第1章 ノアの少女
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19
綺麗だね…
ちゃんと覚えてる。
私の…
私の大切な貴女が私に言ってくれたその言葉…
色褪せずにちゃんと…
今も頭に響いている…
=綺麗なアクマ=
『月、月!城内にアクマが一体居るよ』
クロウリー城の屋根の上で月に合流したレイは、城内にアクマの気配を感じてそう声を上げた。
『変な状況…』
《あぁ、そうだな》
『嫌な予感がするなぁ』
そう呟いたレイは、直ぐに城内に居るアクマに話し掛けた。
『“クロウリー城のアクマ…私の声が聞こえているね?”』
《ッ…ノア様!?》
『“やぁ、今晩は”』
《ノ、ノア様、これは…》
いきなり話し掛けられて驚いたアクマが慌てて言い訳の様に話し出す。
何を慌てているんだろう?
『裏がありそうだよね…月』
《……》
そうだ。良い事考えた…
『“良いんだよ、気にしないで好きにして”』
《え…?》
レイの言葉に、アクマはそう間の抜け声を出した。
当然だろう…他のノアならこんな事言わない。
『“貴女にもやりたい事があるんでしょ?私は手を出さないから好きにやってみなよ”』
《は、はい!》
あぁ…
アクマの笑顔が頭に浮かぶ…
『あのアクマは何をしようとしてるんだろうね…月』
丁度その頃…吸血鬼と呼ばれ、村人に恐れられているクロウリーと森で対面したアレンとラビが、漸く着いたクロウリー城に足を踏み入れていた。
辺りを見渡しながら城内を進むラビにただついて行くアレンの頭の中には、いくつかの疑問が浮んでいた。
「全く…何でエクソシストが吸血鬼退治なんかやってるんさー」
愚痴を溢すラビを無視してアレンは口を開く。
「でも何か可笑しくないですか?吸血鬼事件と師匠と何の関係があるんだろう…」
師匠は何故自分で…犠牲者が出る前に対処しなかったんだろ?
「師匠は何をしにここへ…?」
『そこがポイントなのよ!』
「レイ!!」
「レイ、会いたかったさぁ!」
聞き慣れた声と共に後ろからレイが現れ、ラビは直ぐにレイに勢い良く抱き付いた。
『二人共考えを纏める前に来たでしょ~?まぁ、良いや…アレン、ラビに説明してあげて』
「はい…良く考えると僕等に吸血鬼退治をさせる為にあんな伝言残すなんてちょっと変なんですよ」
「何だよ?じゃあ俺等は一体…ぃ」
瞬間、レイに抱き付いていたラビが突然、レイを抱き締めたままバタッと音を立てて床に倒れた。
「ぇ、ラビ!?…………寝てる?」
『あらまぁ』
驚いているアレンをよそに、レイは自分を抱き締めた儘のラビを突っついて遊んでいる。
あぁ、可愛いなぁ……って…あれ…?
「この甘い香りは確か…」
昔どこかで…と考え出した瞬間、グイッと何かに引っ張られ、僕の身体は宙に浮いた。
「うわッ、つる?」
『アレン、大丈夫~?』
下でレイが心配そうに見上げているのが見えた。
ラビの腕の中から抜け出たのだろうか?
何故かラビの姿が見えない。
「レイ、ラビは?!」
『えっとねぇ…』
そう口にしたレイが天井…つまりは僕の方に向かって指を指した。
指の差された方に顔を上げるとその先には大きな…
「……………花?」
そうアレンが呟いた瞬間、花は“ギィエエエエエエエェ”と耳障りな奇声を上げながらアレンに襲い掛かってきた。
「い゙…ッ!?」
直ぐにアレンはイノセンスを発動させると花に向けて銃を撃った。
「ラビ!!」
地響きの様な音を立てながら花を攻撃するアレンは、花の粘着液に絡まれて眠っているラビを見付けると、起こすべく声を張り上げた。しかしラビはいくら呼んでも目を覚まさない。
壁に穴をあけてしまったが気にしている暇は無かった。ひたすら花を撃ち続ける。
…が、暫くすると花は僕等を襲わなくなった。
花の叫び声の変わりに、ヴァイオリンの音が辺りに響き渡る。
「レイ!」
レイがヴァイオリンを弾きながら頭を垂れた花の上に乗ると、花はアレンの目の高さまでレイを運んだ。
『アレン、大丈夫?私、花は操れるけど、そのネバネバしたのは操れないのよ』
レイはヴァイオリンを弾きながらそう苦笑した。
確かに花やつたは退いたが、体についたネバネバしたものは取れず、相変わらず体は宙に浮いている。
「大丈夫です…あの、レイのイノセンスは影を操るものじゃないんですか?」
さっきは影を翼にして飛んでいたし、入団の時に助けてもらった時も影の様なものを操っていた。
でもラビと三人で大量のアクマを破壊した時は今の様にヴァイオリンを使っていた…
影でヴァイオリンを作ってるのか?
