第3章 封印された箱
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63
「レイの事は勿論、方舟の事はまだ大元帥達には伏せてあるから気を付けて」
「…はい」
二人だけの広いエレベーター…急速に上昇するその上で、コムイの言葉にリーバーはそう短く答えた。
教える訳にはいかなかった。
レイがノアである事は勿論、方舟の存在も、レイが連れ去られた事も…
何一つ、教える訳にはいかなかった。
「でもヘブラスカが急変って一体何が……もしかして…」
《遅いぞ、コムイ》
目的地に着いた瞬間に響いた大元帥の声に、リーバーは開いた口を閉じて言葉を呑み込んだ。
──あまり近…づくな、コム…イ…気に…当てられる…ぞ……
「ヘブくん?!」
苦しそうに身を屈めるヘブくんは、その身から光を発していた。
直接頭に響く様な声が耳に痛い。
──苦しい…私の内の石箱 が共鳴して…赤子のように暴れ回る…
苦しみ、強く光る体、石箱 の共鳴…
僕はそれが何を指し示すか知っていた。
「“臨界者”が現れたのか…!」
《“臨界者”イノセンスとのシンクロ率が100を超えた者か》
一体どこで?
まさか日本…?
だとしたら臨界者は…
──“誰”…かは、まだわからない…だが…“現れる”ぞ…!
臨界者…新たな“元帥”になれるエクソシストが!!
“現れる”!!
現れる…強い力が現れるのだ!!
どうして…
どうして僕は今、アレン・ウォーカーの事を思い出してるんだ?
まさか…あの子はまだたったの十五歳だ。
だけどレイだって…
「室長」
隣で囁かれたリーバーの言葉に、コムイは小さく顔を上げた。
「いや、なんて言うか…その…アレンじゃないっすよね…?」
アレンくん…
《まだ見ぬ元帥のようにならなければ良いがな》
「……最後の元帥…」
《誰かは知らんが…臨界点を突破しても“あの元帥”の様に行方不明では困る》
《レイ・アストレイめ、何をしておるんだ…接触したくせに取り逃がし、それ以降まだ見付からんとは》
《コムイ、全エクソシストに告げよ》
コムイは伏せていた顔を上げると小さく“何と?”とだけ口にした。
《必ず臨界者を連れ帰れ》
=新たな臨界者=
「何かあったの、ティッキー?」
真空の内から飛び出して床に着地した瞬間ロードにそう聞かれたが、直ぐには答えられなかった。
「………ビックリ人間ショー?」
「は?」
「ビックリしすぎて全然笑えねぇっつの」
正直、意味が分からなかった。
あの状況下でイノセンスを発動した挙げ句、あれは…
左腕が姿を変えたあの剣はどう見たって…
「良くないものを呼び起こしたか…?」
直ぐにトドメをさせば良かったか…
真っ二つに裂かれた真空の白煙の中から姿を現した少年の右手に握られている剣は、どう見たって千年公の剣に瓜二つだった。
見間違えじゃなかったか…
「守って…みせる…」
「ッ…お前って」
間髪入れずに突っ込んで来た少年の攻撃をティーズで腕に楯を造って防ぐ。
「何でそんなに頑張んだよ?」
「貴方達にだって分かるはずだ」
少年の斬撃を楯で受けた瞬間だった。
“ビシッ”という音と共に楯が割れた。
なにっ…!?
「ッ…!!!」
楯を破られ、横に一刀両断され、俺は反射的に斬られた部分に触れた。
「…………どういう事だ…死なない…?」
確かに…
確かに今、痛みを感じたのに…
「斬れてない…」
斬られた筈なのに…
感覚も痛みもあったのに、斬れてない?
「…何の幻術 だ、少年」
「幻術なんかじゃないですよ」
そう少年が言った瞬間、口内に血が溢れ、全身に焼ける様な痛みが走った。
「ぐっ…ぁ」
何だ…これ?
