第3章 封印された箱
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幻だ。
目の前で笑っているのは…
目の前で死んでいるのは…
目の前で泣いてるのはレイじゃない。
『ラビ…』
妖しく艶やかに微笑む君は…
無邪気に優しく微笑む君は…
レイであってレイじゃない。
君は……お前は幻だ。
『ねぇ、ラビ…』
「ッ…」
幻なんだ──…
=歴史の闇=
「あの子がそうです、ブックマン」
コムイが指差す先…三階下のフロアには他の団員と楽しそうに話すショートカットの少女がいた。
レイ・アストレイ…
ノアのクセに何故かイノセンスに選ばれ、元帥にまでなった異端者。
「大元帥や団員は彼女を“ノアに囚われていた可哀想な子”と認識しています。正体が知れれば確実に殺されてしまいますので…」
大元帥達はレイ・アストレイとその連れであるユエを一年に渡って監禁し、観察した。
“ノアに囚われていた”という設定のレイは、ノアに洗脳されているかも知れないが、ノア本人でないならば唯の人間であり貴重な臨界点を突破したエクソシストでもある。
大元帥達も適合者を簡単に殺す訳にはいかなかったんだろう。
だから敵かどうか見定めた。
「千年伯爵に囚われていたノアが逃走した先でイノセンスに選ばれた」
手摺りに乗せられていたコムイの手は、ギュッと手摺りを握り締めていた。
「リーバー班長を含む科学班の数人と、リナリーと神田くんだけがこの事実を知っています」
“サポートです”というコムイに、ラビはハハッと声を上げて笑った。
「ユウがサポート?そんな事するわけ無いさ!」
元々単独任務を好んで他人と馴れ合わないユウが、他人を…しかもノアをサポートするなんて有り得無い。
レイは一週間前に解放され、元帥になったが、元帥だからといって遠慮をするユウでは無い。
叩き斬られても可笑しくないのだ。
「あぁ、神田くんは…」
そう呟いたコムイは瞬間、クスリと笑った。
「レイが勝ったのさ」
レイが勝った?二人で闘りあったって事か?
元帥と喧嘩…ユウらしいな。
「という事で以上が報告です、ブックマン。彼女がエクソシストとしてどうなるか分からなかったので、解放まで伏せさせてもらいました」
「了解した…次からは直ぐに報告していただきたい、室長殿」
「はい、ブックマン」
『コ〜ムイッ!』
瞬間、声と共にコムイの腰に後ろから細い腕が巻き付いた。
コムイの体が少し前に傾いたので、きっと後ろから抱き付いたのだろう。
「やぁ、レイ」
微笑んだコムイがそう言えば、コムイの後ろから先程遠目で見た短い黒髪の少女、レイが顔を出した。
「可愛いさ!」
思わずそう叫んだらジジィに蹴られた。
だってしょうがないじゃんか…遠目では分からなかったけど、近くで見ると人懐っこそうな可愛らしい子だったんさ。
『あれ…初めましてだよね?』
俺とジジィを見比べたレイは、ニッコリと笑ってコムイの脇に並んだ。
『レイ・アストレイです、よろしくね』
「レイ、ブックマンとラビだよ」
コムイの紹介にレイは首を傾げた。
『ブックマン?』
「世界が知る事のない裏歴史を引き継ぐ人だよ…ラビは後継者なんだ」
目が合ったので“よろしくさ”と言えば、レイは嬉しそうに笑ってくれた。
「レイ」
『何ぃ?』
「レイ、二人に君の事を話したよ」
コムイの一言にレイは一瞬固まると、ニッコリと微笑んだ。
『分かったわ、コムイ』
本当に納得したのかとか、どう思ってるのか…俺には全然分からなかったけど、コムイに頭を撫でられたレイは唯嬉しそうに笑っていた。
「じゃあ、レイ!ボクとお茶でもしに行こうか~!」
語尾にハートマークが付きそうな声でそう言ったコムイに“おい!”と口にしそうになった瞬間、コムイの腕に抱き付いたレイが一際ニッコリと笑った。
『連~行ぉ!!』
「へ?」
コムイの笑顔が一瞬にして引きつった。
『リーバーに頼まれてるの、コムイ連れて来てって』
「リーバー班長の悪魔ぁぁあぁぁぁ!!」
“レイをつかうなんて最低だ”と泣き叫ぶコムイを“じゃあね”と可愛らしく微笑んだレイはズルズルと引き摺って行った。
「全然ノアに見え無い可愛い子だったさ…なぁ、ジジィ?」
「……」
「ジジィ?」
返事も蹴りも無い事を不思議に思って隣を見ると、血塗れのジジィが床に倒れていた。
「ジジィ…」
何だよ…これ…‥
いつこんな……コレ…
「ジジィ!!!!」
慌てて手摺りから下の階を見て愕然とした。
どの階も血の海と死体で溢れていた…
「何だよ…これ」
何なんだよ、コレ…
『ラビ?』
「レイ‥?」
気が付いたらレイが目の前に居た。
レイの後ろに天井が見えて、俺は漸く自分が寝ていて、レイが俺を見下ろしている事に気付いた。
ベッド…レイの部屋か?
