第1章 ノアの少女
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21
マナ…
たとえ左眼がもう見えなくても…僕はエクソシストを続けるつもりだったよ。
仲間と同じ…
覚悟をしたんだ──…
マナ…
ならばより深く。
より黒白の世界へと…
深く深く堕ちてゆけ──…
=求めた先=
「アンタを殺す為に姫様にも手ぇ出しちゃったし最悪だわ」
エリアーデは砂埃のついたボロボロの服を叩きながらそうブツブツと呟く様に文句を言った。
アレンはエリアーデの足元に倒れているレイを見ると口を開く。
「…何故気絶させたんですか」
「姫様はきっとアンタを殺すのを止めるからよ」
エリアーデは面倒臭そうに話しながら崩れた髪を整える。
「それにしても…仲間である姫様を攻撃したあげく、姫様の異変に気付かないなんて」
「攻撃?異変ってなんですか?」
僕がレイを攻撃?そんな馬鹿な…
エリアーデは鼻で笑うと口を開く。
「馬鹿じゃないの?何、敵に聞いてんのよ」
「ッ…」
「まぁ特別に教えてやるわ。気を失っていたアンタの左手は姫様を攻撃したのよ…お陰で庇った私はこのザマ」
僕のイノセンスがレイを攻撃した…?
「そんな…馬鹿な」
「はぁ?じゃあこの傷は何だってのよ」
「……」
「…異変ってのはね、前の姫様だったらアタシの攻撃なんか当たりもしなかったし、当たっても気なんて失いやしないわよ」
エリアーデはしゃがみ込んで床に横たわるレイの頭を優しく撫でながら続けた。
「姫様はノアの力を封印してるんだろうね」
「封印?エクソシストの力があるんだからなんら支障は無いじゃないですか」
アレンの一言に、エリアーデは声を上げて馬鹿にした様に笑ってみせた。
「アンタってホント馬鹿ね」
「な…」
「ノアの力を使わないって事は、今の姫様の身体には再生能力が無いって事よ。アンタと姫様は一緒に戦ってんでしょ?気を付けることね」
「はい…?」
「アンタ達エクソシストの武器が少しでも姫様に当たったら…姫様はどうなるか解らない」
「ぇ…」
「アレイスターみたいなのは特にね……ノアの力でイノセンスが破壊出来る様に、イノセンスの力でノアを殺 す事も出来る」
“そう言う事でしょ”と言ってクスクス笑ったエリアーデは、アレンと向き合った。
「さて、殺 るわよ」
「…ボディをコンバートしないんですか?」
「ま〜生意気!ブスになるから嫌なのよ。人間の姿のが好き…」
エリアーデは両頬に手を当てると、カポッと音を立てて顔をずらした。
「でもまぁ…そんな事も言ってらんないか」
奇妙な音を立て、エリアーデはボディをアクマのものへと変えた。
手を抜いている暇は無い。
貴女なりの平穏を取り戻すには…
貴女が…
全力で僕を倒す事しか方法は無いのだから…
エリアーデ…
「姫様、服を着ないと風邪をひきますよ!」
『大丈夫だよぉ、エリアーデ』
「駄目です!私が伯爵様に怒られてしまいます!」
『え──…分かった…でもまだ暑いからさ、もうちょっとだけ…』
「駄目です、湯冷めします」
『あと一分だけ』
「駄目です」
エリアーデ…
「姫様、この花でよろしかったですか?」
『うん、ありがとエリアーデ!』
「花瓶にさしますね、姫様」
『いつか…』
「姫様…?」
『いつか一緒に行けたらいいねぇ、エリアーデ』
「…はい、姫様」
『えへへ…約束ね、エリアーデ』
「はい、姫様」
エリアーデ…
記憶の中の貴女はいつも笑顔だった…
貴女はユエとシャールと同じ様に私を恐れなかった。
優しくしてくれた…外の話をしてくれた…
私の大切な…お姉さん…
気を失って床に倒れていたレイの目が薄く開かれた。
首が少し痛い…多分エリアーデに手刀でもされて気絶していたんだろう。
身体を起こし、辺りを見回せば部屋はボロボロで、本が大量に散乱していた。
レイは立ち上がると服の汚れを叩いて落とす。
エリアーデを助けないと…
タスケナイト…
耳を澄ますと、食人花の叫び声が聞こえた。
食人花が警戒するのはアレンとラビと私のみ…多分エリアーデはアレンと一緒にいる。
レイは声を頼りに食人花の元へ向かって走り出した。
待ってて…エリアーデ──…
エリアーデ、綺麗だね!
凄い美人さん!!