何でこんな…
「俺の…内のノアが…ッ」
痛い…苦しい…
体が焼ける様に熱い!!font color="#cc3333">
「あぁぁあぁああぁぁあぁあ」</font>
「人間を生かし、魔だけを滅する。それが僕と神ノ道化 の力…」
クソ…ッ!退魔の能力か…内から焼ける…
「俺から…ッ!ノアを…奪おうっての…かッ、少…年」
ノアを…奪う?
「俺を殺さず…に、ノア…だけ?」
意味が分からない。
戦争の最中、敵を助けるのか?
そう思ったら笑いが込み上げた。
「フハッ、ハハハハハ!!」
この少年は何てお人好しなんだ!
何て、何て…
「お前は…甘い…な!」
何て愚かなんだろう…
「甘いよ」
レイ…
「これは…ただのエゴだ…ッ」
「なんとでも…その為の重荷を背負う覚悟はできている」
もう一度だけでも会いたかった…
「ティッキー!!」
慌てて駆け寄ってきたロードを、ティキは手を軽く突き出して止めた。
「いい」
「!」
もういい…俺はあの剣で斬られた。
力が上手く入らない…ノアでなくなった俺はもうレイに会えないだろう。
だったらいっそ…
「この戦争から退席しろ」
諦めのつく事実を…
「ティキ・ミック!!」
少年の剣が再び俺を貫く。
退魔の剣なら刺さった痛みなんか要らねぇじゃねぇか…まったく…
苦しい…痛い…寒い…
「残念だ…少‥年」
自分で完璧なロストを望んだのに、もう一度だけでもレイに触れたいと思うなんて…馬鹿みたいだ…
「悪いな……ロード…」
死んだ様に倒れたティッキーは“白”になっていた。
「ティキ…」
「ティッキーの聖痕が消えたレロ…」
レイと何があったかは知らないけど、あんなにレイに執着してたのに…
あの剣で刺されたティッキーは何で抵抗しなかったんだろ…
「………や…やった…やったッス!」
ウザイ…
「悪魔を…敵を倒した、ヒャッホォ!!」
ウザイウザイウザイウザイ…
悪魔…どっちが?
何もしないでただ見てるだけの…
“傍観者”であるただの人間が何いってんのぉ?
自分は手を汚さないで、敵である僕等を罵倒し、気にさわれば自分を助けた相手をも非難する。
お前達が本当の悪魔だ。
「チャオジーッ!!」
人間の背に蝋燭を何本か突き立てたらリナリーがそう悲鳴を上げた。
「動くな」
直ぐに無数の蝋燭を造り出してその切っ先を全員に向けて静止させる。
「動いたら、全員刺す」
本当に殺す。
「神ノ道化 のアレンはこんなんじゃ死なないだろーけど“アレン以外”は多分死んじゃうよぉ?」
そう…アレン以外は殺す。
レイに怒られるとかもうどうでも良い。
それにきっとレイも分かってくれるよ…
「僕ね、アレンの事スキだけどぉ」
床に倒れたティッキーを抱き起こすと、ティッキーは生きてはいたが酷く冷たかった。
「家族も特別なんだぁ…」
早く連れて帰らなきゃいけない。
それは分かってる。
「この気持ちは、アレンと一緒だね」
「……ッ」
でも…
「動かないで、アレン。僕、ちょっとムカついてるんだよ…仲間の体に穴が開くの見たい?」
ガマンできない…
「でもそれだけじゃ足らない…“ひとり”アレンの仲間にお仕置きしちゃうんだから」
一人、罰を与えてやる。
「赤毛の子“ラビ”っていうんだね?あの子の精神は今、僕の内に“あるんだよ”」
傷付けて、傷口を開いて抉って、圧迫して…
堪えきれない程の罰を…
「そいつの心、メチャメチャにしてやる」
沈めてあげる。
「僕の蝋燭がすごーく痛いのはその左眼が覚えてるでしょぉ~?」
深い闇の奥深くまで。
落としてあげる。
「あっちの人間や可愛いリナリーが見るも無惨な姿になってほしくなかったら…」
