第3章 封印された箱
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64
「月」
レイのキングサイズのベッドで眠り続けるデビットとジャスデロを見ていたらそう声を掛けられた。
『ユエ…』
「怪我はもういいのか?」
『あぁ、完治したよ』
「本当か?」
『あぁ、魔術は偉大だな』
すっかり完治したし、傷も一つも残って無かった。
人間の生命力ではこうはいかない。
治るどころか死さえも…
「……レイとは…話したか?」
言い難そうに話す辺り、レイに何かあったのだろう。
しかし私は今、介入出来無い。
『…回線が切断されてて入れなかった。無理矢理入っても良いが、ダウンロード中だからな…何かあっては困る』
「……そうか」
『…どうかしたか?』
何も答えないか…
話したくないのか、内容に確信が無いのか、分からないのか…
『……シャールは?』
「…死んだ」
『…そうか』
「驚かないのか?」
『経緯は知らないが、勿論残念だし、悲しいよ…でも私は覚悟してた』
「覚悟?」
『何時か…いきなり目の前から消えるかもしれないという覚悟』
そうしないとやって行けない事を知っているからそうした。
『さぁ、シャールの所に案内しておくれ』
私は何時だって…
この先も…未来永劫…
『鎮魂歌 でも捧げよう』
見送る側なのだから──…
=49番目=
「ラビ…」
ラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビ
「…ラビ」
ラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビ
「ラ…ビ……ぃ」
ラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビ
「…ラ…ビ…」
ラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビ
見知った顔の屍達は、何度も何度も俺の名前を呼び続ける。
その声と…その姿に、気が狂いそうだった。
「これは…幻さ」
「そうだ、幻だ。我らが記す歴史の形」
ニヤリと笑ったジジィに何だかやたらとイライラした。
「この者共は“人間”という名の紙上のインク…インクは書き手に語りかけはせん。お前はインクを引く度にいちいち心を痛めるのか?」
ラビはチッと短く舌打ちをすると、腕の中のレイを抱きしめ直した。
「幻でもうるせぇな、じじい」
「ハハ…わしはお前の記憶から成り立っとるからな。だがうるさいと感じるのはお前がこの者共をインクと思っとらんからだ」
「ッ…」
「我等一族の“役目”とは何か“ラビ”」
「やめろよ」
聞きたくない…
「なにを捨ててでもそのひとつの為に世界の枠の外で生き続けるのが我等ブックマンであろうが」
俺は…俺はブックマンの後継者だ。
だけど…
「ラ…ラビ…」
そう近くからした声に反応して腕の中を見ると、そこにいたのはレイではなくリナリーだった。
この光景は…船上の時の…
「わ、わた…しは…まだ…」
「リナリ…」
「せかいのなかにイる?」
瞬間、リナリーの手に持ったナイフが振り下ろされ、ラビは咄嗟にリナリーを離すと、後ろに飛び退いてそれを回避した。
切っ先が掠ったバンダナが裂け、ひらりと地に落ちる。
「私達を捨てるの?仲間じゃないっていうの?」
俺は…俺はリナリー達を…教団の皆を…
「私達は紙の上のインクなんかじゃないッ!!!」
それを掛け声の様に“それ”は起きた。
屍達からの一斉攻撃に、ラビは目を瞑って応戦する。
「ギャアァアアァアァァァ!!」
「ラビ」
「どうして?」
「あぁぁあぁぁぁラビィィィ」
