第3章 封印された箱
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「どうするんですか、師匠!」
伯爵が消えた…方舟から出たと考えて間違いないであろう今、崩壊が弱まる事など有り得ない。
何か手をうたないと…
「止めるしかねぇだろ」
止めるったって、どうやって?
こんな崩れるだけで何もない方舟で…
「要はアクマの魔導式ボディの“卵”であるこのでかい玉を奪えばいい。方舟を起動させてこの転送を止めれば“卵”は新しい方舟に届かない」
ダウンロードが終わらないうちは、方舟は消滅しない…そういう事だろうか?
「元帥…何か知っているんですか?方舟を動かせる方法を」
「俺じゃない」
そう言って師匠は何故か僕を見た。
「お前がやるんだ、アレン」
=願い=
「ここは…」
気が付いたら真っ白い部屋の白いソファーに寝かされていた。
体を起こして部屋の中を見回して見たが、誰もいなかった。
「師匠…リナリー?」
師匠に“お前がやるんだ”って言われて、ティムに押された所までは覚えてるんだけど…
あれ、その後どうなった?
「…方舟の中なのか?」
「ココハ千年公モ知ラナイ“14番目”ノ秘密部屋」
誰も居ない筈の室内に響いた知っている様で知らない声。
慌てて振り返ると、そこにはいつの日か見たリナリーが泣いていた夢に出て来た“それ”が居た。
「お前は…」
窓の様な壁に書かれた絵の様に立体的で無いそれは、同じく壁の中のピアノを指差した。
「オレノ“鍵”」
それが指差したピアノは、アレンの目の前にも同じ見た目のちゃんと立体的なモノがあり、アレンはそのピアノを見て目を見開いた。あれは…
「ティムキャンピ…?」
「オレノティムキャンピー」
目の前のピアノの譜面台では、ティムキャンピーがパタパタと羽を動かしていた。
「“アレン” “ティムキャンピー”」
「何を…」
「フタツガ“奏者ノ資格”」
「何の事だ。ティムキャンピーは師匠のものだ、お前のじゃない」
意味が分からない。
僕とティムキャンピーが奏者の資格を持ってる?
「何者だ…お前!」
そう叫んだ瞬間だった。
耳元で師匠の怒鳴り声が響き、僕は思わず耳を押さえて床にうずくまった。
「み、耳が…」
痛い。凄く痛いし頭がくわんくわんする。
《さっさと転送止めろ、オラァ!!》
貴方の所為でそれどころじゃないです。
「し…っしょ」
《“部屋”に行けたのか?》
《アレンくん大丈夫?聞こえる?》
「リナリー?あ、はい大丈夫です。…て何か二人の声近くないですか?」
二人の声が近い。
無線機は耳許…師匠の耳許にリナリー…
「はっ、師匠!!リナリーに触らないで下さい!!」
《あ~ん?お前、こっちが今どんだけの床面積で頑張ってると思ってんだオイ、抱っこくらいでピーピー》
《気にしなくていいから、アレンくん!!》
慌てたリナリーの声が余計怪しい。
でもまぁ、師匠の言い分も…
《そこにピアノはないか?》
「え…はい、ありますが」
《それが方舟を動かす“心臓”になる》
ピアノが方舟の心臓?
《弾け》
何言ってんのこの人。
「…………あの…僕、ピアノは生まれてこのかた一度も…」
ピエロ時代に笛吹いたくらいしか音楽の経験なんか無いのに!
《ティムが楽譜を持ってる》
「て、ちょっと!楽譜の読み方なんて知りませんッッ!!」
《借金増えんのとどっちがいい》
どんな二択ですか!
