第3章 封印された箱
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67
「生ぎでら…」
燃え盛る火判の中に突っ込んできたアレンと共に火判から抜け出した俺は、そのまま床に倒れ込んだ。
そして痛みで散々噎せ込んだ後に思わずそう呟いたら、アレンに思いっ切り睨まれた。
「なんが文句あ゙るんでずかッ!!」
潰れた声でそう怒るアレンがなんだか面白くて、思わず笑いがこみ上げた。
「ムチャずんなぁ、アレンは」
普通突っ込むか?
火の中…特に火判の中に。
「そのセリフのし付げて返じでやる、バカラビ!」
「バカラ…」
“バカラビ”そう言われて夢のレイを思い出した。
「…ラビ?」
“ゲホッ”と咳込んだラビは小さく笑うと、そう不思議そうに眉を寄せたアレンから目を離し、寝転んだまま高い天井を見上げた。
「よぐわかんねーよ゙…気づいたら火ぃつけてた…」
死にたくはなかった。でも俺は火をつけた。
ケジメをつけるには、そうするしかない…そう咄嗟に思ったのかもしれないけど覚えていない。
「じじーにゃおこられるだろうけど、今はすこし…」
ジジィどころかレイにも怒られると思うけど…だけど…
「すこし…気分がいい…」
=黒き者=
「とく‥べ、つサービス…扉の先…で…レイに、あわせであル」
丸焦げとなった姿…一際甲高く大きな声で暫く“きゃはははは”と笑い続けたロードは、そう口にすると、ゆっくりとこちらに顔を向けた。
「 アァ…レ゛…ン 」
最早“ロードには見えなくなった”その丸焦げな物体は、次の瞬間、一瞬にして灰となって消え去った。
「扉が…レイの所に…繋がってる?」
繋げないと言っていたのに何故…
どんな風の吹き回しだ?
……もしかしたら罠の可能性も…いやでも相手はロードだしな…
「ていうか……今、ロードのやつ小さい声で“アレン”って言わなかった?どんだけ好きなんさ」
絶対に聞き間違いじゃ無いと思う。
確かに“アレン”って言ったさ。
「アレン、お前マジあんな小さな子に何したんさ」
「何もしてません。変なコト言わないでください」
いやいやいや、何も無いわけ無いっしょ?
だって消し炭にされそうになって言うセリフが“アレン”って…そうとう気に入られてるっしょ?
「ねぇ、アレンくん…」
「はい」
「ロード消えたけど…この塔の上にある出口の扉はロードの能力なのよね?」
暫し沈黙が流れた後、アレンとラビは声を揃えて“あ゙ぁー!!!”と叫んだ。
声を発した瞬間から止めるまでが奇跡的にピタリと揃ったが、揃ったからといって何が起きるわけでも無い。
「“レイの所に”何て言うからにはロードが消えても扉は残ると思うけど…」
「この有り様で、扉無事なんスか?」
辺りを見回し、最後に天井を見上げたチャオジーはそう言い辛そうに問い掛けた。
「そこなのよね…ラビのイノセンスってホント危険だわ」
アレンとティキの戦闘によりボロボロだった室内は、ラビの火判により半壊し、天井も抉られ、随分と見晴らしが良い感じになっている。
まさかダウンロードによる崩壊を自ら手伝ってしまうとは…ユウに知れたら殺されるさ。
「俺が先上行って無事か見てくる、イケたらすぐ引き上げっから!」
槌を床に挿す様にして立てたラビは、そう残すと伸を使って直ぐに上の階へと向かった。
勢い良く伸びる槌をタイミング良く止めると、ヒビの入った頼り無い見た目の床に着地する。
アレン達のいる下の階からの光をぶち抜かれた床の穴から取り入れただけの部屋は薄暗いが、そこにはちゃんと目的の物があった。
「助かった…っ」
良かった…これで脱出出来る。
これで…これでレイに会える。
「まだあったぞー!引き上げっから三人共柄に掴ま…」
ぁ…そうじゃねーや、リナリーとチャオジーはケガしてっから…
「アレン、二人担いで上がれるか?!」
リナリーとチャオジーを抱えて槌に掴まったアレンを確認すると、直ぐに槌を縮めて三人を引き上げる。
「急ぐさ!この扉もいつ消えるかわかんねぇ」
ラビが足す中、アレンは二・三歩後退った。
「アレン?」
「ティキ・ミックとレロを連れてきます」
「はぁ?!マジで言ってんのか?」
「ティキ・ミックはもうノアを失ったただの人間です。それにラビだってみてるでしょう?汽車で初めて会ったとき彼には人間の友達がいた!あの人達は何も知らずティキ・ミックの帰りを待っているかもしれない」
確かにあの時、アイツにはつれがいた。
アレンの目が反応しなかったのだからアイツ等は人間の可能性が高い。
ティキ自身も人間の友達がいると言っていた。
「俺は別に構わない…っ、でも…ノアを助けた事が教団にバレたらお前は」
「助ける?」
ラビの言葉を遮ってそう口を開いたのはチャオジーだった。
「あの男を殺したんじゃなかったんスか…?」
「……まだ生きてます」
「どうして…?あいつらはアクマとグルになってアニタ様やマホジャ様…オレの仲間をいっぱい殺したんスけど?」
拙い…チャオジーのこの目つきはヤバイ。
「なのにどうして」
ここで頭に血が昇っちまったらコイツは扉の先で…
「おい、チャオジー」
「オレらの想いを裏切るんスか?」
アレンが想いを裏切ってる?