『大丈夫?何かうなされてたよ?』
そう言って俺の頬に触れるレイの手を取ると、引き寄せてその華奢な身体を抱き締めた。
「嫌な夢見たさ」
何だったんだろう…
レイとの出逢いが血に染まるとは…
そこまで考えて違和感に気付いた。
何か足んないさ。
何かこう…
スカスカするっつうか気持ちいいっつうか…
「…………は?」
視線を手前に動かして思わずそう声を漏らした。
何だこれ…
何で…何で…
何で俺上裸なの?
何でズボンしか履いてないんさ!
つかそれよりもさ!
何で…
本当何で…何で…
何でレイ、裸なんさ?!!
『ラビ?』
どういう事…どういう事なんさ?
え…俺やっちゃった?
もしかしてもしかしなくても手ぇ出しちゃった?!
『…ラビ?』
どうしよう…これ離れたら全部見えちゃうし、でもこのまま抱き締めてると心臓がヤバイさ……色々当たっちゃってるし。
『ラビ』
いや、心臓の前に色々ヤバイ。
つか本当にやらかしちゃったんか?
だとしたら…
覚えてないって何事?!
レイに失礼だし、第一勿体なさすぎるさ!
あぁ…何か泣きたくなってきた…
『ラビ!』
「あ…あぁ、ゴメンさ」
体を離さなくてはいけないので顔を見るワケにはいかず、取り敢えず落ち着かせる様に頭を撫でた。
『ねぇ、ラビ』
「ん?」
『私の事どう思う?』
「……え?」
どういう意味?
どういう意味で聞いてんの?!
まさか“覚えてない”とは言えないし…
『私、元帥で良いのかな?』
あ、そっちか。
『私、子供だし世間知らずだし…そもそも私、ノアだよ?』
「大元帥達はノアだって知らんからな~」
何とも言い辛い…
『それにしたってこんな小娘、元帥にするなんて』
“神経を疑うわ”というレイの言葉に思わず笑いが込み上げた。
咳払いをして誤魔化したラビは、顎をレイの肩に乗せると軽く体重をレイに預けた。
「俺はレイが元帥が良いさ」
『私が…?』
「危ないのは困るけど…でもレイは確かに強いし、皆を纏める力もある。優しくて強くて戦争の虚しさを知ってる頑張り屋さんさ」
ラビがそう言って頭を撫でてやれば、レイはギュッとラビに抱き付いた。
『ありがとう…ラビ』
「本当の事言っただけさ」
『ありがとう、ラビ』
そう耳元で一際耳に付く声がした瞬間、右肩に後ろから衝撃が走り、俺はレイを突き飛ばした。
『何で私を突き放すの?』
ベッドから落ちて床に倒れた状態でクスクス笑う裸のレイを睨み付けながらフラフラと立ち上がったラビは、そっと右肩に触れた。
熱と痛みが広がるそこにはナイフが刺さっていた。
「クソ…ッ」
『あぁ、びっくりしたのね!だってラビは優しいもん、私を突き放したりしないよね』
思い付いた様にそう言ったレイは、立ち上がるとニッコリと微笑んだ。
そんなレイの姿が見ていられなくてシーツをはがしてレイに投げつけると、レイは“ほらぁ”と言って嬉しそうに笑った。
『ラビはいつも私の心配をしてくれるし、私を信じてくれる。何よりも私を優先してくれるわ』
シーツを纏って“だったら”と続けたレイは、不気味なくらいにニヤリと口角を上げて笑った。
『私の為に死んで?』
