第3章 封印された箱
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「僕は…貴方を殺してしまうかもしれません」
そう言うアレンくんが恐かった。
アレンくんが…口にした言葉が恐かった。
“殺し”という言葉自体が…
「命の重みを知ってるって何?知ってるのに何で殺すワケ?」
何だかとても…
冷たくて、重くて、痛くて…
「“敵”だからだろ?」
不意に冷たい指で背をなぞられた様に気持ち悪くて…
落下する直前の浮遊感の様に首筋がゾワゾワして…
「ノアが悪で教団は正義。自分達は純白 だとでも思ったか?」
ナイフで刺された様に…
心臓を鷲掴みにされた様に…
私を駆け巡る不快感と痛み。
「偽善者ぶってんじゃねぇよ。やってる事は一緒だろ」
あぁ言われて初めて気付いたからこそ、私の中には彼の…
“彼等”の言葉が残っていて…ずっとずっと考えていた。
“やってる事は一緒”
偽善者と言われた事よりそっちがショックで…
彼等と一緒だという事が私は…
とても……とても…
「下衆」
恐かった。
ティキ・ミックに向かって行くアレンくんが何か言ったが、そんな…ある意味では下らない事を考えていた私にはアレンくんが何を言ったかが聞き取れ無かった。
「ぇ…」
「アレンッ!!」
小さく声を漏らした私の隣で、そう叫んで立ち上がったラビの前に、宙に浮くレロを足場にしたロードが立ちふさがった。
ねぇ、レイ…どうしたらいいの?
貴女の存在が私の決意を揺るがす。
ジャスデビの言葉が…私を追いつめる。
「ティッキーもねぇ、アレンの事が好きなんだよ。邪魔しな~いで♪」
ねぇ、レイ…
私に答えをちょうだい。
私に…
「僕と遊ぼ~ブックマン♪」
私に揺るぎない答えを──…
=姫君の寝台=
レイのキングサイズのベッドにユエとアグスティナの手によって寝かされたデビットとジャスデロは、一向に目が覚める気配が無かった。
大きな怪我が無い事を確認し、小さな切り傷や痣を手当てしたレイは、ベッドの端に腰掛けてずっと二人を見ていた。
頭や頬を撫でてみたり、髪を梳いたり、手を握ったり。
そうやって二人から離れようとしないレイを前に、サンドイッチと紅茶を運んできたユエは眉を寄せた。
「目覚めてから食事をしていない…何か食べろ」
レイはチラリとユエを一瞥すると、直ぐにデビットとジャスデロに視線を戻した。
『要らない』
「姫様、少しくらいは…」
『要らない』
「姫、御体に触ります」
『要らない』
食べたくない…何も…
シャールが壊れた。
それだけでいっぱいいっぱいだった。
“遊ぼう”何て言って皆をカードに付き合わせて…
笑いながら紅茶をちびちびと口にするのが精一杯だった。
「姫様」
ふと、そう口にしたティナが、ベッドに腰掛けた私の前にしゃがみ込んだ。
目の見えないティナの目は閉じられているのに、顔を覗き込まれた気分だった。
「少しで良いんです、口に入れて下さいな」
『要らない…』
要らない…必要無い。
別に死ぬワケじゃない…
「塞ぎ込んでらしてお体も気分も優れないのは分かります…でもだからといって何も口にしないのはいけません」
『……ほっといて…食べたくないし…何にもしたくないの』
デビットとジャスデロがこんな状態なのに喉に物が通る筈が無い。
そもそも口に入れたくもないし、動きたくも無い。
「ジャスデビ様が心配します」
アグスティナの一言に、レイの肩がピクリと震えた。
『……ジャスデビ?』
「目覚めた時にそんなお顔の姫様が居たらジャスデビ様が御心配なさいます…だからお願いです…少しでも食べて下さいな」
俯いていたレイは、暫くすると顔を上げた。
『ルル=ベル』
「はい、姫」
『チィを呼んできて』
