第5章 二人の女王
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101
「姫様、ユエ様、只今戻りました。お待たせして申し訳御座いません…」
『大丈夫だよ~、ティナ』
そう言ってレイは生祭壇から飛び降りた。
長い黒髪が揺れる。
「……用はすんだのか」
「えぇ、勿論。お時間頂けて助かりました」
“じゃあ”と口にしたレイの白い肌が褐色に染まり、額には聖痕が浮き出、ユエはギュッと拳に力を入れた。
『パーティーに行こうか』
=塗り重ねた嘘=
「第二エクソシスト“アルマ=カルマ”神田 ユウと同じ人造使徒の被験体だ」
そう、ルベリエ長官のやけに落ち着いた声が響いた。
神田の様子は後姿の為良く分からなかったが、アレンとブラックパールは驚いている様で固まっているのが見えた。
無理も無い…ここに居る面々で神田の素性を知らないのはアレンとブラックパールだけなのだから。
何て声を掛けたら良いか分からなかった。神田は“アルマ”を前にしているのだから…
そう頭の中でグルグルと考えていたら、信じられない言葉が耳に届いた。
「誰だ、そいつは」
首をポリポリと掻きながらそう言った神田の言葉に、思わず思考が停止した。
「……今、なんて言いマシタ?♡」
「“誰だ、そいつは”」
驚いたワイズリーがアルマを指差し、神田は溜め息を吐いた。
「誰だ、そいつは」
アルマが分からない…?
確かに姿はまるで違うだろう。
だけど神田がアルマを分からないだなんて…
「何言ってんのさもぉ~、アルマだよぉ!九年前キミが殺したあの失敗作のア」
「あいつは死んだ」
そう言って神田はぬいぐるみの頭を握り締めた。
「…でも生きてたんだよ。あんな姿になっても生きてたのに教団が隠してたんだよぉ」
「潰されてぇのか」
「キミにアルマの罪を被せて奴等は隠してた。“聖戦”を言い訳にしてぇ九年もねぇ…挙句の果てにAKUMAの核埋め込まれちゃって今じゃアルマは教団に貪られる生き人形だぁ~」
瞬間、グシャッという音と共にぬいぐるみの頭が潰れた。
布が裂け、綿がボロボロとあふれ出すが、ぬいぐるみは変わらず話し続ける。
「どうしたの~?アルマに会えて嬉しくなかった?」
フフフと怪しく笑うぬいぐるみは、床に落ちると自動的に…徐々に徐々に姿を戻していった。
そして神田に六幻を付き付けられても話すのを止めなかった。
「神田!そんな事してもロードには」
「いいよ~だ!アルマだって結う事が信じられないならぁ、アルマ自身に信じさせてもらえ~♪」
完全にぬいぐるみが元に戻った時、それは現れた。
神田、アレン、ブラックパール…そしてぬいぐるみのロードを中心に床に浮き出る様にして描かれた模様…
それはワイズリーの額の目と同じ紋様で、凄く嫌な感じがした。
「ッ、お前ら、見るな!!!」
そう声を張り上げたが、遅かった。
床の紋様がカッと光った瞬間、神田とアレンとブラックパールはピクリとも動かなくなってしまった。
「っ…何をした!!!」
「キーキー喚くな。ちょこっと神田 ユウの脳をイジっとるだけだのぅ」
「…ロードもいっちゃってないかい?」
「少年もいったな」
「ワイズリーは大雑把なんですよネェ~♡」
「ウルサイうしろ」
『順調そうだね』
聞き覚えのある声だった。
耳に馴染んだ声だった…
声をした方を見ると、長い黒髪を緩く巻き、小さなティアラと黒いファーをあしらった白いドレスを身に纏った少女が居た。
「レイ…?」
見た目は全然変わっていたが、見間違える事は無かった。あれはレイだ。
ユエと見知らぬ小麦色の肌の女が仕えていた。
