第3章 封印された箱
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
59
「レイ…何故“居る”何て言い方ヲ?」
『目覚めた時に自分の“意味”を思い出しただけだよぉ?』
意味…だけ…
戻ったんじゃないのか…
『ノアの記憶 が戻ったんじゃない?』
「…そうデスネ」
欠け落ちたモノは…
“奪い取られたモノ”はもう戻らないのか…?
『行こう、チィ』
どうやったか分からないが…
「…連れて行っても良イ何て言ってませんヨ♡」
『チィのケチ』
もう絶対に奪わせない──…
=夢現=
どうしたもんかな…
リナリーとチャオジーを捕らえたノアの一族長子ロードと闘う事になったはいいけど…
次の瞬間立っていたのは、チェス盤の上にいる様な気分になる床が果てしなく続いてる場所だった。
さっきまで居た場所じゃねぇよな…絶対。
って事は、ロードの“空間移動”でどっかの場所に飛ばされたか…でも何かここ現実味が無くね?
うんうん唸って考えてると、ふと背後に立った……背後に“生えた”ロードがニヤニヤと笑っているのが気になった。
「何笑ってるんさ?」
「ふふ~♪」
意味有りげに笑いやがって…
「もしかしてぇ~“どこか別の場所に移された~”とか思ってんのかなぁって思ってぇ~」
「もしかしなくてもそうじゃんよ」
他にどう解釈しろっつうんだよ。
第一“ロードは不死身で空間移動が出来る”って報告受けてるし…
「……で?お嬢さんはいつまでそんなチェス盤みたいな柄で床に生えてんさ?」
……報告受けてるけど、この柄はないよなぁ…
違う能力なのか、空間移動の情報が間違ってるのか…
「なぁ、闘る気あんの?俺、とっととレイ連れて帰りたいんさ」
切実な願いだった。
早く帰ってレイを抱き枕にして寝たい。
「ブックマンもレイ狙いなのぉ?レイはあげないよぉ!それに僕は闘わないしぃ~」
「は?」
「ホラ、来たよ」
クスクス笑ってたロードがニヤリと口角を上げた瞬間…
「キミの闘うモノが」
いきなり背後に気配を感じて、俺は振り返ると同時に槌を構えた。
そして驚愕した。
振り返った先に立っていたのはどう見たって…
「…は……俺…ッ?」
俺だった。
昔の俺だった。
「……なワケねぇよな~」
これはロードの能力だ。
ロードには別の能力があった。あるいはこちらの“勘違い”だった。
ラビは槌を大きくすると、火判を使った。
「劫火灰燼ッ」
そう言ってラビが槌を振り下ろした瞬間もう一人のラビがスッと差し出した手で槌を止めた。
「な…ッ?!」
「ダメさ」
駄目?一体何が…
「お前は今、精神 だけ連れてこられてんだ…イノセンスは無いんだよ」
「え…?」
思わずそう声を洩らした瞬間、槌がピシッと音を立てて崩れた。
「“空間移動”…そうだね。もしそれだけしか僕の能力を聞いてなかったら誤解しちゃうかもねぇ」
ボロボロに砕けた槌が足下に山を作っていく中、床から抜け出た縫いぐるみの様な姿のロードは、クスクス笑ってその場でクルクルと回った。
「僕がノアで唯一、方舟を使わず空間移動が出来るのは“僕の住む世界”と現実世界を繋げる事ができるから」
ロードの住む世界と現実世界?
まさか…
「僕はノアの“夢”を持つ羊!キミが今いる“ここ”はロード・キャメロットというノアが生んだ夢の中なんだよッッ」
キャハハハハハッ
誰かに呼ばれた気がした。
だから振り返ったのに、その先には誰もいなかった。
広く暗く長い水路が続いているだけで、そこには人がいる筈も無いのに…
「ディック」
そうジジィに呼ばれて体勢を戻すと、いきなり頭を殴られた。
「いってぇ~ッ!!何すんさ、ジジィ!!!」
舟から落ちたらどうしてくれんだ!
「黙れ、アホ!何をボケーッとしとるか、お前は“ラビ”だろうが!!」
“ラビだろうが”って事はまさか…
「ぁ…前の記録地 の名前で振り返っちゃった?」
「馬鹿モンが!!」
やっちゃったらしい。
ラビ、ラビ、ラビ、ラビ、ラビ、ラビ、ラビ…
俺はラビ…あぁ、面倒臭い。
「集中しろ。今回のログは今までみたいには甘くないぞ」
「……次のログって?」
「ヴァチカン直属対アクマ軍事機関、黒の教団だ」
ヴァチカン直属ねぇ…随分大物じゃねぇか。
「我等はそこでこれからエクソシストとなって歴史の闇に隠蔽されるであろう“人と悪魔の大戦”を記録する」
また戦争か…どいつもこいつも飽きねぇな。
しかも悪魔相手って…
何だか有る意味馬鹿馬鹿しくなってダルい体を舟に寄りかけた瞬間、一気に頭の中がスッキリした様な感じがした。
………ここはどこだ?
