第3章 封印された箱
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55
「ダメ…また……ゃ」
消えていく…
また一つ、誰かの時間が私の中から消えていく…
「いや…」
もう嫌だ…
もう何も…何一つ…誰も…
なくしたくないのに。
「やめ…て…」
どうする事も出来無い無力な私は唯、力を持続させる事と泣く事しか出来無い。
そう思ったら…
思わずレイから預かった黒い布に巻かれた荷物を抱き締める腕に力を込めていた。
「ッ…やめてえぇぇ!!」
=タダイマ=
不安な時は…楽しい事考えようよ。
日本へ向かう方舟の中でコムイさんはそう言って笑った。
“みんなが帰ってきたら”それを考えようと…
まずは“おかえり”と言って肩を叩くんだ。
…で、リナリーとレイを思いっきり抱き締める!
思わず笑ってしまった。
あまりにもコムイさんらしかったから…
アレンくんにはご飯をたくさん食べさせてあげなきゃね。
ラビはレイを抱えてその辺で一緒に寝ちゃうだろうから毛布をかけてあげないと…
大人組はワインで乾杯したいね。
クロウリーはきっと嬉しくて…
もしかしたら泣いてしまうかもしれない。
ホームでは誰も彼を怖れない。
お酒もすすむだろう…
酒癖悪くないといいけど…
ドンチャン騒いで…
眠ってしまえたら最高だね…
食べ過ぎて、呑み過ぎて…
騒ぎ疲れて…
床にころんと横になった拍子に眠ってしまえたらいい。
一人また一人と、騒ぎ疲れて眠りにつく様は面白いだろうし、きっと楽しい夢が見られる。
そして少し遅れて神田くんが仏頂面で入ってくるんだ。
神田…
やきもち妬きだからレイをラビから引き離してソファーに寝かせるだろうね。
レイを抱えて眠ったり、レイをソファーに寝かせたり…
きっとレイの頭を一撫でして側に座るだろうね。
みんな、みんな…目に浮かぶ──…
鮮明に浮かぶのに…ありそうな事を想像する事はいくらでも出来るのに…
今のままでは実現出来無い。
今のままじゃ…レイが足りない。
取り戻さなくちゃ…
レイをエクソシストに。
レイを仲間に。
レイを教団 に…
「頑張らなきゃ」
そう唐突にリナリーが呟き、僕は我に返った。
そして…
「「がんばる?」」
一瞬意味が分からなかった。
ラビと綺麗に重なった声にも少し違和感を感じた。
「やっぱり足…無理してるでしょ、リナリー!」
頑張らなきゃって…
ティムが行方不明な今、コムイさんに観られる事もないし、やっぱりおぶった方が良いんじゃ…
「ち、違うの…考え事!教団に帰ったら直ぐ鍛練し直さなきゃなって」
「うへぇッ!リナリー、な~に真面目な事考えてんさぁ!?俺寝る!寝ますよ、そんなもん!!」
“誰か毛布かけといてさ!”と言うラビを見てコムイさんを思い出した。
コムイさんが言ってた通りだ。
その辺で一緒に寝ちゃうだろうから毛布をかけてあげないと…
…一緒に?
「……ラビ…一人で?」
「んなもんレイを抱き締めて寝るに決まってんじゃん!レイは抱き心地最高で抱き枕に丁度良いんさ~」
「殴り飛ばしますよ。僕がやんなくても神田がやると思いますけど」
アレンがそう、にこやかに微笑んで言えば、ラビは顔色を青く染めて黙り込んだ。
「そ…それより、リナリー!もっと色気ある事言わんと恋人できねぇさ!」
「ラビには関係無いでしょ!」
「失礼ですよ、ラビ!」
女性に何て事を言うんだろうか…そう思って思わず蹴りを入れた。
“いで!”と声を漏らしたラビが真剣に…でも困った様に頭を掻き、違和感を覚えた。
「か…ッ関係は…ねぇけどさ…ァ…アレンは帰ったら何すんさ?」
「食べます」
定番物からイタリア、フランス、インドにメキシコ、日本、タイ、ベトナム料理…
「ジュリーさんのありとあらゆる料理を全ッッッ部!!!」
シメのみたらし団子まで、食べて食べて食べまくる!
