第2章 出会いと別れ
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「暇だな、楼季 」
「暇だね、皐悸 」
そう溜め息混じりにぼやきながらポニーテールの少年、皐悸とツインテールの少年、楼季は背を合わせて地に座り込んだ。
「おや、御疲れですか?」
座り込む双子にそう声を掛けた白髪に蒼色と緋色のオッドアイの青年は、座っていた背の高い木の枝から飛び降りた。
「そんな訳無いじゃん、紅」
「それは有り得無いよ、紅」
そう答えた双子は数秒後に再度口を開いた。
「いやでも……疲れたかも…」
「少しだけ……疲れたかも…」
それを聞いて青年…紅はクスクスと小さく笑った。
「おやおや」
「だってさ…コイツ等、少しはのびるまでの時間が延びたけど」
「はっきり言って全然詰まん無い上、無駄に気ぃ遣うからさ」
「「無駄に疲れるんだよね」」
「黙れ」
そう口にしながら地に沈んでいた身体をゆっくりと起こす。
体中が裂ける様に痛い…
「おや…起きてたん」
「グダグダ煩いぞ、子犬共」
さっきから黙って聞いてれば好き放題言いやがって…
言われても仕方無い状況なのが尚腹が立つ。
「目ぇ覚めたんだな」
「少し早くなったね」
「憎まれ口叩くなんて」
「余裕があるんだね」
「「いや…負け犬の遠吠えか」」
楽しそうに笑う二人を睨み付けたユエは、次に隣に倒れているシャールに目を向けた。
「シャール…いけるか?」
「あったりまえじゃん…やられっぱなしで黙ってられるか」
そう言いながらシャールは苦しそうに起き上がった。ダメージが大きいらしい。
「さぁ…クソ犬共掛かってきなよ!早く終わらせようじゃないか」
そうだな、シャール…
俺達にはレイが待っている…
「今度こそ潰してやるよ」
=闘う理由=
『ニャハハハハ!』
あ──…イライラする…
術での修業を終え、この頭にまで響く耳障りな笑い声を聞き出してからかれこれ何時間経っただろうか。
声を上げて笑っていた女はふと笑うのを止めると、目を細めてニヤリと笑った。
『もう終わりかい?』
長い銀髪を掻き上げながら可笑しそうにクスクス笑う女は、俺が答えずに黙っていると不機嫌そうに膨れて見せた。
『詰まらないじゃないか、パールぅ…もっと楽しませておくれ』
イライラする。
原因は目の前の女…月の偽物が楽しそうに“俺で”遊んでいるからだった。
『それとも何さ?お前じゃアッシに適わな』
「オレはオマエのアルジがキライだ」
言葉を遮られて不機嫌そうに眉を寄せた女は呆れた様に息を洩らした。
『だからどうしたよ』
「とっととオマエをタオして、オマエのアルジをネジフせにイク」
一瞬呆気にとられた様にポカンと口を開けた女は、瞬間、弾かれた様に笑い出した。
腹を抱えて目に涙を浮かべながら“ニャハハハハ”と笑い続けるそれは酷く目障りで不愉快だった。
『無理だろうよ、そりゃ!』
「オマエはアイツをコピーしてる。ならオマエとアイツは“オナジ”だ、オマエをたおせりゃアイツもたおせる」
“はぁ―…お腹痛い”と言いながら目に溜まった涙を指で拭い取った女は、指に付いた涙をペロリと舐めた。
『確かにアッシは転写能力に長けてるが故に主の代わりをする事が多いけどな、アッシと主じゃ違い過ぎる』
「どういう事だ…」
『アッシは確かに主を転写してる…外見・声・思考・癖・能力、主の全てをな!』
そう自慢気に胸を張った女は、俺に近付いてきながら困った様に溜め息を吐いた。
『だけどアッシは主の力の大きさまでは完璧に転写出来無いのさ。精々、今のアッシの力は…』
あぁ…
嫌な予感がする…
『アッシが転写出来てる力は精々七歳頃の主の力だろうよ』
「…ナナ…つ…?」
七つ…たった七つでこれ程の力を…?