『二つのイノセンスが適合してるんだよ。一番適合率が高いのがこのヴァイオリンのイノセンスなんだ~』
レイは再度微笑むと、ヴァイオリンを弾くのを止めて影に落とした。
ヴァイオリンは影に溶ける様に消える。
『ほら、ラビ起きて!』
「…ぅ……ほぇ?」
レイの声で、ゆっくりとラビが目を覚ます…
「コラ、そこの人間ども!!」
突然響き渡った怒鳴り声に反応し、ラビはレイ達ではなくそちらに視線を向けた。
「何してる!!この子達はアレイスター様の大事な花なのよ!」
その声と共に空けてしまった壁穴の所から、看護婦の様な服の女性が顔を出した。
城の中に看護婦さん…?
「──…、‥」
女が何か小さく呟いたが、ここからでは全く聞き取れ無かった。
「……何か熱い視線を感じる…」
「へ…?」
女の言葉を聞いて、ラビの方を見ると……ラビの様子が可笑しい。
「ラビ?」
何かラビがキラキラ光ってる…女の死角にいるレイは呑気に花の上に座り込むとキラキラと輝くラビを見ていた。
『あらまぁ…』
「お────い!」
不意にラビが女に呼び掛け、アレンも負けじと声を張り上げた。
「うぉ──ぃ!ラビ─────ッ!!!もしも──し」
アレンが必死にラビを叫ぶが、ラビは全く反応が無い。
舌打ちをしたアレンは、下で笑っているレイを見据えた。
「レイ!!」
ラビを見ていたレイは、不思議そうに顔を上げた。
『何ぃ?』
「受け取って下さい!」
無理矢理団服のポケットを漁ったアレンは、目当ての物を見付けるとレイに向けて落とした。
レイは不思議そうに首を傾げながらそれを受け取った。
『…目薬?』
「今から言う通りにして下さいね!」
『うん、分かったぁ』
レイに手短にプランを話したアレンは、睨む様にラビを見据えた。
「ラビ、こっ…」
「どう?私の恋人になる?」
女に夢中なラビの耳には女の声しか届いていなく、こちらの声には全然反応してくれ無い。
「ラビ、こっち向い…」
「恋人!マジ…!?」
この野郎…
「聞けぇ!!!」
そう声を張り上げたアレンは、イノセンスを解放すると、その左手をラビの頭目掛けて振り下ろした。
ゴッと鈍い音を立てて、アレンの左手がラビの頭に食い込む……流石にキレた。
「何すんさー……」
「何、あんなのに興奮してんですか!!!」
「やっぱガキだな、アレン」
「はぁあぁぁああっ!?」
『ラビ…』
瞬間、そう呼ばれたラビがレイに視線を落とすと、そこには目に涙を溜めたレイがいた。
『ラビは…あぁいう子がタイプなの?』
「あ…あぁぁあぁあ、あんなの全然タイプじゃ無いさ!!俺ってばレイ一筋だもんよ!」
嘘付け…さっきはあんなに騒いでたじゃないか。
まぁ良いや…作戦成功だし。
「あんなの?しかも二回も…」
そう言う女の表情が見る見るうちに変わっていくのが良く分かった。怒らせちゃったかな…?
レイがラビの頭を心配してラビの近くの花に飛び移り、優しくラビの頭を撫でた。
ほっとけば良いのに…
「あたしはアレイスター様の助手のエリアーデ!あんた達ここに何しに……ッ!?」
エリアーデと名乗った女の言葉はそこで止まった。
「ひ、姫様?!」
エリアーデの言葉にアレンとラビは思わず顔を見合わせた。
そしてレイを見据える。
「「………姫様ぁ!!?」」
『あぁ!久しぶりぃ、エリアーデ!』
エリアーデを見て目を輝かせたレイは、ニッコリと笑うとエリアーデに向かって片手を上げた。
一方レイが手を上げた相手、エリアーデの表情は酷く混乱している様だった。
久々に会ったし…
服がこれだからかな…?
