第5章 二人の女王
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「デビット様、ジャスデロ様」
吸血鬼と戦う中そう声を掛けられて振り向くと、一匹の猫が居た。
……ネコ?
「アグスティナに御座います」
「何でお前、ネコなんかに」
「私の能力です。身体を借りてるんですよ」
能力?そういえばアイツが戦ってる所、見た事ねぇな…
「ヒヒ、何の用?」
“あぁ、そうでした”と言って姿勢を正したネコは、真っ直ぐに俺達を見た。
「14番目に奪われた記憶が過去のレイ様の姿で現れたり…まぁ、他にも色々ありまして姫様が大パニックです」
過去?
奪われた記憶が…実体で存在?
「何でそんな…」
何があったっていうんだ…
「方舟にいらして下さいな」
瞬間、襲い掛かって来た吸血鬼の攻撃を、俺達の間に割って入って来たトライドが受け、吸血鬼を弾き飛ばした。
「行って来い、ボンドム」
「でもトライド、キツイんじゃない?」
“元帥に吸血鬼に時間を戻しちゃう女だよ?”と言うジャスデロに、トライドは短く溜め息を吐いた。
「余計な心配すんな。俺は平気だし、一番大事なのは姫だろ」
トライドの声に合わせる様に“ニャア”と鳴いた猫は“ジャスデビ様”と声を掛けた。
「姫様を助けて下さいな」
=仮面=
『14番目に封印された私の記憶?』
“14番目に記憶として抜き取られて方舟に縛られていた”とだけ話した小さなレイの言葉に、レイはそうもらした。
一方、小さなレイはニッコリと微笑んだ。
「ヤんなっちゃうよねぇ~わたし、おいてきぼりだよ?」
じゃあ、私の小さい時の記憶が無いのって…
「ナルホド」
そう声をもらしたのはチィだった。
「何かヘンだなとは思ってたんですヨ〜♡今までの記憶を失くすパターンと違って、記録 も少しロストしてましたカラ♡」
確かに…私には小さい時の記憶ともう一つ、最近まで失っていたものがある。
自分の役割。
つまり自分が“方舟”だという事だ。
「わたしが方舟のなかにこっそり残っちゃったからねぇ」
『でも変だよ…私にはこの子よりも小さかった時の記憶がある』
私はこの子より小さかった筈だ。
「ン〜♡それがですネェ…あの事件の時、我輩がレイの元に駆け付けた時にはレイは記憶を失って若返ってたんですよネ♡」
『若返って…た……?』
「それに金髪ハ黒髪、蒼眼♡黒眼になってマシタ♡」
「あ―…そのりゆうはわたしもさっぱりなんだよねぇ、クロくんにきかないと」
私の知らない過去…
私の知らない14番目…
薄っぺらな私の…
レイの顔色がどんどん悪くなっていく中、大きな破壊音と共に石畳の地面を抉る様に何かが降ってきた。
砂煙の中から現れたのはシェリルだった。
「大丈夫だよ、レイ。状況は違うけど僕等にだって記憶が無い」
「そうそう、俺等も一緒だぜ」
ニッコリと微笑むボロボロのシェリルの隣に、ボロボロのティキがストンと着地した。
『シェリル…ティキ…』
“大丈夫だ”と微笑む二人を見たら何だか目の奥の方がジン…っとした様な気がした。
「ほらほら、レイに色目使ってる場合ジャ無いデスヨ♡情けない…玩具 相手にボロボロじゃないですカ♡」
空を見上げると、ユエがティナの攻撃を必死に受けているのが見えた。
『ティナ…』
「あれ、本当に普通のアクマなの千年公?」
「最高レベルのアクマとかさ~」
「…ワイズリー♡」
「ググ…今は無理だのう…頭が痛くて何も読み取れ」
「使えませんネェ♡」
「酷…」
ワイズリーがそう口にした瞬間だった。
再び破壊音が響き、音のした方を見るとユエが地に叩き付けられた状態から動けなくなっていた。
「あ~ぁ」
『ユエ!!』
「オ前達、お行きナサイ♡」
千年伯爵の声に弾かれた様に飛び出したシェリルとティキがアグスティナに飛び掛り、アイリーンを抱き締めていたラビは、アイリーンを地に寝かせると加勢の為に飛び上がった。
そしてレイは…
一歩も動かなかった。
俯いてギュッと手を握り締めたレイを見て、レイは直ぐにユエの元に行くと思っていた千年伯爵は首を傾げた。
「レイ…?♡」
「あ―…マズイのぅ」
『……』
何なの…少しの時間で色々あり過ぎて意味が分からない。
人間共は何故か馴れ馴れしいし、おばさんは信じられないくらい強いし、ティナは壊れるし、自分の過去だという子供が出てくるし……
何なの、コレ。
人間共は私を馬鹿にしてるんだろうか。
おばさんは何なの、化け物?