そんな事言ったら俺は…
「助けるならアンタは敵だ」
「チャオジ…ッ」
「敵ッス!!」
何かに気付いたアレンが駆け出し、ラビはアレンが向かう先…チャオジーの足許を見て目を見開いた。
「奴らと同じ悪魔だ!!」
そう叫んだチャオジーがアレンに突き飛ばされた瞬間、床を突き破って下の階から伸びてきた“何か”に、アレンは引き摺り落とされた。
「アレン!!」
「アレンくん?!」
バキバキと骨が砕ける様な音と悲鳴を上げながら引き摺り降ろされたアレンを追う様に床の割れ目から下の階を覗くと、そこは闇に呑まれていた。
「アレンッッ」
「ティキ・ミックなの?!どうして…どうして?」
ティキ・ミックのノアの力はアレンが破壊したんじゃなかったんか?
「だから…奴らなんて助けなければいいんス…」
「チャオジー…」
「どんな理由があったって…奴らは人間を殺す…悪魔だ…」
確かにノアは人間を殺す。
でも…
「その“奴ら”にレイは入ってるんか?」
「あの人は奴らの仲間なんだから当たり前ッス」
「あいつは違う」
「何が違うって言うんスか…あの人はノアだ!奴らと同じ悪魔なんスよ」
「あいつは人間が好きなんだ。ノアを大事には想っているが、それと同じくらい俺達を大事に想ってくれてる」
だから苦しんでる。
どちらの味方も出来なくて…
「船上でも江戸でもあいつは必死に戦ってただろ?」
板挟みになって両方を救おうとして…
結局何も出来ないでいる。
「俺は何をしてでもここから出てレイを助けるさ」
ラビはリナリーとチャオジーを置いて、一人下の階に向かって飛び降りた。
蠢く闇は膨張したと思ったら一瞬で消え去った。
瞬間、吹き飛んできたアレンの体を受け止めたラビは、槌を前に突き出す様にしてガードしながら床を滑る体を止めた。
「ッ…」
受け止めただけでこんなに重いのだ、直接喰らったアレンは相当ダメージを受けただろう。
アレンを抱える腕に力を入れたラビは、顔を上げると目を見開いて硬直した。
「ティキ・ミック…さ?」
全身を黒で覆われた“それ”は、物語の中の住人の様な格好で、額に一本の角を携えていた。
「そのカッコは何の冗談だ?」
まさに人外と呼べるテティキ・ミックの姿に、ラビはどうしたらいいか分からなかった。
こんなの記録に無いさ…
ノアが形態を変えるだなんてそんな…
「ラビ…」
「しっかりしろ、アレン」
「扉…が…」
アレンが腕を伸ばす先では、ロードの扉がボロボロに粉砕していた。
これでもう、方舟の外には…
レイの所には…
「ッ…いや、絶対に迎えに行くさ」
狂った様に高々と笑い声を上げながら突っ込んでくるティキをかわす様に、アレンを抱えたラビは槌を伸ばして上の階へと逃れた。
もうどこにも逃げる場所はない…上へ上へと上るしかないのだ。
しかし、二人を拾って更に上へと逃れ様としたが、間に合わ無かった。
ニヤリと口角を上げて笑うティキはどこまでも追い掛けて来て、楽しそうに攻撃を繰り返してくる。
ヘロヘロの俺達では…例え全快であっても、とてもじゃないが俺達では太刀打ち出来るものでは無かった。
攻撃のスピード、重さ…全てがさっきまでのティキ・ミックとは格段に違っている。
何のダメージも与えられず、気付けば床の上に転がっていた。
あっちこっち痛いさ…
人間ここまでボロボロになれるんか。
だから言ったじゃない──…
そう、夢の中のレイの呆れた様な声が聞こえた気がした。
「まだまださね」
まだ俺は生きてる。
ならまだ戦える…俺はレイの所に行くんだ。
「絶対に…」
取り敢えず、壊れた扉をパズルの様に組み立てようか?