「クソ…ッ」
屍達の見た目に惑わされない様に視覚を封じたが、こう叫ばれては…
──ようこそ、黒の教団へ。
科学班室長のコムイ・リーです…
「!」
──お待たせしてすみません…
仲間を…見送ってたものですから…
「また記憶を…ッ!」
“ラビ”は49番目の偽名…偽名の数だけ戦いは観てきた。
“裏歴史”とは語り継がれる人の歴史から除外された史実“誰も知らない事実を知れる”それだけで俺は“ブックマン”になる事を受け入れたから…
“悪魔との大戦”
今まで観た中で一番大きな戦…
兵士になって記録に入ったのは初めてだった。
こいつらもいつか歴史から除外されてくんだろうか…
そうは考えはしても、さして興味は無かったし、悲しいとも思わなかった。
「やめろ…」
リナリーを溺愛してる変人のコムイ、可愛いけど怒ると恐いリナリー、怒りっぽくて人付き合いの下手なユウ、いつも死にそうな顔してんのに人の心配ばっかする科学班、栄養がどうのって口うるさいジェリー、怪我すっと鬼みたいな顔になる婦長…
ノアなのにイノセンスに選ばれ、ノアである事を隠してエクソシストになり、元帥となったレイ。
アクマに呪われた左目を持つアレン。
「やめろ…のぞくな…」
色んな奴に出会い…
任務に言ったり、稽古をしたり、話をしたり、遊んだり…
「やめろ!」
そうやって一年、二年と教団の中での時間が過ぎていく中、俺は自分の笑い顔がウソかホントかわからなくなってきた。
「やめろ」
じじいの言葉が辛いと感じるようになった…
「やめろ…っ、のぞくな!!!」
頭を抱えた瞬間、袖からトランプが一枚落ちた。
パシャッっと音を立てて足下を濡らす水の上に落ちたのは、アレンが死んだと思った時に竹林で拾った、アレンの持ち物の一つだった。
そして…
それを拾ったのは“アレン”だった。
「僕の落とし物…ブックマンに黙ってずっと持っててくれたんですね」
困った様に…でもどこか嬉しそうに笑ったアレンは、一瞬にしてレイに姿を変えた。
『だってラビは優しいもんね』
やめろ…
『頑張ったら頭撫でてくれるし、髪型少し変えただけでほめてくれる。レディーファーストは当たり前だし、わがまま言ってもつき合ってくれる。無理したら怒ってくれるし、元気の無い時は黙って側に居てくれる』
やめろよ…もう…
覗かないでくれ、観せないでくれ…
『裸の私に動揺してあっさり騙された割には手ぇ出さなかったり、幻だって分かってるのにシーツ掛けてくれたり、自分も刺されてるのに私が刺されたら駆け寄って来てくれたり』
俺はどうしたらいい?
俺は…
『頑張りやだけど面倒臭がりで、単純で調子良くてちょっと抜けてて』
俺はブックマンの後継者なのに…
『凄く優しい』
嬉しそうに笑ったレイは、二・三歩ラビに歩み寄ると、ニッコリと微笑んだ。
『私はラビが大好きだよ』
もう駄目だ。
俺は何が大切で何が…
「なに、その顔」
瞬間現れた“俺”が、微笑むレイの頭に手をそえると、一瞬でレイの頭が吹き飛んだ。
「こんな女…ただのインクの塊じゃん“ラビ”」
“何惑わされてんの?”といって“俺”は、今度は不意に現れたアレンの頭を吹き飛ばした。
「ッ…!!」
「こんなんも黙って観てらんねぇんじゃもう駄目だな」
レイ…アレ…ン…
『ラ…ビ…』
「ラビ…」
目が離せない。
見たくないのに離せない。
二人の遺体から…目が…
そう静止した瞬間、ラビの体を衝撃と異変が襲った。
「ユウ…リナ…リー……クロちゃん…」
自分を取り囲む様にして刃を突き立てる三人に、ラビのは目を見開いた。
「“お前”はブックマン失格だ“ラビ”」
しっ…かく…
「安心しろ、お前が死んでもブックマンは絶えない。俺こそ本当のお前だからな」
俺は…ナニ?
俺は…俺は誰…?