壊れたティナを直す術なんか私は分からないし。
自分の知らない事を知ってる子供はイライラするし…
………最ッ悪…
問題は一つずつにしてほしい。
せめてティナを抑えようにもさっきから方舟が使えないし…
『……さっきから?』
「レイ?♡」
顔を上げたレイは“それ”を見るとニヤリと口角を上げて笑った。
『あぁ、そうか、そうだったね』
この空間で私に勝てるのは三人…
チィは私の仲間だし、子供は何だかんだ口を挟むが私に害をなしてない。
だとすれば…
『ほんと、ヤんなっちゃうねもう』
瞬間、拘束された科学班を見下ろす様に宙に一瞬で姿を現したレイは、輝く青いボールの様な高エネルギーを浮かべた右手をアイリーンに向けた。
「ッ、ヤメロ、レイ!!!」
『黙ってて、ユエ』
もう体は動かないのかもしれないが、おばさんの左手の掌はしっかりと方舟の一部である石畳の地に付いている。
手の下の地に、小さく薄っすらと浮き出ている魔法陣が憎々しい。
『しつこい』
俺の…そして科学班の悲鳴にも似た叫び声の中、レイはそれを月に向けて放った。
爆煙が上がる中、悲鳴を上げたのは青い顔をしたレイだった。
放ったのは自分なのに…きどういう事だ…
まさか今ので記憶が?
「ッ…レイ!!」
『アグスティナ!!!!』
……アグスティナ…?
叫び続けるレイを後ろから抱き締める様にして拘束した伯爵様は、嬉しそうにクスクスと笑った。
「爆発の瞬間、飛ビ込ミましたネ♡♡丁度イイ…コレで壊れた玩具はスクラップですヨ♡」
叫びながら暴れ続けるレイをおさえながら笑っていた伯爵様の声は、爆煙が晴れるにつれて止んだ。
煙の先にいたのは…
月を庇う様にして地に膝を付いたアグスティナだった。
アグスティナだったが…
それは想像していた“モノ”とは違っていた。
右手を前へ突き出したアグスティナの顔の右側はマスクが剥がれた様にボロボロに捲れていて、その下にあったのは…
「何なんだ…お前は……」
月の顔だった──…
「デビット様、ジャスデロ様」
吸血鬼と戦う中そう声を掛けられて振り向くと、一匹の猫が居た。
……ネコ?
「アグスティナに御座います」
「何でお前、ネコなんかに」
「私の能力です。身体を借りてるんですよ」
能力?そういえばアイツが戦ってる所、見た事ねぇな…
「ヒヒ、何の用?」
“あぁ、そうでした”と言って姿勢を正したネコは、真っ直ぐに俺達を見た。
「14番目に奪われた記憶が過去のレイ様の姿で現れたり…まぁ、他にも色々ありまして姫様が大パニックです」
過去?
奪われた記憶が…実体で存在?
「何でそんな…」
何があったっていうんだ…
「方舟にいらして下さいな」
瞬間、襲い掛かって来た吸血鬼の攻撃を、俺達の間に割って入って来たトライドが受け、吸血鬼を弾き飛ばした。
「行って来い、ボンドム」
「でもトライド、キツイんじゃない?」
“元帥に吸血鬼に時間を戻しちゃう女だよ?”と言うジャスデロに、トライドは短く溜め息を吐いた。
「余計な心配すんな。俺は平気だし、一番大事なのは姫だろ」
トライドの声に合わせる様に“ニャア”と鳴いた猫は“ジャスデビ様”と声を掛けた。
「姫様を助けて下さいな」
=仮面=
『14番目に封印された私の記憶?』
“14番目に記憶として抜き取られて方舟に縛られていた”とだけ話した小さなレイの言葉に、レイはそうもらした。
一方、小さなレイはニッコリと微笑んだ。
「ヤんなっちゃうよねぇ~わたし、おいてきぼりだよ?」
じゃあ、私の小さい時の記憶が無いのって…
「ナルホド」
そう声をもらしたのはチィだった。
「何かヘンだなとは思ってたんですヨ〜♡今までの記憶を失くすパターンと違って、
確かに…私には小さい時の記憶ともう一つ、最近まで失っていたものがある。
自分の役割。
つまり自分が“方舟”だという事だ。
「わたしが方舟のなかにこっそり残っちゃったからねぇ」
『でも変だよ…私にはこの子よりも小さかった時の記憶がある』
私はこの子より小さかった筈だ。
「ン〜♡それがですネェ…あの事件の時、我輩がレイの元に駆け付けた時にはレイは記憶を失って若返ってたんですよネ♡」
