第2章 出会いと別れ
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33
「御主か童女…」
そう口にした蘭寿は相変わらず頬が仄かに赤くて、解かれた身丈よりも長い薄紫の髪が酒瓶を手に座り込んだ蘭寿の周りに薄紫色の絨毯を敷いている様だった。
「主め…勝手に某 の社に繋げおって」
冷や汗が伝った…
その瞬間だった。
酒瓶が目の前に現れ、私は押し出される様に戸を破って外へと飛ばされた。
威力を止める事も出来ず、私の体は庭の大木に当たって漸く止まった。
『痛…ぅ……ッ』
この酒瓶…月が言ってた通り凄く重い。
これを一瞬で…しかも片手で投げるだなんて……投げた瞬間さえ見え無かった…
「避けれもせぬか、童女」
薄紫の髪を引き摺りながら建物から出て来た蘭寿は、呆れた様に溜め息を吐くとそう言った。
『ッ…』
避けれ無かった。受け止められ無かった。痛かった…
でもこの重さの酒瓶を投げつけられて私は骨一つ折れてない。
手加減された…
『ッ……蘭寿様…』
「一応聞こうか」
そう言って蘭寿は指先で弄っていた腰に提げた酒瓶の一つをレイの足の直ぐ脇へと投げつけた。
“ドゴォ”と地鳴りの様な音を立てて地に半分以上めり込んだ酒瓶にはヒビの入った様子さえ無かった。
「何の用だ、童女…レイ」
=行く末=
今日は朧月夜だった。
霞にまかれた月を肴に縁側に腰を掛けて酒を呷るクロスの隣に、女がそっと酒瓶の乗った盆を置いた。
「サチコは着いた頃か」
「さぁ、どうでしょう……無事だと…良いんですが」
「ティムがいるから攻撃される心配は無いだろ」
「いえ…そうじゃなくてサチコが“切れた”場合エクソシストが色々と危険かと」
「ま、何とかなるだろ」
『“何とか”ねぇ』
聞き覚えがある声がして顔を上げると、目当ての女が庭に立っていた。
長い銀髪に血を零した様な緋色の瞳…着物を身に纏った絶世の美女だ。
「よぉ、──…夜這いにでも来たか?」
可笑しそうにクスクス笑う──が歩くと、長い銀髪が風に揺れ、手足に付いた無数の金銀の輪がぶつかり合って鈴の様な音色を奏でた。
「川村、下がっ…いや、サチコ達を迎えに行け」
「はい」
空になった酒瓶数本を手に女、川村が立ち去ると、庭から歩いてきた──が縁側の俺の隣へと腰掛けた。
「レイはどうだ?」
『そうね今頃…こってり絞られてる頃だと思うわ』
「何だ、また何かやらかしたか」
『えぇ…私に怒られた事に動揺したみたい』
「そりゃあ、恐ぇな」
怒ったと聞いて思わず笑った。
甘々な──が怒る…
“叱る”だなんて、一度しか見た事が無い。
『私が用意した師範の話をちゃんと聞けなくて…』
「それで怒らせたか」
からから笑いながら口にしていた酒瓶を差し出せば、──は“えぇ”と言って酒を一口だけ口にして、酒瓶を俺に返した。
──はいつもこうだ。
一口だけ口にし…後はひたすら傍に居る。
俺は──のそれが酷く居心地が良かった。
『それで…貴方はどうするの?』
「計画通りにするさ」
『そう…気を付けてね、クロス』
返事をする代わりに──の額にキスを落として空いてる手で──の手を取った。
この方が──には伝わりやすいと…そう思っていた。
だから細くて小さいその手を優しく握り締めた。
「──…」
『何…クロス』
「この世界は…どうなっちまうんだろうな…」
『……そうね…』
この世界は……
俺は…一体どうなるんだろう。
「──…」
『何…』
「……──…」
『…何』
「──…」
『…どうしたの、クロ』
「お前はどうなるんだ」
そう言葉を遮って問い掛けると、──は目を見開いた。
俺を見詰める緋色の瞳が宝石の様だった。
『…クロス……』
「お前は…どうするんだ」
困った様に眉を寄せて俯いた──の顎に手をやり、顔を上げさせる。
まだ俺の望む答えを出さないんだな、──…
『クロス、私は』
目を合わせ様としない──に腹が立つ…
「前にも言っただろ」
