第2章 出会いと別れ
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建物の塀や壁、窓枠、屋根を足場に飛び上がったレイは、刃の光る弓で空中のアクマを斬りつけた。
耳障りな悲鳴と共に切り落とされたアクマの腕が路地に飛び散る。カサカサと動き回る無数のそれは…
『蜘蛛?』
瞬間、バサッと広げた蝙蝠の様な影の翼で空中にとどまったレイの足をアクマが残った手で掴んだ。
『ッ…』
ブンブンと円を描く様に振り回され、地面に叩きつけられる。
「元帥様!!」
近くにいたシスターの声が響く中、地面へぶつかる瞬間に姫を繋げて影の中に沈んだレイは、アクマの手から逃れると影から飛び出した。
『姫!』
カツンッとヒールの音を立てて路地へ着地した瞬間、影がブワッと大きく広がり、あっちこっちへと飛び散った蜘蛛呑み込んでいく。
そして最後に地から飛び出す様に伸びた無数の影が空中のアクマを絡め取り、地の中へ引き摺り込んだ。
残ったのはヴァイオリンを持った乱れた髪のレイと、涙目で立ち竦むシスターだけだった。
『シスター、シャワー貸してくれる?』
=緋色と褐色=
協会でシャワーを借りる序でに教団に連絡を取ると、近況報告を受けた。
ここ数日の死者の人数を聞くなり、私の中で月が“二十一か…”と呟いたのが気になった。
意味が分からなかった。
死者の合計は148…数が違い過ぎるし、接点が全く分からない。
『どうしたの、月?』
《何でも無い…気にする事等無い、レイ》
“何でも無い”が多い月にこれ以上聞いても無駄なのは容易に分かった。だから聞かなかった。唯それだけの話だ。
アレン達に合流すると、アニタやその店の者達を紹介された。これから彼女の船に乗ってクロスを追い掛けるという。
船に乗り込んだレイは、自分に抱き付いているシャールの頭を撫でながら甲板の手摺に身体を預けた。
そして口遊む。
月に教えて貰った、月の歌を…
月が歌うと涙が出無い私が涙が出たと錯覚する程切ないこの詩は、私のお気に入りだ。
月の誕生日のクリスマスの夜、寝る前に必ず謳って貰う曲だ。
「綺麗さね」
ラビがレイの隣りに並び、レイは自分に尚も抱き付いているシャールを軽く押して誘導すると、ユエの側へと駆け寄らせた。
『月が教えてくれたんだよ』
シャールがいなくなったのを良い事に、レイを抱き締めるラビに、レイはニッコリと微笑みかけた。
ラビの腕の中は温かくてとても心地良い。
「月はレイの歌の先生なんさね」
そう、月は私の大事な先生だ。
『月は私に色んな事を教えてくれたの!精神や体の鍛え方、武術とかも教えてくれたのよ』
とても沢山の事を学んだ。
肉体的にも精神的にも知識的にも…
「クロス元帥は何を教えたん?」
『痴漢撃退法とか』
ラビは思わずレイに巻き付けた手を離した。
レイが本気になったら命が危ないと身体が勝手に理解したのだ。
無意識に慌てたラビを見たレイは、可笑しそうに笑った。
『クロスは…』
「皆、アクマが来ます!!」
空から降り注いだアレンの言葉に顔を上げると、東の空から黒いものが攻めて来るのが見えた。
空を埋め尽くす様に広がる黒い帯は途切れる事は無い。
その数に驚いたラビはレイを抱き締める様にして庇う。
『何…あれ』
「俺等の足止めか?!」
『…違う、この量は』
「迎撃用意!総員、武器を…」
レイはラビの腕を擦り抜けると、そう叫ぶマホジャの腕を掴んだ。
『総員退避!!エクソシスト迎撃用意!』
マホジャの目が“何故か”と問い掛けていたが、レイは意見を変えなかった。
唯の人間である船員が勝てる訳が無いし、応戦できる筈も無い。死者を増やすだけだ。
「ウウ…歯が疼く」
心配していたアレイスターもアクマを前にすればちゃんと戦える様だ。
『撃ち落とせ!!!!』
「「「「イノセンス発動!!」」」」
