第5章 二人の女王
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「ごめんね、おねぇちゃん…殺されちゃうとこまるのよ」
殺すつもりなんか無かった。
そう言ったら嘘になる。
だって…何をやってもあの子の記憶が戻らなかったら、その時は私はあの子を…レイを力で縛るつもりだった。
それが難しいなら…
家族とイアン…そしてトールには申し訳無いが、レイを殺して自分も死ぬつもりだったのだから。
「姫!!!」
シェリル、ユエと戦っているアグスティナの声と、科学班のアイリーンを呼ぶ声が響く中、立ち上がったレイは口角を上げて笑った。
しかし、次に響いたのはレイの声では無かった。
響いたのは…
「……レイ…、♡」
=白い刃=
『何、チィ?』
“レイ…”と呟いた千年伯爵は、アイリーンの術から解放されて数歩前へよろける様に進んだ。
レイが応答したが、千年伯爵が答える事は無かった。
「せ…千年公、アレは一体どういう事だ…?」
『ワイズリー……何なの二人共』
「チィによばれたのはアナタじゃない…わたしだよ」
『何を…言ってるの』
少女が左手で血に濡れた袖と手を撫でると、触れた所から順に、血は消え去っていった。
「そのおねぇちゃん、つよそうだね…よかったよ、わたしがけはいのない“こんな体”で。
じゃなかったら、けはいでこうげきなんかよけられちゃっただろうし」
“それにしても”と呟いた少女は、首を傾げた。
「このおねぇちゃんがレイを殺そうとしてたのはじじつだろうけど…
殺すまえに何をしようとしてたのかはきいておいたほうがよかったかな?……みんな、しんぱいしてるし」
“いい人だったのかな”と再度首を傾げた少女は、アイリーンに手を翳すと、魔法の様に宙に浮かせてアイリーンを運び、アイリーンの名を呼び続けるリーバーやバクの目の前の地にアイリーンを寝かせた。
アイリーンが小さく息をしている事を確認したリーバー達から少しの安堵の声がもれる中、レイは唇を噛んだ。
『アンタ…何なのよ』
この子からは嫌な感じがする。
チィはこの子の事を知ってる?この子の事を“レイ”と呼んだ?
何なの…意味が分からない…
「なんなのっていわれてもなぁ~」
そう言って少女が髪を弄んだ瞬間、一瞬で少女の前へと移動した千年伯爵は、少女の手を掴むと吊るす様にして持ち上げた。
少女の小さな足がぷらぷらと揺れる。
「オマエは何デスカ?♡♡♡」
そう言われて、きょとんとしていた少女はニッコリと笑った。
「わたしのこと忘れちゃったの、チィ?」
「……何ですッテ?」
「私はレイだよ。第0使徒“方舟 ”」
『………ぇ…?』
レイ…第0使徒…方舟 ?
「しってるでしょ、チィ?わたしはレイ…シロだよ」
少女が表情一つ変えずにそう言うと、千年伯爵は掴んでいた少女の手を離した。
少女はトンッと軽い音を立てて着地すると、クルリと一回転してみせた。
「ひさしぶりだね、チィ」
「……そういう事デスカ♡」
『どういう事?』
「レイ…♡」
この子がレイ?
第0使徒…方舟 ?
『意味分かんないよ!』
私はレイ、第0使徒…
この子は誰?
この子はレイ、第0使徒…
私は……私は誰なの…?