幼い笑顔が今も記憶に焼き付いている。
私を綺麗だと言った姫様…
私は姫様が大好きだった。
ずっとずっと、側にいたいと思っていた。
けど、ある日姫様は姿を消してしまった…
私ヲ置イテ…
私は探した。
伯爵様の命令を無視して探し続けた…
探シテ…探シテ…探シテ…
これ以上伯爵様の命令を無視出来なくなった頃、クロウリー城に行きアレイスター・クロウリーを始末する命令を受けた。
正直私は姫様を見つけ出せずにいた苛つきやモヤモヤする気持の動揺をスッキリさせる為にアレイスターを殺そうとしていた。
だけどアレイスターに会った瞬間…
私は封じていた夢を…
どうしても叶えたくなった。
姫様、ごめんなさい…
私は…
夢を叶えたい──…
食人花の元に着くと、アレンとラビが食人花に捕まっていた。
遠くでは何故かエリアーデとアレイスターが戦っている。
不思議に思いつつも、レイは先にアレン達を助けに向かった。
『アレン、ラビ!!今、助けるから待って…ッ!?』
「「レイ!!!」」
駆け寄りながら影から飛び出したヴァイオリンを手にしたレイを一瞬で絡め取った食人花は、すかさず蔦でレイを締めあげた。
『く…っ』
右手に持った弓が左手に持ったヴァイオリン本体に届かない…これじゃあ発動したって力が使えない。
「レイ、大丈夫ですか!?」
「レイ、今行くさ!!」
アレンとラビが何か叫んでいたが、私にはちゃんと聞こえていなかった。
別の声が耳に届き、そして頭の中に響いたからだ…
外界へ行けないのを全部ジジィの所為にしてさ!
自分が城を出て傷つくのが怖いだけでしょーが、バァ〜カ!!!
エリアーデ…?
何言ってんの…?
臆病者、お前なんかこの城で朽ち果てるのがお似合いよ!
あぁ…お前とならそんな生涯を送る事になっても良いと思っていた、エリアーデ…だが醜いお前は見たくない。跡形もなく消えろ…
嫌よ!!
誰が壊されるもんか!!
アレイスターがエリアーデに立ち向かい、エリアーデも攻撃を仕掛ける。
その意味が分からなかった…
『止めてよ…』
「「レイ?」」
レイを助けようともがいていたアレンとラビは、レイの声を聞こうとピタリと動きを止めた。
『何で戦ってるの…?』
「姫様…私、夢があるんです」
『夢ぇ?エリアーデの夢ってなぁに?』
「私…恋がしたいんです」
『恋…?』
「人間の女は恋をすると綺麗になるんですよ。私も誰かを愛してみたいんです」
あぁ言ってたのは貴女じゃない…
恋したいんでしょ?
誰かを愛してみたいんでしょ?
だったら…
『止めてよ、エリアーデ!!』
相手を殺しては駄目だ。
貴女が壊れても…駄目だよ…
私の声でエリアーデの動きが一瞬止まったが、それは本当に一瞬の事で…エリアーデは直ぐにアレイスターへの攻撃を再開した。
『エリアーデ…ッ』
“黒キ舞姫”を発動しようとしたが、何故か発動出来無かった。
ノアの力も…使えない…
私は…
何モ出来無イ…
私は…
私は…エリアーデを失いたくない。
『月!!!』
レイがいきなり叫んだ為、アレンとラビは驚いて目を見開いた。
レイはそんな事は気にもとめない。
『月、お願い助けて!!』
自分では何も出来ない。
なんて無力な…
弓を握り締めた手から血が溢れ、弓を伝い食人花に垂れた。
手を強く握りすぎて爪が掌に食い込んでいるんだろう。
《その食人花の対処法ならアレン・ウォーカーが知っている》
アレンとラビは何かを探す様に辺りを見回した。
私の精神が不安定な為、月の声がアレンやラビにも聞こえている様だった。
『違うんだ、月!エリアーデを…エリアーデを助けて!』
「「レイ!?」」
元帥としてやってはいけない事をしているのは分かっている。
だけど大切な人を亡くすわけにはいかない。
罰ならいくらでも受ける…
『月…!!』
《手は貸せぬ》
『な…っ…何で!!?』
何かあったら助けてくれるって言ったじゃない!エリアーデを…
《その願いはそなたの私情だ。エリアーデの願いでは無い…》
『だけどエリアーデは!』
《そなたのソレは唯の御節介だ》
お節介…?
