第6章 EGOIST
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ニャ──…
何か聞こえた。
重たい瞼を押し上げると、見覚えの無い天井が見えた。
質素な作りだけど、細工が綺麗な…どこかで見た事のある気もする。
どこで見たんだっけ…?
瞬間、視界の端から黒いものが顔を出した。
猫だ。
大きな瞳が私を見下ろすと、頰に擦り寄った。
「ニャー…」
猫がそうひと鳴きすれば、誰かが歩み寄って来た。
一つに結われた長い黒髪にキツイ目元…私が知っている彼とは少し違ったが、それでも彼と分かる。
目が合うと抱える様に起こされて、抱き締められた。
『ユ…ウ……ただいま』
=終焉の先へ=
『この町もバレるかなぁ』
溜め息交じりにそう口にした少女は、寄り添う様に足元を歩く黒猫を抱き上げると、長い金髪を掻き上げた。
猫を撫でながら、広場の露店を横目に待ち合わせ場所に向かう。
『近付いてる様な気はするんだけどなぁ…』
勘を頼りに一年近く旅をしている訳だが…いつまで経っても見付かる事は無い。
『どこに居るんだろ…マナ』
何でこうなったかは分からない。
あの日、方舟の崩壊と共に方舟内に居た者は死んだ筈だった。
“死んだと思っていた”のに、気付けば私を含め全員が生きていて、五年もの年月が経っていた。
全員と言っても、直ぐに確認が取れたのは教団側の面々で、ノアの皆は私の中に唯一残った能力である元ノア相手の探査能力で探し当てただけなのだが。
そしてまだ見付かっていないのが…マナ。
存在は感じられるけどまだ見付からない。
『……もしかして避けられてる?!』
何それスッゴイ悲しい!!
『う──…やだ、最悪な想像しちゃった』
レイが抱き抱えた猫にグリグリと顔を押し当てると、猫は肉球で押し返す様にレイの鼻を押した。
『うわ、お前まで私を拒否すんの?』
“泣いちゃうよ?”と言うレイに、猫は返事をする様に短く鳴いた。
「何ブツブツ言ってんだ、お前」
声を掛けられてビクリを肩を震わせたレイは、そっと後ろを振り返った。
『…ユウ、今の聞いてた?』
「別に」
『良かったぁ~…』
見られてなくて良かった…何か恥ずかしいし。
「あぁ…お前、往来で猫に話しかけるなよ」
『やっぱ見てたんじゃん!!』
「見て無いとは言って無い。俺は聞いてたかと問われただけだ」
『あー、はいはい!!私のミスですよ、恥ずかしいな!!』
“もう!”と息を吐いたレイの腕から猫が擦り抜け、神田はレイの手を取った。
額に落ちたキスが唇へと降る。
『…ユウ』
「何だ?」
『……往来でキスしないでよ…恥ずかしいなぁ』
頬を真っ赤に染めたレイを見て、神田はフッと笑った。
「で?次はどの町に行くんだ元帥殿」
『北に向かいますよ、神田ユウ元・帥・殿!方向的にもラビ達の様子を見に行くのに丁度良いし…』
「アイツ等はどうでもいい」
『いや、良くないでしょ』
「それより見付かりそうか?」
『…見付けてやるわ、絶対。どこに居ようが…例え隠れていたとしても!付き合ってよね』
「あぁ、付き合ってやる」
『ヤキモチ妬かないでよね』
「お前、そんな事言ってっと苛めんぞ」
『すみませんでしたー』
わざとブスッと膨れて見せたレイは“あっ”と声をもらした。
『ねぇ、近くの町にクロスの家があるの、寄ってもいい?』
「……嫌だっつっても行くだろうが」
『本当にクロスが苦手だよね、ユウは』
「んなのアイリーンがあんな…」
『アイリーン?アイリーンって誰?』
「……別に、昔の知り合いだ」
『ふ~ん…』
レイはニコッと笑うと、神田と繋いだ手を握り直した。
決して離れない様に絡めた指がお互いの手をギュッと包む。
『行こう、ユウ』
「あぁ…付き合ってやるよ、レイ」
レイは辺りを見回した。
捜していた猫は、いつの間にか噴水に座って時計台を見上げていた。
『行くよ、ライ』
「…ニャア~」
ゆっくり眠りなさい…
記憶の奥底に…
今はただ、幸せに…
きっとまた…
起こしてあげるから──…
方舟の瞳・fin
ニャ──…
何か聞こえた。
重たい瞼を押し上げると、見覚えの無い天井が見えた。
質素な作りだけど、細工が綺麗な…どこかで見た事のある気もする。
どこで見たんだっけ…?