“はい、姫”と言って部屋を出て行ったルルを見送ったレイは、サンドイッチを一つ手に取ると口に運んだ。
『…一つだけだよ』
「あぁ」
淡々とそう口にするユエとは対照的にアグスティナはレイに向かってニッコリと微笑んだ。
「食べて下さるだけ充分です」
サンドイッチを一つ、口に押し込む様にして食べ終わったレイは、紅茶でそれを流し込むと眠るジャスデロの隣に横になった。
『ねぇ、起きてジャスデロ…』
ねぇ…起きて二人共…
寂しくて、悲しくて、不安で…
死んじゃいそうだよ…
会った事も無い“怒”のノア、スキン・ボリック…彼が死んだ時であんなに苦しかった。
大事な大事なデビットとジャスデロがもしそうなっちゃったら…
想像しただけで私…
「姫」
瞬間、そうノック音と共に響いたルルの声を聞いたレイは、飛び起きると扉に向かって大きくジャンプした。
『チィ!』
ゆっくりと開いた扉から入ってきた男にレイはそう言いながら飛び付く抱き付いた。
「おやおや♡」
そう言って男は頬擦りをしながらレイを抱き締めた。
「ん~♡可愛いレイ、おかえりなさい♡」
『……』
「レイ…?」
『マシュマロボディーじゃない』
「酷いです…レイ」
メソメソと泣き出す男の頭をレイが優しく撫で、一際ギュッとレイを抱き締めた男は、そっと自分の頭に添えられたレイの手を取ると、レイを真っ直ぐ見据えた。
「何で自分で我輩を呼ばなかったんですか?」
『それは‥』
「力を使いましたね?」
そう言われてレイは思わず黙り込んだ。
そう…私は自分の力でチィを呼ぶ事が出来た。
でも“既に力を少し消費していた”からそうはしなかった。
『デビットとジャスデロがやられた…だから吸い取って捨てたの』
男はレイのベッドに寝かされたデビットとジャスデロを見ると、困った様に息を吐いた。
「困った子達ですね」
“遊び過ぎです”と口にした男を包む様に“それ”は現れた。
そして男を一瞬にして“千年伯爵”に変えた。
「迎えに行ってきまス♡」
レイから手を離そうとする千年伯爵の袖をつかんだレイは、自分に引き寄せる様に引っ張った。
「レイ?♡」
『チィ、私も行く』
「イケませんよ、レイ」
『スキン・ボリックが死んだ時凄く苦しかった。あんなのもう嫌…』
レイは千年伯爵から離れる様に二・三歩後ろに下がると、一瞬でドレスを正装のそれへと変えた。
『まだ“居る”んでしょ?だったら、残りを止めに行く』
もう誰も死なせない──…
「僕は…貴方を殺してしまうかもしれません」
そう言うアレンくんが恐かった。
アレンくんが…口にした言葉が恐かった。
“殺し”という言葉自体が…
「命の重みを知ってるって何?知ってるのに何で殺すワケ?」
何だかとても…
冷たくて、重くて、痛くて…
「“敵”だからだろ?」
不意に冷たい指で背をなぞられた様に気持ち悪くて…
落下する直前の浮遊感の様に首筋がゾワゾワして…
「ノアが悪で教団は正義。自分達は
ナイフで刺された様に…
心臓を鷲掴みにされた様に…
私を駆け巡る不快感と痛み。
「偽善者ぶってんじゃねぇよ。やってる事は一緒だろ」
あぁ言われて初めて気付いたからこそ、私の中には彼の…
“彼等”の言葉が残っていて…ずっとずっと考えていた。
“やってる事は一緒”
偽善者と言われた事よりそっちがショックで…
彼等と一緒だという事が私は…
とても……とても…
「下衆」
恐かった。
ティキ・ミックに向かって行くアレンくんが何か言ったが、そんな…ある意味では下らない事を考えていた私にはアレンくんが何を言ったかが聞き取れ無かった。
「ぇ…」
「アレンッ!!」
小さく声を漏らした私の隣で、そう叫んで立ち上がったラビの前に、宙に浮くレロを足場にしたロードが立ちふさがった。
ねぇ、レイ…どうしたらいいの?