ユエと一緒に居るのだからアクマだろうが…
「レイ~♡」
「やっと来たね、レイ♡聞いてよ、僕のロードをワイズリーが巻き込んじゃってさ~」
「アレン・ウォーカーもな」
『え~?何やってんの、ワイズリぃ~』
“大雑把だなぁ”と言うレイにワイズリーは“むぅ”と声をもらした。
「レイまでそんな事言うのか」
レイが楽しそうに笑っていると、急に固まっていたブラックパールが飛び上がった。
「あぁ、イノセンスで逃れおったか」
「レイ!!」
ブラックパールがそう叫びながらレイに向かって飛んでいき、レイはニッコリと微笑むと、ブラックパールを手の甲で叩く様にして弾き飛ばした。
吹き飛んだブラックパールの体は、壁に打つかってズルリと床に落ちる。
「レイ、貴様何て事を!!」
ブラックパールに向かって“大丈夫か?!”と叫ぶバク支部長を見て不思議そうに首を傾げているレイの後ろで、ユエがギュッと目を閉じた。
『何なの?方舟の中でもそうだったけどさ…皆、私の事知ってるみたいに喋りだすんだよね』
「レイ、貴様本当に僕達を忘れたと言うのか!!」
『はぁ?』
「貴様の信念はどうした!僕と話した世界の未来は?!ユエ、貴様も貴様だ!何故黙っている!!」
『…ユエ、どういう事?』
「ッ……それは…」
「レイ、相手は敵ですヨ♡」
「……」
『…そうね』
「コイツ等、姫たるレイを騙そうとしてるんデスよ♡手駒にしようとしてるんでス、貴女を手に入れれば奴等の切り札ニなりますかラ♡」
『最っ低…』
「騙されるな、レイ!!お前は僕等の仲間だ、伯爵の嘘など」
「よしなさい、バク・チャン」
「しかし、ルベリエ!!」
「アレは敵です」
『そうだよぉ、私はお前達の敵…何でお前達を信じなきゃいけないの?』
「アイリーンは覚えてないのか?」
思わず口から出た言葉だった。
『まだゴチャゴチャ言うの?』
「そうだ…アイリーン……月だ、貴様は月さえも覚えてないのか?!」
バク室長がそう叫んだと同時に、レイはバク支部長の元に飛ぶと、その首を鷲掴みにした。
『何なの、さっきから?』
「ガ、グ…ぅッ」
『ゴチャゴチャ煩いのよ…お前達は私達の敵、昔からそうでしょ。何でお前達に指図されなきゃいけないの、ウザイ。お前達は邪魔、お前達は敵、お前達は仇』
「か…た…き……?」
『そう、パーティーを始めましょ。シャールと同じ様に首を焼いてあげるから』
シャールと同じ…?
そうか、アレン達の言ってた勘違いって…
「レイ、違う!それは俺達じゃ」
『その手を退かしなさい』
そう声が響いた瞬間、何か黒い物が上から降って来て、レイを弾き飛ばした。
吹き飛んだレイの身体をティキが慌ててキャッチする。
「ッ…!!」
「レイ?!♡」
「姫様!!」
『…平気だよ』
「お前…」
『シェリル、手ぇ出さないで』
ティキの腕から離れたレイはそう言って口元の血を手の甲で拭った。
「ッ、しかしだね」
『出さないで』
「…分かったよ」
上から降って来た黒い物体は、黒いローブを纏った黒髪の女性“永久ノ魔女”を発動中のアイリーンだった。
アイリーンがローブを広げれば、中からアイリーンの腰に抱き付いたラビが顔を出した。
「ラビ!?」
「おう、リーバー…って…うっわ、何さコレ!!」
辺りを見回して“一緒に来なきゃ良かった”と言ったラビの視線は、レイの所で止まった。
「レイ…」
『あぁ…方舟で落とした子だね』
ローブが溶けて影に落ち、黒いドレスだけが残った。アイリーンは腰に抱き付くラビの背をトンッと叩いて自分から離した。
『皆、大丈夫かしら?バクは蕁麻疹出てない?』
「出とらんわ!!」
「レイ、ちょっと良いデスかネ?♡」