だってエリアーデは…
《二人を見ろ》
レイは月に言われた通りにエリアーデとアレイスターを見た。アレンとラビもそちらを向く。
《二人はそなたやアレンそれにラビを必要としておらん。無論、私もだ。二人は…二人だけで決着をつけている》
『決着…』
《そうだ。御互いの心に…決着を》
『…嫌だよ……』
泣いてしまいたい。
だけど涙が出ない。泣き方を知らない…
折角エリアーデに再会出来たのに…
折角エリアーデが頑張ってるのに…
《アクマを全て破壊するという決意はどうした…エリアーデはアクマだ。破壊すべきモノだろう》
私の決意…
私は…エリアーデを破壊しなくてはならない……ユエはシャールも…
私は…全てのアクマを破壊しなくてはならない。
《エリアーデはエリアーデ自身で自分の行く道を決める。そなたはそなたの行く道を悔いなく進め》
お前が正しいと思う事をしろ…
《習った筈だ。遠ときモノを‥儚きモノを…》
月に言われた通りだった。
私は二人に習った。
大切なモノを沢山…
《私は何時でも共に在る。そなたの真の力となり、そなたの運命を見届けよう…》
月の声が消え、私の頭には代わりに別の声が響いた‥
ごめんなさい…
…姫様…姫様、ごめんなさい────……
次の瞬間、一瞬静かになった城に綺麗で哀しい声が響いた。
ア……レイスター…
貴方を…愛しタかったのにナ…
アクマが一体…
また神の元へ向かった。
“エリアーデ”と言う名のとても綺麗なアクマが──…
「私も誰かを愛してみたいんです」
『うん…私も愛してみたい!家族や友達に対するもの以外の愛を知りたいな』
「姫様なら必ず出来ますよ」
『エリアーデも必ず出来るよ!』
「はい、そう願います」
『大丈夫だよ、だって』
「…?」
『エリアーデは見た目も心も綺麗で優しいもん』
「あ…ありがとうございます、姫様」
エリアーデの笑顔が懐かしい。
エリアーデ…貴女の笑顔が大好きだよ。
怒った顔も、照れた顔も、泣いた顔だって…大好きだよ…
笑顔で一緒に遊んでくれて…
直ぐ着替えないと怒って…
チィに怒られてしょんぼりして…
綺麗って言うと凄く喜んで…
あぁ、嫌だな…
私の記憶はエリアーデで一杯だよ。
さよなら、エリアーデ。
綺麗で強くて可愛い…
私の大切なお姉さん。
約束の花は…
もう摘みに行けない──…
マナ…
たとえ左眼がもう見えなくても…僕はエクソシストを続けるつもりだったよ。
仲間と同じ…
覚悟をしたんだ──…
マナ…
ならばより深く。
より黒白の世界へと…
深く深く堕ちてゆけ──…
=求めた先=
「アンタを殺す為に姫様にも手ぇ出しちゃったし最悪だわ」
エリアーデは砂埃のついたボロボロの服を叩きながらそうブツブツと呟く様に文句を言った。
アレンはエリアーデの足元に倒れているレイを見ると口を開く。
「…何故気絶させたんですか」
「姫様はきっとアンタを殺すのを止めるからよ」
エリアーデは面倒臭そうに話しながら崩れた髪を整える。
「それにしても…仲間である姫様を攻撃したあげく、姫様の異変に気付かないなんて」
「攻撃?異変ってなんですか?」
僕がレイを攻撃?そんな馬鹿な…
エリアーデは鼻で笑うと口を開く。
「馬鹿じゃないの?何、敵に聞いてんのよ」
「ッ…」
「まぁ特別に教えてやるわ。気を失っていたアンタの左手は姫様を攻撃したのよ…お陰で庇った私はこのザマ」
僕のイノセンスがレイを攻撃した…?
