第1章 ノアの少女
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
20
絶対に…
連れて行かせやしない──…
=呪いの帰還=
アレンとラビが掘りおこした墓からは、次々とアクマの残骸が出てきた。
こうなってしまえば、もう誤魔化しは効か無い。
「全部アクマだ…地面のペンタクルは外装が腐って中身が漏れたんだな」
「男爵はアクマを襲っていた…」
エリアーデ…もう、気付かれちゃったよ…
「アクマだけを襲ってたんだとしたら…?」
「こりゃ、吸血鬼退治じゃないさ…クロウリーって奴は…」
瞬間、一瞬のうちにラビの後ろにクロウリーが立った。
『ッ…!』
「ラッ、ラビ!!」
アレンの叫び声が響く中、レイはとっさにラビを庇う様に抱き締めた。クロウリーの攻撃が脇腹に入り、骨が悲鳴を上げる。
攻撃を受けたレイは、ラビを抱き締めたまま勢いで吹っ飛び、大きな音を立てて城の外壁に当たった。
『グ…ッ…』
城の外壁を突き破る程の衝撃だった為、沢山の瓦礫が雨の様に降り落ちてきた。
城の外壁とラビの身体に挟まれ、一瞬胃の中身が出そうな吐き気に襲われた。
「レイ、ラビ!!」
あぁ…
アレンの声が遠い──…
『ねぇ、月…私、愛が欲しい!“愛”ってなぁに…?』
『レイは何だと思っているんだ?』
『えっと…自分以外の者を好きになって大切に思う事…?』
『当たってはいるが…正解では無いな』
『何でぇ?』
『愛とは色々な種類がある。“家族”を愛する“友人”を愛する“植物”を愛する“動物”を愛する…言い出したら切りが無い。レイは全ての愛をちゃんと持っている。だがな…一番切ない愛をレイは知ら無い』
『一番切ない愛?』
『この者の為なら死んでも良い…そう思える大切な愛だ』
『私、チィ達家族の為なら死ねるよ?それが一番大切な愛って事?』
『違うな…私も家族やそなたの為になら死ねる…いや、消滅出来る。しかしそうでは無い。もっと大切な者が何時かレイにも出来る筈だ。
家族や友人よりも大切だと…何よりも誰よりも愛しいと。そう想える“愛する者”が……出来る筈だ…』
『出来ると良いなぁ~』
『一つ言っておくがな、レイ』
『何ぃ?』
『幾等死んでも良いと思っても本当に死んではならぬぞ』
『どういう事?』
『……残された者が死ぬよりも辛いめにあうからだ…』
『死ぬよりも?』
『哀しみが心を支配する…自分を責め、そして膨らみ溜まった哀しみが苦しみに変わり、最後には死を望む…愛する者をそうさせてはいけない』
『哀しみが…苦しみ…』
『私の様になっては駄目だよ……レイ…』
「レイ…レイ、レイ!!!」
切羽詰まったラビの声が頭に響き、目が覚めた。
目を開ければ青ざめたラビの顔が視界に広がる。
『ラ…ビ……』
手を伸ばしてラビの血色の悪い頬にそっと触れた。
「良かったさ…」
泣きそうなラビがレイを優しく抱き締めた。
ラビは身体が少し震えていたが…取り敢えずは元気そうだった。
『…ラビ…無事で良かった』
「こっちの台詞さ!レイ、冷てぇし動かねぇし……俺、心臓止まるかと思ったさ」
『…ごめんね…ラビ』
泣かないで…泣かないで…
「こっちの台詞さ…俺の所為で怪我させちまった」
『大丈夫だから…いつもみたいに笑って、ラビ』
レイがそう言うと、ラビはレイに密着した身体を離し、無理矢理笑って見せた。
レイは微笑み返すと、そんなラビの頬を優しく撫でた。
「クロちゃんを…エクソシストの説明がてらちょっくら懲らしめてくるさ」
そう言うとラビはレイを崩れた壁に凭れ掛からせると、クロウリーの元へと向かった。
「ク〜ロちゃん!!」
何故かクロウリーの側にアレンはいなく、俺はそう叫びながらデカくした槌でクロウリーに攻撃を仕掛けた。
砂煙の中、地にめり込んだ槌に乗ったラビは、口に溜った己の血と、誤って口に入ってしまった多少の砂を吐き捨てた。
「ちょーっと…いや、かな~りキレたさ。俺だけなら兎も角、レイにまで怪我させやがって…ブチのめしてからゆっくり話し合おうと思います!」
手加減しねぇぞ、こんにゃろ…
「面白い」
ニヤリと口角を上げて笑ったクロウリーの牙が妖しく光った。
「いない…?」
偶然転がり込んでしまった隠し扉の中…
呻き声の響く室内の奥には謎の影がユラユラと揺らめいていた。
が、アレンが扉の閉まる音に反応し、扉を振り返っている間に影は消えてしまった。
「どこに…」
瞬間、どこからか第三者の手を伸びてきた。
「な…っ!?」
痛いくらいに勢い良く、本棚に身体を押し付けられる。
「あら、白い坊やじゃない」
僕を本棚に押し付けたのは先程の女性…エリアーデだった。
「アレイスターったら仕留めろって言ったのに…ハ…ハ……ッ
全くもう……ッ…」
エリアーデの肩には自分の左手の指についている傷と同じものがついていた。
アレンが傷を確認した次の瞬間、ギシッと音を立ててエリアーデのアレンを締め付ける腕に力が入った。
「痛…ッ」
「まぁ、良いわ。あんたは私が始末したげる…姫様はあんた達を殺すなとは言ってなかったしね」
エリアーデは口角を上げると、気持ち悪いくらいの笑みを浮かべた。
「一度は味わってみたいと思ってたの…エクソシストの血」
あぁ…レイは無事かな…?