『貴女、チィに会いに来たの?』
「はい、ノア様…私、エリアーデと申します」
『あ、私の名前はねぇ…』
「コラ、レイ!ダメじゃないデスか、部屋から出てはダメだと言ったでショ?♡」
『チィ、見て見て!この子エリアーデっていうの!!綺麗だよね、凄く美人さん!』
「何言ってるんデスカ♡レイの方が綺麗ですヨ♡エリアーデ、この子が姫デス♡」
「姫様…」
「姫様……先程の交信は姫様だったんですね…」
レイは嬉しそうに微笑むと、花を飛び移りながらエリアーデに近付いた。
『まさかエリアーデだとは思わなかったよ!』
「そんな服を着て……まさか、姫様」
エリアーデの言葉に、レイの表情が哀しそうに歪む。
『御免ね…私、エクソシストになったの』
「姫様…」
エリアーデは少し悩んだ後、目の前まで来たレイの胸倉を掴むと、アレン達の方へ向けて投げ飛ばした。
慌てたアレンとラビがジタバタともがきながらレイに腕を伸ばす。
「姫様、ゴメンナサイ…私、やってみたい事があるんです」
飛ばされながら私は確かにそうエリアーデの言葉を聞いた。
レイは微笑むと、言葉にはせずに交信した。
《私は手を出さないよ…だから頑張ってね、エリアーデ》
もがきながら腕を伸ばした二人…レイを受け止める事に成功したのはアレンだった。
「何を話してたんですか?」
どうやらアレン達には話の内容が聞こえていなかったらしい。好都合だった。
『何でも無いよ』
そう口にした瞬間、エリアーデが私達に向かって死体を投げ、それを食べた食人花が爆発を起こした。
爆発の煙でアレンとラビを見失ったレイは一人、墓地の真ん中に立った。
やってみたい事があるんです…
出来ると良いね、エリアーデ…私は手を出さないよ。
でもここにはアレンとラビがいる。
貴女とクロウリーをほっとく訳無いよ…
正体を知れば尚更ね…
「レイ!」
そう名前を呼ばれて振り返ると、二人が立っていた。
爆発の所為で二人とも少しボロボロだ。
『アレン、ラビ…』
「捜しましたよ!」
アレンが歩み寄って来る中、ラビはレイに駆け寄るとその身体を抱き締めた。
『どうしたの?』
「泣いたレイめっちゃ可愛かったさ~どストライクだったもんよ」
『私、生まれてから一度も泣いた事無いよ』
私は泣けない。
泣き方を知らないし、どういう時に涙が出るのかもいまいち良く分からない。
「何言ってるさ~さっき泣いて…」
「あれ目薬ですよ。貴方がエリアーデに靡いてて全く人の話を聞かなかったので、レイに頼んで僕が指示したんですよ…演技です」
「……酷いさ、アレン…俺を傷付けて楽しいんか?」
「煩い、浮気者」
うなだれたラビの頭を撫でていたら、ふとアレンに引き離された。
「はぁあ………それにしても随分、粗末な墓さ…ペットのかね」
“アレンも一緒に埋めてやる”と言うラビを無視したアレンは、少し考えると口を開いた。
「……これ…連れ去られた村人の墓じゃないですか?」
「へ?」
アレンが真実へと近付きつつある…
「数が八つ…村長さんが言ってた犠牲者の数と合いますよ」
「クロウリーにやられたのは九人だろ?」
エリアーデ…どうする?