五人とユエとシャールがそれぞれ甲板を蹴ったのを見て影から浮き出てきたヴァイオリンを発動させたレイは、ふと動きを止めた。
『音が…届かない』
アクマや船員達の叫び声で、ヴァイオリンの音が空のアクマの耳まで届かないのだ。
しょうがない…“姫”で…
『私が殺 ろう』
そう、凛とした美しい声がしたかと思うと、船の甲板に月が姿を現した。
「月!!」
月がこんなにも人がいる所に姿を現したのは初めての事だった。
そして月に見とれたラビの動きが一瞬…と言わず数秒止まったのは言うまでも無い。
『しかし数が多いな』
そう言う月の身体が宙に浮き、すうっと滑る様に上昇して行く。
船の一番の見張り台にいる自分の視線の高さまで来た月を見たアレンは目を見開いた。
何で浮いているのかと…
『時間が無いな…注意を引き付けるか』
月はそう呟くと、その血の様に緋い瞳でアクマの大軍を見据えた。
『八番目・九番目の瞳』
妖しく光る緋色はアクマをどの様に映しているのだろうか。
『さぁ、一緒に踊りましょう』
瞬間、月が蒼白い光を放ち、レイ達は思わず目を瞑った。
アクマ達も光に反応して動きを止めたんだと思う。一瞬、辺りが静かになった。
「餓鬼と雑魚のオモリかよ」
「相変らずきっついなぁ、蛇」
やっとの想いで目を開くと、月の隣りに二人の青年が立って…浮んでいた。
緋髪に金眼の目元と首に赤い痣のある青年と、月と揃いの長い銀髪を一つに結った、金眼に褐色の肌の青年だ。
銀髪の青年は何故か月に抱き付いている。
「九尾は呼ばんで良ぇん?」
「アイツは邪魔。テメェも邪魔だ、失せろ狼」
二人の口喧嘩に、月が小さく溜め息を吐いた。
『喧嘩しないの。今に一番適しているのは貴方達二人でしょう?
それとも何か…加勢が欲しいのか?』
瞬間、緋髪の青年が鼻で笑ったのが離れていても良く分かった。
「馬鹿言うな。お前は俺様の女なんだ、此の数くらい本来なら一人で余裕なのくらい分かってるだろ」
「“俺様の女”発言は納得出来へんけど、蛇の言う通りや。加勢なんか要らへん」
月は口角を上げて笑うと、興味津々に月を見ているアクマ達に視線を向けた。
『騎龍 は左、砕覇 は右…私は中央』
緋髪の青年が左に、銀髪の青年が右へとゆっくり移動する。
月は手元に刀身まで黒い刀を造り出して握り締めると、口を開いた。
『跡形も無く…滅ぼせ』
その言葉が合図だった。
青年二人…騎龍と砕覇、そして月が凄い早さでアクマ達の中に突っ込んで行ったのだ。
次々と吹き飛ばされるアクマ達を見ていたレイは、視界の先でアクマに連れ去られたアレンを見て慌てて船から降りようとした。
瞬間、レイの頭に月の声が響く…
《放っておけ。リナリー・リーが追い掛ける》
リナリーが追い掛ける?
“なら良いか”と呟くレイにユエが駆け寄って来た。
シャールはアクマとの戦いを楽しんでいるのが小さく見えた。
「怪我は無いな?」
『無いよ、大丈夫』
レイの頬に手を当て、怪我が無いか調べるユエに、レイは優しく微笑んだ。
「約束したから…レイは俺が何に変えても護る」
『ありがと、ユエ』
月をあの“家族”達が護ってくれる様に、私もユエが護ってくれる。
私も月も護られる気は更々無いけどね…
《レイ、甲板近くのアクマだけ倒しなさい》
遠くの空で月が戦っているのが見える。
戦いながら話す何て相当余裕があるのだろう。
『は~い、母様!』
《……フフッ、母様か…聞き分けの良い御子は好きだぞ…我が娘、レイ》
ふざけ半分の私の言葉に真剣に答えてくれた月の言葉に、思わず表情が緩んだ。
嬉しくて嬉しくて堪らなかったから…
「どうした?」
『月がママ、クロスがパパ、シャールは弟、ユエはお兄ちゃんね!』
「む…今は兄だ」
レイのいきなりな発言に不機嫌そうに眉を寄せたユエは、そう渋々納得した。
私が妹じゃ嫌なのかな?
