第3章 封印された箱
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56
ねぇ、レイ…
僕が“家出すれば?”何て言ったのがいけなかったのかな?
「大丈夫だよぉ、アレン♪」
屋敷を出なければ、レイが奴等と仲良くなっちゃう事も…
シャールが壊れる事も、ユエが傷付く事も無かった。
全部…僕の所為なのかな…?
……でもさ…
「出口の扉はこの塔の最上階にちゃんと用意してあるから」
傷付いて、失って、手にして…
殺し、無くして、隔離されて…
そんな新しいレイに新しい何かを与えて上げたかった。だから…
「ちゃんと通じてれば良いんですが」
僕はレイを唆した。
無くした物を取り戻すつもりは無かったけど、レイには前の様に自由で居て欲しかった。
「ふふ♪」
その結果が…コレだ。
こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ…
「“外には”通じてるよぉ」
暗い部屋なんか忘れて、広いだけの屋敷なんか忘れて…
好きな所に行って、食べて、飲んで、ショッピングして…一時だけど解放されて。
少しだけ満足して戻ってきてくれると思ってた。
「でもね…」
でもレイは帰って来なかった。
会いに来てくれなかった…
「レイの所には通してあげない♡」
ねぇ、レイ…
僕の所為で、レイはまたいっぱい悲しんだよね。
ごめんね…
ごめんね…
ごめんね…
今度は…今度こそ…
レイをまもるからね──…
=敵=
「話したい事って何ですか、ティキ・ミック卿…それとも“手癖の悪い孤児の流れもの”さん?」
そう言う少年、アレン・ウォーカーにティキはクスリと笑った。
「そうツンツンすんなよ少年。ノアをパンツ一丁にしたエクソシストなんて少年が初だぜ?俺等って縁あると思わん?」
「別に…カードでパンツ一丁にした人なんていっぱいいますから」
「おぉう、黒い発言」
紳士な振りして良くやるわ…
アッサリと言いやがった。
「………この左腕 の事ですか?」
そうアレンが訊ねれば、ティキはニヤリと口角を上げて笑った。
「実はけっこー衝撃だったんだよね…確かに壊したハズなんだけど」
「壊せてなかったんでしょう?ここに在るんだから」
アレンとティキが黙って見つめ合う中、ロードはクルクルと楽しそうに笑いながらアレンに駆け寄った。
「イノセンスに興味出てきたのぉ、ティッキー?」
「ちょっと出てきた」
確かに壊した筈だった。
壊れてなかった上、復活するだなんて…
今まではこんな事は無かった。
「…じゃさ、少年」
同じ様に壊したのに…
「ティーズに心臓を喰われても生きてたのはその左腕のせいなワケか?」
「心臓って…ッ!?」
「聞いてねぇぞ…おい、アレン!お前そんな傷負ってんのか!」
心臓を喰われた?!
あの竹藪で…ティムキャンピーが逃げた後何があったんだ…
「左腕 の一部が心臓の一部になってくれてます…問題はありませんよ」
ロードに抱き付かれながらそう困った様に口にしたアレンを前にラビは混乱した。
どういう事だ…
“イノセンスがノアに宿る”レイのそれは異例だ。
そして“イノセンスが適合者を救う”これも異例だ。
レイやリナリーだけじゃなくてアレンも…アレンもイノセンスに助けられてる。
異例が三人…
“レイ・アストレイ”
“リナリー・リー”
“アレン・ウォーカー”
レイの異例が戦争の終焉の鍵、リナリーの異例がハートの可能性という考えは安易だったか。
レイは兎も角…リナリーがハートという考えだとアレンもハートという事になってしまう。
ハートは一つとされている…
三人の異例にはもっと別の意味があるんじゃないのか?
キロクしたぁ、ブックマン?
瞬間、ラビの頭の中にそうロードの声が響き、ラビが弾かれる様に顔を上げると、ロードは“シィー♪”と唇に人指し指を当てた。
「……ッ」
顔色を青く染めたラビは、サッとロードから目をそらした。
読まれてる?いや、そんな事は無い筈さ…
「ロード、そろそろ少年から離れてくんない?」
そろそろ話を進めたい。
そう思って煙草に火をつけながらそう言うと、ロードは頬を膨らませてアレン・ウォーカーに抱き付く腕に力を入れた。
「え~愛してるのにぃッ!!」
「ロートたま──ッ!!」
「あの…」
自分に抱き付くロードと、そんなロードを怒るレロ…そんな二人を前に、アレンは思わずそう洩らした。
「コラコラ、エクソシストとノアの恋は実らねぇぞ」
「えぇ──…ティッキー人の事言えないじゃ~ん」
「いや、まぁ…そうだけども」
瞬間、黒いドレスを教団の団服に変えて俺の前に立ちはだかったあの時のレイが頭を過ぎった。
ノアとエクソシスト……か…
「て…いやいやいや!エクソシストである前にノアだし!」
確かに教団側と仲が良いみたいだが、レイはノアだ。
うっかり流されそうになった…
ロードは俺の反応を楽しんでいるらしく、クスクスと笑っている。
「好きだって認めるんだぁ?」
「うっせぇな…もぅ」
気付いてるくせによく言う…
「ふふ♪」
楽しそうに笑ってるロードが、心の中では屋敷に居るレイを気に掛けているのは知っていた。
レイに家出を提案したのは僕なんだよぉ、ティッキー…
“ユエが一緒ならきっと大丈夫だよ”って……
双子と合流する前にそう言っていたロードは悲しそうな顔をしていたから…
千年公はどうする気だろう?