槌で昇れる所まで昇ってみようか?
やれる事はまだある。
ふらりと立ち上がったラビは、槌を構えると走り出した。
瞬間、ティキと対峙するアレンの足許が光り、瓦礫と共にティキが吹き飛んだ。
「な…ッ!!?」
風圧で舞い上がったアレンは、いつの間に現れたのか…鎖で封じられた黒い柩の上に立った髑髏の顔の何かに足を掴んで宙吊りにされていた。
敵…味方か?
「なんだこの汚ねぇガキは」
髑髏の声はどこか聞き覚えがあった。
「少しは見れるようになったかと思ったが…いや、汚ねぇ。拾った時と全然変わらんな馬鹿弟子」
拾った?
アレンを拾ったっつう事はまさか…
「これは対アクマ武器“聖母ノ柩 ”」
顔色を真っ青に染めたアレンを見る限り間違いは無いだろう。
「お…おひさし…ぶり…です」
「なんだその嬉しそうな顔は」
髑髏頭がボロボロと剥がれて現れた顔は、やはり随分と長い間見ていなかった、探し人だった。
「おとそうか?」
長い緋色の髪にふてぶてしい笑い顔と傍らのティムキャンピー…
間違え様が無い。
「クロス元帥」
これからが本番さ──…
「生ぎでら…」
燃え盛る火判の中に突っ込んできたアレンと共に火判から抜け出した俺は、そのまま床に倒れ込んだ。
そして痛みで散々噎せ込んだ後に思わずそう呟いたら、アレンに思いっ切り睨まれた。
「なんが文句あ゙るんでずかッ!!」
潰れた声でそう怒るアレンがなんだか面白くて、思わず笑いがこみ上げた。
「ムチャずんなぁ、アレンは」
普通突っ込むか?
火の中…特に火判の中に。
「そのセリフのし付げて返じでやる、バカラビ!」
「バカラ…」
“バカラビ”そう言われて夢のレイを思い出した。
「…ラビ?」
“ゲホッ”と咳込んだラビは小さく笑うと、そう不思議そうに眉を寄せたアレンから目を離し、寝転んだまま高い天井を見上げた。
「よぐわかんねーよ゙…気づいたら火ぃつけてた…」
死にたくはなかった。でも俺は火をつけた。
ケジメをつけるには、そうするしかない…そう咄嗟に思ったのかもしれないけど覚えていない。
「じじーにゃおこられるだろうけど、今はすこし…」
ジジィどころかレイにも怒られると思うけど…だけど…
「すこし…気分がいい…」
=黒き者=
「とく‥べ、つサービス…扉の先…で…レイに、あわせであル」
丸焦げとなった姿…一際甲高く大きな声で暫く“きゃはははは”と笑い続けたロードは、そう口にすると、ゆっくりとこちらに顔を向けた。
「 アァ…レ゛…ン 」
最早“ロードには見えなくなった”その丸焦げな物体は、次の瞬間、一瞬にして灰となって消え去った。
「扉が…レイの所に…繋がってる?」
繋げないと言っていたのに何故…
どんな風の吹き回しだ?
……もしかしたら罠の可能性も…いやでも相手はロードだしな…
「ていうか……今、ロードのやつ小さい声で“アレン”って言わなかった?どんだけ好きなんさ」
絶対に聞き間違いじゃ無いと思う。
確かに“アレン”って言ったさ。
「アレン、お前マジあんな小さな子に何したんさ」
「何もしてません。変なコト言わないでください」
いやいやいや、何も無いわけ無いっしょ?