俺はアレン達とノアの方舟にいて…
夢世界を持つロードに精神だけ連れて来られた筈だ。
ここは現実じゃない。
ここは…
ロードが見せている夢だ。
「どうした“ラビ”忙しい奴だ、黙って座ってられんのか」
急に立ち上がった俺にジジィはそう洩らした。
よく言うさ…
「俺の記憶を読みやがったな」
良く出来てら…
良く出来過ぎてて嫌になる…
「惑わされねぇぞ、俺は戻る」
「“戻る”…どこへ?」
同じ“音”が響いた。
突然現れて舟の中に座った男には見覚えがあった。
「“ラビ”が記録している登場人物達のところへか?」
「…出やがったな」
こいつには初めにあった。
過去の俺にそっくりな、ロードがつくり出した過去の俺そっくりな偽物だ。
「“ラビ”お前がどこへ行けるっていうんさ…ブックマンの跡継ぎとしてどこにも心を移さずに生きてきたお前に戻る場所なんてあるわけないだろ?」
俺の生きる場所…
俺の……戻る場所…
「お前の“場所”お前の心はこの世界のどこにも無い。何者にも心を許さずただ傍観してきた者達の、それが相応しい罰さ」
「……そんなこと分かってら」
「どうだか」
「お前は人と悪魔の中で心を毒されておる」
ジジィの言葉に揺れた。
……確かに毒されているかも知れない。
ブックマンの跡継ぎとして俺は…
「昔のお前の隻眼はそんな弱い光を灯してはいなかった」
瞬間、舟の傍を棺が流れてゆき、俺は思わず目を疑った。
「レイ…!?」
眠るレイを入れて水路に漂う棺を見て顔色を青く染めたラビは、水路に飛び込むとレイを抱き寄せた。
「レイ…ッ」
「どうした“ラビ”?」
夢世界?
何さこれは…こんなの…
こんなのは唯の“悪夢”だ。
「そんなのただの歴史の一部にすぎないだろ?」
そんなの…
ただの紙の上の女だ──…
「レイ…何故“居る”何て言い方ヲ?」
『目覚めた時に自分の“意味”を思い出しただけだよぉ?』
意味…だけ…
戻ったんじゃないのか…
『ノアの
「…そうデスネ」
欠け落ちたモノは…
“奪い取られたモノ”はもう戻らないのか…?
『行こう、チィ』
どうやったか分からないが…
「…連れて行っても良イ何て言ってませんヨ♡」
『チィのケチ』
もう絶対に奪わせない──…
=夢現=
どうしたもんかな…
リナリーとチャオジーを捕らえたノアの一族長子ロードと闘う事になったはいいけど…
次の瞬間立っていたのは、チェス盤の上にいる様な気分になる床が果てしなく続いてる場所だった。
さっきまで居た場所じゃねぇよな…絶対。
って事は、ロードの“空間移動”でどっかの場所に飛ばされたか…でも何かここ現実味が無くね?
うんうん唸って考えてると、ふと背後に立った……背後に“生えた”ロードがニヤニヤと笑っているのが気になった。
「何笑ってるんさ?」
「ふふ~♪」
意味有りげに笑いやがって…
「もしかしてぇ~“どこか別の場所に移された~”とか思ってんのかなぁって思ってぇ~」
「もしかしなくてもそうじゃんよ」
他にどう解釈しろっつうんだよ。
第一“ロードは不死身で空間移動が出来る”って報告受けてるし…
「……で?お嬢さんはいつまでそんなチェス盤みたいな柄で床に生えてんさ?」
……報告受けてるけど、この柄はないよなぁ…
違う能力なのか、空間移動の情報が間違ってるのか…
「なぁ、闘る気あんの?俺、とっととレイ連れて帰りたいんさ」
切実な願いだった。
早く帰ってレイを抱き枕にして寝たい。
「ブックマンもレイ狙いなのぉ?レイはあげないよぉ!それに僕は闘わないしぃ~」
「は?」
「ホラ、来たよ」
クスクス笑ってたロードがニヤリと口角を上げた瞬間…
「キミの闘うモノが」
いきなり背後に気配を感じて、俺は振り返ると同時に槌を構えた。
そして驚愕した。
振り返った先に立っていたのはどう見たって…
「…は……俺…ッ?」
俺だった。
昔の俺だった。
「……なワケねぇよな~」
これはロードの能力だ。
ロードには別の能力があった。あるいはこちらの“勘違い”だった。
ラビは槌を大きくすると、火判を使った。
「劫火灰燼ッ」
そう言ってラビが槌を振り下ろした瞬間もう一人のラビがスッと差し出した手で槌を止めた。
「な…ッ?!」
「ダメさ」
駄目?一体何が…
「お前は今、
「え…?」
思わずそう声を洩らした瞬間、槌がピシッと音を立てて崩れた。
「“空間移動”…そうだね。もしそれだけしか僕の能力を聞いてなかったら誤解しちゃうかもねぇ」
ボロボロに砕けた槌が足下に山を作っていく中、床から抜け出た縫いぐるみの様な姿のロードは、クスクス笑ってその場でクルクルと回った。
「僕がノアで唯一、方舟を使わず空間移動が出来るのは“僕の住む世界”と現実世界を繋げる事ができるから」
ロードの住む世界と現実世界?