レイが家出をした事で…レイが教団側と接触した事で、かなり状況は変わった筈だ。
まぁ…
大部分は変わってねぇし。
「俺ね…」
千年公のことだから、無理矢理にでも修正すると思うけど。
「千年公の…終焉の…シナリオっての?遊び半分で参加してたんだけどさ…やっぱ悪はそうでなくっちゃあなぁ」
そう言いながらティキが立ち上がり“ガタン”という音だけが静かな部屋に響いた。
「うん…少年のおかげでちょっと自覚出てきた」
吐いた煙草の煙が視界を淡い白で染める。
やっと分かった。やっとハッキリ自覚した。
イノセンスがしつこい悪魔だという事を…俺がレイを好きだという事を…
やっと…やっと分かった。
「退治?本気でやんねぇとな…って」
瞬間、アレンはリナリーの肩にとまった蝶を発動した左腕の爪で貫くと、ティキを睨み付ける様に見据えた。
「ティキ・ミック僕も一つ言っときたいんですが…」
ティキは煙草を加え直すとニヤリと口角を上げて笑った。
あぁ、愉快…愉快だ。
「これ以上僕の仲間に手を掛けたら……僕は…貴方を殺してしまうかもしれません」
この少年はどんどん黒く染まってゆく…
あぁ、どうしよう…
殺したくないけど…殺したい。
テーブルを足場に俺に向かって突っ込んでくる少年は、もう止まる事は無いだろう。
「少年の事は嫌いじゃないんだがな…」
前へ突き出した右手の掌からティーズを出しながら小さく呟いたそれを少年は知る由もない。
「ラストダンスといこうぜ、少年」
遊んでやるよ──…
ねぇ、レイ…
僕が“家出すれば?”何て言ったのがいけなかったのかな?
「大丈夫だよぉ、アレン♪」
屋敷を出なければ、レイが奴等と仲良くなっちゃう事も…
シャールが壊れる事も、ユエが傷付く事も無かった。
全部…僕の所為なのかな…?
……でもさ…
「出口の扉はこの塔の最上階にちゃんと用意してあるから」
傷付いて、失って、手にして…
殺し、無くして、隔離されて…
そんな新しいレイに新しい何かを与えて上げたかった。だから…
「ちゃんと通じてれば良いんですが」
僕はレイを唆した。
無くした物を取り戻すつもりは無かったけど、レイには前の様に自由で居て欲しかった。
「ふふ♪」
その結果が…コレだ。
こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ…
「“外には”通じてるよぉ」
暗い部屋なんか忘れて、広いだけの屋敷なんか忘れて…
好きな所に行って、食べて、飲んで、ショッピングして…一時だけど解放されて。
少しだけ満足して戻ってきてくれると思ってた。
「でもね…」
でもレイは帰って来なかった。
会いに来てくれなかった…
「レイの所には通してあげない♡」
ねぇ、レイ…
僕の所為で、レイはまたいっぱい悲しんだよね。
ごめんね…
ごめんね…
ごめんね…
今度は…今度こそ…
レイをまもるからね──…
=敵=
「話したい事って何ですか、ティキ・ミック卿…それとも“手癖の悪い孤児の流れもの”さん?」
そう言う少年、アレン・ウォーカーにティキはクスリと笑った。
「そうツンツンすんなよ少年。ノアをパンツ一丁にしたエクソシストなんて少年が初だぜ?俺等って縁あると思わん?」
「別に…カードでパンツ一丁にした人なんていっぱいいますから」
「おぉう、黒い発言」
紳士な振りして良くやるわ…
アッサリと言いやがった。
「………この
そうアレンが訊ねれば、ティキはニヤリと口角を上げて笑った。
「実はけっこー衝撃だったんだよね…確かに壊したハズなんだけど」
「壊せてなかったんでしょう?ここに在るんだから」
アレンとティキが黙って見つめ合う中、ロードはクルクルと楽しそうに笑いながらアレンに駆け寄った。
「イノセンスに興味出てきたのぉ、ティッキー?」
「ちょっと出てきた」
確かに壊した筈だった。
壊れてなかった上、復活するだなんて…
今まではこんな事は無かった。
「…じゃさ、少年」
同じ様に壊したのに…
「ティーズに心臓を喰われても生きてたのはその左腕のせいなワケか?」
「心臓って…ッ!?」
「聞いてねぇぞ…おい、アレン!お前そんな傷負ってんのか!」
心臓を喰われた?!