「そんな…馬鹿な」
「はぁ?じゃあこの傷は何だってのよ」
「……」
「…異変ってのはね、前の姫様だったらアタシの攻撃なんか当たりもしなかったし、当たっても気なんて失いやしないわよ」
エリアーデはしゃがみ込んで床に横たわるレイの頭を優しく撫でながら続けた。
「姫様はノアの力を封印してるんだろうね」
「封印?エクソシストの力があるんだからなんら支障は無いじゃないですか」
アレンの一言に、エリアーデは声を上げて馬鹿にした様に笑ってみせた。
「アンタってホント馬鹿ね」
「な…」
「ノアの力を使わないって事は、今の姫様の身体には再生能力が無いって事よ。アンタと姫様は一緒に戦ってんでしょ?気を付けることね」
「はい…?」
「アンタ達エクソシストの武器が少しでも姫様に当たったら…姫様はどうなるか解らない」
「ぇ…」
「アレイスターみたいなのは特にね……ノアの力でイノセンスが破壊出来る様に、イノセンスの力でノアを
“そう言う事でしょ”と言ってクスクス笑ったエリアーデは、アレンと向き合った。
「さて、
「…ボディをコンバートしないんですか?」
「ま〜生意気!ブスになるから嫌なのよ。人間の姿のが好き…」
エリアーデは両頬に手を当てると、カポッと音を立てて顔をずらした。
「でもまぁ…そんな事も言ってらんないか」
奇妙な音を立て、エリアーデはボディをアクマのものへと変えた。
手を抜いている暇は無い。
貴女なりの平穏を取り戻すには…
貴女が…
全力で僕を倒す事しか方法は無いのだから…
エリアーデ…
「姫様、服を着ないと風邪をひきますよ!」
『大丈夫だよぉ、エリアーデ』
「駄目です!私が伯爵様に怒られてしまいます!」
『え──…分かった…でもまだ暑いからさ、もうちょっとだけ…』
「駄目です、湯冷めします」
『あと一分だけ』
「駄目です」
エリアーデ…
「姫様、この花でよろしかったですか?」
『うん、ありがとエリアーデ!』
「花瓶にさしますね、姫様」
『いつか…』
「姫様…?」
『いつか一緒に行けたらいいねぇ、エリアーデ』
「…はい、姫様」
『えへへ…約束ね、エリアーデ』
「はい、姫様」
エリアーデ…
記憶の中の貴女はいつも笑顔だった…
貴女はユエとシャールと同じ様に私を恐れなかった。
優しくしてくれた…外の話をしてくれた…
私の大切な…お姉さん…
気を失って床に倒れていたレイの目が薄く開かれた。
首が少し痛い…多分エリアーデに手刀でもされて気絶していたんだろう。
身体を起こし、辺りを見回せば部屋はボロボロで、本が大量に散乱していた。
レイは立ち上がると服の汚れを叩いて落とす。
エリアーデを助けないと…
タスケナイト…
耳を澄ますと、食人花の叫び声が聞こえた。
食人花が警戒するのはアレンとラビと私のみ…多分エリアーデはアレンと一緒にいる。
レイは声を頼りに食人花の元へ向かって走り出した。
待ってて…エリアーデ──…
エリアーデ、綺麗だね!
凄い美人さん!!
幼い笑顔が今も記憶に焼き付いている。
私を綺麗だと言った姫様…
私は姫様が大好きだった。
ずっとずっと、側にいたいと思っていた。
けど、ある日姫様は姿を消してしまった…
私ヲ置イテ…
私は探した。
伯爵様の命令を無視して探し続けた…
探シテ…探シテ…探シテ…
これ以上伯爵様の命令を無視出来なくなった頃、クロウリー城に行きアレイスター・クロウリーを始末する命令を受けた。
正直私は姫様を見つけ出せずにいた苛つきやモヤモヤする気持の動揺をスッキリさせる為にアレイスターを殺そうとしていた。
だけどアレイスターに会った瞬間…
私は封じていた夢を…
どうしても叶えたくなった。
姫様、ごめんなさい…
私は…
夢を叶えたい──…
食人花の元に着くと、アレンとラビが食人花に捕まっていた。
遠くでは何故かエリアーデとアレイスターが戦っている。
不思議に思いつつも、レイは先にアレン達を助けに向かった。
『アレン、ラビ!!今、助けるから待って…ッ!?』
「「レイ!!!」」
駆け寄りながら影から飛び出したヴァイオリンを手にしたレイを一瞬で絡め取った食人花は、すかさず蔦でレイを締めあげた。
『く…っ』
右手に持った弓が左手に持ったヴァイオリン本体に届かない…これじゃあ発動したって力が使えない。
「レイ、大丈夫ですか!?」
「レイ、今行くさ!!」
アレンとラビが何か叫んでいたが、私にはちゃんと聞こえていなかった。
別の声が耳に届き、そして頭の中に響いたからだ…
外界へ行けないのを全部ジジィの所為にしてさ!
自分が城を出て傷つくのが怖いだけでしょーが、バァ〜カ!!!
エリアーデ…?
何言ってんの…?
臆病者、お前なんかこの城で朽ち果てるのがお似合いよ!
あぁ…お前とならそんな生涯を送る事になっても良いと思っていた、エリアーデ…だが醜いお前は見たくない。跡形もなく消えろ…
嫌よ!!
誰が壊されるもんか!!