そう言って一歩前に出た千年伯爵は、アイリーンを見てニヤリと笑った。
「初めまして、アイリーン・ネイピア元帥♡やはり貴方が元帥の一人だったんデスネ…日本で見た時から目を付けてたんですヨ♡♡」
「日本?」
「ティキポンも見てますヨ♡」
長い黒髪を後ろに流したアイリーンは、ニッコリと微笑むと足許から伸びた影に包まれた。
そして影が弾け飛んだ後に現れたのは、長い銀髪に緋眼のいつものアイリーンだった。
『光栄…とでも言っておこうかしら』
「月?!」
「……ティキぽん…キミ、日本で彼女の事は知らないって言いましたよネ…?♡」
青くなるティキを見て、アイリーンは楽しそうにクスクスと笑った。
『私が封じたのよ、ティキを叱らないであげて』
「ッ…月!お前、何で教団側に居るんだよ!」
『ティキ、アレと知り合いなの?』
「あ、あぁ…」
レイとティキのやり取りを見て、アイリーンはまたクスクスと笑った。
『教団に入るのは気が引けたが、気に入った子達が居てね…手を貸してやろうと思っただけだよ』
「何だよ、それ…こっち来て、レイを護れよ!」
「やはり貴女は“関係者”だったのですね、アイリーン・ネイピア元帥」
“教団を騙しましたね”と言うルベリエにアイリーンは淡々と答えた。
『否定も肯定もしてないもの』
「神に選ばれた使徒が何を言っている!!」
フーフーと荒く息を吐きながら自分を睨み付けるルベリエをアイリーンは真っ直ぐに見据えた。
『教団のやり方が気に食わないのよ』
ルベリエ長官がギリッと歯を噛み締めた音が聞えた様な気がした。
「何なんですカ、もぅ♡」
『何が?』
「貴女は敵デスか、それともコチラ側?♡」
アイリーンは長い銀髪を後ろに流すと、カツンカツンとヒールの音を立ててこちらに歩いて来た。
『別に…どっちでも無いわ』
そして俺の前まで来ると、俺に背を向け、千年伯爵達を見据えた。
『私は私の仲間の味方よ』
「何デスカ、ソレは♡お前達、殺ってしまいなさイ♡」
「アイリーン、お前!!」
「アイリーン…」
『大丈夫よ、リーバー…“約束”はちゃんと護るわ』
アイリーンはそう言うと、声を張り上げた。
『いらっしゃいな!同族に閉じ込められてぬくぬく育った“アクマも護れ無い”脆く弱いお姫様!!』
一瞬振り返ったアイリーンは…
唯、ニッコリと笑っていた──…
「姫様、ユエ様、只今戻りました。お待たせして申し訳御座いません…」
『大丈夫だよ~、ティナ』
そう言ってレイは生祭壇から飛び降りた。
長い黒髪が揺れる。
「……用はすんだのか」
「えぇ、勿論。お時間頂けて助かりました」
“じゃあ”と口にしたレイの白い肌が褐色に染まり、額には聖痕が浮き出、ユエはギュッと拳に力を入れた。
『パーティーに行こうか』
=塗り重ねた嘘=
「第二エクソシスト“アルマ=カルマ”神田 ユウと同じ人造使徒の被験体だ」
そう、ルベリエ長官のやけに落ち着いた声が響いた。
神田の様子は後姿の為良く分からなかったが、アレンとブラックパールは驚いている様で固まっているのが見えた。
無理も無い…ここに居る面々で神田の素性を知らないのはアレンとブラックパールだけなのだから。
何て声を掛けたら良いか分からなかった。神田は“アルマ”を前にしているのだから…
そう頭の中でグルグルと考えていたら、信じられない言葉が耳に届いた。
「誰だ、そいつは」
首をポリポリと掻きながらそう言った神田の言葉に、思わず思考が停止した。
「……今、なんて言いマシタ?♡」
「“誰だ、そいつは”」
驚いたワイズリーがアルマを指差し、神田は溜め息を吐いた。
「誰だ、そいつは」
アルマが分からない…?