そう思った瞬間、ずっと黙っていたチャオジーが弾かれた様に笑い出した。
「す、すいませんッス…なんか今のエクソシスト様達見てたら俺らと同じ普通の人みたいで…」
ぎりっと固く握り締められた拳を見て、チャオジーが何を考えているのかが分かった。
「レイも一緒だよ」
そう口にすれば、チャオジーの肩がビクリと震えた。
「ノアであっても、人間を護ろうとしたのに変わりない」
レイはノアなのに命を掛けて人間を護ろうとした。
僕等を…僕等を護ろうとした。
レイはノアだけど敵じゃない。
チャオジーにはそれが分かっていない様だった。
「僕が教団で一番にしたい事は皆でコムイさん達に“ただいま”を言う事です」
ニッコリと微笑んでそう言ったアレンは、目の前の大きな扉へと続く残り数段の階段上ると、扉の取っ手を握り締めた。
「どんなに望みが薄くったって、何も確かなものが無くったって…僕は絶ッ対諦めない。それに…レイは僕等の仲間です」
だから一緒に皆に“ただいま”を言うんだ。
だから絶対に…
「レイは連れて帰ります」
この扉の先に、レイに繋がる一歩がある。
「アッレーン♡」
ロードは部屋の扉が開いた瞬間、そう叫びながら扉を開けた少年、アレン・ウォーカーに飛び付く様に抱き付いた。
俺は、肉をフォークで口に運びながらそれを傍観した。
「ロード…ッ」
「キャッホォ〜♡」
驚くアレン・ウォーカーにそう言いながら笑ったロードは次の瞬間“ちゅぅ”とアレン・ウォーカーの唇に口付けた。
「「「んなっ…!!?」」」
「嘘だろ‥おぃ」
何故かは分からないが、気絶していたレロが丁度目覚めてロードに説教をし出す中、俺は思わずフォークとナイフを置いた。
「ロード何?お前…少年の事そんなに好きだったの?」
楽しそうに笑いながらレロを片手にこっちに駆け寄ってくるロードは酷く無邪気だ。
「千年公以外とちゅーしてるとこはじめて見たぞ」
「ティッキーにはしなぁ~い」
いや‥別にして欲しいわけじゃないし。それならレイにしてもらうし。
……いや、してくれるか分かんねぇけども。
「早く会いてぇな…」
「何か言った、ティッキー?」
「べっつに~」
ティキは椅子に座り直すとフォークとナイフを手に食事を再開した。
「…何してんの座って。待ってる間に腹減ってさ…一緒にどう?」
顔色一つ変えずに突っ立ったままこっちを警戒しているエクソシスト達は、一向に座る気配がない。
「…闘る前にちょっと話したいんだけど」
「お断りします。食事は時間がある時ゆっくりしますから」
かっわいくねぇ──…
ちょっとくらい気に掛けろっつぅの。
「その時間?後どれくらいか知りたくない?」
そう言って意地悪く口角を上げて笑えば、エクソシスト達は漸く顔色を変えた。
「外、絶景だよぉ」
テーブルに腰掛けたロードがクスリと笑い、アレンは慌てて窓際に駆け寄った。
「な…ッ」
外を見たエクソシスト達の表情が一気に凍り付く様は見ていて愉快だった。
だよねぇ…だって…
「後一時間も無いかな…残るは俺達の居るこの塔のみ。ここ以外はすべて崩壊し消滅した」
「そんな…ッ」
だってあそこにはコイツ等の仲間がまだ二人居た。
あの南国の街並みも、荒れた砂地も、長い長い廊下も、円柱の書庫も…あの二人も…
もう何もかも跡形も無く消え去っている。
瞬間“バタンッ”という大きな音を立てて部屋の扉が閉まり、取っ手には何重にも巻き付いた鎖と錠前が掛けられた。
「何を…!!」
宙に浮いたレロを足場に、片足を扉に向けて突き出していたロードはニヤリと口角を上げて笑った。
「座りなよ」
「座れよエクソシスト…俺達が恐ろしいのか?」
馬鹿にした様に笑って見せれば、テーブルに腕を叩き付ける様にしてアレン・ウォーカーは面白いくらい素直に席に着いた。
「それで良いんだよ」
さて“選ぼう”か──…
「ダメ…また……ゃ」
消えていく…
また一つ、誰かの時間が私の中から消えていく…
「いや…」
もう嫌だ…
もう何も…何一つ…誰も…
なくしたくないのに。
「やめ…て…」
どうする事も出来無い無力な私は唯、力を持続させる事と泣く事しか出来無い。
そう思ったら…
思わずレイから預かった黒い布に巻かれた荷物を抱き締める腕に力を込めていた。
「ッ…やめてえぇぇ!!」
=タダイマ=
不安な時は…楽しい事考えようよ。
日本へ向かう方舟の中でコムイさんはそう言って笑った。
“みんなが帰ってきたら”それを考えようと…
まずは“おかえり”と言って肩を叩くんだ。
…で、リナリーとレイを思いっきり抱き締める!