俺を見ろ。
ちゃんと俺を見ろ。
目の前に居るのは…
「絶対に帰さねぇ」
俺だ──…
「御主か童女…」
そう口にした蘭寿は相変わらず頬が仄かに赤くて、解かれた身丈よりも長い薄紫の髪が酒瓶を手に座り込んだ蘭寿の周りに薄紫色の絨毯を敷いている様だった。
「主め…勝手に
冷や汗が伝った…
その瞬間だった。
酒瓶が目の前に現れ、私は押し出される様に戸を破って外へと飛ばされた。
威力を止める事も出来ず、私の体は庭の大木に当たって漸く止まった。
『痛…ぅ……ッ』
この酒瓶…月が言ってた通り凄く重い。
これを一瞬で…しかも片手で投げるだなんて……投げた瞬間さえ見え無かった…
「避けれもせぬか、童女」
薄紫の髪を引き摺りながら建物から出て来た蘭寿は、呆れた様に溜め息を吐くとそう言った。
『ッ…』
避けれ無かった。受け止められ無かった。痛かった…
でもこの重さの酒瓶を投げつけられて私は骨一つ折れてない。
手加減された…
『ッ……蘭寿様…』
「一応聞こうか」
そう言って蘭寿は指先で弄っていた腰に提げた酒瓶の一つをレイの足の直ぐ脇へと投げつけた。
“ドゴォ”と地鳴りの様な音を立てて地に半分以上めり込んだ酒瓶にはヒビの入った様子さえ無かった。
「何の用だ、童女…レイ」
=行く末=
今日は朧月夜だった。
霞にまかれた月を肴に縁側に腰を掛けて酒を呷るクロスの隣に、女がそっと酒瓶の乗った盆を置いた。
「サチコは着いた頃か」
「さぁ、どうでしょう……無事だと…良いんですが」
「ティムがいるから攻撃される心配は無いだろ」
「いえ…そうじゃなくてサチコが“切れた”場合エクソシストが色々と危険かと」
「ま、何とかなるだろ」
『“何とか”ねぇ』
聞き覚えがある声がして顔を上げると、目当ての女が庭に立っていた。
長い銀髪に血を零した様な緋色の瞳…着物を身に纏った絶世の美女だ。
「よぉ、──…夜這いにでも来たか?」
可笑しそうにクスクス笑う──が歩くと、長い銀髪が風に揺れ、手足に付いた無数の金銀の輪がぶつかり合って鈴の様な音色を奏でた。
「川村、下がっ…いや、サチコ達を迎えに行け」
「はい」
空になった酒瓶数本を手に女、川村が立ち去ると、庭から歩いてきた──が縁側の俺の隣へと腰掛けた。
「レイはどうだ?」
『そうね今頃…こってり絞られてる頃だと思うわ』
「何だ、また何かやらかしたか」
『えぇ…私に怒られた事に動揺したみたい』
「そりゃあ、恐ぇな」
怒ったと聞いて思わず笑った。
甘々な──が怒る…
“叱る”だなんて、一度しか見た事が無い。
『私が用意した師範の話をちゃんと聞けなくて…』
「それで怒らせたか」
からから笑いながら口にしていた酒瓶を差し出せば、──は“えぇ”と言って酒を一口だけ口にして、酒瓶を俺に返した。
──はいつもこうだ。
一口だけ口にし…後はひたすら傍に居る。
俺は──のそれが酷く居心地が良かった。
『それで…貴方はどうするの?』
「計画通りにするさ」
『そう…気を付けてね、クロス』
返事をする代わりに──の額にキスを落として空いてる手で──の手を取った。
この方が──には伝わりやすいと…そう思っていた。
だから細くて小さいその手を優しく握り締めた。
「──…」
『何…クロス』
「この世界は…どうなっちまうんだろうな…」
『……そうね…』
この世界は……
俺は…一体どうなるんだろう。
「──…」
『何…』
「……──…」
『…何』
「──…」
『…どうしたの、クロ』
「お前はどうなるんだ」
そう言葉を遮って問い掛けると、──は目を見開いた。
俺を見詰める緋色の瞳が宝石の様だった。
『…クロス……』
「お前は…どうするんだ」
困った様に眉を寄せて俯いた──の顎に手をやり、顔を上げさせる。
まだ俺の望む答えを出さないんだな、──…
『クロス、私は』
目を合わせ様としない──に腹が立つ…
「前にも言っただろ」
俺を見ろ。
ちゃんと俺を見ろ。
目の前に居るのは…
「絶対に帰さねぇ」
俺だ──…