「ブックマンは俺が継ぐ」
俺はナニを護りたいんだ…
「お前は消えろ“ラビ”」
さぁ、おいで…
キミはもう自由だ──…
「月」
レイのキングサイズのベッドで眠り続けるデビットとジャスデロを見ていたらそう声を掛けられた。
『ユエ…』
「怪我はもういいのか?」
『あぁ、完治したよ』
「本当か?」
『あぁ、魔術は偉大だな』
すっかり完治したし、傷も一つも残って無かった。
人間の生命力ではこうはいかない。
治るどころか死さえも…
「……レイとは…話したか?」
言い難そうに話す辺り、レイに何かあったのだろう。
しかし私は今、介入出来無い。
『…回線が切断されてて入れなかった。無理矢理入っても良いが、ダウンロード中だからな…何かあっては困る』
「……そうか」
『…どうかしたか?』
何も答えないか…
話したくないのか、内容に確信が無いのか、分からないのか…
『……シャールは?』
「…死んだ」
『…そうか』
「驚かないのか?」
『経緯は知らないが、勿論残念だし、悲しいよ…でも私は覚悟してた』
「覚悟?」
『何時か…いきなり目の前から消えるかもしれないという覚悟』
そうしないとやって行けない事を知っているからそうした。
『さぁ、シャールの所に案内しておくれ』
私は何時だって…
この先も…未来永劫…
『
見送る側なのだから──…
=49番目=
「ラビ…」
ラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビ
「…ラビ」
ラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビ
「ラ…ビ……ぃ」
ラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビ
「…ラ…ビ…」
ラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビ
見知った顔の屍達は、何度も何度も俺の名前を呼び続ける。
その声と…その姿に、気が狂いそうだった。
「これは…幻さ」
「そうだ、幻だ。我らが記す歴史の形」
ニヤリと笑ったジジィに何だかやたらとイライラした。
「この者共は“人間”という名の紙上のインク…インクは書き手に語りかけはせん。お前はインクを引く度にいちいち心を痛めるのか?」
ラビはチッと短く舌打ちをすると、腕の中のレイを抱きしめ直した。
「幻でもうるせぇな、じじい」
「ハハ…わしはお前の記憶から成り立っとるからな。だがうるさいと感じるのはお前がこの者共をインクと思っとらんからだ」
「ッ…」
「我等一族の“役目”とは何か“ラビ”」
「やめろよ」
聞きたくない…
「なにを捨ててでもそのひとつの為に世界の枠の外で生き続けるのが我等ブックマンであろうが」
俺は…俺はブックマンの後継者だ。
だけど…
「ラ…ラビ…」
そう近くからした声に反応して腕の中を見ると、そこにいたのはレイではなくリナリーだった。
この光景は…船上の時の…
「わ、わた…しは…まだ…」
「リナリ…」
「せかいのなかにイる?」
瞬間、リナリーの手に持ったナイフが振り下ろされ、ラビは咄嗟にリナリーを離すと、後ろに飛び退いてそれを回避した。
切っ先が掠ったバンダナが裂け、ひらりと地に落ちる。
「私達を捨てるの?仲間じゃないっていうの?」
俺は…俺はリナリー達を…教団の皆を…
「私達は紙の上のインクなんかじゃないッ!!!」
それを掛け声の様に“それ”は起きた。
屍達からの一斉攻撃に、ラビは目を瞑って応戦する。
「ギャアァアアァアァァァ!!」
「ラビ」
「どうして?」
「あぁぁあぁぁぁラビィィィ」
「クソ…ッ」
屍達の見た目に惑わされない様に視覚を封じたが、こう叫ばれては…