『我等が主は神に愛された天才だからな!アッシは仕えられて幸せ者さ』
七つの餓鬼の力にさえも及ばないなんて…
「バケモノめ…」
思わずそう口にした瞬間、宙に浮いていた俺の身体は地に叩き付けられていた。
「ッ…」
ピリピリした痛みが背と抑えつけられた翼に走った。
『主はその言葉が嫌いだ。口にしたらアッシが許さない』
ずっとヘラヘラ笑っていて締まりの無い顔だと思っていたら、急に真剣な目でそう言われた。
「……ナンダ…いきなり」
声の震えを何とか止めてそう言えば、女はニッコリと微笑んだ。
『アッシ達“家族”は皆こうさ』
「カゾク…?」
女は俺から手を離して立ち上がると、クルリと回ってからその長い銀髪に指を絡めた。
『アッシ等は皆、何かしら主に助けられてる…だからアッシ等は主の傍に居て主を支えるんだ』
“だから家族”と言って満足そうに笑う女は凄く輝いている様に見えた。
『パールはアッシ等が何で強いか分かる?』
「サイじゃないのか」
ここまで強いのだから元々才能があるんだと思った。
でも女は楽しそうに笑った。
『アッシ等だって元々こんなには強くなかったさ!野良のアッシは兎も角…確かに皆、力も地位もあったよ。けど…そんなモノは縄張りを護る程度のモノで、ここまで強くは無かったのさ』
そこまで話すと、女は真っ直ぐに俺を見据えた。
『だけどあの子に出会った。家族にしてくれて、主にもなってくれた…一緒に居るうちに愛おしくなって護りたくなった。沢山の家族の中で自分が一番に護りたくて、皆で競い合った。
そうしてるうちに何時の間にかお互いを磨いていた…大事な主を護ろうと奮闘していたら、今度はそんなアッシ達を護る為に主も自分を高める様になってた』
「タガイをミガク…」
『そうさ、パール…アッシ達が強い理由はね』
女は俺と目を会わせる様にしゃがみ込むと微笑んだ。
『護る為に闘ってるからさ』
馬鹿馬鹿しい。
「そんな…」
『“そんな綺麗事”って思ってるだろ、パール』
だって馬鹿馬鹿しいし実に愚かしい。
護る為?
誰かを護る為に戦う?
命をはって?
そんなもの偽善者の戯言だ。
『アッシ等も昔はそう思ってた。でもこれが一番だよ、パール…』
「ナニを…」
『怒り、悲しみ、憎しみ…数ある感情の中で何より自分を高めるのは護ろうとする気持ちさ』
“何を決めつけているんだ”と声を上げ様としたが出来無かった。
女の表現が酷く悲しそうで…
この女は全てを試した…全て経験したんだと分かったからだった。
『さて…続き始めようか、パール!』
そう言って立ち上がった女は、距離を取る様に後方へと軽く飛んだ。
『制限時間無し、手段も問わない…クリア条件である“アッシを納得させる”のはお前の成長に掛かってるよ』
「あぁ…ワカッテル」
『そうかい、じゃあその身の成長をもってして…』
そう言うと同時に地を蹴った俺を見た女は、ニヤリと口角を上げて至極楽しそうに笑った。
『この空間の“鍵”であるアッシの名前を聞き出しな!』
俺は…
何の為に戦おう──…
「暇だな、
「暇だね、
そう溜め息混じりにぼやきながらポニーテールの少年、皐悸とツインテールの少年、楼季は背を合わせて地に座り込んだ。
「おや、御疲れですか?」
座り込む双子にそう声を掛けた白髪に蒼色と緋色のオッドアイの青年は、座っていた背の高い木の枝から飛び降りた。
「そんな訳無いじゃん、紅」
「それは有り得無いよ、紅」
そう答えた双子は数秒後に再度口を開いた。
「いやでも……疲れたかも…」
「少しだけ……疲れたかも…」
それを聞いて青年…紅はクスクスと小さく笑った。
「おやおや」
「だってさ…コイツ等、少しはのびるまでの時間が延びたけど」
「はっきり言って全然詰まん無い上、無駄に気ぃ遣うからさ」
「「無駄に疲れるんだよね」」
「黙れ」
そう口にしながら地に沈んでいた身体をゆっくりと起こす。
体中が裂ける様に痛い…
「おや…起きてたん」
「グダグダ煩いぞ、子犬共」
さっきから黙って聞いてれば好き放題言いやがって…
言われても仕方無い状況なのが尚腹が立つ。
「目ぇ覚めたんだな」
「少し早くなったね」
「憎まれ口叩くなんて」
「余裕があるんだね」
「「いや…負け犬の遠吠えか」」
楽しそうに笑う二人を睨み付けたユエは、次に隣に倒れているシャールに目を向けた。
「シャール…いけるか?」
「あったりまえじゃん…やられっぱなしで黙ってられるか」
そう言いながらシャールは苦しそうに起き上がった。ダメージが大きいらしい。
「さぁ…クソ犬共掛かってきなよ!早く終わらせようじゃないか」
そうだな、シャール…
俺達にはレイが待っている…
「今度こそ潰してやるよ」
=闘う理由=
『ニャハハハハ!』
あ──…イライラする…
術での修業を終え、この頭にまで響く耳障りな笑い声を聞き出してからかれこれ何時間経っただろうか。
