第3章 封印された箱
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『ユエったら、私の事からかってばっかり!』
別に今はからかったつもりは無かった。
唯、事実を言っただけだった。
『無口でクールなのに、時々意地悪な事言うんだよね~』
「…………レイ…が……無防備なのがいけないんだ」
言えなかった。
何が真実で、何が…
『あ~、私の所為?!』
“ま、いいか”と言って笑うレイはレイであってレイでは無いのだろう。
『私だけが、ユエが優しいって事知ってるし』
……言えなかった…
『ティナは?』
「菓子を取りに行ってる」
俺の何がレイを壊すか分からなかったから…
『ユエ、次は何しよっか?』
=変化=
『あ゙ぁ、また負けたぁ!』
「フフ…姫様、そろそろ諦めて下さいな」
悲痛な声を上げるレイを見て小さく笑うアグスティナの隣で、長い黒髪を一つに結った女性…ルル=ベルは小さく手を挙げた。
「姫、アグスティナが上がる際に捨てた札で私も上がりです」
そう言ったルルの手から離れた二枚のカードは、広いベッドの上へと積み上がった小さなカードの山へと落ちた。
「これで姫の三十六連敗です」
『ッ…ユエ~!ティナとルルが強すぎる!!』
手にしていた数枚のカードを天井に向かって投げたレイに、ユエは小さく溜め息を吐いた。
三人が始めたババ抜きは、アグスティナが毎回首位で、レイが勝つ気配が…レイがビリから抜け出る気配が全く無い。
「レイが弱いだけだ」
『ひっどー』
ぷくっと可愛らしく頬を膨らませたレイは、そう言いながらゴロリとベッドに寝転がると、紅茶を煎れるユエを見た。
「口を慎め、ユエ」
「…はい、ルル=ベル様」
『ルル、ユエはこのままで良いんだよ』
「しかし…」
『ユエは私の大切な家族だもん』
そう言ったレイが嬉しそうに笑うと、ユエも微かに微笑んだ。
「なりません、姫!護衛アクマの分際で家族にとは」
『家族なの』
「ッ…」
静かに言い切ってルルを見据えるレイとそれを受けるルル…
そんな二人を前に、アグスティナはベッドの上に広がったカードを手早く集めると、ニッコリと微笑みながらカードをきり始めた。
「姫様、次はどうしましょ?」
“またババ抜きにします?”と言うアグスティナに、レイは少し困った様に笑った。
『勝てないから別のが良いや』
「何が良いですか?」
『ポーカー!』
凄い早さでカードをきるアグスティナとユエが煎れた紅茶を口にするルルを前に、紅茶に一口口を付けたレイはぽつりぽつりと話し出した。
『ねぇ、ルル』
「はい、姫」
『私、ずっとこの部屋に…この屋敷に居たんだ』
「…存じてます」
『退屈な毎日を…片時も離れずに一緒に居てくれたのはユエとシャールなの』
“だからね”と続けたレイは、ふとルルに向かって気恥ずかしそうに歯を見せて笑った。
『だから大事なんだ』
レイが照れているのを誤魔化す様に紅茶を飲む一方、目を閉じて黙り込んだルルは、暫くすると目を開けて口を開いた。
「失言でした、お許しを」
『いいの…皆からすればアクマは玩具 だもんね』
“仕方無いよ”と言ってアグスティナから手札を受け取ったレイは、自分にだけに見える様に扇状にして広げると、小さく唸った。
『また勝てないかも…』
「あら姫様、それを口にしては勝負になりませんよ」
手札と睨めっこをしていたレイは、ふと何かに驚いた様に目を見開いた。
「姫様?」
「どうした、レイ?」
手にしていた手札をベッドの上に落としたレイは、一瞬にして扉の前へ立った。
「姫!!!」
ルルがそう声を上げてベッドから飛び降りた瞬間、レイは部屋から飛び出した。
ルル達の叫び声を背に、レイはドレスの裾を掴むと静かな廊下を裸足で駆け抜ける。
一気に駆け抜けた長い廊下…
失速する事無く屋敷の中央までくると、レイはそのままの勢いで吹き抜けに向かって手摺りを飛び越えた。
