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第5章 二人の女王

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私は私の仲間の味方よ──…




『大丈夫よ、リーバー…約束はちゃんと護るわ』
ニッコリと微笑んだアイリーンを見て気持ちが揺らいだ。

「アイリーン…」

俺は…俺は酷い事を頼んだ。
それは分かっていた。
分かっていたが…
「約束…?」
「リーバー、アイリーンと何を取り決めた!」
「それは…」
「何を約束した!!」

『いらっしゃいな!温室育ちの弱いお姫様!!』

レイを挑発するアイリーンの声。
それに答えるレイの声…
二人の声がやたらと耳に響いた。



「もしもの時は…アイリーンが手を下してくれと」





=幼き日の=






『いらっしゃいな!同族に閉じ込められてぬくぬく育った“アクマも護れ無い”脆く弱いお姫様!!』



“鍛え直してあげるわ”そう言って笑ったアイリーンにレイは突っ込んで行ったが、後もう少しの所でアイリーンの足許から影が伸びてアイリーンを包み込んだ。
そして、次の瞬間弾け飛んだ影に吹き飛ばされたレイは、空中で一回転すると、ザザザザと音を立てて床を滑りながら着地した。
レイ!アイリーンに攻撃だなんて止めるさ!!」

「お前の相手は俺だよ、眼帯君」

ティキがアイリーンに襲い掛かり、ラビは槌を構えた。
一方レイは、アイリーンを見て表情を歪めた。
『何…馬鹿にしてんのぉ?』
『あら、何が?』
『その姿がよ!!』
フフフと笑ったアイリーンの姿は、もう先程までのモノとは違っていた。
“永久ノ魔女”を纏ったモノでも無い。
長い銀髪は肩よりも短く、身体に張り付く様なズボンにロングブーツだった団服も、ショート丈のジャケットとワンピースになっている。
何よりその姿は…

幼くなっていた。

「アイリーン、その格好は…」
「僕が作った団服?」
『リーバー…私にあぁ言った貴方は、私がレイと戦うのを見るのはキツイだろうと思ってね…』
だからジョニーに頼んで小さめの団服を作ってもらった。

『これは私の十三の時の姿…』

アイリーンが手を振ると、床に倒れていたブラックパールがふわっと浮かび上がり、アイリーンの腕に納まった。
傷付いたブラックパールをアイリーンがそっと撫でると、ボロボロのブラックパールの傷が、ジュッと音を立てて消え去った。


『姉妹喧嘩でも見てる気でいなさい』


“大丈夫、何とかするから”と言って笑ったアイリーンを見てリーバーは涙を流し、レイはギリッと歯を噛み締めてアイリーンに再び突っ込んだ。
“ラビを”と言ってブラックパールを宙に放したアイリーンは、黒い影の様なモノを身に纏ったレイの拳を受け止めた。そして直ぐに反撃に出る。
繰り返される攻防の中で、アイリーンは一筋の汗を流した。

少し不味いな…

記憶を無くしたレイには誰かを攻撃する事に躊躇いが無い。
挙句、教団を憎んでいるのだから余計…
『っ…』
『キツイなら元の姿に戻ればいいじゃん!その体に保つのに力使ってんでしょ?』
『あら、そんな事したら貴女が死んじゃうわ』
『ウッザィなぁ!!どう見たってアンタの方がヘトヘトじゃんよ』
ニヤッと口角を上げたアイリーンはフフッと笑うと、顔目掛けて飛んできたレイの手を掴み、背負い投げて地に叩き付けた。
ふぅ、と小さく息を吐いて宙に立つ。


『子供相手に本気出す程、餓鬼じゃないわよ』


レイ!♡」
『ッ…大丈夫だよ、チィ…ティナ達も手ぇ出さないでね』
「……」
「承知しました、姫様」
髪を掻き上げながら起き上がったレイは、手の甲で口元の血を拭うと、残った血をペロリと舌で舐めた。

『ホント…ムカツクおばさん』

地を蹴ってレイは飛び上がった。
宙でピタリと止まったレイの周りに無数の穴が空いた様に黒い丸がいくつも浮かび上がる。
正面から見ないと分からない程薄っぺらい丸だ。
アイリーンは“そう”ともらすと、レイを見て困った様に…





『私は“世界”に腹が立つわ』





悲しそうに笑った──…



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