貴女の存在が私の決意を揺るがす。
ジャスデビの言葉が…私を追いつめる。
「ティッキーもねぇ、アレンの事が好きなんだよ。邪魔しな~いで♪」
ねぇ、レイ…
私に答えをちょうだい。
私に…
「僕と遊ぼ~ブックマン♪」
私に揺るぎない答えを──…
=姫君の寝台=
レイのキングサイズのベッドにユエとアグスティナの手によって寝かされたデビットとジャスデロは、一向に目が覚める気配が無かった。
大きな怪我が無い事を確認し、小さな切り傷や痣を手当てしたレイは、ベッドの端に腰掛けてずっと二人を見ていた。
頭や頬を撫でてみたり、髪を梳いたり、手を握ったり。
そうやって二人から離れようとしないレイを前に、サンドイッチと紅茶を運んできたユエは眉を寄せた。
「目覚めてから食事をしていない…何か食べろ」
レイはチラリとユエを一瞥すると、直ぐにデビットとジャスデロに視線を戻した。
『要らない』
「姫様、少しくらいは…」
『要らない』
「姫、御体に触ります」
『要らない』
食べたくない…何も…
シャールが壊れた。
それだけでいっぱいいっぱいだった。
“遊ぼう”何て言って皆をカードに付き合わせて…
笑いながら紅茶をちびちびと口にするのが精一杯だった。
「姫様」
ふと、そう口にしたティナが、ベッドに腰掛けた私の前にしゃがみ込んだ。
目の見えないティナの目は閉じられているのに、顔を覗き込まれた気分だった。
「少しで良いんです、口に入れて下さいな」
『要らない…』
要らない…必要無い。
別に死ぬワケじゃない…
「塞ぎ込んでらしてお体も気分も優れないのは分かります…でもだからといって何も口にしないのはいけません」
『……ほっといて…食べたくないし…何にもしたくないの』
デビットとジャスデロがこんな状態なのに喉に物が通る筈が無い。
そもそも口に入れたくもないし、動きたくも無い。
「ジャスデビ様が心配します」
アグスティナの一言に、レイの肩がピクリと震えた。
『……ジャスデビ?』
「目覚めた時にそんなお顔の姫様が居たらジャスデビ様が御心配なさいます…だからお願いです…少しでも食べて下さいな」
俯いていたレイは、暫くすると顔を上げた。
『ルル=ベル』
「はい、姫」
『チィを呼んできて』
“はい、姫”と言って部屋を出て行ったルルを見送ったレイは、サンドイッチを一つ手に取ると口に運んだ。
『…一つだけだよ』
「あぁ」
淡々とそう口にするユエとは対照的にアグスティナはレイに向かってニッコリと微笑んだ。
「食べて下さるだけ充分です」
サンドイッチを一つ、口に押し込む様にして食べ終わったレイは、紅茶でそれを流し込むと眠るジャスデロの隣に横になった。
『ねぇ、起きてジャスデロ…』
ねぇ…起きて二人共…
寂しくて、悲しくて、不安で…
死んじゃいそうだよ…
会った事も無い“怒”のノア、スキン・ボリック…彼が死んだ時であんなに苦しかった。
大事な大事なデビットとジャスデロがもしそうなっちゃったら…
想像しただけで私…
「姫」
瞬間、そうノック音と共に響いたルルの声を聞いたレイは、飛び起きると扉に向かって大きくジャンプした。
『チィ!』
ゆっくりと開いた扉から入ってきた男にレイはそう言いながら飛び付く抱き付いた。
「おやおや♡」
そう言って男は頬擦りをしながらレイを抱き締めた。
「ん~♡可愛いレイ、おかえりなさい♡」
『……』
「レイ…?」
『マシュマロボディーじゃない』
「酷いです…レイ」
メソメソと泣き出す男の頭をレイが優しく撫で、一際ギュッとレイを抱き締めた男は、そっと自分の頭に添えられたレイの手を取ると、レイを真っ直ぐ見据えた。
「何で自分で我輩を呼ばなかったんですか?」
『それは‥』
「力を使いましたね?」
そう言われてレイは思わず黙り込んだ。
そう…私は自分の力でチィを呼ぶ事が出来た。
でも“既に力を少し消費していた”からそうはしなかった。
『デビットとジャスデロがやられた…だから吸い取って捨てたの』
男はレイのベッドに寝かされたデビットとジャスデロを見ると、困った様に息を吐いた。
「困った子達ですね」
“遊び過ぎです”と口にした男を包む様に“それ”は現れた。
そして男を一瞬にして“千年伯爵”に変えた。
「迎えに行ってきまス♡」
レイから手を離そうとする千年伯爵の袖をつかんだレイは、自分に引き寄せる様に引っ張った。
「レイ?♡」
『チィ、私も行く』
「イケませんよ、レイ」
『スキン・ボリックが死んだ時凄く苦しかった。あんなのもう嫌…』
レイは千年伯爵から離れる様に二・三歩後ろに下がると、一瞬でドレスを正装のそれへと変えた。
『まだ“居る”んでしょ?だったら、残りを止めに行く』
もう誰も死なせない──…