『若返って…た……?』
「それに金髪ハ黒髪、蒼眼♡黒眼になってマシタ♡」
「あ―…そのりゆうはわたしもさっぱりなんだよねぇ、クロくんにきかないと」
私の知らない過去…
私の知らない14番目…
薄っぺらな私の…
レイの顔色がどんどん悪くなっていく中、大きな破壊音と共に石畳の地面を抉る様に何かが降ってきた。
砂煙の中から現れたのはシェリルだった。
「大丈夫だよ、レイ。状況は違うけど僕等にだって記憶が無い」
「そうそう、俺等も一緒だぜ」
ニッコリと微笑むボロボロのシェリルの隣に、ボロボロのティキがストンと着地した。
『シェリル…ティキ…』
“大丈夫だ”と微笑む二人を見たら何だか目の奥の方がジン…っとした様な気がした。
「ほらほら、レイに色目使ってる場合ジャ無いデスヨ♡情けない…
空を見上げると、ユエがティナの攻撃を必死に受けているのが見えた。
『ティナ…』
「あれ、本当に普通のアクマなの千年公?」
「最高レベルのアクマとかさ~」
「…ワイズリー♡」
「ググ…今は無理だのう…頭が痛くて何も読み取れ」
「使えませんネェ♡」
「酷…」
ワイズリーがそう口にした瞬間だった。
再び破壊音が響き、音のした方を見るとユエが地に叩き付けられた状態から動けなくなっていた。
「あ~ぁ」
『ユエ!!』
「オ前達、お行きナサイ♡」
千年伯爵の声に弾かれた様に飛び出したシェリルとティキがアグスティナに飛び掛り、アイリーンを抱き締めていたラビは、アイリーンを地に寝かせると加勢の為に飛び上がった。
そしてレイは…
一歩も動かなかった。
俯いてギュッと手を握り締めたレイを見て、レイは直ぐにユエの元に行くと思っていた千年伯爵は首を傾げた。
「レイ…?♡」
「あ―…マズイのぅ」
『……』
何なの…少しの時間で色々あり過ぎて意味が分からない。
人間共は何故か馴れ馴れしいし、おばさんは信じられないくらい強いし、ティナは壊れるし、自分の過去だという子供が出てくるし……
何なの、コレ。
人間共は私を馬鹿にしてるんだろうか。
おばさんは何なの、化け物?
壊れたティナを直す術なんか私は分からないし。
自分の知らない事を知ってる子供はイライラするし…
………最ッ悪…
問題は一つずつにしてほしい。
せめてティナを抑えようにもさっきから方舟が使えないし…
『……さっきから?』
「レイ?♡」
顔を上げたレイは“それ”を見るとニヤリと口角を上げて笑った。
『あぁ、そうか、そうだったね』
この空間で私に勝てるのは三人…
チィは私の仲間だし、子供は何だかんだ口を挟むが私に害をなしてない。
だとすれば…
『ほんと、ヤんなっちゃうねもう』
瞬間、拘束された科学班を見下ろす様に宙に一瞬で姿を現したレイは、輝く青いボールの様な高エネルギーを浮かべた右手をアイリーンに向けた。
「ッ、ヤメロ、レイ!!!」
『黙ってて、ユエ』
もう体は動かないのかもしれないが、おばさんの左手の掌はしっかりと方舟の一部である石畳の地に付いている。
手の下の地に、小さく薄っすらと浮き出ている魔法陣が憎々しい。
『しつこい』
俺の…そして科学班の悲鳴にも似た叫び声の中、レイはそれを月に向けて放った。
爆煙が上がる中、悲鳴を上げたのは青い顔をしたレイだった。
放ったのは自分なのに…きどういう事だ…
まさか今ので記憶が?
「ッ…レイ!!」
『アグスティナ!!!!』
……アグスティナ…?
叫び続けるレイを後ろから抱き締める様にして拘束した伯爵様は、嬉しそうにクスクスと笑った。
「爆発の瞬間、飛ビ込ミましたネ♡♡丁度イイ…コレで壊れた玩具はスクラップですヨ♡」
叫びながら暴れ続けるレイをおさえながら笑っていた伯爵様の声は、爆煙が晴れるにつれて止んだ。
煙の先にいたのは…
月を庇う様にして地に膝を付いたアグスティナだった。
アグスティナだったが…
それは想像していた“モノ”とは違っていた。
右手を前へ突き出したアグスティナの顔の右側はマスクが剥がれた様にボロボロに捲れていて、その下にあったのは…
「何なんだ…お前は……」
月の顔だった──…