第4章 最後の元帥
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「こんな…ッ、こんな」
どんなに抑えようとしても、涙と嗚咽が止まる事は無かった。
濡らしてはいけないものだと分かっていても、私は涙を止める事が出来無かったし、抱き締めるその腕を離したく無かった。
床に座り込んだ私は小さな駄々っ子の様で、酷く惨めで…
皆に迷惑を掛けているのは明らかだったけど、私はどうしても。
どうしても…
この手を離したく無かった。
=託された力=
「おかえり!」
方舟の力で本部に帰った私達をそう皆さんが出迎えてくれて嬉しかった。
でも気持ちが晴れる事は無かった。
直ぐに駆けつけた医療班の看護士さん達の制止を振り切って室長室に収まった私達は、リナリーちゃんのお兄さんである室長さんと、数人の科学班、そしてアジア支部のバク支部長さん、そしてウォンさんに何があったのかを話した。
話したと言っても大半が方舟の中の事で、後はパールが行方不明だという話で…私は始終黙っていた。
聞いているしか無かった。
リナリーちゃん達が方舟に吸い込まれた時に消えたパールは、消える瞬間を誰も見ていなかったし、私は方舟に乗っていない。
私が話せる事なんかある一点を除いて何も無かったし、噛みしめた歯を…口を開けば涙が出てしまいそうだった。
だって…江戸で聞いたレイの話は、何度聞いても信じがたいし、そもそも聞くのが辛いものだった。
私は…私だけが逃げ出すわけにはいかないから聞いているだけだった。
本当なら耳を両手で塞いでしまいたかった。
血が足りてないんじゃないかと思えるくらいふらつく体を手に力を入れて正した。
「つまりレイは…もうエクソシストじゃないって事だね」
アレンくんの話を聞き終えた室長さんの一言に、頭を殴られた様な気分になった。
「あの…」
怖ず怖ずと手を挙げると、室長さんに“何だい?”と問われ、私は一歩一歩、室長さんの前へと歩み出た。
「早くしろよ」
「ご、ごめんなさい」
「神田くん!えっと…何かな、ミランダ」
私は思わず抱える様に両腕で抱いていた黒い布に包まれたそれに力を入れた。
「私、江戸が消える前にレイにこれを預かって…」
あの時、江戸での戦闘中に屋根の上でレイに渡されたものだった。
あの時からずっとずっと抱き締めているものだった。
「何だい、それは」
「勝手に開くのはあれだと思ってまだ中は見てないんです」
“開けてみて”と言われて布を解いてゆくと、そこには見覚えのあるものが包まれていた。
「これ…」
「音ノ鎖?」
アレンくんのその声が頭の中に何度も何度も響き渡った。
そうだ…この黒いヴァイオリンは、レイの対アクマ武器…
レイの…レイのパートナー…
「レイが所持したまま伯爵の元に戻れば、イノセンスは破壊されてしまう…だから音ノ鎖だけでもミランダに預けたんさ、きっと」
大事な武器を私に…?
「……ミランダに渡した時点で…いや、もしかしたらそれよりもずっと前に、レイは自分が囮になる事を決めてたんだね」
そう聞いた瞬間、我慢していた何かに抑えが効かなくなった。
床に座り込んで、音ノ鎖を抱き締めたまま嗚咽を漏らして泣きじゃくる私に、皆さん大層困った事だろう。
でも抑えられなかった。
泣きじゃくる私を泣きながら抱き締めてくれるリナリーちゃんは私よりも年下なのに…私は何をしてるんだろう。
そう思ったが、どうしても…
どうしても止まらなかった。
それからどうなったのかは覚えていない。
気が付いたら知らないベッドに寝ていた。
そっと辺りを見回すと同じ作りのベッドが綺麗に並んでいて、漸くここが医務室だと分かった。
泣きすぎて腫れた目が痛い…喉も酷く渇いていた。
「ミランダ、起きたのね」
そう左側から声を掛けられて振り向くと、左側隣のベッドにはリナリーちゃんが寝ていた。
「ご、ごめんなさい、私…ッ!」
「何が?」
「わ…私、あんなに泣いて…」
恥ずかしい…
あんな小さな子供みたいに泣き叫んで…
「しょうがないよ」
「ぇ…」
「私もいっぱい泣いちゃった」
困った様に笑うリナリーちゃんは、自分と同じなんだと思った。
ううん、皆が同じなんだと思った。
皆、皆…
レイがいなくなって悲しいんだ…
「リナリーちゃん、私…」
「リナリーぃぃぃぃ!!!」
「に、兄さん?!」
突然、そう叫びながら飛び込んできた室長さんにびっくりして思わず言おうとした事を忘れてしまった。
そして…リナリーちゃんの髪を嘆く室長さんと、困り果てるリナリーちゃんをみて、私は久々に笑った。