ヴァイオリンを手元でぐるぐると回転させると、ヴァイオリンがコントラバスの様に巨大化し、弓も長く伸びる。
レイがそれらを盾と剣の様に構えると、視線を合わせたユエは身体の一部をコンバートさせて答える。
『さて、破壊しようか』
建物の塀や壁、窓枠、屋根を足場に飛び上がったレイは、刃の光る弓で空中のアクマを斬りつけた。
耳障りな悲鳴と共に切り落とされたアクマの腕が路地に飛び散る。カサカサと動き回る無数のそれは…
『蜘蛛?』
瞬間、バサッと広げた蝙蝠の様な影の翼で空中にとどまったレイの足をアクマが残った手で掴んだ。
『ッ…』
ブンブンと円を描く様に振り回され、地面に叩きつけられる。
「元帥様!!」
近くにいたシスターの声が響く中、地面へぶつかる瞬間に姫を繋げて影の中に沈んだレイは、アクマの手から逃れると影から飛び出した。
『姫!』
カツンッとヒールの音を立てて路地へ着地した瞬間、影がブワッと大きく広がり、あっちこっちへと飛び散った蜘蛛呑み込んでいく。
そして最後に地から飛び出す様に伸びた無数の影が空中のアクマを絡め取り、地の中へ引き摺り込んだ。
残ったのはヴァイオリンを持った乱れた髪のレイと、涙目で立ち竦むシスターだけだった。
『シスター、シャワー貸してくれる?』
=緋色と褐色=
協会でシャワーを借りる序でに教団に連絡を取ると、近況報告を受けた。
ここ数日の死者の人数を聞くなり、私の中で月が“二十一か…”と呟いたのが気になった。
意味が分からなかった。
死者の合計は148…数が違い過ぎるし、接点が全く分からない。
『どうしたの、月?』
《何でも無い…気にする事等無い、レイ》
“何でも無い”が多い月にこれ以上聞いても無駄なのは容易に分かった。だから聞かなかった。唯それだけの話だ。
アレン達に合流すると、アニタやその店の者達を紹介された。これから彼女の船に乗ってクロスを追い掛けるという。
船に乗り込んだレイは、自分に抱き付いているシャールの頭を撫でながら甲板の手摺に身体を預けた。
そして口遊む。
月に教えて貰った、月の歌を…
月が歌うと涙が出無い私が涙が出たと錯覚する程切ないこの詩は、私のお気に入りだ。
月の誕生日のクリスマスの夜、寝る前に必ず謳って貰う曲だ。
「綺麗さね」
ラビがレイの隣りに並び、レイは自分に尚も抱き付いているシャールを軽く押して誘導すると、ユエの側へと駆け寄らせた。
『月が教えてくれたんだよ』
シャールがいなくなったのを良い事に、レイを抱き締めるラビに、レイはニッコリと微笑みかけた。
ラビの腕の中は温かくてとても心地良い。
「月はレイの歌の先生なんさね」
そう、月は私の大事な先生だ。
『月は私に色んな事を教えてくれたの!精神や体の鍛え方、武術とかも教えてくれたのよ』
とても沢山の事を学んだ。
肉体的にも精神的にも知識的にも…
「クロス元帥は何を教えたん?」
『痴漢撃退法とか』
ラビは思わずレイに巻き付けた手を離した。
レイが本気になったら命が危ないと身体が勝手に理解したのだ。
無意識に慌てたラビを見たレイは、可笑しそうに笑った。
『クロスは…』
「皆、アクマが来ます!!」
空から降り注いだアレンの言葉に顔を上げると、東の空から黒いものが攻めて来るのが見えた。
空を埋め尽くす様に広がる黒い帯は途切れる事は無い。
その数に驚いたラビはレイを抱き締める様にして庇う。
『何…あれ』
「俺等の足止めか?!」
『…違う、この量は』
「迎撃用意!総員、武器を…」
レイはラビの腕を擦り抜けると、そう叫ぶマホジャの腕を掴んだ。
『総員退避!!エクソシスト迎撃用意!』
マホジャの目が“何故か”と問い掛けていたが、レイは意見を変えなかった。
唯の人間である船員が勝てる訳が無いし、応戦できる筈も無い。死者を増やすだけだ。
「ウウ…歯が疼く」
心配していたアレイスターもアクマを前にすればちゃんと戦える様だ。
『撃ち落とせ!!!!』
「「「「イノセンス発動!!」」」」