ラビは心配無いけど…早く何とかしてレイの所に行かなくちゃ……
待ってて…レイ…
「この城に入った事、後悔なさい!」
待ってて…
僕が絶対に…
絶対に貴女を護るから……
『アレンどこぉ?』
そう口にしながら、レイは城の廊下を突き進む。
さっきからアレンが見付からないのだ。
ラビはクロウリーと派手にやってるから何もしなくとも位置は分かる。問題はアレンだ。
『痛…ッ』
邪魔な髪を書き上げた瞬間に腹部に鈍い痛みを覚えた。
『あ〜ぁ…肋何本かいっちゃってんな、これ』
クロウリーの一撃がもろに入っちゃったか…動けないわけじゃ無いし良いか。
それよりアレンを捜さなきゃ…アレンはあの左目無しでの戦いに慣れてないから急がないと…
『疲れてるから力使いたくないのになぁ…』
そう呟いた瞬間にふと壁の中から聞こえた甲高い笑い声と鈍い音…レイは壁に耳を当てると耳を澄ました。
「仲間?バカじゃないの!?」
エリアーデ…?
「あいつは吸血鬼よ!!」
吸血鬼…話の内容はクロウリーについてか…
エリアーデの声が震えている様な気がした。
「連れてなんて…行かせるもんか…ッ!!」
エリアーデ…
貴女、クロウリーを──…
「だからお前は殺す!!」
殺す…つまりは邪魔者。現在城内にいる邪魔者は私達だ。
アレンはこの先にいる…
「姫様の連れだからって生かしておく必要は無い…姫様は手を出すなとも殺すなとも何も言わ無かった!」
“ドカンッ”と大きな音が響き、レイは慌てて壁の内側に通じる道を探した。
「首を落として全身から血を抜いて城門に飾っといてやるわ…もう誰もこの城に近付け無い様に……こいつの命をクロウリーの代わりに差し出せば面目も立つ」
面目?面目が何さ…アレンを殺させて堪るか。
道を探すのを諦めたレイは、影で壁を斬り裂くと室内に駆け込んだ。
目の前ではエリアーデがその手に持った斧を床に倒れたアレンに振り降ろす所だった。
『止めて、エリアーデ!!』
駆け出したレイが斧とアレンの間に身体を滑り込ませるより早く、アレンの赤い左手が斧を受け止めた。
「チッ…まだ動けたか」
『アレン!!』
レイは一息ついた後、慌ててアレンを抱き起こそうとする。
「ひ、姫様っ」
エリアーデにはさっきの私の声さえも聞こえていなかった様だ。
『アレン…ッ、意識が無い…』
意識がない状態で受け止めた…?
