレの腹部からズルリと抜けていった。
嘘だろ…そんな…
「そうだね仕事だ」
「ぉ…おい!」
バク支部長の声が遠い…視界が歪み倒れる中、ニコリと笑ったナンセン支部長の顔が歪み、綺麗な女性の顔へと変わるのが見えた。
「ワタシも仕事だ」
部屋の入り口を覆った黒い壁から溢れ出る無数のアクマ…
ここは黒の教団本部なのに…
「私は変身能力をもつ“色”のノア、ルル=ベル」
何でこんな事に…
「お前達とはすぐ“さよなら”なんだけど、挨拶はちゃんとしなさいと主は言うから」
何で──…
=悪夢の中で=
「おまちど~ん!カレーにミートローフ、Aセット、ミートスパ、スープご飯にラザニア出来たわよ~」
朝の食堂にジュリーの元気な声が響き渡る。
厨房の団員の仕事ぶりときたら…流石のモノだった。
複数の注文を一気に上げ、ジュリーの完成の声に反応した面々は殆ど待つ事も無く、それぞれの朝食を持って席に移動する。
『やっぱり皆、手捌きが見事ね』
厨房の端を借りてせっせと料理をしていたアイリーンの言葉に、ジュリーはアハハと笑った。
「じゃなきゃやってらんないわよ、この職場~次、タコスとドリアとラーメンね!」
『人数多いものね…何でも作ってくれるし』
品書きが無く、何でも好きなモノを作ってくれるというのだから待ち時間が多少長くても納得出来る。
なのに、全然待たない挙げ句厨房はこのくらいの忙しさで済んでるのだから、皆の腕が良いのは明らかだ。
「栄養は勿論だけど…好きなもん食べないと力でないでしょ」
『あぁ、成る程ね』
「それに今日はアンタがアレン達の分を作ってくれてるから楽な方よ」
『アレン、凄く食べるものね』
「それに神田が蕎麦以外の物を食べるのも始めてみたわ」
ジュリーと楽しそうに笑いあったアイリーンは、何種類もの料理を何層にも積み上げたワゴンを、崩れない様にこっそり魔法で支えながら押して厨房を出た。
団子に結い上げていた髪を解くと、本日二回目の道をワゴンを押しながら歩く。
『御待たせ』
アイリーンが向かった先の席には、アレンとラビ、ブックマン、ハワードが座っていた。
アレン達の周りには空になった皿が積み上がり、その中でアレンが最後の三皿の料理を片付けにかかっていた。
良かった、食べきる前に次を持って来れた。
「待ってたさ、アイリーン!」
「あ、済みません、アイリーン」
「はぁ…君は食べ過ぎですよ、アレン・ウォーカー」
「若いの」
『……』
ハワードも良く食べてると思うのは気の所為かしら?
ラビは育ち盛りの男の子らしい量だし、アレンの尋常じゃない量は寄生型だから仕方無いけど…ハワードの量はラビを越えてるしそれに……みんなお菓子かケーキだ。
よく朝からあんなに沢山甘いモノを…
「アイリーン、俺のパフェは?」
ラビの言葉に、ワゴンから料理を降ろしていたアイリーンはピタリと動きを止めた。
『……ぁ』
「…アイリーン、もしかして忘れたんさ?」
溶けちゃうから最後に作ろうと思っててすっかり忘れていた。
『…忘れてないわよ!溶けちゃうからアレンのご飯を運んだ後に作ろうと思ってたのよ』
「“……ぁ”って言ったさ」
『ぅ…』
アイリーンは手早く空いた皿をワゴンに乗せ、運んできた料理をテーブルに並べると、ワゴンに手を掛けニッコリと笑った。
『直ぐに作ってくるわ』
そう言ってワゴンを押して駆け出したアイリーンは、厨房に戻ると直ぐに作業に取り掛かった。
髪を結い上げ、手を洗い、必要な物を冷蔵庫や食器棚から取り出すと、アイリーンは直ぐにパフェを作り上げた。
手早く後片づけを済ませたアイリーンは再びパフェを片手に本日三回目となる道を駆け抜けた。
『ラビ、御待たせ…って、あら?』
席には誰も居なかった。
しかしテーブルに残された食べかけの皿が、アレンがまだ食事中なのを物語っている。
どう言う事だ…?
『ねぇ、アレン達は?』
そう近くの席の探索部隊に聞くと、探索部隊は興味なさげに口を開いた。
「あぁ、さっき四人揃って飛び出して行きましたよ」
飛び出して行った?