アレイスターがエリアーデに立ち向かい、エリアーデも攻撃を仕掛ける。
その意味が分からなかった…
『止めてよ…』
「「レイ?」」
レイを助けようともがいていたアレンとラビは、レイの声を聞こうとピタリと動きを止めた。
『何で戦ってるの…?』
「姫様…私、夢があるんです」
『夢ぇ?エリアーデの夢ってなぁに?』
「私…恋がしたいんです」
『恋…?』
「人間の女は恋をすると綺麗になるんですよ。私も誰かを愛してみたいんです」
あぁ言ってたのは貴女じゃない…
恋したいんでしょ?
誰かを愛してみたいんでしょ?
だったら…
『止めてよ、エリアーデ!!』
相手を殺しては駄目だ。
貴女が壊れても…駄目だよ…
私の声でエリアーデの動きが一瞬止まったが、それは本当に一瞬の事で…エリアーデは直ぐにアレイスターへの攻撃を再開した。
『エリアーデ…ッ』
“黒キ舞姫”を発動しようとしたが、何故か発動出来無かった。
ノアの力も…使えない…
私は…
何モ出来無イ…
私は…
私は…エリアーデを失いたくない。
『月!!!』
レイがいきなり叫んだ為、アレンとラビは驚いて目を見開いた。
レイはそんな事は気にもとめない。
『月、お願い助けて!!』
自分では何も出来ない。
なんて無力な…
弓を握り締めた手から血が溢れ、弓を伝い食人花に垂れた。
手を強く握りすぎて爪が掌に食い込んでいるんだろう。
《その食人花の対処法ならアレン・ウォーカーが知っている》
アレンとラビは何かを探す様に辺りを見回した。
私の精神が不安定な為、月の声がアレンやラビにも聞こえている様だった。
『違うんだ、月!エリアーデを…エリアーデを助けて!』
「「レイ!?」」
元帥としてやってはいけない事をしているのは分かっている。
だけど大切な人を亡くすわけにはいかない。
罰ならいくらでも受ける…
『月…!!』
《手は貸せぬ》
『な…っ…何で!!?』
何かあったら助けてくれるって言ったじゃない!エリアーデを…
《その願いはそなたの私情だ。エリアーデの願いでは無い…》
『だけどエリアーデは!』
《そなたのソレは唯の御節介だ》
お節介…?
だってエリアーデは…
《二人を見ろ》
レイは月に言われた通りにエリアーデとアレイスターを見た。アレンとラビもそちらを向く。
《二人はそなたやアレンそれにラビを必要としておらん。無論、私もだ。二人は…二人だけで決着をつけている》
『決着…』
《そうだ。御互いの心に…決着を》
『…嫌だよ……』
泣いてしまいたい。
だけど涙が出ない。泣き方を知らない…
折角エリアーデに再会出来たのに…
折角エリアーデが頑張ってるのに…
《アクマを全て破壊するという決意はどうした…エリアーデはアクマだ。破壊すべきモノだろう》
私の決意…
私は…エリアーデを破壊しなくてはならない……ユエはシャールも…
私は…全てのアクマを破壊しなくてはならない。
《エリアーデはエリアーデ自身で自分の行く道を決める。そなたはそなたの行く道を悔いなく進め》
お前が正しいと思う事をしろ…
《習った筈だ。遠ときモノを‥儚きモノを…》
月に言われた通りだった。
私は二人に習った。
大切なモノを沢山…
《私は何時でも共に在る。そなたの真の力となり、そなたの運命を見届けよう…》
月の声が消え、私の頭には代わりに別の声が響いた‥
ごめんなさい…
…姫様…姫様、ごめんなさい────……
次の瞬間、一瞬静かになった城に綺麗で哀しい声が響いた。
ア……レイスター…
貴方を…愛しタかったのにナ…
アクマが一体…
また神の元へ向かった。
“エリアーデ”と言う名のとても綺麗なアクマが──…
「私も誰かを愛してみたいんです」
『うん…私も愛してみたい!家族や友達に対するもの以外の愛を知りたいな』
「姫様なら必ず出来ますよ」
『エリアーデも必ず出来るよ!』
「はい、そう願います」
『大丈夫だよ、だって』
「…?」
『エリアーデは見た目も心も綺麗で優しいもん』
「あ…ありがとうございます、姫様」
エリアーデの笑顔が懐かしい。
エリアーデ…貴女の笑顔が大好きだよ。
怒った顔も、照れた顔も、泣いた顔だって…大好きだよ…
笑顔で一緒に遊んでくれて…
直ぐ着替えないと怒って…
チィに怒られてしょんぼりして…
綺麗って言うと凄く喜んで…
あぁ、嫌だな…
私の記憶はエリアーデで一杯だよ。
さよなら、エリアーデ。
綺麗で強くて可愛い…
私の大切なお姉さん。
約束の花は…
もう摘みに行けない──…