強くなろう…
もう…
泣きたくないから──…
「こんな…ッ、こんな」
どんなに抑えようとしても、涙と嗚咽が止まる事は無かった。
濡らしてはいけないものだと分かっていても、私は涙を止める事が出来無かったし、抱き締めるその腕を離したく無かった。
床に座り込んだ私は小さな駄々っ子の様で、酷く惨めで…
皆に迷惑を掛けているのは明らかだったけど、私はどうしても。
どうしても…
この手を離したく無かった。
=託された力=
「おかえり!」
方舟の力で本部に帰った私達をそう皆さんが出迎えてくれて嬉しかった。
でも気持ちが晴れる事は無かった。
直ぐに駆けつけた医療班の看護士さん達の制止を振り切って室長室に収まった私達は、リナリーちゃんのお兄さんである室長さんと、数人の科学班、そしてアジア支部のバク支部長さん、そしてウォンさんに何があったのかを話した。
話したと言っても大半が方舟の中の事で、後はパールが行方不明だという話で…私は始終黙っていた。
聞いているしか無かった。
リナリーちゃん達が方舟に吸い込まれた時に消えたパールは、消える瞬間を誰も見ていなかったし、私は方舟に乗っていない。
私が話せる事なんかある一点を除いて何も無かったし、噛みしめた歯を…口を開けば涙が出てしまいそうだった。
だって…江戸で聞いたレイの話は、何度聞いても信じがたいし、そもそも聞くのが辛いものだった。
私は…私だけが逃げ出すわけにはいかないから聞いているだけだった。
本当なら耳を両手で塞いでしまいたかった。
血が足りてないんじゃないかと思えるくらいふらつく体を手に力を入れて正した。
「つまりレイは…もうエクソシストじゃないって事だね」
アレンくんの話を聞き終えた室長さんの一言に、頭を殴られた様な気分になった。
「あの…」
怖ず怖ずと手を挙げると、室長さんに“何だい?”と問われ、私は一歩一歩、室長さんの前へと歩み出た。
「早くしろよ」
「ご、ごめんなさい」
「神田くん!えっと…何かな、ミランダ」
私は思わず抱える様に両腕で抱いていた黒い布に包まれたそれに力を入れた。
「私、江戸が消える前にレイにこれを預かって…」
あの時、江戸での戦闘中に屋根の上でレイに渡されたものだった。
あの時からずっとずっと抱き締めているものだった。
「何だい、それは」
「勝手に開くのはあれだと思ってまだ中は見てないんです」
“開けてみて”と言われて布を解いてゆくと、そこには見覚えのあるものが包まれていた。
「これ…」
「音ノ鎖?」
アレンくんのその声が頭の中に何度も何度も響き渡った。
そうだ…この黒いヴァイオリンは、レイの対アクマ武器…
レイの…レイのパートナー…
「レイが所持したまま伯爵の元に戻れば、イノセンスは破壊されてしまう…だから音ノ鎖だけでもミランダに預けたんさ、きっと」
大事な武器を私に…?
「……ミランダに渡した時点で…いや、もしかしたらそれよりもずっと前に、レイは自分が囮になる事を決めてたんだね」
そう聞いた瞬間、我慢していた何かに抑えが効かなくなった。
床に座り込んで、音ノ鎖を抱き締めたまま嗚咽を漏らして泣きじゃくる私に、皆さん大層困った事だろう。
でも抑えられなかった。
泣きじゃくる私を泣きながら抱き締めてくれるリナリーちゃんは私よりも年下なのに…私は何をしてるんだろう。
そう思ったが、どうしても…
どうしても止まらなかった。
それからどうなったのかは覚えていない。
気が付いたら知らないベッドに寝ていた。
そっと辺りを見回すと同じ作りのベッドが綺麗に並んでいて、漸くここが医務室だと分かった。
泣きすぎて腫れた目が痛い…喉も酷く渇いていた。
「ミランダ、起きたのね」
そう左側から声を掛けられて振り向くと、左側隣のベッドにはリナリーちゃんが寝ていた。
「ご、ごめんなさい、私…ッ!」
「何が?」
「わ…私、あんなに泣いて…」
恥ずかしい…
あんな小さな子供みたいに泣き叫んで…
「しょうがないよ」
「ぇ…」
「私もいっぱい泣いちゃった」
困った様に笑うリナリーちゃんは、自分と同じなんだと思った。
ううん、皆が同じなんだと思った。
皆、皆…
レイがいなくなって悲しいんだ…
「リナリーちゃん、私…」
「リナリーぃぃぃぃ!!!」
「に、兄さん?!」
突然、そう叫びながら飛び込んできた室長さんにびっくりして思わず言おうとした事を忘れてしまった。
そして…リナリーちゃんの髪を嘆く室長さんと、困り果てるリナリーちゃんをみて、私は久々に笑った。
強くなろう…
もう…
泣きたくないから──…