思わず笑ってしまった。
あまりにもコムイさんらしかったから…
アレンくんにはご飯をたくさん食べさせてあげなきゃね。
ラビはレイを抱えてその辺で一緒に寝ちゃうだろうから毛布をかけてあげないと…
大人組はワインで乾杯したいね。
クロウリーはきっと嬉しくて…
もしかしたら泣いてしまうかもしれない。
ホームでは誰も彼を怖れない。
お酒もすすむだろう…
酒癖悪くないといいけど…
ドンチャン騒いで…
眠ってしまえたら最高だね…
食べ過ぎて、呑み過ぎて…
騒ぎ疲れて…
床にころんと横になった拍子に眠ってしまえたらいい。
一人また一人と、騒ぎ疲れて眠りにつく様は面白いだろうし、きっと楽しい夢が見られる。
そして少し遅れて神田くんが仏頂面で入ってくるんだ。
神田…
やきもち妬きだからレイをラビから引き離してソファーに寝かせるだろうね。
レイを抱えて眠ったり、レイをソファーに寝かせたり…
きっとレイの頭を一撫でして側に座るだろうね。
みんな、みんな…目に浮かぶ──…
鮮明に浮かぶのに…ありそうな事を想像する事はいくらでも出来るのに…
今のままでは実現出来無い。
今のままじゃ…レイが足りない。
取り戻さなくちゃ…
レイをエクソシストに。
レイを仲間に。
レイを
「頑張らなきゃ」
そう唐突にリナリーが呟き、僕は我に返った。
そして…
「「がんばる?」」
一瞬意味が分からなかった。
ラビと綺麗に重なった声にも少し違和感を感じた。
「やっぱり足…無理してるでしょ、リナリー!」
頑張らなきゃって…
ティムが行方不明な今、コムイさんに観られる事もないし、やっぱりおぶった方が良いんじゃ…
「ち、違うの…考え事!教団に帰ったら直ぐ鍛練し直さなきゃなって」
「うへぇッ!リナリー、な~に真面目な事考えてんさぁ!?俺寝る!寝ますよ、そんなもん!!」
“誰か毛布かけといてさ!”と言うラビを見てコムイさんを思い出した。
コムイさんが言ってた通りだ。
その辺で一緒に寝ちゃうだろうから毛布をかけてあげないと…
…一緒に?
「……ラビ…一人で?」
「んなもんレイを抱き締めて寝るに決まってんじゃん!レイは抱き心地最高で抱き枕に丁度良いんさ~」
「殴り飛ばしますよ。僕がやんなくても神田がやると思いますけど」
アレンがそう、にこやかに微笑んで言えば、ラビは顔色を青く染めて黙り込んだ。
「そ…それより、リナリー!もっと色気ある事言わんと恋人できねぇさ!」
「ラビには関係無いでしょ!」
「失礼ですよ、ラビ!」
女性に何て事を言うんだろうか…そう思って思わず蹴りを入れた。
“いで!”と声を漏らしたラビが真剣に…でも困った様に頭を掻き、違和感を覚えた。
「か…ッ関係は…ねぇけどさ…ァ…アレンは帰ったら何すんさ?」
「食べます」
定番物からイタリア、フランス、インドにメキシコ、日本、タイ、ベトナム料理…
「ジュリーさんのありとあらゆる料理を全ッッッ部!!!」
シメのみたらし団子まで、食べて食べて食べまくる!