そして一気に一階へと飛び降りると、また走り出す。
瞬間、レイを黒い固まりが抜き去り、行く手を遮った。
急ブレーキをかけて立ち止まったレイの前に立ち塞がっていた黒い固まり…黒豹は、一瞬にしてルルへと姿を変えた。否、ルルへと姿を戻した。
「部屋を出ては駄目です、姫」
「レイ!」
「姫様!」
直ぐにユエとアグスティナも追い付き、レイはギュッとドレスの裾を握り締めた。
『行かなきゃ…』
「姫、一体どこへ…」
『ジャスデビの所に行かなきゃ』
「ジャスデビ?」
『声が聞こえたの…凄く苦しそうだった。だから行かなきゃ!!』
そう口にした瞬間、レイは向き合って立ちふさがっていたルルの背後に立っていた。
そして“行かなきゃ”と呟くとまた走り出した。
直ぐに三人も後を追う。
ルル達がいくら声を掛けても応える事の無かったレイは、一階の隅の方の部屋の前でピタリと立ち止まった。
そしてゆっくりと扉を開いた。
『デビット、ジャスデロ!!』
部屋の中ではそれぞれ片腕を負傷したデビットとジャスデロが倒れていた。
『デビット!ジャスデロ!』
二人に駆け寄ったレイは、座り込むと床に横たわる二人を何度も名前を呼び続けながら揺すったが、反応は無く、レイはギリッと歯軋りをするとジャスデロに口付けた。
「レイ?!」
レイが口付けると、見る見るうちにジャスデロの腕は元に戻り、レイはユエ達が止めるのも無視して今度はデビットに口付けた。
デビットの腕が元に戻ると、レイは体を起こして、猫が毛玉を吐く様に黒い石の様な固まりを吐き出した。
「姫、それは…」
レイは手にしていた黒い固まりを部屋の隅に投げつけると、スッと立ち上がった。
『ユエ、アグスティナ…二人を私の部屋に運んで』
「…はい、姫様」
ユエがデビットを…アグスティナがジャスデロを抱き上げると、レイは部屋を後にし、自室に向かって歩き出した。
「姫!姫の部屋に二人を運ぶなど…」
そこまで口にしたルルは、レイの目を見た瞬間口を閉じた。
『──…ない…』
黒いモヤモヤに…
押し潰されそうだ──…
『ユエったら、私の事からかってばっかり!』
別に今はからかったつもりは無かった。
唯、事実を言っただけだった。
『無口でクールなのに、時々意地悪な事言うんだよね~』
「…………レイ…が……無防備なのがいけないんだ」
言えなかった。
何が真実で、何が…
『あ~、私の所為?!』
“ま、いいか”と言って笑うレイはレイであってレイでは無いのだろう。
『私だけが、ユエが優しいって事知ってるし』
……言えなかった…
『ティナは?』
「菓子を取りに行ってる」
俺の何がレイを壊すか分からなかったから…
『ユエ、次は何しよっか?』
=変化=
『あ゙ぁ、また負けたぁ!』
「フフ…姫様、そろそろ諦めて下さいな」
悲痛な声を上げるレイを見て小さく笑うアグスティナの隣で、長い黒髪を一つに結った女性…ルル=ベルは小さく手を挙げた。
「姫、アグスティナが上がる際に捨てた札で私も上がりです」
そう言ったルルの手から離れた二枚のカードは、広いベッドの上へと積み上がった小さなカードの山へと落ちた。
「これで姫の三十六連敗です」
『ッ…ユエ~!ティナとルルが強すぎる!!』
手にしていた数枚のカードを天井に向かって投げたレイに、ユエは小さく溜め息を吐いた。
三人が始めたババ抜きは、アグスティナが毎回首位で、レイが勝つ気配が…レイがビリから抜け出る気配が全く無い。
「レイが弱いだけだ」
『ひっどー』
ぷくっと可愛らしく頬を膨らませたレイは、そう言いながらゴロリとベッドに寝転がると、紅茶を煎れるユエを見た。
「口を慎め、ユエ」
「…はい、ルル=ベル様」
『ルル、ユエはこのままで良いんだよ』
「しかし…」
『ユエは私の大切な家族だもん』
そう言ったレイが嬉しそうに笑うと、ユエも微かに微笑んだ。
「なりません、姫!護衛アクマの分際で家族にとは」
『家族なの』
「ッ…」
