第3章 封印された箱
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
66
「ラビ!!」
──あの声が聞こえる、ラビ…?
………あぁ、聞こえる…
俺を呼んでるさ…
「ラビ、どうしたんですか?!」
この声はアレンさ…
“お前”の知らないアレンさ、レイ…
「ラビ!」
──ラビ…いってらっしゃい…
「やめてください、ラビ!!」
──壊れたらまた拾ってあげるから…
「ラ…ビ…」
──真っ直ぐ進むの…
「僕の…こえ……聞こえ…ません…か……?」
──さぁ、目を開けて……
レイの声と共に目を開くと、状況は最悪だった。
火判に包まれたアレンと、悲鳴を上げながら俺を呼ぶリナリー…
最悪以外のなにものでもない。
ラビは再び目を閉じると“動かす事に”集中した。
「ナン…ダ…?体ガ…ッ体ガカッテニ動…ク」
俺の体を使ってアレン達を攻撃していた“俺”の驚いた声には正直少し笑えた。
本気で俺が消えたと思っていた様だ。
「コレ…ハ、“ラビ”マサカ…ッ」
そのまさかだコンニャロ、暴走しやがってこのタコ…あ~…最悪。
「ク…ソ……ッ」
さて…状況は思ったよりも最悪だったさ、レイ…
やっちまった事の代償を払わねぇとな。
「俺の未熟さの所為さ…この落とし前はキッチリつけさせてもらう」
ラビは槌の柄をギュッと握り締めると、自分の足下に槌を突き立てた。
「火加減無しだ」
ごめんさ…レイ…
「火判!!」
=夢の崩壊=
自分に向けて放った火判に包まれながら、俺は自分と一緒にロードを火判で呑み込んだ。
火判に包まれたボロボロのアレンと、無数の先の尖った蝋燭を向けられたリナリーとチャオジー…そんな最悪の状態をひっくり返すにはそれしかなかった。
ぎゅっと目を瞑って夢の中へと戻ったラビはうずくまっていた体を起こすと、浸水した地に転がる…頭部を吹き飛ばされたアレンとレイの屍を見比べ、アレンの屍の胸にナイフを突き立てた。
「お前に…攻撃する為に…一緒に呑み込んだんじゃ無いさ」
ロードには攻撃が効かない…
その理由がやっと分かった。
ロードは不死身なんかじゃない、攻撃が効かないんでもない。
攻撃する対象物が違ったんだ。
「お前の…世界…夢の中からの攻撃ならどうさ…?」
ここに連れてこられた時、ロードはこの世界の事を“自分の住む世界”と言った。
だったらこっちに本体がある筈だ。
「………よく…」
そう小さく声が聞こえた瞬間、アレンの体がピクリと動いた。
「よく僕がこれに化けてるってわかったね…」
「お前は…アレンが好きみたいだからな…」
「レイの事も好きだよぉ?」
「レイは家族だからだろ…アレンのは違う“好き”だ」
顔も無いのに“ふふ…”と笑ったアレン…ロードは、何だか少し気味が悪かった。
「死ぬ気なの?ブックマン継げないよ」
「ここまで追い込んだのは誰さ…ッこれが…“俺”…の今出来るベストの選択だったんよ」
瞬間、ガクンと膝から力が抜け、俺は地に倒れた。
地と水の冷たさが身にしみるのか、体が死に近付いているのか…よく分からなかった。
「なんでさ“ラビ”…49番目の“俺”」
静けさの中、そう声が響いて閉じていた目を開くと、そこには“俺”が立っていた。
「お前は“俺”の筈なのに…“ラビ”になる前の…48番目までの“俺”とどうして同じじゃないんだ」
48番目までの俺と49番目 …
そこに変化を持たせたのは…
「どうして48番目までの“俺”と違っていく…」
一瞬にして子供の頃の姿になった“俺”は何だか駄々っ子の様で…
自分も体がデカイだけでまだ子供なんだなと思った。
「どうして49番目の“俺”は苦しいんだ」
“どうして”そう繰り返す“俺”の言葉に俺は上手く返せない。
「ブックマンになるのが嫌になったか“ラビ”!?」
そんな事無い…だけど…
「仮初めの仲間の為に戦う事を選ぶの?」
あいつ等を見捨てる事が出来無い。
「人間なんか戦ばかり起こす愚かな種族だ」
戦が無い世界なんてきっと有り得ない。
神までもがこの聖戦という名の戦を求めているのに…
「そうでしょ…そう割りきってないとしんどいじゃないか!“俺”にはブックマン一族としての責任があるんだ!」
戦は仕方無い事…愚かな人間は争いを止めない。
だから俺は上手く立ち回って世界にあった全てを記録するんだ。
そう割りきらなくてはいけない筈だった…でも…
「割りきってなんか…」
割りきれなかった。
「“俺”は人間に失望してた…いつまでも争い続ける人の世界…自分は違うと思っていたかった」
思っていたくて…そう思い続けていたのに、割りきる事など出来無かった。
「なぁ…お前には分かるか?」
考えてみろ…
「ブックマンは何の為に在るんだろう…」
記録してどうするんだ?