だって消し炭にされそうになって言うセリフが“アレン”って…そうとう気に入られてるっしょ?
「ねぇ、アレンくん…」
「はい」
「ロード消えたけど…この塔の上にある出口の扉はロードの能力なのよね?」
暫し沈黙が流れた後、アレンとラビは声を揃えて“あ゙ぁー!!!”と叫んだ。
声を発した瞬間から止めるまでが奇跡的にピタリと揃ったが、揃ったからといって何が起きるわけでも無い。
「“レイの所に”何て言うからにはロードが消えても扉は残ると思うけど…」
「この有り様で、扉無事なんスか?」
辺りを見回し、最後に天井を見上げたチャオジーはそう言い辛そうに問い掛けた。
「そこなのよね…ラビのイノセンスってホント危険だわ」
アレンとティキの戦闘によりボロボロだった室内は、ラビの火判により半壊し、天井も抉られ、随分と見晴らしが良い感じになっている。
まさかダウンロードによる崩壊を自ら手伝ってしまうとは…ユウに知れたら殺されるさ。
「俺が先上行って無事か見てくる、イケたらすぐ引き上げっから!」
槌を床に挿す様にして立てたラビは、そう残すと伸を使って直ぐに上の階へと向かった。
勢い良く伸びる槌をタイミング良く止めると、ヒビの入った頼り無い見た目の床に着地する。
アレン達のいる下の階からの光をぶち抜かれた床の穴から取り入れただけの部屋は薄暗いが、そこにはちゃんと目的の物があった。
「助かった…っ」
良かった…これで脱出出来る。
これで…これでレイに会える。
「まだあったぞー!引き上げっから三人共柄に掴ま…」
ぁ…そうじゃねーや、リナリーとチャオジーはケガしてっから…
「アレン、二人担いで上がれるか?!」
リナリーとチャオジーを抱えて槌に掴まったアレンを確認すると、直ぐに槌を縮めて三人を引き上げる。
「急ぐさ!この扉もいつ消えるかわかんねぇ」
ラビが足す中、アレンは二・三歩後退った。
「アレン?」
「ティキ・ミックとレロを連れてきます」
「はぁ?!マジで言ってんのか?」
「ティキ・ミックはもうノアを失ったただの人間です。それにラビだってみてるでしょう?汽車で初めて会ったとき彼には人間の友達がいた!あの人達は何も知らずティキ・ミックの帰りを待っているかもしれない」
確かにあの時、アイツにはつれがいた。
アレンの目が反応しなかったのだからアイツ等は人間の可能性が高い。
ティキ自身も人間の友達がいると言っていた。
「俺は別に構わない…っ、でも…ノアを助けた事が教団にバレたらお前は」
「助ける?」
ラビの言葉を遮ってそう口を開いたのはチャオジーだった。
「あの男を殺したんじゃなかったんスか…?」
「……まだ生きてます」
「どうして…?あいつらはアクマとグルになってアニタ様やマホジャ様…オレの仲間をいっぱい殺したんスけど?」
拙い…チャオジーのこの目つきはヤバイ。
「なのにどうして」
ここで頭に血が昇っちまったらコイツは扉の先で…
「おい、チャオジー」
「オレらの想いを裏切るんスか?」
アレンが想いを裏切ってる?
そんな事言ったら俺は…
「助けるならアンタは敵だ」
「チャオジ…ッ」
「敵ッス!!」
何かに気付いたアレンが駆け出し、ラビはアレンが向かう先…チャオジーの足許を見て目を見開いた。
「奴らと同じ悪魔だ!!」
そう叫んだチャオジーがアレンに突き飛ばされた瞬間、床を突き破って下の階から伸びてきた“何か”に、アレンは引き摺り落とされた。
「アレン!!」
「アレンくん?!」
バキバキと骨が砕ける様な音と悲鳴を上げながら引き摺り降ろされたアレンを追う様に床の割れ目から下の階を覗くと、そこは闇に呑まれていた。
「アレンッッ」
「ティキ・ミックなの?!どうして…どうして?」
ティキ・ミックのノアの力はアレンが破壊したんじゃなかったんか?