レイは未だに斧を受け止めたままのアレンの左手を見据えた。
瞬間、アレンの腕が“バキンッ”と音を立てて斧を粉砕し、眩しい程に光を放った。
『ッ…!?』
「姫様!!」
勢い良くエリアーデに腕を引っ張られ、レイはエリアーデの胸に倒れ込んだ。
肉を切裂く様な鈍い音が耳に届き、レイが目を開けると、胸に傷を受けたエリアーデが立っていた。
『エリアーデ!?』
「ハァ…ハァ……ッひ、姫様…あれ…」
レイはエリアーデが指差す先を見て言葉を失った。
私達を攻撃したのはアレンの左手だった…左手はアレンが気絶しているのに、勝手に発動し動いている。
『こんな…』
「姫様、済みません」
視界が歪んだかと思ったら、目の前が真っ暗になった。
おちる…おちる……
闇の中へ──…
白と黒の世界おちるのは──…
絶対に…
連れて行かせやしない──…
=呪いの帰還=
アレンとラビが掘りおこした墓からは、次々とアクマの残骸が出てきた。
こうなってしまえば、もう誤魔化しは効か無い。
「全部アクマだ…地面のペンタクルは外装が腐って中身が漏れたんだな」
「男爵はアクマを襲っていた…」
エリアーデ…もう、気付かれちゃったよ…
「アクマだけを襲ってたんだとしたら…?」
「こりゃ、吸血鬼退治じゃないさ…クロウリーって奴は…」
瞬間、一瞬のうちにラビの後ろにクロウリーが立った。
『ッ…!』
「ラッ、ラビ!!」
アレンの叫び声が響く中、レイはとっさにラビを庇う様に抱き締めた。クロウリーの攻撃が脇腹に入り、骨が悲鳴を上げる。
攻撃を受けたレイは、ラビを抱き締めたまま勢いで吹っ飛び、大きな音を立てて城の外壁に当たった。
『グ…ッ…』
城の外壁を突き破る程の衝撃だった為、沢山の瓦礫が雨の様に降り落ちてきた。
城の外壁とラビの身体に挟まれ、一瞬胃の中身が出そうな吐き気に襲われた。
「レイ、ラビ!!」
あぁ…
アレンの声が遠い──…
『ねぇ、月…私、愛が欲しい!“愛”ってなぁに…?』
『レイは何だと思っているんだ?』
『えっと…自分以外の者を好きになって大切に思う事…?』
『当たってはいるが…正解では無いな』
『何でぇ?』
『愛とは色々な種類がある。“家族”を愛する“友人”を愛する“植物”を愛する“動物”を愛する…言い出したら切りが無い。レイは全ての愛をちゃんと持っている。だがな…一番切ない愛をレイは知ら無い』
『一番切ない愛?』
『この者の為なら死んでも良い…そう思える大切な愛だ』
『私、チィ達家族の為なら死ねるよ?それが一番大切な愛って事?』
『違うな…私も家族やそなたの為になら死ねる…いや、消滅出来る。しかしそうでは無い。もっと大切な者が何時かレイにも出来る筈だ。
家族や友人よりも大切だと…何よりも誰よりも愛しいと。そう想える“愛する者”が……出来る筈だ…』
『出来ると良いなぁ~』
『一つ言っておくがな、レイ』
『何ぃ?』
『幾等死んでも良いと思っても本当に死んではならぬぞ』
『どういう事?』
『……残された者が死ぬよりも辛いめにあうからだ…』
『死ぬよりも?』
『哀しみが心を支配する…自分を責め、そして膨らみ溜まった哀しみが苦しみに変わり、最後には死を望む…愛する者をそうさせてはいけない』
『哀しみが…苦しみ…』
『私の様になっては駄目だよ……レイ…』
「レイ…レイ、レイ!!!」
切羽詰まったラビの声が頭に響き、目が覚めた。
目を開ければ青ざめたラビの顔が視界に広がる。
『ラ…ビ……』
手を伸ばしてラビの血色の悪い頬にそっと触れた。
「良かったさ…」
泣きそうなラビがレイを優しく抱き締めた。
ラビは身体が少し震えていたが…取り敢えずは元気そうだった。
『…ラビ…無事で良かった』
「こっちの台詞さ!レイ、冷てぇし動かねぇし……俺、心臓止まるかと思ったさ」
『…ごめんね…ラビ』
泣かないで…泣かないで…
「こっちの台詞さ…俺の所為で怪我させちまった」
『大丈夫だから…いつもみたいに笑って、ラビ』
レイがそう言うと、ラビはレイに密着した身体を離し、無理矢理笑って見せた。
レイは微笑み返すと、そんなラビの頬を優しく撫でた。
「クロちゃんを…エクソシストの説明がてらちょっくら懲らしめてくるさ」
そう言うとラビはレイを崩れた壁に凭れ掛からせると、クロウリーの元へと向かった。
「ク〜ロちゃん!!」
何故かクロウリーの側にアレンはいなく、俺はそう叫びながらデカくした槌でクロウリーに攻撃を仕掛けた。
砂煙の中、地にめり込んだ槌に乗ったラビは、口に溜った己の血と、誤って口に入ってしまった多少の砂を吐き捨てた。
「ちょーっと…いや、かな~りキレたさ。俺だけなら兎も角、レイにまで怪我させやがって…ブチのめしてからゆっくり話し合おうと思います!」
手加減しねぇぞ、こんにゃろ…
「面白い」
ニヤリと口角を上げて笑ったクロウリーの牙が妖しく光った。
「いない…?」
偶然転がり込んでしまった隠し扉の中…
呻き声の響く室内の奥には謎の影がユラユラと揺らめいていた。
が、アレンが扉の閉まる音に反応し、扉を振り返っている間に影は消えてしまった。
「どこに…」
瞬間、どこからか第三者の手を伸びてきた。
「な…っ!?」
痛いくらいに勢い良く、本棚に身体を押し付けられる。
「あら、白い坊やじゃない」
僕を本棚に押し付けたのは先程の女性…エリアーデだった。
「アレイスターったら仕留めろって言ったのに…ハ…ハ……ッ
全くもう……ッ…」
エリアーデの肩には自分の左手の指についている傷と同じものがついていた。
アレンが傷を確認した次の瞬間、ギシッと音を立ててエリアーデのアレンを締め付ける腕に力が入った。
「痛…ッ」
「まぁ、良いわ。あんたは私が始末したげる…姫様はあんた達を殺すなとは言ってなかったしね」
エリアーデは口角を上げると、気持ち悪いくらいの笑みを浮かべた。
「一度は味わってみたいと思ってたの…エクソシストの血」
あぁ…レイは無事かな…?