瞬間、視界の端から黒いものが顔を出した。
猫だ。
大きな瞳が私を見下ろすと、頰に擦り寄った。
「ニャー…」
猫がそうひと鳴きすれば、誰かが歩み寄って来た。
一つに結われた長い黒髪にキツイ目元…私が知っている彼とは少し違ったが、それでも彼と分かる。
目が合うと抱える様に起こされて、抱き締められた。
『ユ…ウ……ただいま』
=終焉の先へ=
『この町もバレるかなぁ』
溜め息交じりにそう口にした少女は、寄り添う様に足元を歩く黒猫を抱き上げると、長い金髪を掻き上げた。
猫を撫でながら、広場の露店を横目に待ち合わせ場所に向かう。
『近付いてる様な気はするんだけどなぁ…』
勘を頼りに一年近く旅をしている訳だが…いつまで経っても見付かる事は無い。
『どこに居るんだろ…マナ』
何でこうなったかは分からない。
あの日、方舟の崩壊と共に方舟内に居た者は死んだ筈だった。
“死んだと思っていた”のに、気付けば私を含め全員が生きていて、五年もの年月が経っていた。
全員と言っても、直ぐに確認が取れたのは教団側の面々で、ノアの皆は私の中に唯一残った能力である元ノア相手の探査能力で探し当てただけなのだが。
そしてまだ見付かっていないのが…マナ。
存在は感じられるけどまだ見付からない。
『……もしかして避けられてる?!』
何それスッゴイ悲しい!!
『う──…やだ、最悪な想像しちゃった』
レイが抱き抱えた猫にグリグリと顔を押し当てると、猫は肉球で押し返す様にレイの鼻を押した。
『うわ、お前まで私を拒否すんの?』
“泣いちゃうよ?”と言うレイに、猫は返事をする様に短く鳴いた。
「何ブツブツ言ってんだ、お前」
声を掛けられてビクリを肩を震わせたレイは、そっと後ろを振り返った。
『…ユウ、今の聞いてた?』
「別に」
『良かったぁ~…』
見られてなくて良かった…何か恥ずかしいし。
「あぁ…お前、往来で猫に話しかけるなよ」
『やっぱ見てたんじゃん!!』
「見て無いとは言って無い。俺は聞いてたかと問われただけだ」
『あー、はいはい!!私のミスですよ、恥ずかしいな!!』
“もう!”と息を吐いたレイの腕から猫が擦り抜け、神田はレイの手を取った。
額に落ちたキスが唇へと降る。
『…ユウ』
「何だ?」
『……往来でキスしないでよ…恥ずかしいなぁ』
頬を真っ赤に染めたレイを見て、神田はフッと笑った。
「で?次はどの町に行くんだ元帥殿」
『北に向かいますよ、神田ユウ元・帥・殿!方向的にもラビ達の様子を見に行くのに丁度良いし…』
「アイツ等はどうでもいい」
『いや、良くないでしょ』
「それより見付かりそうか?」
『…見付けてやるわ、絶対。どこに居ようが…例え隠れていたとしても!付き合ってよね』
「あぁ、付き合ってやる」
『ヤキモチ妬かないでよね』
「お前、そんな事言ってっと苛めんぞ」
『すみませんでしたー』
わざとブスッと膨れて見せたレイは“あっ”と声をもらした。
『ねぇ、近くの町にクロスの家があるの、寄ってもいい?』
「……嫌だっつっても行くだろうが」
『本当にクロスが苦手だよね、ユウは』
「んなのアイリーンがあんな…」
『アイリーン?アイリーンって誰?』
「……別に、昔の知り合いだ」
『ふ~ん…』
レイはニコッと笑うと、神田と繋いだ手を握り直した。
決して離れない様に絡めた指がお互いの手をギュッと包む。
『行こう、ユウ』
「あぁ…付き合ってやるよ、レイ」
レイは辺りを見回した。
捜していた猫は、いつの間にか噴水に座って時計台を見上げていた。
『行くよ、ライ』
「…ニャア~」
ゆっくり眠りなさい…
記憶の奥底に…
今はただ、幸せに…
きっとまた…
起こしてあげるから──…
方舟の瞳・fin