どっちも嫌だし…
「どっちも無理です!!」
瞬間、ノイズ音が入り、無線の声は殆ど聞こえなくなってしまった。
「師匠!?」
徐々に消えるノイズ音と師匠の声…最終的には、無線機からは何も聞こえなくなってしまった。
「“アレン”ガ弾ク」
何事も無かった様に話し出すそれは何なのだろうか。
人間でさえ…生きているかさえ分からないそれとの会話は酷く気持ちが悪かった。
「ッ…どうして僕なんだ」
「“アレン”ノ楽譜ダカラ」
僕の楽譜とか意味分かんないし…
立ち上がってそっとピアノに歩み寄ったアレンは、楽譜を見ると目を見開いた。
「これが…楽譜?」
そんな…
「この紋章」
ちがう…まさか…こんな…
「ちがう…っ、この文字がどうしてここに」
「ソレハ唄」
「うた…?」
「旋律ハ…」
元々ニヤリと口角の上がったそれの口角が更に上がった気がした。
「“アレン”ノ内」
どうしてかは分からない。
それがそう言った瞬間、僕はピアノを弾き始めた。
弾けない筈のピアノを…
「手が勝手に…」
──そして坊やは眠りについた
「ひ…弾ける…?」
──息衝く灰の中の炎ひとつふたつと
「どうして…っ」
──浮かぶふくらみ愛しい横顔
「この詩につく曲なのか!?」
──大地に垂るる幾千の夢
「読むと…メロディが勝手に頭の中に流れてくる」
──銀の瞳のゆらぐ夜に生まれおちた輝くおまえ
「メロディ…違う、メロディじゃない」
──幾億の年月がいくつ祈りを土へ還しても
「僕の頭の中で歌うのは誰だ!!?」
──ワタシは祈り続ける…
《方舟を操れ、アレン!!》
「!!」
師匠…?
《お前の望みを込めて弾け!》
「の、望み?」
《早くしろ…ッ!》
「望メ」
僕の望み…
「望みはっ、転…送を」
僕は…僕は…
「方舟を…っ」
──思いつかないかい?
そう、コムイさんの声が聞こえた気がした…
──まずは“おかえり”と言って肩を叩くんだ。
で、リナリーとレイを思いっきり抱き締める!
僕の望み…
──アレンくんにはご飯をたくさん食べさせてあげなきゃね。
卵を転送させてはいけない…
──ラビはレイを抱えてその辺で一緒に寝ちゃうだろうから毛布をかけてあげないと…
方舟の崩壊も止めないと師匠とリナリーが…
──大人組はワインで乾杯したいね。
ドンチャン騒いで…
眠ってしまえたら最高だね…
僕の願いは…
方舟の崩壊の阻止…?
──そして少し遅れて神田くんが仏頂面で入ってくるんだ。
仲間達を犠牲にして、手に入れたのがこんな卵?
「ッ……僕の…」
──やきもち妬きだからレイをラビから引き離してソファーに寝かせるだろうね。
こんな…こんな事…
「僕の…仲間を返せ…」
──それで…きっとレイの頭を一撫でして側に座るだろうね。
みんな、みんな…
「消えるな、方舟ぇぇぇ!!!」
僕に返してください──…
「どうするんですか、師匠!」
伯爵が消えた…方舟から出たと考えて間違いないであろう今、崩壊が弱まる事など有り得ない。
何か手をうたないと…
「止めるしかねぇだろ」
止めるったって、どうやって?
こんな崩れるだけで何もない方舟で…
「要はアクマの魔導式ボディの“卵”であるこのでかい玉を奪えばいい。方舟を起動させてこの転送を止めれば“卵”は新しい方舟に届かない」
ダウンロードが終わらないうちは、方舟は消滅しない…そういう事だろうか?
「元帥…何か知っているんですか?方舟を動かせる方法を」
「俺じゃない」
そう言って師匠は何故か僕を見た。
「お前がやるんだ、アレン」
=願い=
「ここは…」
気が付いたら真っ白い部屋の白いソファーに寝かされていた。
体を起こして部屋の中を見回して見たが、誰もいなかった。
「師匠…リナリー?」
師匠に“お前がやるんだ”って言われて、ティムに押された所までは覚えてるんだけど…
あれ、その後どうなった?
「…方舟の中なのか?」
「ココハ千年公モ知ラナイ“14番目”ノ秘密部屋」
誰も居ない筈の室内に響いた知っている様で知らない声。
慌てて振り返ると、そこにはいつの日か見たリナリーが泣いていた夢に出て来た“それ”が居た。
「お前は…」
窓の様な壁に書かれた絵の様に立体的で無いそれは、同じく壁の中のピアノを指差した。
「オレノ“鍵”」
それが指差したピアノは、アレンの目の前にも同じ見た目のちゃんと立体的なモノがあり、アレンはそのピアノを見て目を見開いた。あれは…
「ティムキャンピ…?」
「オレノティムキャンピー」
目の前のピアノの譜面台では、ティムキャンピーがパタパタと羽を動かしていた。
「“アレン” “ティムキャンピー”」
「何を…」
「フタツガ“奏者ノ資格”」
「何の事だ。ティムキャンピーは師匠のものだ、お前のじゃない」
意味が分からない。
僕とティムキャンピーが奏者の資格を持ってる?