「どうして人の世界から戦争は消えないんだろう…」
どうして同じ事を繰り返す?
「…なんで“俺”に聞くんさ…そんなのわかんねぇよ」
俺は投げ出した。
「“俺”はお前なんだろ。48番目までのお前も49番目の“ラビ”も一人の“俺”だ」
信じる事も…止める事も…
「問うてるのはお前だよ」
全て投げ出して傍観者になろうとした。
「変わりはじめてるのはお前だったんだ。ここから……出る…べきは……」
だけど…
──…ラビ!!
「!」
“ラビ”が気を失った中佇んでいた小さなラビは、その声に反応して天を仰いだ。
──ラビ…!
俺が投げ出したものをあいつは叶えようとしている。
「アレン…リナリー……」
自分の身を危険に曝して必死に…
──ラビ!!
あいつなら…
信じてもいいんじゃないか…?
「“お前”も“俺”だったんだな」
一筋の涙を流した小さなラビは溶ける様に地に沈んで消えた。
「………出られちゃったかぁ…」
信じてもいいんじゃないか…
「約束だからね」
俺が投げ出したものを追うあいつを…
「この勝負キミの勝ちだよぉ」
無邪気なあの笑顔を…
「…ブックマンJr.」
レイを……
信じても…
いいんじゃないか──…?
「ラビ!!」
──あの声が聞こえる、ラビ…?
………あぁ、聞こえる…
俺を呼んでるさ…
「ラビ、どうしたんですか?!」
この声はアレンさ…
“お前”の知らないアレンさ、レイ…
「ラビ!」
──ラビ…いってらっしゃい…
「やめてください、ラビ!!」
──壊れたらまた拾ってあげるから…
「ラ…ビ…」
──真っ直ぐ進むの…
「僕の…こえ……聞こえ…ません…か……?」
──さぁ、目を開けて……
レイの声と共に目を開くと、状況は最悪だった。
火判に包まれたアレンと、悲鳴を上げながら俺を呼ぶリナリー…
最悪以外のなにものでもない。
ラビは再び目を閉じると“動かす事に”集中した。
「ナン…ダ…?体ガ…ッ体ガカッテニ動…ク」
俺の体を使ってアレン達を攻撃していた“俺”の驚いた声には正直少し笑えた。
本気で俺が消えたと思っていた様だ。
「コレ…ハ、“ラビ”マサカ…ッ」
そのまさかだコンニャロ、暴走しやがってこのタコ…あ~…最悪。
「ク…ソ……ッ」
さて…状況は思ったよりも最悪だったさ、レイ…
やっちまった事の代償を払わねぇとな。
「俺の未熟さの所為さ…この落とし前はキッチリつけさせてもらう」
ラビは槌の柄をギュッと握り締めると、自分の足下に槌を突き立てた。
「火加減無しだ」
ごめんさ…レイ…
「火判!!」
=夢の崩壊=
自分に向けて放った火判に包まれながら、俺は自分と一緒にロードを火判で呑み込んだ。
火判に包まれたボロボロのアレンと、無数の先の尖った蝋燭を向けられたリナリーとチャオジー…そんな最悪の状態をひっくり返すにはそれしかなかった。
ぎゅっと目を瞑って夢の中へと戻ったラビはうずくまっていた体を起こすと、浸水した地に転がる…頭部を吹き飛ばされたアレンとレイの屍を見比べ、アレンの屍の胸にナイフを突き立てた。
「お前に…攻撃する為に…一緒に呑み込んだんじゃ無いさ」
ロードには攻撃が効かない…
その理由がやっと分かった。
ロードは不死身なんかじゃない、攻撃が効かないんでもない。
攻撃する対象物が違ったんだ。
「お前の…世界…夢の中からの攻撃ならどうさ…?」
ここに連れてこられた時、ロードはこの世界の事を“自分の住む世界”と言った。
だったらこっちに本体がある筈だ。
「………よく…」