あの竹藪で…ティムキャンピーが逃げた後何があったんだ…
「
ロードに抱き付かれながらそう困った様に口にしたアレンを前にラビは混乱した。
どういう事だ…
“イノセンスがノアに宿る”レイのそれは異例だ。
そして“イノセンスが適合者を救う”これも異例だ。
レイやリナリーだけじゃなくてアレンも…アレンもイノセンスに助けられてる。
異例が三人…
“レイ・アストレイ”
“リナリー・リー”
“アレン・ウォーカー”
レイの異例が戦争の終焉の鍵、リナリーの異例がハートの可能性という考えは安易だったか。
レイは兎も角…リナリーがハートという考えだとアレンもハートという事になってしまう。
ハートは一つとされている…
三人の異例にはもっと別の意味があるんじゃないのか?
キロクしたぁ、ブックマン?
瞬間、ラビの頭の中にそうロードの声が響き、ラビが弾かれる様に顔を上げると、ロードは“シィー♪”と唇に人指し指を当てた。
「……ッ」
顔色を青く染めたラビは、サッとロードから目をそらした。
読まれてる?いや、そんな事は無い筈さ…
「ロード、そろそろ少年から離れてくんない?」
そろそろ話を進めたい。
そう思って煙草に火をつけながらそう言うと、ロードは頬を膨らませてアレン・ウォーカーに抱き付く腕に力を入れた。
「え~愛してるのにぃッ!!」
「ロートたま──ッ!!」
「あの…」
自分に抱き付くロードと、そんなロードを怒るレロ…そんな二人を前に、アレンは思わずそう洩らした。
「コラコラ、エクソシストとノアの恋は実らねぇぞ」
「えぇ──…ティッキー人の事言えないじゃ~ん」
「いや、まぁ…そうだけども」
瞬間、黒いドレスを教団の団服に変えて俺の前に立ちはだかったあの時のレイが頭を過ぎった。
ノアとエクソシスト……か…
「て…いやいやいや!エクソシストである前にノアだし!」
確かに教団側と仲が良いみたいだが、レイはノアだ。
うっかり流されそうになった…
ロードは俺の反応を楽しんでいるらしく、クスクスと笑っている。
「好きだって認めるんだぁ?」
「うっせぇな…もぅ」
気付いてるくせによく言う…
「ふふ♪」
楽しそうに笑ってるロードが、心の中では屋敷に居るレイを気に掛けているのは知っていた。
レイに家出を提案したのは僕なんだよぉ、ティッキー…
“ユエが一緒ならきっと大丈夫だよ”って……
双子と合流する前にそう言っていたロードは悲しそうな顔をしていたから…
千年公はどうする気だろう?
レイが家出をした事で…レイが教団側と接触した事で、かなり状況は変わった筈だ。
まぁ…
大部分は変わってねぇし。
「俺ね…」
千年公のことだから、無理矢理にでも修正すると思うけど。
「千年公の…終焉の…シナリオっての?遊び半分で参加してたんだけどさ…やっぱ悪はそうでなくっちゃあなぁ」
そう言いながらティキが立ち上がり“ガタン”という音だけが静かな部屋に響いた。
「うん…少年のおかげでちょっと自覚出てきた」
吐いた煙草の煙が視界を淡い白で染める。
やっと分かった。やっとハッキリ自覚した。
イノセンスがしつこい悪魔だという事を…俺がレイを好きだという事を…
やっと…やっと分かった。
「退治?本気でやんねぇとな…って」
瞬間、アレンはリナリーの肩にとまった蝶を発動した左腕の爪で貫くと、ティキを睨み付ける様に見据えた。
「ティキ・ミック僕も一つ言っときたいんですが…」
ティキは煙草を加え直すとニヤリと口角を上げて笑った。
あぁ、愉快…愉快だ。
「これ以上僕の仲間に手を掛けたら……僕は…貴方を殺してしまうかもしれません」
この少年はどんどん黒く染まってゆく…
あぁ、どうしよう…
殺したくないけど…殺したい。
テーブルを足場に俺に向かって突っ込んでくる少年は、もう止まる事は無いだろう。
「少年の事は嫌いじゃないんだがな…」
前へ突き出した右手の掌からティーズを出しながら小さく呟いたそれを少年は知る由もない。
「ラストダンスといこうぜ、少年」
遊んでやるよ──…