「だから…奴らなんて助けなければいいんス…」
「チャオジー…」
「どんな理由があったって…奴らは人間を殺す…悪魔だ…」
確かにノアは人間を殺す。
でも…
「その“奴ら”にレイは入ってるんか?」
「あの人は奴らの仲間なんだから当たり前ッス」
「あいつは違う」
「何が違うって言うんスか…あの人はノアだ!奴らと同じ悪魔なんスよ」
「あいつは人間が好きなんだ。ノアを大事には想っているが、それと同じくらい俺達を大事に想ってくれてる」
だから苦しんでる。
どちらの味方も出来なくて…
「船上でも江戸でもあいつは必死に戦ってただろ?」
板挟みになって両方を救おうとして…
結局何も出来ないでいる。
「俺は何をしてでもここから出てレイを助けるさ」
ラビはリナリーとチャオジーを置いて、一人下の階に向かって飛び降りた。
蠢く闇は膨張したと思ったら一瞬で消え去った。
瞬間、吹き飛んできたアレンの体を受け止めたラビは、槌を前に突き出す様にしてガードしながら床を滑る体を止めた。
「ッ…」
受け止めただけでこんなに重いのだ、直接喰らったアレンは相当ダメージを受けただろう。
アレンを抱える腕に力を入れたラビは、顔を上げると目を見開いて硬直した。
「ティキ・ミック…さ?」
全身を黒で覆われた“それ”は、物語の中の住人の様な格好で、額に一本の角を携えていた。
「そのカッコは何の冗談だ?」
まさに人外と呼べるテティキ・ミックの姿に、ラビはどうしたらいいか分からなかった。
こんなの記録に無いさ…
ノアが形態を変えるだなんてそんな…
「ラビ…」
「しっかりしろ、アレン」
「扉…が…」
アレンが腕を伸ばす先では、ロードの扉がボロボロに粉砕していた。
これでもう、方舟の外には…
レイの所には…
「ッ…いや、絶対に迎えに行くさ」
狂った様に高々と笑い声を上げながら突っ込んでくるティキをかわす様に、アレンを抱えたラビは槌を伸ばして上の階へと逃れた。
もうどこにも逃げる場所はない…上へ上へと上るしかないのだ。
しかし、二人を拾って更に上へと逃れ様としたが、間に合わ無かった。
ニヤリと口角を上げて笑うティキはどこまでも追い掛けて来て、楽しそうに攻撃を繰り返してくる。
ヘロヘロの俺達では…例え全快であっても、とてもじゃないが俺達では太刀打ち出来るものでは無かった。
攻撃のスピード、重さ…全てがさっきまでのティキ・ミックとは格段に違っている。
何のダメージも与えられず、気付けば床の上に転がっていた。
あっちこっち痛いさ…
人間ここまでボロボロになれるんか。
だから言ったじゃない──…
そう、夢の中のレイの呆れた様な声が聞こえた気がした。
「まだまださね」
まだ俺は生きてる。
ならまだ戦える…俺はレイの所に行くんだ。
「絶対に…」
取り敢えず、壊れた扉をパズルの様に組み立てようか?
槌で昇れる所まで昇ってみようか?
やれる事はまだある。
ふらりと立ち上がったラビは、槌を構えると走り出した。
瞬間、ティキと対峙するアレンの足許が光り、瓦礫と共にティキが吹き飛んだ。
「な…ッ!!?」
風圧で舞い上がったアレンは、いつの間に現れたのか…鎖で封じられた黒い柩の上に立った髑髏の顔の何かに足を掴んで宙吊りにされていた。
敵…味方か?
「なんだこの汚ねぇガキは」
髑髏の声はどこか聞き覚えがあった。
「少しは見れるようになったかと思ったが…いや、汚ねぇ。拾った時と全然変わらんな馬鹿弟子」
拾った?
アレンを拾ったっつう事はまさか…
「これは対アクマ武器“
顔色を真っ青に染めたアレンを見る限り間違いは無いだろう。
「お…おひさし…ぶり…です」
「なんだその嬉しそうな顔は」
髑髏頭がボロボロと剥がれて現れた顔は、やはり随分と長い間見ていなかった、探し人だった。
「おとそうか?」
長い緋色の髪にふてぶてしい笑い顔と傍らのティムキャンピー…
間違え様が無い。
「クロス元帥」
これからが本番さ──…