まさか…
「僕はノアの“夢”を持つ羊!キミが今いる“ここ”はロード・キャメロットというノアが生んだ夢の中なんだよッッ」
キャハハハハハッ
誰かに呼ばれた気がした。
だから振り返ったのに、その先には誰もいなかった。
広く暗く長い水路が続いているだけで、そこには人がいる筈も無いのに…
「ディック」
そうジジィに呼ばれて体勢を戻すと、いきなり頭を殴られた。
「いってぇ~ッ!!何すんさ、ジジィ!!!」
舟から落ちたらどうしてくれんだ!
「黙れ、アホ!何をボケーッとしとるか、お前は“ラビ”だろうが!!」
“ラビだろうが”って事はまさか…
「ぁ…前の
「馬鹿モンが!!」
やっちゃったらしい。
ラビ、ラビ、ラビ、ラビ、ラビ、ラビ、ラビ…
俺はラビ…あぁ、面倒臭い。
「集中しろ。今回のログは今までみたいには甘くないぞ」
「……次のログって?」
「ヴァチカン直属対アクマ軍事機関、黒の教団だ」
ヴァチカン直属ねぇ…随分大物じゃねぇか。
「我等はそこでこれからエクソシストとなって歴史の闇に隠蔽されるであろう“人と悪魔の大戦”を記録する」
また戦争か…どいつもこいつも飽きねぇな。
しかも悪魔相手って…
何だか有る意味馬鹿馬鹿しくなってダルい体を舟に寄りかけた瞬間、一気に頭の中がスッキリした様な感じがした。
………ここはどこだ?
俺はアレン達とノアの方舟にいて…
夢世界を持つロードに精神だけ連れて来られた筈だ。
ここは現実じゃない。
ここは…
ロードが見せている夢だ。
「どうした“ラビ”忙しい奴だ、黙って座ってられんのか」
急に立ち上がった俺にジジィはそう洩らした。
よく言うさ…
「俺の記憶を読みやがったな」
良く出来てら…
良く出来過ぎてて嫌になる…
「惑わされねぇぞ、俺は戻る」
「“戻る”…どこへ?」
同じ“音”が響いた。
突然現れて舟の中に座った男には見覚えがあった。
「“ラビ”が記録している登場人物達のところへか?」
「…出やがったな」
こいつには初めにあった。
過去の俺にそっくりな、ロードがつくり出した過去の俺そっくりな偽物だ。
「“ラビ”お前がどこへ行けるっていうんさ…ブックマンの跡継ぎとしてどこにも心を移さずに生きてきたお前に戻る場所なんてあるわけないだろ?」
俺の生きる場所…
俺の……戻る場所…
「お前の“場所”お前の心はこの世界のどこにも無い。何者にも心を許さずただ傍観してきた者達の、それが相応しい罰さ」
「……そんなこと分かってら」
「どうだか」
「お前は人と悪魔の中で心を毒されておる」
ジジィの言葉に揺れた。
……確かに毒されているかも知れない。
ブックマンの跡継ぎとして俺は…
「昔のお前の隻眼はそんな弱い光を灯してはいなかった」
瞬間、舟の傍を棺が流れてゆき、俺は思わず目を疑った。
「レイ…!?」
眠るレイを入れて水路に漂う棺を見て顔色を青く染めたラビは、水路に飛び込むとレイを抱き寄せた。
「レイ…ッ」
「どうした“ラビ”?」
夢世界?
何さこれは…こんなの…
こんなのは唯の“悪夢”だ。
「そんなのただの歴史の一部にすぎないだろ?」
そんなの…
ただの紙の上の女だ──…