五人とユエとシャールがそれぞれ甲板を蹴ったのを見て影から浮き出てきたヴァイオリンを発動させたレイは、ふと動きを止めた。
『音が…届かない』
アクマや船員達の叫び声で、ヴァイオリンの音が空のアクマの耳まで届かないのだ。
しょうがない…“姫”で…
『私が
そう、凛とした美しい声がしたかと思うと、船の甲板に月が姿を現した。
「月!!」
月がこんなにも人がいる所に姿を現したのは初めての事だった。
そして月に見とれたラビの動きが一瞬…と言わず数秒止まったのは言うまでも無い。
『しかし数が多いな』
そう言う月の身体が宙に浮き、すうっと滑る様に上昇して行く。
船の一番の見張り台にいる自分の視線の高さまで来た月を見たアレンは目を見開いた。
何で浮いているのかと…
『時間が無いな…注意を引き付けるか』
月はそう呟くと、その血の様に緋い瞳でアクマの大軍を見据えた。
『八番目・九番目の瞳』
妖しく光る緋色はアクマをどの様に映しているのだろうか。
『さぁ、一緒に踊りましょう』
瞬間、月が蒼白い光を放ち、レイ達は思わず目を瞑った。
アクマ達も光に反応して動きを止めたんだと思う。一瞬、辺りが静かになった。
「餓鬼と雑魚のオモリかよ」
「相変らずきっついなぁ、蛇」
やっとの想いで目を開くと、月の隣りに二人の青年が立って…浮んでいた。
緋髪に金眼の目元と首に赤い痣のある青年と、月と揃いの長い銀髪を一つに結った、金眼に褐色の肌の青年だ。
銀髪の青年は何故か月に抱き付いている。
「九尾は呼ばんで良ぇん?」
「アイツは邪魔。テメェも邪魔だ、失せろ狼」
二人の口喧嘩に、月が小さく溜め息を吐いた。
『喧嘩しないの。今に一番適しているのは貴方達二人でしょう?
それとも何か…加勢が欲しいのか?』
瞬間、緋髪の青年が鼻で笑ったのが離れていても良く分かった。
「馬鹿言うな。お前は俺様の女なんだ、此の数くらい本来なら一人で余裕なのくらい分かってるだろ」
「“俺様の女”発言は納得出来へんけど、蛇の言う通りや。加勢なんか要らへん」
月は口角を上げて笑うと、興味津々に月を見ているアクマ達に視線を向けた。
『
緋髪の青年が左に、銀髪の青年が右へとゆっくり移動する。
月は手元に刀身まで黒い刀を造り出して握り締めると、口を開いた。
『跡形も無く…滅ぼせ』
その言葉が合図だった。
青年二人…騎龍と砕覇、そして月が凄い早さでアクマ達の中に突っ込んで行ったのだ。
次々と吹き飛ばされるアクマ達を見ていたレイは、視界の先でアクマに連れ去られたアレンを見て慌てて船から降りようとした。
瞬間、レイの頭に月の声が響く…
《放っておけ。リナリー・リーが追い掛ける》
リナリーが追い掛ける?
“なら良いか”と呟くレイにユエが駆け寄って来た。
シャールはアクマとの戦いを楽しんでいるのが小さく見えた。
「怪我は無いな?」
『無いよ、大丈夫』
レイの頬に手を当て、怪我が無いか調べるユエに、レイは優しく微笑んだ。
「約束したから…レイは俺が何に変えても護る」
『ありがと、ユエ』
月をあの“家族”達が護ってくれる様に、私もユエが護ってくれる。
私も月も護られる気は更々無いけどね…
《レイ、甲板近くのアクマだけ倒しなさい》
遠くの空で月が戦っているのが見える。
戦いながら話す何て相当余裕があるのだろう。
『は~い、母様!』
《……フフッ、母様か…聞き分けの良い御子は好きだぞ…我が娘、レイ》
ふざけ半分の私の言葉に真剣に答えてくれた月の言葉に、思わず表情が緩んだ。
嬉しくて嬉しくて堪らなかったから…
「どうした?」
『月がママ、クロスがパパ、シャールは弟、ユエはお兄ちゃんね!』
「む…今は兄だ」
レイのいきなりな発言に不機嫌そうに眉を寄せたユエは、そう渋々納得した。
私が妹じゃ嫌なのかな?
ヴァイオリンを手元でぐるぐると回転させると、ヴァイオリンがコントラバスの様に巨大化し、弓も長く伸びる。
レイがそれらを盾と剣の様に構えると、視線を合わせたユエは身体の一部をコンバートさせて答える。
『さて、破壊しようか』