「犠牲者の一人目は蒸発したって言ってたじゃ…」
瞬間、アレンの触れた墓の十字架が“パキンッ”と音を立てて崩れた。
「あ──ッ、壊した!」
「な…ッ、ちょっと触っただけなのに!!」
ラビが声を上げ、アレンは“ごめんなさい”と謝りながら墓に土下座した。
「ラビ…レイ!これ見て下さい!!」
アレンが何かを見つけたらしく、地面を指差した。
「ん?」
『なぁに、アレン?』
「これ…!」
「な…」
『……』
エリアーデ…
「墓の所の地面にペンタクルが浮き出てるんです」
「アクマの血のウイルス…」
そう長くは保たないよ…
「まさか…この墓にいるのは…」
二人が気付き出したから──…
綺麗だね…
ちゃんと覚えてる。
私の…
私の大切な貴女が私に言ってくれたその言葉…
色褪せずにちゃんと…
今も頭に響いている…
=綺麗なアクマ=
『月、月!城内にアクマが一体居るよ』
クロウリー城の屋根の上で月に合流したレイは、城内にアクマの気配を感じてそう声を上げた。
『変な状況…』
《あぁ、そうだな》
『嫌な予感がするなぁ』
そう呟いたレイは、直ぐに城内に居るアクマに話し掛けた。
『“クロウリー城のアクマ…私の声が聞こえているね?”』
《ッ…ノア様!?》
『“やぁ、今晩は”』
《ノ、ノア様、これは…》
いきなり話し掛けられて驚いたアクマが慌てて言い訳の様に話し出す。
何を慌てているんだろう?
『裏がありそうだよね…月』
《……》
そうだ。良い事考えた…
『“良いんだよ、気にしないで好きにして”』
《え…?》
レイの言葉に、アクマはそう間の抜け声を出した。
当然だろう…他のノアならこんな事言わない。
『“貴女にもやりたい事があるんでしょ?私は手を出さないから好きにやってみなよ”』
《は、はい!》
あぁ…
アクマの笑顔が頭に浮かぶ…
『あのアクマは何をしようとしてるんだろうね…月』
丁度その頃…吸血鬼と呼ばれ、村人に恐れられているクロウリーと森で対面したアレンとラビが、漸く着いたクロウリー城に足を踏み入れていた。
辺りを見渡しながら城内を進むラビにただついて行くアレンの頭の中には、いくつかの疑問が浮んでいた。
「全く…何でエクソシストが吸血鬼退治なんかやってるんさー」
愚痴を溢すラビを無視してアレンは口を開く。
「でも何か可笑しくないですか?吸血鬼事件と師匠と何の関係があるんだろう…」
師匠は何故自分で…犠牲者が出る前に対処しなかったんだろ?
「師匠は何をしにここへ…?」
『そこがポイントなのよ!』
「レイ!!」
「レイ、会いたかったさぁ!」
聞き慣れた声と共に後ろからレイが現れ、ラビは直ぐにレイに勢い良く抱き付いた。
『二人共考えを纏める前に来たでしょ~?まぁ、良いや…アレン、ラビに説明してあげて』
「はい…良く考えると僕等に吸血鬼退治をさせる為にあんな伝言残すなんてちょっと変なんですよ」
「何だよ?じゃあ俺等は一体…ぃ」
瞬間、レイに抱き付いていたラビが突然、レイを抱き締めたままバタッと音を立てて床に倒れた。
「ぇ、ラビ!?…………寝てる?」
『あらまぁ』
驚いているアレンをよそに、レイは自分を抱き締めた儘のラビを突っついて遊んでいる。
あぁ、可愛いなぁ……って…あれ…?
「この甘い香りは確か…」
昔どこかで…と考え出した瞬間、グイッと何かに引っ張られ、僕の身体は宙に浮いた。
「うわッ、つる?」
『アレン、大丈夫~?』
下でレイが心配そうに見上げているのが見えた。
ラビの腕の中から抜け出たのだろうか?
何故かラビの姿が見えない。
「レイ、ラビは?!」
『えっとねぇ…』
そう口にしたレイが天井…つまりは僕の方に向かって指を指した。
指の差された方に顔を上げるとその先には大きな…
「……………花?」
そうアレンが呟いた瞬間、花は“ギィエエエエエエエェ”と耳障りな奇声を上げながらアレンに襲い掛かってきた。
「い゙…ッ!?」
直ぐにアレンはイノセンスを発動させると花に向けて銃を撃った。
「ラビ!!」
地響きの様な音を立てながら花を攻撃するアレンは、花の粘着液に絡まれて眠っているラビを見付けると、起こすべく声を張り上げた。しかしラビはいくら呼んでも目を覚まさない。
壁に穴をあけてしまったが気にしている暇は無かった。ひたすら花を撃ち続ける。
…が、暫くすると花は僕等を襲わなくなった。
花の叫び声の変わりに、ヴァイオリンの音が辺りに響き渡る。
「レイ!」
レイがヴァイオリンを弾きながら頭を垂れた花の上に乗ると、花はアレンの目の高さまでレイを運んだ。
『アレン、大丈夫?私、花は操れるけど、そのネバネバしたのは操れないのよ』
レイはヴァイオリンを弾きながらそう苦笑した。
確かに花やつたは退いたが、体についたネバネバしたものは取れず、相変わらず体は宙に浮いている。
「大丈夫です…あの、レイのイノセンスは影を操るものじゃないんですか?」
さっきは影を翼にして飛んでいたし、入団の時に助けてもらった時も影の様なものを操っていた。
でもラビと三人で大量のアクマを破壊した時は今の様にヴァイオリンを使っていた…
影でヴァイオリンを作ってるのか?