確かに姿はまるで違うだろう。
だけど神田がアルマを分からないだなんて…
「何言ってんのさもぉ~、アルマだよぉ!九年前キミが殺したあの失敗作のア」
「あいつは死んだ」
そう言って神田はぬいぐるみの頭を握り締めた。
「…でも生きてたんだよ。あんな姿になっても生きてたのに教団が隠してたんだよぉ」
「潰されてぇのか」
「キミにアルマの罪を被せて奴等は隠してた。“聖戦”を言い訳にしてぇ九年もねぇ…挙句の果てにAKUMAの核埋め込まれちゃって今じゃアルマは教団に貪られる生き人形だぁ~」
瞬間、グシャッという音と共にぬいぐるみの頭が潰れた。
布が裂け、綿がボロボロとあふれ出すが、ぬいぐるみは変わらず話し続ける。
「どうしたの~?アルマに会えて嬉しくなかった?」
フフフと怪しく笑うぬいぐるみは、床に落ちると自動的に…徐々に徐々に姿を戻していった。
そして神田に六幻を付き付けられても話すのを止めなかった。
「神田!そんな事してもロードには」
「いいよ~だ!アルマだって結う事が信じられないならぁ、アルマ自身に信じさせてもらえ~♪」
完全にぬいぐるみが元に戻った時、それは現れた。
神田、アレン、ブラックパール…そしてぬいぐるみのロードを中心に床に浮き出る様にして描かれた模様…
それはワイズリーの額の目と同じ紋様で、凄く嫌な感じがした。
「ッ、お前ら、見るな!!!」
そう声を張り上げたが、遅かった。
床の紋様がカッと光った瞬間、神田とアレンとブラックパールはピクリとも動かなくなってしまった。
「っ…何をした!!!」
「キーキー喚くな。ちょこっと神田 ユウの脳をイジっとるだけだのぅ」
「…ロードもいっちゃってないかい?」
「少年もいったな」
「ワイズリーは大雑把なんですよネェ~♡」
「ウルサイうしろ」
『順調そうだね』
聞き覚えのある声だった。
耳に馴染んだ声だった…
声をした方を見ると、長い黒髪を緩く巻き、小さなティアラと黒いファーをあしらった白いドレスを身に纏った少女が居た。
「レイ…?」
見た目は全然変わっていたが、見間違える事は無かった。あれはレイだ。
ユエと見知らぬ小麦色の肌の女が仕えていた。
ユエと一緒に居るのだからアクマだろうが…
「レイ~♡」
「やっと来たね、レイ♡聞いてよ、僕のロードをワイズリーが巻き込んじゃってさ~」
「アレン・ウォーカーもな」
『え~?何やってんの、ワイズリぃ~』
“大雑把だなぁ”と言うレイにワイズリーは“むぅ”と声をもらした。
「レイまでそんな事言うのか」
レイが楽しそうに笑っていると、急に固まっていたブラックパールが飛び上がった。
「あぁ、イノセンスで逃れおったか」
「レイ!!」
ブラックパールがそう叫びながらレイに向かって飛んでいき、レイはニッコリと微笑むと、ブラックパールを手の甲で叩く様にして弾き飛ばした。
吹き飛んだブラックパールの体は、壁に打つかってズルリと床に落ちる。
「レイ、貴様何て事を!!」
ブラックパールに向かって“大丈夫か?!”と叫ぶバク支部長を見て不思議そうに首を傾げているレイの後ろで、ユエがギュッと目を閉じた。
『何なの?方舟の中でもそうだったけどさ…皆、私の事知ってるみたいに喋りだすんだよね』
「レイ、貴様本当に僕達を忘れたと言うのか!!」
『はぁ?』
「貴様の信念はどうした!僕と話した世界の未来は?!ユエ、貴様も貴様だ!何故黙っている!!」
『…ユエ、どういう事?』
「ッ……それは…」
「レイ、相手は敵ですヨ♡」
「……」
『…そうね』
「コイツ等、姫たるレイを騙そうとしてるんデスよ♡手駒にしようとしてるんでス、貴女を手に入れれば奴等の切り札ニなりますかラ♡」
『最っ低…』
「騙されるな、レイ!!お前は僕等の仲間だ、伯爵の嘘など」
「よしなさい、バク・チャン」
「しかし、ルベリエ!!」
「アレは敵です」
『そうだよぉ、私はお前達の敵…何でお前達を信じなきゃいけないの?』
「アイリーンは覚えてないのか?」
思わず口から出た言葉だった。
『まだゴチャゴチャ言うの?』
「そうだ…アイリーン……月だ、貴様は月さえも覚えてないのか?!」
バク室長がそう叫んだと同時に、レイはバク支部長の元に飛ぶと、その首を鷲掴みにした。
『何なの、さっきから?』
「ガ、グ…ぅッ」
『ゴチャゴチャ煩いのよ…お前達は私達の敵、昔からそうでしょ。何でお前達に指図されなきゃいけないの、ウザイ。お前達は邪魔、お前達は敵、お前達は仇』
「か…た…き……?」
『そう、パーティーを始めましょ。シャールと同じ様に首を焼いてあげるから』
シャールと同じ…?