髪を解きながら話を聞いていたアイリーンは、礼を言うと、パフェを探索部隊によこして走り出した。
嫌な予感がした。
だから迷わずに第五研究室に向かったが、そこにはもう入り口等存在していなかった。
『壁…これは…』
入り口があったそこに存在する真っ黒に塗り潰された壁の様なそれに手を触れてみる。
少し力を込めてみるが、反応は無かった。
『下手に力ずくで開けたり、術で侵入して影響が出ても困るしな…』
アイリーンは、壁に額を当てるとそっと目を閉じた。
遮られててはっきりとは分からないが…中にかなりの数“いる”
科学班の気も今朝よりも少ない…大分
ギリッと歯を噛みしめたアイリーンは、ふっと短く息を吐くと自分の影へと沈んでいった。
ジョニーを呼び続けてどれくらい経っただろう。
もしかしたら実際は何分も経っていないかもしれない。
でも俺には…俺達には、それが長く長く感じられた。
いきなり現れたアクマの大群。次々と襲われる部下達…
悪夢でしかなかった。
第五研究室の広い床に横たわり、何列にも並ばされた傷を負わされた科学班員の呻き声や啜り泣く声が直ぐ耳許で響いてる様だった。
ジョニーの付けているヘッドホンの無線機に呼び掛け続けていると、微かにジョニーの声が聞こえた。
よかった…最初に腹部に傷を受けていたが、どうやら無事の様だ。
ガサガサという物音が聞こえるという事は誰かと代わるんだろうか…
「……もしもし、聞こえますか…?」
《その声…リーバー班長か》
そっと声を掛けてみれば、そう聞き覚えのある声が耳に響いた。
「バク支部長スか、よかった…奴らの所為なのか電波が悪くて…この研究室の外に連絡が取れません」
《無事なのは君だけか?》
「いえ、自分以外に五人…今即席ですが結界装置を造ってます」
対アクマ武器を持たない俺達にはそれくらいしか出来無かった。
《こっちもだ部品が少なくて性能が悪いのが一台だけだがな》
「似たようなもんです」
瞬間、色んな声が響き渡った。
黒い壁から抜け出る様に出て来た数体の髑髏の顔をもつそれは、床に並べられた科学班の頭に触れると次々に顔に×を書いていった。
そして×を書かれた科学班員は次々と…
頭を潰されていった。
途中で途切れる断末魔の悲鳴、迫る恐怖に震える声、止めどなく溢れる涙を抑えられない泣き声…
全てがかんに障った。
「あいつら…っ」
《行くな、リーバー!》
「ッ…くそっ、くそ…ッ!!」
《我々が奴らに向かって行っても状況は何も変わらん!装置を造る手を止めるな!今は少しでも生き残る為の最善を尽くせ!!》
「………っ!」
《希望をもて!外に連絡が取れなくてもウォーカーの左目があるだろう。アイリーンだっている…耐えるのだ》
この状況下で目を持つアレンは兎も角、アイリーンをおす理由がよく分からなかったが、バク支部長はきっとアイリーンの何かを知っているんだと思った。
《タップ…!》
ふいにそう無線機越しにジョニーの声が聞こえた。
「班長、タップが!!」
慌てて物陰から研究室のホールを見ると、髑髏がタップの額に触れていた。
「タッ…」
そう声を上げた瞬間だった。
悲鳴を上げながら火を付けた様に燃え上がったタップは、一瞬で黒こげになった。
我慢なんか…もう出来無かった。
「班長…?」
リーバーは物陰から歩いて出て行くと、持っていた銃を取り出し、髑髏頭に向かって一発撃った。
やはり唯の銃じゃ効かないみたいだが、関係無い。
「科学班班長のリーバー・ウェンハムだ。デキのいい脳ミソが欲しいんなら俺をやれよ」
「班長…!」
「班長ぉ…」
涙でグチャグチャになった顔の部下達は、小さく震えていた。
コイツらが殺られるのを見ているだなんてやっぱり出来無かった。
「タップこんな姿に…」
上体を起こした黒こげのタップの顔は髑髏になっている。
殺されるか、こんな形で仲間にされるかだなんて…最悪だ。
「…俺の部下をテメェらにやるなんざ冗談じゃねぇ」
「“班長”大歓迎だねェ!じゃあお前、二体目だ」
一瞬で目の前まで来た髑髏の二本の指が額に触れる瞬間、俺はぐっと目を瞑った。
「…?」
しかし何の衝撃もこなかった。
そっと目を開くと、目の前では髑髏が真っ二つになっていた。
髑髏を引き裂く大剣、視線を上にずらせば…待ち望んでいた人物がそこにいた。
「ア…アレン…?」
『駄目よ、リーバー』
その言葉と共に後ろから腕が伸び、抱き付かれた。
首に回らせた少し冷たい細い腕、視界の端…肩口に映る銀色…凛と美しい声。
その声は…
『そんなの格好良過ぎるわ』
皆を助けるものだと信じたい──…