瞬間“ドッ”どいう鈍い音と共にレイの体がビクリと震え、レイは血を吐いて前のめりに倒れた。
「レイ!!」
偽物だと分かっていても抑えられず、俺はレイに駆け寄ると、その体をそっと抱き起こした。
『ラ……ビ…ぃ』
「…ッ」
血塗れのレイを見ていられなくて顔をそらすと、いつの間にか俺とレイは乱雑に積まれた棺の山の上にいた。
まるで棺の墓場の様なそこに一隻だけ積まれた舟に“俺”とジジィが座っている。
「また記憶覗きやがったな…しかもレイにあんな……趣味悪ぃさ」
どっちの夢も途中までは実際にあった事だった。
だから余計にリアルでムカついた。
「夢であろうとレイをぶっ刺しやがって…」
「レイ…だけか?」
そう言って“俺”がニヤリと笑った瞬間、次々と棺が開き、見覚えのある奴らの屍が顔を出した。
「何だよ…コレ」
ユウにクロちゃんにコムイ…?
科学班の奴等に探索部隊の奴等まで…
何なんさ…これ…
『幻よ』
顔色を青く染めたラビが腕に抱いたレイに目を向けると、血塗れのレイはニコリと微笑んだ。
「な…何なんさ」
これは…これは幻だ。
アレは皆なんかじゃないさ…
あれは…あれは……
『堪えられる?』
幻だ──…
幻だ。
目の前で笑っているのは…
目の前で死んでいるのは…
目の前で泣いてるのはレイじゃない。
『ラビ…』
妖しく艶やかに微笑む君は…
無邪気に優しく微笑む君は…
レイであってレイじゃない。
君は……お前は幻だ。
『ねぇ、ラビ…』
「ッ…」
幻なんだ──…
=歴史の闇=
「あの子がそうです、ブックマン」
コムイが指差す先…三階下のフロアには他の団員と楽しそうに話すショートカットの少女がいた。
レイ・アストレイ…
ノアのクセに何故かイノセンスに選ばれ、元帥にまでなった異端者。
「大元帥や団員は彼女を“ノアに囚われていた可哀想な子”と認識しています。正体が知れれば確実に殺されてしまいますので…」
大元帥達はレイ・アストレイとその連れであるユエを一年に渡って監禁し、観察した。
“ノアに囚われていた”という設定のレイは、ノアに洗脳されているかも知れないが、ノア本人でないならば唯の人間であり貴重な臨界点を突破したエクソシストでもある。
大元帥達も適合者を簡単に殺す訳にはいかなかったんだろう。
だから敵かどうか見定めた。
「千年伯爵に囚われていたノアが逃走した先でイノセンスに選ばれた」
手摺りに乗せられていたコムイの手は、ギュッと手摺りを握り締めていた。
「リーバー班長を含む科学班の数人と、リナリーと神田くんだけがこの事実を知っています」
“サポートです”というコムイに、ラビはハハッと声を上げて笑った。
「ユウがサポート?そんな事するわけ無いさ!」
元々単独任務を好んで他人と馴れ合わないユウが、他人を…しかもノアをサポートするなんて有り得無い。
レイは一週間前に解放され、元帥になったが、元帥だからといって遠慮をするユウでは無い。
叩き斬られても可笑しくないのだ。
「あぁ、神田くんは…」
そう呟いたコムイは瞬間、クスリと笑った。
「レイが勝ったのさ」
レイが勝った?二人で闘りあったって事か?