そうか、アレン達の言ってた勘違いって…
「レイ、違う!それは俺達じゃ」
『その手を退かしなさい』
そう声が響いた瞬間、何か黒い物が上から降って来て、レイを弾き飛ばした。
吹き飛んだレイの身体をティキが慌ててキャッチする。
「ッ…!!」
「レイ?!♡」
「姫様!!」
『…平気だよ』
「お前…」
『シェリル、手ぇ出さないで』
ティキの腕から離れたレイはそう言って口元の血を手の甲で拭った。
「ッ、しかしだね」
『出さないで』
「…分かったよ」
上から降って来た黒い物体は、黒いローブを纏った黒髪の女性“永久ノ魔女”を発動中のアイリーンだった。
アイリーンがローブを広げれば、中からアイリーンの腰に抱き付いたラビが顔を出した。
「ラビ!?」
「おう、リーバー…って…うっわ、何さコレ!!」
辺りを見回して“一緒に来なきゃ良かった”と言ったラビの視線は、レイの所で止まった。
「レイ…」
『あぁ…方舟で落とした子だね』
ローブが溶けて影に落ち、黒いドレスだけが残った。アイリーンは腰に抱き付くラビの背をトンッと叩いて自分から離した。
『皆、大丈夫かしら?バクは蕁麻疹出てない?』
「出とらんわ!!」
「レイ、ちょっと良いデスかネ?♡」
そう言って一歩前に出た千年伯爵は、アイリーンを見てニヤリと笑った。
「初めまして、アイリーン・ネイピア元帥♡やはり貴方が元帥の一人だったんデスネ…日本で見た時から目を付けてたんですヨ♡♡」
「日本?」
「ティキポンも見てますヨ♡」
長い黒髪を後ろに流したアイリーンは、ニッコリと微笑むと足許から伸びた影に包まれた。
そして影が弾け飛んだ後に現れたのは、長い銀髪に緋眼のいつものアイリーンだった。
『光栄…とでも言っておこうかしら』
「月?!」
「……ティキぽん…キミ、日本で彼女の事は知らないって言いましたよネ…?♡」
青くなるティキを見て、アイリーンは楽しそうにクスクスと笑った。
『私が封じたのよ、ティキを叱らないであげて』
「ッ…月!お前、何で教団側に居るんだよ!」
『ティキ、アレと知り合いなの?』
「あ、あぁ…」
レイとティキのやり取りを見て、アイリーンはまたクスクスと笑った。
『教団に入るのは気が引けたが、気に入った子達が居てね…手を貸してやろうと思っただけだよ』
「何だよ、それ…こっち来て、レイを護れよ!」
「やはり貴女は“関係者”だったのですね、アイリーン・ネイピア元帥」
“教団を騙しましたね”と言うルベリエにアイリーンは淡々と答えた。
『否定も肯定もしてないもの』
「神に選ばれた使徒が何を言っている!!」
フーフーと荒く息を吐きながら自分を睨み付けるルベリエをアイリーンは真っ直ぐに見据えた。
『教団のやり方が気に食わないのよ』
ルベリエ長官がギリッと歯を噛み締めた音が聞えた様な気がした。
「何なんですカ、もぅ♡」
『何が?』
「貴女は敵デスか、それともコチラ側?♡」
アイリーンは長い銀髪を後ろに流すと、カツンカツンとヒールの音を立ててこちらに歩いて来た。
『別に…どっちでも無いわ』
そして俺の前まで来ると、俺に背を向け、千年伯爵達を見据えた。
『私は私の仲間の味方よ』
「何デスカ、ソレは♡お前達、殺ってしまいなさイ♡」
「アイリーン、お前!!」
「アイリーン…」
『大丈夫よ、リーバー…“約束”はちゃんと護るわ』
アイリーンはそう言うと、声を張り上げた。
『いらっしゃいな!同族に閉じ込められてぬくぬく育った“アクマも護れ無い”脆く弱いお姫様!!』
一瞬振り返ったアイリーンは…
唯、ニッコリと笑っていた──…