──ようこそ、黒の教団へ。
科学班室長のコムイ・リーです…
「!」
──お待たせしてすみません…
仲間を…見送ってたものですから…
「また記憶を…ッ!」
“ラビ”は49番目の偽名…偽名の数だけ戦いは観てきた。
“裏歴史”とは語り継がれる人の歴史から除外された史実“誰も知らない事実を知れる”それだけで俺は“ブックマン”になる事を受け入れたから…
“悪魔との大戦”
今まで観た中で一番大きな戦…
兵士になって記録に入ったのは初めてだった。
こいつらもいつか歴史から除外されてくんだろうか…
そうは考えはしても、さして興味は無かったし、悲しいとも思わなかった。
「やめろ…」
リナリーを溺愛してる変人のコムイ、可愛いけど怒ると恐いリナリー、怒りっぽくて人付き合いの下手なユウ、いつも死にそうな顔してんのに人の心配ばっかする科学班、栄養がどうのって口うるさいジェリー、怪我すっと鬼みたいな顔になる婦長…
ノアなのにイノセンスに選ばれ、ノアである事を隠してエクソシストになり、元帥となったレイ。
アクマに呪われた左目を持つアレン。
「やめろ…のぞくな…」
色んな奴に出会い…
任務に言ったり、稽古をしたり、話をしたり、遊んだり…
「やめろ!」
そうやって一年、二年と教団の中での時間が過ぎていく中、俺は自分の笑い顔がウソかホントかわからなくなってきた。
「やめろ」
じじいの言葉が辛いと感じるようになった…
「やめろ…っ、のぞくな!!!」
頭を抱えた瞬間、袖からトランプが一枚落ちた。
パシャッっと音を立てて足下を濡らす水の上に落ちたのは、アレンが死んだと思った時に竹林で拾った、アレンの持ち物の一つだった。
そして…
それを拾ったのは“アレン”だった。
「僕の落とし物…ブックマンに黙ってずっと持っててくれたんですね」
困った様に…でもどこか嬉しそうに笑ったアレンは、一瞬にしてレイに姿を変えた。
『だってラビは優しいもんね』
やめろ…
『頑張ったら頭撫でてくれるし、髪型少し変えただけでほめてくれる。レディーファーストは当たり前だし、わがまま言ってもつき合ってくれる。無理したら怒ってくれるし、元気の無い時は黙って側に居てくれる』
やめろよ…もう…
覗かないでくれ、観せないでくれ…
『裸の私に動揺してあっさり騙された割には手ぇ出さなかったり、幻だって分かってるのにシーツ掛けてくれたり、自分も刺されてるのに私が刺されたら駆け寄って来てくれたり』
俺はどうしたらいい?
俺は…
『頑張りやだけど面倒臭がりで、単純で調子良くてちょっと抜けてて』
俺はブックマンの後継者なのに…
『凄く優しい』
嬉しそうに笑ったレイは、二・三歩ラビに歩み寄ると、ニッコリと微笑んだ。
『私はラビが大好きだよ』
もう駄目だ。
俺は何が大切で何が…
「なに、その顔」
瞬間現れた“俺”が、微笑むレイの頭に手をそえると、一瞬でレイの頭が吹き飛んだ。
「こんな女…ただのインクの塊じゃん“ラビ”」
“何惑わされてんの?”といって“俺”は、今度は不意に現れたアレンの頭を吹き飛ばした。
「ッ…!!」
「こんなんも黙って観てらんねぇんじゃもう駄目だな」
レイ…アレ…ン…
『ラ…ビ…』
「ラビ…」
目が離せない。
見たくないのに離せない。
二人の遺体から…目が…
そう静止した瞬間、ラビの体を衝撃と異変が襲った。
「ユウ…リナ…リー……クロちゃん…」
自分を取り囲む様にして刃を突き立てる三人に、ラビのは目を見開いた。
「“お前”はブックマン失格だ“ラビ”」
しっ…かく…
「安心しろ、お前が死んでもブックマンは絶えない。俺こそ本当のお前だからな」
俺は…ナニ?
俺は…俺は誰…?
「ブックマンは俺が継ぐ」
俺はナニを護りたいんだ…
「お前は消えろ“ラビ”」
さぁ、おいで…
キミはもう自由だ──…