ラビは心配無いけど…早く何とかしてレイの所に行かなくちゃ……
待ってて…レイ…
「この城に入った事、後悔なさい!」
待ってて…
僕が絶対に…
絶対に貴女を護るから……
『アレンどこぉ?』
そう口にしながら、レイは城の廊下を突き進む。
さっきからアレンが見付からないのだ。
ラビはクロウリーと派手にやってるから何もしなくとも位置は分かる。問題はアレンだ。
『痛…ッ』
邪魔な髪を書き上げた瞬間に腹部に鈍い痛みを覚えた。
『あ〜ぁ…肋何本かいっちゃってんな、これ』
クロウリーの一撃がもろに入っちゃったか…動けないわけじゃ無いし良いか。
それよりアレンを捜さなきゃ…アレンはあの左目無しでの戦いに慣れてないから急がないと…
『疲れてるから力使いたくないのになぁ…』
そう呟いた瞬間にふと壁の中から聞こえた甲高い笑い声と鈍い音…レイは壁に耳を当てると耳を澄ました。
「仲間?バカじゃないの!?」
エリアーデ…?
「あいつは吸血鬼よ!!」
吸血鬼…話の内容はクロウリーについてか…
エリアーデの声が震えている様な気がした。
「連れてなんて…行かせるもんか…ッ!!」
エリアーデ…
貴女、クロウリーを──…
「だからお前は殺す!!」
殺す…つまりは邪魔者。現在城内にいる邪魔者は私達だ。
アレンはこの先にいる…
「姫様の連れだからって生かしておく必要は無い…姫様は手を出すなとも殺すなとも何も言わ無かった!」
“ドカンッ”と大きな音が響き、レイは慌てて壁の内側に通じる道を探した。
「首を落として全身から血を抜いて城門に飾っといてやるわ…もう誰もこの城に近付け無い様に……こいつの命をクロウリーの代わりに差し出せば面目も立つ」
面目?面目が何さ…アレンを殺させて堪るか。
道を探すのを諦めたレイは、影で壁を斬り裂くと室内に駆け込んだ。
目の前ではエリアーデがその手に持った斧を床に倒れたアレンに振り降ろす所だった。
『止めて、エリアーデ!!』
駆け出したレイが斧とアレンの間に身体を滑り込ませるより早く、アレンの赤い左手が斧を受け止めた。
「チッ…まだ動けたか」
『アレン!!』
レイは一息ついた後、慌ててアレンを抱き起こそうとする。
「ひ、姫様っ」
エリアーデにはさっきの私の声さえも聞こえていなかった様だ。
『アレン…ッ、意識が無い…』
意識がない状態で受け止めた…?
レイは未だに斧を受け止めたままのアレンの左手を見据えた。
瞬間、アレンの腕が“バキンッ”と音を立てて斧を粉砕し、眩しい程に光を放った。
『ッ…!?』
「姫様!!」
勢い良くエリアーデに腕を引っ張られ、レイはエリアーデの胸に倒れ込んだ。
肉を切裂く様な鈍い音が耳に届き、レイが目を開けると、胸に傷を受けたエリアーデが立っていた。
『エリアーデ!?』
「ハァ…ハァ……ッひ、姫様…あれ…」
レイはエリアーデが指差す先を見て言葉を失った。
私達を攻撃したのはアレンの左手だった…左手はアレンが気絶しているのに、勝手に発動し動いている。
『こんな…』
「姫様、済みません」
視界が歪んだかと思ったら、目の前が真っ暗になった。
おちる…おちる……
闇の中へ──…
白と黒の世界おちるのは──…