声を上げて笑っていた女はふと笑うのを止めると、目を細めてニヤリと笑った。
『もう終わりかい?』
長い銀髪を掻き上げながら可笑しそうにクスクス笑う女は、俺が答えずに黙っていると不機嫌そうに膨れて見せた。
『詰まらないじゃないか、パールぅ…もっと楽しませておくれ』
イライラする。
原因は目の前の女…月の偽物が楽しそうに“俺で”遊んでいるからだった。
『それとも何さ?お前じゃアッシに適わな』
「オレはオマエのアルジがキライだ」
言葉を遮られて不機嫌そうに眉を寄せた女は呆れた様に息を洩らした。
『だからどうしたよ』
「とっととオマエをタオして、オマエのアルジをネジフせにイク」
一瞬呆気にとられた様にポカンと口を開けた女は、瞬間、弾かれた様に笑い出した。
腹を抱えて目に涙を浮かべながら“ニャハハハハ”と笑い続けるそれは酷く目障りで不愉快だった。
『無理だろうよ、そりゃ!』
「オマエはアイツをコピーしてる。ならオマエとアイツは“オナジ”だ、オマエをたおせりゃアイツもたおせる」
“はぁ―…お腹痛い”と言いながら目に溜まった涙を指で拭い取った女は、指に付いた涙をペロリと舐めた。
『確かにアッシは転写能力に長けてるが故に主の代わりをする事が多いけどな、アッシと主じゃ違い過ぎる』
「どういう事だ…」
『アッシは確かに主を転写してる…外見・声・思考・癖・能力、主の全てをな!』
そう自慢気に胸を張った女は、俺に近付いてきながら困った様に溜め息を吐いた。
『だけどアッシは主の力の大きさまでは完璧に転写出来無いのさ。精々、今のアッシの力は…』
あぁ…
嫌な予感がする…
『アッシが転写出来てる力は精々七歳頃の主の力だろうよ』
「…ナナ…つ…?」
七つ…たった七つでこれ程の力を…?
『我等が主は神に愛された天才だからな!アッシは仕えられて幸せ者さ』
七つの餓鬼の力にさえも及ばないなんて…
「バケモノめ…」
思わずそう口にした瞬間、宙に浮いていた俺の身体は地に叩き付けられていた。
「ッ…」
ピリピリした痛みが背と抑えつけられた翼に走った。
『主はその言葉が嫌いだ。口にしたらアッシが許さない』
ずっとヘラヘラ笑っていて締まりの無い顔だと思っていたら、急に真剣な目でそう言われた。
「……ナンダ…いきなり」
声の震えを何とか止めてそう言えば、女はニッコリと微笑んだ。
『アッシ達“家族”は皆こうさ』
「カゾク…?」
女は俺から手を離して立ち上がると、クルリと回ってからその長い銀髪に指を絡めた。
『アッシ等は皆、何かしら主に助けられてる…だからアッシ等は主の傍に居て主を支えるんだ』
“だから家族”と言って満足そうに笑う女は凄く輝いている様に見えた。
『パールはアッシ等が何で強いか分かる?』
「サイじゃないのか」
ここまで強いのだから元々才能があるんだと思った。
でも女は楽しそうに笑った。
『アッシ等だって元々こんなには強くなかったさ!野良のアッシは兎も角…確かに皆、力も地位もあったよ。けど…そんなモノは縄張りを護る程度のモノで、ここまで強くは無かったのさ』
そこまで話すと、女は真っ直ぐに俺を見据えた。
『だけどあの子に出会った。家族にしてくれて、主にもなってくれた…一緒に居るうちに愛おしくなって護りたくなった。沢山の家族の中で自分が一番に護りたくて、皆で競い合った。
そうしてるうちに何時の間にかお互いを磨いていた…大事な主を護ろうと奮闘していたら、今度はそんなアッシ達を護る為に主も自分を高める様になってた』
「タガイをミガク…」
『そうさ、パール…アッシ達が強い理由はね』
女は俺と目を会わせる様にしゃがみ込むと微笑んだ。
『護る為に闘ってるからさ』
馬鹿馬鹿しい。
「そんな…」
『“そんな綺麗事”って思ってるだろ、パール』
だって馬鹿馬鹿しいし実に愚かしい。
護る為?
誰かを護る為に戦う?
命をはって?
そんなもの偽善者の戯言だ。
『アッシ等も昔はそう思ってた。でもこれが一番だよ、パール…』
「ナニを…」
『怒り、悲しみ、憎しみ…数ある感情の中で何より自分を高めるのは護ろうとする気持ちさ』
“何を決めつけているんだ”と声を上げ様としたが出来無かった。
女の表現が酷く悲しそうで…
この女は全てを試した…全て経験したんだと分かったからだった。
『さて…続き始めようか、パール!』
そう言って立ち上がった女は、距離を取る様に後方へと軽く飛んだ。
『制限時間無し、手段も問わない…クリア条件である“アッシを納得させる”のはお前の成長に掛かってるよ』
「あぁ…ワカッテル」
『そうかい、じゃあその身の成長をもってして…』
そう言うと同時に地を蹴った俺を見た女は、ニヤリと口角を上げて至極楽しそうに笑った。
『この空間の“鍵”であるアッシの名前を聞き出しな!』
俺は…
何の為に戦おう──…