そう思った瞬間、ずっと黙っていたチャオジーが弾かれた様に笑い出した。
「す、すいませんッス…なんか今のエクソシスト様達見てたら俺らと同じ普通の人みたいで…」
ぎりっと固く握り締められた拳を見て、チャオジーが何を考えているのかが分かった。
「レイも一緒だよ」
そう口にすれば、チャオジーの肩がビクリと震えた。
「ノアであっても、人間を護ろうとしたのに変わりない」
レイはノアなのに命を掛けて人間を護ろうとした。
僕等を…僕等を護ろうとした。
レイはノアだけど敵じゃない。
チャオジーにはそれが分かっていない様だった。
「僕が教団で一番にしたい事は皆でコムイさん達に“ただいま”を言う事です」
ニッコリと微笑んでそう言ったアレンは、目の前の大きな扉へと続く残り数段の階段上ると、扉の取っ手を握り締めた。
「どんなに望みが薄くったって、何も確かなものが無くったって…僕は絶ッ対諦めない。それに…レイは僕等の仲間です」
だから一緒に皆に“ただいま”を言うんだ。
だから絶対に…
「レイは連れて帰ります」
この扉の先に、レイに繋がる一歩がある。
「アッレーン♡」
ロードは部屋の扉が開いた瞬間、そう叫びながら扉を開けた少年、アレン・ウォーカーに飛び付く様に抱き付いた。
俺は、肉をフォークで口に運びながらそれを傍観した。
「ロード…ッ」
「キャッホォ〜♡」
驚くアレン・ウォーカーにそう言いながら笑ったロードは次の瞬間“ちゅぅ”とアレン・ウォーカーの唇に口付けた。
「「「んなっ…!!?」」」
「嘘だろ‥おぃ」
何故かは分からないが、気絶していたレロが丁度目覚めてロードに説教をし出す中、俺は思わずフォークとナイフを置いた。
「ロード何?お前…少年の事そんなに好きだったの?」
楽しそうに笑いながらレロを片手にこっちに駆け寄ってくるロードは酷く無邪気だ。
「千年公以外とちゅーしてるとこはじめて見たぞ」
「ティッキーにはしなぁ~い」
いや‥別にして欲しいわけじゃないし。それならレイにしてもらうし。
……いや、してくれるか分かんねぇけども。
「早く会いてぇな…」
「何か言った、ティッキー?」
「べっつに~」
ティキは椅子に座り直すとフォークとナイフを手に食事を再開した。
「…何してんの座って。待ってる間に腹減ってさ…一緒にどう?」
顔色一つ変えずに突っ立ったままこっちを警戒しているエクソシスト達は、一向に座る気配がない。
「…闘る前にちょっと話したいんだけど」
「お断りします。食事は時間がある時ゆっくりしますから」
かっわいくねぇ──…
ちょっとくらい気に掛けろっつぅの。
「その時間?後どれくらいか知りたくない?」
そう言って意地悪く口角を上げて笑えば、エクソシスト達は漸く顔色を変えた。
「外、絶景だよぉ」
テーブルに腰掛けたロードがクスリと笑い、アレンは慌てて窓際に駆け寄った。
「な…ッ」
外を見たエクソシスト達の表情が一気に凍り付く様は見ていて愉快だった。
だよねぇ…だって…
「後一時間も無いかな…残るは俺達の居るこの塔のみ。ここ以外はすべて崩壊し消滅した」
「そんな…ッ」
だってあそこにはコイツ等の仲間がまだ二人居た。
あの南国の街並みも、荒れた砂地も、長い長い廊下も、円柱の書庫も…あの二人も…
もう何もかも跡形も無く消え去っている。
瞬間“バタンッ”という大きな音を立てて部屋の扉が閉まり、取っ手には何重にも巻き付いた鎖と錠前が掛けられた。
「何を…!!」
宙に浮いたレロを足場に、片足を扉に向けて突き出していたロードはニヤリと口角を上げて笑った。
「座りなよ」
「座れよエクソシスト…俺達が恐ろしいのか?」
馬鹿にした様に笑って見せれば、テーブルに腕を叩き付ける様にしてアレン・ウォーカーは面白いくらい素直に席に着いた。
「それで良いんだよ」
さて“選ぼう”か──…