元帥と喧嘩…ユウらしいな。
「という事で以上が報告です、ブックマン。彼女がエクソシストとしてどうなるか分からなかったので、解放まで伏せさせてもらいました」
「了解した…次からは直ぐに報告していただきたい、室長殿」
「はい、ブックマン」
『コ〜ムイッ!』
瞬間、声と共にコムイの腰に後ろから細い腕が巻き付いた。
コムイの体が少し前に傾いたので、きっと後ろから抱き付いたのだろう。
「やぁ、レイ」
微笑んだコムイがそう言えば、コムイの後ろから先程遠目で見た短い黒髪の少女、レイが顔を出した。
「可愛いさ!」
思わずそう叫んだらジジィに蹴られた。
だってしょうがないじゃんか…遠目では分からなかったけど、近くで見ると人懐っこそうな可愛らしい子だったんさ。
『あれ…初めましてだよね?』
俺とジジィを見比べたレイは、ニッコリと笑ってコムイの脇に並んだ。
『レイ・アストレイです、よろしくね』
「レイ、ブックマンとラビだよ」
コムイの紹介にレイは首を傾げた。
『ブックマン?』
「世界が知る事のない裏歴史を引き継ぐ人だよ…ラビは後継者なんだ」
目が合ったので“よろしくさ”と言えば、レイは嬉しそうに笑ってくれた。
「レイ」
『何ぃ?』
「レイ、二人に君の事を話したよ」
コムイの一言にレイは一瞬固まると、ニッコリと微笑んだ。
『分かったわ、コムイ』
本当に納得したのかとか、どう思ってるのか…俺には全然分からなかったけど、コムイに頭を撫でられたレイは唯嬉しそうに笑っていた。
「じゃあ、レイ!ボクとお茶でもしに行こうか~!」
語尾にハートマークが付きそうな声でそう言ったコムイに“おい!”と口にしそうになった瞬間、コムイの腕に抱き付いたレイが一際ニッコリと笑った。
『連~行ぉ!!』
「へ?」
コムイの笑顔が一瞬にして引きつった。
『リーバーに頼まれてるの、コムイ連れて来てって』
「リーバー班長の悪魔ぁぁあぁぁぁ!!」
“レイをつかうなんて最低だ”と泣き叫ぶコムイを“じゃあね”と可愛らしく微笑んだレイはズルズルと引き摺って行った。
「全然ノアに見え無い可愛い子だったさ…なぁ、ジジィ?」
「……」
「ジジィ?」
返事も蹴りも無い事を不思議に思って隣を見ると、血塗れのジジィが床に倒れていた。
「ジジィ…」
何だよ…これ…‥
いつこんな……コレ…
「ジジィ!!!!」
慌てて手摺りから下の階を見て愕然とした。
どの階も血の海と死体で溢れていた…
「何だよ…これ」
何なんだよ、コレ…
『ラビ?』
「レイ‥?」
気が付いたらレイが目の前に居た。
レイの後ろに天井が見えて、俺は漸く自分が寝ていて、レイが俺を見下ろしている事に気付いた。
ベッド…レイの部屋か?
『大丈夫?何かうなされてたよ?』
そう言って俺の頬に触れるレイの手を取ると、引き寄せてその華奢な身体を抱き締めた。
「嫌な夢見たさ」
何だったんだろう…
レイとの出逢いが血に染まるとは…
そこまで考えて違和感に気付いた。
何か足んないさ。
何かこう…
スカスカするっつうか気持ちいいっつうか…
「…………は?」
視線を手前に動かして思わずそう声を漏らした。
何だこれ…
何で…何で…
何で俺上裸なの?
何でズボンしか履いてないんさ!
つかそれよりもさ!
何で…
本当何で…何で…
何でレイ、裸なんさ?!!
『ラビ?』
どういう事…どういう事なんさ?
え…俺やっちゃった?
もしかしてもしかしなくても手ぇ出しちゃった?!