自分の記憶と心と現実に沈め…
「“ラビ”が僕に壊されるのをじっと待ってて♪」
粉々に砕け散って壊れるまで──…
「レイの事は勿論、方舟の事はまだ大元帥達には伏せてあるから気を付けて」
「…はい」
二人だけの広いエレベーター…急速に上昇するその上で、コムイの言葉にリーバーはそう短く答えた。
教える訳にはいかなかった。
レイがノアである事は勿論、方舟の存在も、レイが連れ去られた事も…
何一つ、教える訳にはいかなかった。
「でもヘブラスカが急変って一体何が……もしかして…」
《遅いぞ、コムイ》
目的地に着いた瞬間に響いた大元帥の声に、リーバーは開いた口を閉じて言葉を呑み込んだ。
──あまり近…づくな、コム…イ…気に…当てられる…ぞ……
「ヘブくん?!」
苦しそうに身を屈めるヘブくんは、その身から光を発していた。
直接頭に響く様な声が耳に痛い。
──苦しい…私の内の
苦しみ、強く光る体、
僕はそれが何を指し示すか知っていた。
「“臨界者”が現れたのか…!」
《“臨界者”イノセンスとのシンクロ率が100を超えた者か》
一体どこで?
まさか日本…?
だとしたら臨界者は…
──“誰”…かは、まだわからない…だが…“現れる”ぞ…!
臨界者…新たな“元帥”になれるエクソシストが!!
“現れる”!!
現れる…強い力が現れるのだ!!
どうして…
どうして僕は今、アレン・ウォーカーの事を思い出してるんだ?
まさか…あの子はまだたったの十五歳だ。
だけどレイだって…
「室長」
隣で囁かれたリーバーの言葉に、コムイは小さく顔を上げた。
「いや、なんて言うか…その…アレンじゃないっすよね…?」
アレンくん…
《まだ見ぬ元帥のようにならなければ良いがな》
「……最後の元帥…」
《誰かは知らんが…臨界点を突破しても“あの元帥”の様に行方不明では困る》
《レイ・アストレイめ、何をしておるんだ…接触したくせに取り逃がし、それ以降まだ見付からんとは》
《コムイ、全エクソシストに告げよ》
コムイは伏せていた顔を上げると小さく“何と?”とだけ口にした。
《必ず臨界者を連れ帰れ》
=新たな臨界者=
「何かあったの、ティッキー?」
真空の内から飛び出して床に着地した瞬間ロードにそう聞かれたが、直ぐには答えられなかった。
「………ビックリ人間ショー?」
「は?」
「ビックリしすぎて全然笑えねぇっつの」
正直、意味が分からなかった。
あの状況下でイノセンスを発動した挙げ句、あれは…
左腕が姿を変えたあの剣はどう見たって…
「良くないものを呼び起こしたか…?」
直ぐにトドメをさせば良かったか…
真っ二つに裂かれた真空の白煙の中から姿を現した少年の右手に握られている剣は、どう見たって千年公の剣に瓜二つだった。
見間違えじゃなかったか…
「守って…みせる…」
「ッ…お前って」
間髪入れずに突っ込んで来た少年の攻撃をティーズで腕に楯を造って防ぐ。
「何でそんなに頑張んだよ?」
「貴方達にだって分かるはずだ」
少年の斬撃を楯で受けた瞬間だった。
“ビシッ”という音と共に楯が割れた。
なにっ…!?
「ッ…!!!」
楯を破られ、横に一刀両断され、俺は反射的に斬られた部分に触れた。
「…………どういう事だ…死なない…?」
確かに…
確かに今、痛みを感じたのに…
「斬れてない…」
斬られた筈なのに…
感覚も痛みもあったのに、斬れてない?
「…何の
「幻術なんかじゃないですよ」
そう少年が言った瞬間、口内に血が溢れ、全身に焼ける様な痛みが走った。
「ぐっ…ぁ」
何だ…これ?