『二つのイノセンスが適合してるんだよ。一番適合率が高いのがこのヴァイオリンのイノセンスなんだ~』
レイは再度微笑むと、ヴァイオリンを弾くのを止めて影に落とした。
ヴァイオリンは影に溶ける様に消える。
『ほら、ラビ起きて!』
「…ぅ……ほぇ?」
レイの声で、ゆっくりとラビが目を覚ます…
「コラ、そこの人間ども!!」
突然響き渡った怒鳴り声に反応し、ラビはレイ達ではなくそちらに視線を向けた。
「何してる!!この子達はアレイスター様の大事な花なのよ!」
その声と共に空けてしまった壁穴の所から、看護婦の様な服の女性が顔を出した。
城の中に看護婦さん…?
「──…、‥」
女が何か小さく呟いたが、ここからでは全く聞き取れ無かった。
「……何か熱い視線を感じる…」
「へ…?」
女の言葉を聞いて、ラビの方を見ると……ラビの様子が可笑しい。
「ラビ?」
何かラビがキラキラ光ってる…女の死角にいるレイは呑気に花の上に座り込むとキラキラと輝くラビを見ていた。
『あらまぁ…』
「お────い!」
不意にラビが女に呼び掛け、アレンも負けじと声を張り上げた。
「うぉ──ぃ!ラビ─────ッ!!!もしも──し」
アレンが必死にラビを叫ぶが、ラビは全く反応が無い。
舌打ちをしたアレンは、下で笑っているレイを見据えた。
「レイ!!」
ラビを見ていたレイは、不思議そうに顔を上げた。
『何ぃ?』
「受け取って下さい!」
無理矢理団服のポケットを漁ったアレンは、目当ての物を見付けるとレイに向けて落とした。
レイは不思議そうに首を傾げながらそれを受け取った。
『…目薬?』
「今から言う通りにして下さいね!」
『うん、分かったぁ』
レイに手短にプランを話したアレンは、睨む様にラビを見据えた。
「ラビ、こっ…」
「どう?私の恋人になる?」
女に夢中なラビの耳には女の声しか届いていなく、こちらの声には全然反応してくれ無い。
「ラビ、こっち向い…」
「恋人!マジ…!?」
この野郎…
「聞けぇ!!!」
そう声を張り上げたアレンは、イノセンスを解放すると、その左手をラビの頭目掛けて振り下ろした。
ゴッと鈍い音を立てて、アレンの左手がラビの頭に食い込む……流石にキレた。
「何すんさー……」
「何、あんなのに興奮してんですか!!!」
「やっぱガキだな、アレン」
「はぁあぁぁああっ!?」
『ラビ…』
瞬間、そう呼ばれたラビがレイに視線を落とすと、そこには目に涙を溜めたレイがいた。
『ラビは…あぁいう子がタイプなの?』
「あ…あぁぁあぁあ、あんなの全然タイプじゃ無いさ!!俺ってばレイ一筋だもんよ!」
嘘付け…さっきはあんなに騒いでたじゃないか。
まぁ良いや…作戦成功だし。
「あんなの?しかも二回も…」
そう言う女の表情が見る見るうちに変わっていくのが良く分かった。怒らせちゃったかな…?
レイがラビの頭を心配してラビの近くの花に飛び移り、優しくラビの頭を撫でた。
ほっとけば良いのに…
「あたしはアレイスター様の助手のエリアーデ!あんた達ここに何しに……ッ!?」
エリアーデと名乗った女の言葉はそこで止まった。
「ひ、姫様?!」
エリアーデの言葉にアレンとラビは思わず顔を見合わせた。
そしてレイを見据える。
「「………姫様ぁ!!?」」
『あぁ!久しぶりぃ、エリアーデ!』
エリアーデを見て目を輝かせたレイは、ニッコリと笑うとエリアーデに向かって片手を上げた。
一方レイが手を上げた相手、エリアーデの表情は酷く混乱している様だった。
久々に会ったし…
服がこれだからかな…?