意味が分からない。
『私がレイ!!!私が方舟 …私が“姫”よ!!』
「そうだね。アナタは方舟 …姫だよ」
『じゃあ、アンタは何なのよ!!』
「レイ!!」
瞬間、ラビを弾き飛ばしたティキがレイの隣に着地してそっとレイの肩を抱いた。
弾き飛ばされたラビは、アイリーンの側へ着地すると、地に横になったアイリーンを抱き起こした。
「アイリーン…」
「おい、ブックマンJr.!アイリーンはどうなんだ!!」
「呼吸は安定してるさ…」
少女はラビ達の様子をチラリと見ると、再びレイに向き直った。
「わたしはレイ」
『だから!!』
「わたしはレイ」
少女は後ろ手に手を組むと、困った様に笑った。
「わたしは封印されたアヒル舟…」
まさか…
「わたしは前の方舟 の記憶」
誰も居ない白い世界に置いていかれた…
前のレイ──…
「ごめんね、おねぇちゃん…殺されちゃうとこまるのよ」
殺すつもりなんか無かった。
そう言ったら嘘になる。
だって…何をやってもあの子の記憶が戻らなかったら、その時は私はあの子を…レイを力で縛るつもりだった。
それが難しいなら…
家族とイアン…そしてトールには申し訳無いが、レイを殺して自分も死ぬつもりだったのだから。
「姫!!!」
シェリル、ユエと戦っているアグスティナの声と、科学班のアイリーンを呼ぶ声が響く中、立ち上がったレイは口角を上げて笑った。
しかし、次に響いたのはレイの声では無かった。
響いたのは…
「……レイ…、♡」
=白い刃=
『何、チィ?』
“レイ…”と呟いた千年伯爵は、アイリーンの術から解放されて数歩前へよろける様に進んだ。
レイが応答したが、千年伯爵が答える事は無かった。
「せ…千年公、アレは一体どういう事だ…?」
『ワイズリー……何なの二人共』
「チィによばれたのはアナタじゃない…わたしだよ」
『何を…言ってるの』
少女が左手で血に濡れた袖と手を撫でると、触れた所から順に、血は消え去っていった。
「そのおねぇちゃん、つよそうだね…よかったよ、わたしがけはいのない“こんな体”で。
じゃなかったら、けはいでこうげきなんかよけられちゃっただろうし」
“それにしても”と呟いた少女は、首を傾げた。
「このおねぇちゃんがレイを殺そうとしてたのはじじつだろうけど…
殺すまえに何をしようとしてたのかはきいておいたほうがよかったかな?……みんな、しんぱいしてるし」
“いい人だったのかな”と再度首を傾げた少女は、アイリーンに手を翳すと、魔法の様に宙に浮かせてアイリーンを運び、アイリーンの名を呼び続けるリーバーやバクの目の前の地にアイリーンを寝かせた。
アイリーンが小さく息をしている事を確認したリーバー達から少しの安堵の声がもれる中、レイは唇を噛んだ。
『アンタ…何なのよ』
この子からは嫌な感じがする。
チィはこの子の事を知ってる?この子の事を“レイ”と呼んだ?
何なの…意味が分からない…
「なんなのっていわれてもなぁ~」
そう言って少女が髪を弄んだ瞬間、一瞬で少女の前へと移動した千年伯爵は、少女の手を掴むと吊るす様にして持ち上げた。
少女の小さな足がぷらぷらと揺れる。
「オマエは何デスカ?♡♡♡」
そう言われて、きょとんとしていた少女はニッコリと笑った。
「わたしのこと忘れちゃったの、チィ?」
「……何ですッテ?」
「私はレイだよ。第0使徒“
『………ぇ…?』
レイ…第0使徒…
「しってるでしょ、チィ?わたしはレイ…シロだよ」
少女が表情一つ変えずにそう言うと、千年伯爵は掴んでいた少女の手を離した。
少女はトンッと軽い音を立てて着地すると、クルリと一回転してみせた。
「ひさしぶりだね、チィ」
「……そういう事デスカ♡」
『どういう事?』
「レイ…♡」
この子がレイ?
第0使徒…
『意味分かんないよ!』
私はレイ、第0使徒…
この子は誰?
この子はレイ、第0使徒…
私は……私は誰なの…?
意味が分からない。
『私がレイ!!!私が
「そうだね。アナタは
『じゃあ、アンタは何なのよ!!』
「レイ!!」
瞬間、ラビを弾き飛ばしたティキがレイの隣に着地してそっとレイの肩を抱いた。
弾き飛ばされたラビは、アイリーンの側へ着地すると、地に横になったアイリーンを抱き起こした。
「アイリーン…」
「おい、ブックマンJr.!アイリーンはどうなんだ!!」
「呼吸は安定してるさ…」
少女はラビ達の様子をチラリと見ると、再びレイに向き直った。
「わたしはレイ」
『だから!!』
「わたしはレイ」
少女は後ろ手に手を組むと、困った様に笑った。
「わたしは封印されたアヒル舟…」
まさか…
「わたしは前の
誰も居ない白い世界に置いていかれた…
前のレイ──…