そう小さく声が聞こえた瞬間、アレンの体がピクリと動いた。
「よく僕がこれに化けてるってわかったね…」
「お前は…アレンが好きみたいだからな…」
「レイの事も好きだよぉ?」
「レイは家族だからだろ…アレンのは違う“好き”だ」
顔も無いのに“ふふ…”と笑ったアレン…ロードは、何だか少し気味が悪かった。
「死ぬ気なの?ブックマン継げないよ」
「ここまで追い込んだのは誰さ…ッこれが…“俺”…の今出来るベストの選択だったんよ」
瞬間、ガクンと膝から力が抜け、俺は地に倒れた。
地と水の冷たさが身にしみるのか、体が死に近付いているのか…よく分からなかった。
「なんでさ“ラビ”…49番目の“俺”」
静けさの中、そう声が響いて閉じていた目を開くと、そこには“俺”が立っていた。
「お前は“俺”の筈なのに…“ラビ”になる前の…48番目までの“俺”とどうして同じじゃないんだ」
48番目までの俺と
そこに変化を持たせたのは…
「どうして48番目までの“俺”と違っていく…」
一瞬にして子供の頃の姿になった“俺”は何だか駄々っ子の様で…
自分も体がデカイだけでまだ子供なんだなと思った。
「どうして49番目の“俺”は苦しいんだ」
“どうして”そう繰り返す“俺”の言葉に俺は上手く返せない。
「ブックマンになるのが嫌になったか“ラビ”!?」
そんな事無い…だけど…
「仮初めの仲間の為に戦う事を選ぶの?」
あいつ等を見捨てる事が出来無い。
「人間なんか戦ばかり起こす愚かな種族だ」
戦が無い世界なんてきっと有り得ない。
神までもがこの聖戦という名の戦を求めているのに…
「そうでしょ…そう割りきってないとしんどいじゃないか!“俺”にはブックマン一族としての責任があるんだ!」
戦は仕方無い事…愚かな人間は争いを止めない。
だから俺は上手く立ち回って世界にあった全てを記録するんだ。
そう割りきらなくてはいけない筈だった…でも…
「割りきってなんか…」
割りきれなかった。
「“俺”は人間に失望してた…いつまでも争い続ける人の世界…自分は違うと思っていたかった」
思っていたくて…そう思い続けていたのに、割りきる事など出来無かった。
「なぁ…お前には分かるか?」
考えてみろ…
「ブックマンは何の為に在るんだろう…」
記録してどうするんだ?
「どうして人の世界から戦争は消えないんだろう…」
どうして同じ事を繰り返す?
「…なんで“俺”に聞くんさ…そんなのわかんねぇよ」
俺は投げ出した。
「“俺”はお前なんだろ。48番目までのお前も49番目の“ラビ”も一人の“俺”だ」
信じる事も…止める事も…
「問うてるのはお前だよ」
全て投げ出して傍観者になろうとした。
「変わりはじめてるのはお前だったんだ。ここから……出る…べきは……」
だけど…
──…ラビ!!
「!」
“ラビ”が気を失った中佇んでいた小さなラビは、その声に反応して天を仰いだ。
──ラビ…!
俺が投げ出したものをあいつは叶えようとしている。
「アレン…リナリー……」
自分の身を危険に曝して必死に…
──ラビ!!
あいつなら…
信じてもいいんじゃないか…?
「“お前”も“俺”だったんだな」
一筋の涙を流した小さなラビは溶ける様に地に沈んで消えた。
「………出られちゃったかぁ…」
信じてもいいんじゃないか…
「約束だからね」
俺が投げ出したものを追うあいつを…
「この勝負キミの勝ちだよぉ」
無邪気なあの笑顔を…
「…ブックマンJr.」
レイを……
信じても…
いいんじゃないか──…?