何でこんな…
「俺の…内のノアが…ッ」
痛い…苦しい…
体が焼ける様に熱い!!font color="#cc3333">
「あぁぁあぁああぁぁあぁあ」</font>
「人間を生かし、魔だけを滅する。それが僕と
クソ…ッ!退魔の能力か…内から焼ける…
「俺から…ッ!ノアを…奪おうっての…かッ、少…年」
ノアを…奪う?
「俺を殺さず…に、ノア…だけ?」
意味が分からない。
戦争の最中、敵を助けるのか?
そう思ったら笑いが込み上げた。
「フハッ、ハハハハハ!!」
この少年は何てお人好しなんだ!
何て、何て…
「お前は…甘い…な!」
何て愚かなんだろう…
「甘いよ」
レイ…
「これは…ただのエゴだ…ッ」
「なんとでも…その為の重荷を背負う覚悟はできている」
もう一度だけでも会いたかった…
「ティッキー!!」
慌てて駆け寄ってきたロードを、ティキは手を軽く突き出して止めた。
「いい」
「!」
もういい…俺はあの剣で斬られた。
力が上手く入らない…ノアでなくなった俺はもうレイに会えないだろう。
だったらいっそ…
「この戦争から退席しろ」
諦めのつく事実を…
「ティキ・ミック!!」
少年の剣が再び俺を貫く。
退魔の剣なら刺さった痛みなんか要らねぇじゃねぇか…まったく…
苦しい…痛い…寒い…
「残念だ…少‥年」
自分で完璧なロストを望んだのに、もう一度だけでもレイに触れたいと思うなんて…馬鹿みたいだ…
「悪いな……ロード…」
死んだ様に倒れたティッキーは“白”になっていた。
「ティキ…」
「ティッキーの聖痕が消えたレロ…」
レイと何があったかは知らないけど、あんなにレイに執着してたのに…
あの剣で刺されたティッキーは何で抵抗しなかったんだろ…
「………や…やった…やったッス!」
ウザイ…
「悪魔を…敵を倒した、ヒャッホォ!!」
ウザイウザイウザイウザイ…
悪魔…どっちが?
何もしないでただ見てるだけの…
“傍観者”であるただの人間が何いってんのぉ?
自分は手を汚さないで、敵である僕等を罵倒し、気にさわれば自分を助けた相手をも非難する。
お前達が本当の悪魔だ。
「チャオジーッ!!」
人間の背に蝋燭を何本か突き立てたらリナリーがそう悲鳴を上げた。
「動くな」
直ぐに無数の蝋燭を造り出してその切っ先を全員に向けて静止させる。
「動いたら、全員刺す」
本当に殺す。
「
そう…アレン以外は殺す。
レイに怒られるとかもうどうでも良い。
それにきっとレイも分かってくれるよ…
「僕ね、アレンの事スキだけどぉ」
床に倒れたティッキーを抱き起こすと、ティッキーは生きてはいたが酷く冷たかった。
「家族も特別なんだぁ…」
早く連れて帰らなきゃいけない。
それは分かってる。
「この気持ちは、アレンと一緒だね」
「……ッ」
でも…
「動かないで、アレン。僕、ちょっとムカついてるんだよ…仲間の体に穴が開くの見たい?」
ガマンできない…
「でもそれだけじゃ足らない…“ひとり”アレンの仲間にお仕置きしちゃうんだから」
一人、罰を与えてやる。
「赤毛の子“ラビ”っていうんだね?あの子の精神は今、僕の内に“あるんだよ”」
傷付けて、傷口を開いて抉って、圧迫して…
堪えきれない程の罰を…
「そいつの心、メチャメチャにしてやる」
沈めてあげる。
「僕の蝋燭がすごーく痛いのはその左眼が覚えてるでしょぉ~?」
深い闇の奥深くまで。
落としてあげる。
「あっちの人間や可愛いリナリーが見るも無惨な姿になってほしくなかったら…」
自分の記憶と心と現実に沈め…
「“ラビ”が僕に壊されるのをじっと待ってて♪」
粉々に砕け散って壊れるまで──…