静かに言い切ってルルを見据えるレイとそれを受けるルル…
そんな二人を前に、アグスティナはベッドの上に広がったカードを手早く集めると、ニッコリと微笑みながらカードをきり始めた。
「姫様、次はどうしましょ?」
“またババ抜きにします?”と言うアグスティナに、レイは少し困った様に笑った。
『勝てないから別のが良いや』
「何が良いですか?」
『ポーカー!』
凄い早さでカードをきるアグスティナとユエが煎れた紅茶を口にするルルを前に、紅茶に一口口を付けたレイはぽつりぽつりと話し出した。
『ねぇ、ルル』
「はい、姫」
『私、ずっとこの部屋に…この屋敷に居たんだ』
「…存じてます」
『退屈な毎日を…片時も離れずに一緒に居てくれたのはユエとシャールなの』
“だからね”と続けたレイは、ふとルルに向かって気恥ずかしそうに歯を見せて笑った。
『だから大事なんだ』
レイが照れているのを誤魔化す様に紅茶を飲む一方、目を閉じて黙り込んだルルは、暫くすると目を開けて口を開いた。
「失言でした、お許しを」
『いいの…皆からすればアクマは
“仕方無いよ”と言ってアグスティナから手札を受け取ったレイは、自分にだけに見える様に扇状にして広げると、小さく唸った。
『また勝てないかも…』
「あら姫様、それを口にしては勝負になりませんよ」
手札と睨めっこをしていたレイは、ふと何かに驚いた様に目を見開いた。
「姫様?」
「どうした、レイ?」
手にしていた手札をベッドの上に落としたレイは、一瞬にして扉の前へ立った。
「姫!!!」
ルルがそう声を上げてベッドから飛び降りた瞬間、レイは部屋から飛び出した。
ルル達の叫び声を背に、レイはドレスの裾を掴むと静かな廊下を裸足で駆け抜ける。
一気に駆け抜けた長い廊下…
失速する事無く屋敷の中央までくると、レイはそのままの勢いで吹き抜けに向かって手摺りを飛び越えた。
そして一気に一階へと飛び降りると、また走り出す。
瞬間、レイを黒い固まりが抜き去り、行く手を遮った。
急ブレーキをかけて立ち止まったレイの前に立ち塞がっていた黒い固まり…黒豹は、一瞬にしてルルへと姿を変えた。否、ルルへと姿を戻した。
「部屋を出ては駄目です、姫」
「レイ!」
「姫様!」
直ぐにユエとアグスティナも追い付き、レイはギュッとドレスの裾を握り締めた。
『行かなきゃ…』
「姫、一体どこへ…」
『ジャスデビの所に行かなきゃ』
「ジャスデビ?」
『声が聞こえたの…凄く苦しそうだった。だから行かなきゃ!!』
そう口にした瞬間、レイは向き合って立ちふさがっていたルルの背後に立っていた。
そして“行かなきゃ”と呟くとまた走り出した。
直ぐに三人も後を追う。
ルル達がいくら声を掛けても応える事の無かったレイは、一階の隅の方の部屋の前でピタリと立ち止まった。
そしてゆっくりと扉を開いた。
『デビット、ジャスデロ!!』
部屋の中ではそれぞれ片腕を負傷したデビットとジャスデロが倒れていた。
『デビット!ジャスデロ!』
二人に駆け寄ったレイは、座り込むと床に横たわる二人を何度も名前を呼び続けながら揺すったが、反応は無く、レイはギリッと歯軋りをするとジャスデロに口付けた。
「レイ?!」
レイが口付けると、見る見るうちにジャスデロの腕は元に戻り、レイはユエ達が止めるのも無視して今度はデビットに口付けた。
デビットの腕が元に戻ると、レイは体を起こして、猫が毛玉を吐く様に黒い石の様な固まりを吐き出した。
「姫、それは…」
レイは手にしていた黒い固まりを部屋の隅に投げつけると、スッと立ち上がった。
『ユエ、アグスティナ…二人を私の部屋に運んで』
「…はい、姫様」
ユエがデビットを…アグスティナがジャスデロを抱き上げると、レイは部屋を後にし、自室に向かって歩き出した。
「姫!姫の部屋に二人を運ぶなど…」
そこまで口にしたルルは、レイの目を見た瞬間口を閉じた。
『──…ない…』
黒いモヤモヤに…
押し潰されそうだ──…