『貴女、チィに会いに来たの?』
「はい、ノア様…私、エリアーデと申します」
『あ、私の名前はねぇ…』
「コラ、レイ!ダメじゃないデスか、部屋から出てはダメだと言ったでショ?♡」
『チィ、見て見て!この子エリアーデっていうの!!綺麗だよね、凄く美人さん!』
「何言ってるんデスカ♡レイの方が綺麗ですヨ♡エリアーデ、この子が姫デス♡」
「姫様…」
「姫様……先程の交信は姫様だったんですね…」
レイは嬉しそうに微笑むと、花を飛び移りながらエリアーデに近付いた。
『まさかエリアーデだとは思わなかったよ!』
「そんな服を着て……まさか、姫様」
エリアーデの言葉に、レイの表情が哀しそうに歪む。
『御免ね…私、エクソシストになったの』
「姫様…」
エリアーデは少し悩んだ後、目の前まで来たレイの胸倉を掴むと、アレン達の方へ向けて投げ飛ばした。
慌てたアレンとラビがジタバタともがきながらレイに腕を伸ばす。
「姫様、ゴメンナサイ…私、やってみたい事があるんです」
飛ばされながら私は確かにそうエリアーデの言葉を聞いた。
レイは微笑むと、言葉にはせずに交信した。
《私は手を出さないよ…だから頑張ってね、エリアーデ》
もがきながら腕を伸ばした二人…レイを受け止める事に成功したのはアレンだった。
「何を話してたんですか?」
どうやらアレン達には話の内容が聞こえていなかったらしい。好都合だった。
『何でも無いよ』
そう口にした瞬間、エリアーデが私達に向かって死体を投げ、それを食べた食人花が爆発を起こした。
爆発の煙でアレンとラビを見失ったレイは一人、墓地の真ん中に立った。
やってみたい事があるんです…
出来ると良いね、エリアーデ…私は手を出さないよ。
でもここにはアレンとラビがいる。
貴女とクロウリーをほっとく訳無いよ…
正体を知れば尚更ね…
「レイ!」
そう名前を呼ばれて振り返ると、二人が立っていた。
爆発の所為で二人とも少しボロボロだ。
『アレン、ラビ…』
「捜しましたよ!」
アレンが歩み寄って来る中、ラビはレイに駆け寄るとその身体を抱き締めた。
『どうしたの?』
「泣いたレイめっちゃ可愛かったさ~どストライクだったもんよ」
『私、生まれてから一度も泣いた事無いよ』
私は泣けない。
泣き方を知らないし、どういう時に涙が出るのかもいまいち良く分からない。
「何言ってるさ~さっき泣いて…」
「あれ目薬ですよ。貴方がエリアーデに靡いてて全く人の話を聞かなかったので、レイに頼んで僕が指示したんですよ…演技です」
「……酷いさ、アレン…俺を傷付けて楽しいんか?」
「煩い、浮気者」
うなだれたラビの頭を撫でていたら、ふとアレンに引き離された。
「はぁあ………それにしても随分、粗末な墓さ…ペットのかね」
“アレンも一緒に埋めてやる”と言うラビを無視したアレンは、少し考えると口を開いた。
「……これ…連れ去られた村人の墓じゃないですか?」
「へ?」
アレンが真実へと近付きつつある…
「数が八つ…村長さんが言ってた犠牲者の数と合いますよ」
「クロウリーにやられたのは九人だろ?」
エリアーデ…どうする?
「犠牲者の一人目は蒸発したって言ってたじゃ…」
瞬間、アレンの触れた墓の十字架が“パキンッ”と音を立てて崩れた。
「あ──ッ、壊した!」
「な…ッ、ちょっと触っただけなのに!!」
ラビが声を上げ、アレンは“ごめんなさい”と謝りながら墓に土下座した。
「ラビ…レイ!これ見て下さい!!」
アレンが何かを見つけたらしく、地面を指差した。
「ん?」
『なぁに、アレン?』
「これ…!」
「な…」
『……』
エリアーデ…
「墓の所の地面にペンタクルが浮き出てるんです」
「アクマの血のウイルス…」
そう長くは保たないよ…
「まさか…この墓にいるのは…」
二人が気付き出したから──…