「何者だ…お前!」
そう叫んだ瞬間だった。
耳元で師匠の怒鳴り声が響き、僕は思わず耳を押さえて床にうずくまった。
「み、耳が…」
痛い。凄く痛いし頭がくわんくわんする。
《さっさと転送止めろ、オラァ!!》
貴方の所為でそれどころじゃないです。
「し…っしょ」
《“部屋”に行けたのか?》
《アレンくん大丈夫?聞こえる?》
「リナリー?あ、はい大丈夫です。…て何か二人の声近くないですか?」
二人の声が近い。
無線機は耳許…師匠の耳許にリナリー…
「はっ、師匠!!リナリーに触らないで下さい!!」
《あ~ん?お前、こっちが今どんだけの床面積で頑張ってると思ってんだオイ、抱っこくらいでピーピー》
《気にしなくていいから、アレンくん!!》
慌てたリナリーの声が余計怪しい。
でもまぁ、師匠の言い分も…
《そこにピアノはないか?》
「え…はい、ありますが」
《それが方舟を動かす“心臓”になる》
ピアノが方舟の心臓?
《弾け》
何言ってんのこの人。
「…………あの…僕、ピアノは生まれてこのかた一度も…」
ピエロ時代に笛吹いたくらいしか音楽の経験なんか無いのに!
《ティムが楽譜を持ってる》
「て、ちょっと!楽譜の読み方なんて知りませんッッ!!」
《借金増えんのとどっちがいい》
どんな二択ですか!
どっちも嫌だし…
「どっちも無理です!!」
瞬間、ノイズ音が入り、無線の声は殆ど聞こえなくなってしまった。
「師匠!?」
徐々に消えるノイズ音と師匠の声…最終的には、無線機からは何も聞こえなくなってしまった。
「“アレン”ガ弾ク」
何事も無かった様に話し出すそれは何なのだろうか。
人間でさえ…生きているかさえ分からないそれとの会話は酷く気持ちが悪かった。
「ッ…どうして僕なんだ」
「“アレン”ノ楽譜ダカラ」
僕の楽譜とか意味分かんないし…
立ち上がってそっとピアノに歩み寄ったアレンは、楽譜を見ると目を見開いた。
「これが…楽譜?」
そんな…
「この紋章」
ちがう…まさか…こんな…
「ちがう…っ、この文字がどうしてここに」
「ソレハ唄」
「うた…?」
「旋律ハ…」
元々ニヤリと口角の上がったそれの口角が更に上がった気がした。
「“アレン”ノ内」
どうしてかは分からない。
それがそう言った瞬間、僕はピアノを弾き始めた。
弾けない筈のピアノを…
「手が勝手に…」
──そして坊やは眠りについた
「ひ…弾ける…?」
──息衝く灰の中の炎ひとつふたつと
「どうして…っ」
──浮かぶふくらみ愛しい横顔
「この詩につく曲なのか!?」
──大地に垂るる幾千の夢
「読むと…メロディが勝手に頭の中に流れてくる」
──銀の瞳のゆらぐ夜に生まれおちた輝くおまえ
「メロディ…違う、メロディじゃない」
──幾億の年月がいくつ祈りを土へ還しても
「僕の頭の中で歌うのは誰だ!!?」
──ワタシは祈り続ける…
《方舟を操れ、アレン!!》
「!!」
師匠…?
《お前の望みを込めて弾け!》
「の、望み?」
《早くしろ…ッ!》
「望メ」
僕の望み…
「望みはっ、転…送を」
僕は…僕は…
「方舟を…っ」
──思いつかないかい?
そう、コムイさんの声が聞こえた気がした…
──まずは“おかえり”と言って肩を叩くんだ。
で、リナリーとレイを思いっきり抱き締める!
僕の望み…
──アレンくんにはご飯をたくさん食べさせてあげなきゃね。
卵を転送させてはいけない…
──ラビはレイを抱えてその辺で一緒に寝ちゃうだろうから毛布をかけてあげないと…
方舟の崩壊も止めないと師匠とリナリーが…
──大人組はワインで乾杯したいね。
ドンチャン騒いで…
眠ってしまえたら最高だね…
僕の願いは…
方舟の崩壊の阻止…?
──そして少し遅れて神田くんが仏頂面で入ってくるんだ。
仲間達を犠牲にして、手に入れたのがこんな卵?
「ッ……僕の…」
──やきもち妬きだからレイをラビから引き離してソファーに寝かせるだろうね。
こんな…こんな事…
「僕の…仲間を返せ…」
──それで…きっとレイの頭を一撫でして側に座るだろうね。
みんな、みんな…
「消えるな、方舟ぇぇぇ!!!」
僕に返してください──…