『…ラビ?』
どうしよう…これ離れたら全部見えちゃうし、でもこのまま抱き締めてると心臓がヤバイさ……色々当たっちゃってるし。
『ラビ』
いや、心臓の前に色々ヤバイ。
つか本当にやらかしちゃったんか?
だとしたら…
覚えてないって何事?!
レイに失礼だし、第一勿体なさすぎるさ!
あぁ…何か泣きたくなってきた…
『ラビ!』
「あ…あぁ、ゴメンさ」
体を離さなくてはいけないので顔を見るワケにはいかず、取り敢えず落ち着かせる様に頭を撫でた。
『ねぇ、ラビ』
「ん?」
『私の事どう思う?』
「……え?」
どういう意味?
どういう意味で聞いてんの?!
まさか“覚えてない”とは言えないし…
『私、元帥で良いのかな?』
あ、そっちか。
『私、子供だし世間知らずだし…そもそも私、ノアだよ?』
「大元帥達はノアだって知らんからな~」
何とも言い辛い…
『それにしたってこんな小娘、元帥にするなんて』
“神経を疑うわ”というレイの言葉に思わず笑いが込み上げた。
咳払いをして誤魔化したラビは、顎をレイの肩に乗せると軽く体重をレイに預けた。
「俺はレイが元帥が良いさ」
『私が…?』
「危ないのは困るけど…でもレイは確かに強いし、皆を纏める力もある。優しくて強くて戦争の虚しさを知ってる頑張り屋さんさ」
ラビがそう言って頭を撫でてやれば、レイはギュッとラビに抱き付いた。
『ありがとう…ラビ』
「本当の事言っただけさ」
『ありがとう、ラビ』
そう耳元で一際耳に付く声がした瞬間、右肩に後ろから衝撃が走り、俺はレイを突き飛ばした。
『何で私を突き放すの?』
ベッドから落ちて床に倒れた状態でクスクス笑う裸のレイを睨み付けながらフラフラと立ち上がったラビは、そっと右肩に触れた。
熱と痛みが広がるそこにはナイフが刺さっていた。
「クソ…ッ」
『あぁ、びっくりしたのね!だってラビは優しいもん、私を突き放したりしないよね』
思い付いた様にそう言ったレイは、立ち上がるとニッコリと微笑んだ。
そんなレイの姿が見ていられなくてシーツをはがしてレイに投げつけると、レイは“ほらぁ”と言って嬉しそうに笑った。
『ラビはいつも私の心配をしてくれるし、私を信じてくれる。何よりも私を優先してくれるわ』
シーツを纏って“だったら”と続けたレイは、不気味なくらいにニヤリと口角を上げて笑った。
『私の為に死んで?』
瞬間“ドッ”どいう鈍い音と共にレイの体がビクリと震え、レイは血を吐いて前のめりに倒れた。
「レイ!!」
偽物だと分かっていても抑えられず、俺はレイに駆け寄ると、その体をそっと抱き起こした。
『ラ……ビ…ぃ』
「…ッ」
血塗れのレイを見ていられなくて顔をそらすと、いつの間にか俺とレイは乱雑に積まれた棺の山の上にいた。
まるで棺の墓場の様なそこに一隻だけ積まれた舟に“俺”とジジィが座っている。
「また記憶覗きやがったな…しかもレイにあんな……趣味悪ぃさ」
どっちの夢も途中までは実際にあった事だった。
だから余計にリアルでムカついた。
「夢であろうとレイをぶっ刺しやがって…」
「レイ…だけか?」
そう言って“俺”がニヤリと笑った瞬間、次々と棺が開き、見覚えのある奴らの屍が顔を出した。
「何だよ…コレ」
ユウにクロちゃんにコムイ…?
科学班の奴等に探索部隊の奴等まで…
何なんさ…これ…
『幻よ』
顔色を青く染めたラビが腕に抱いたレイに目を向けると、血塗れのレイはニコリと微笑んだ。
「な…何なんさ」
これは…これは幻だ。
アレは皆なんかじゃないさ…
あれは…あれは……
『堪えられる?』
幻だ──…