第5章 二人の女王
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「カンダ ユウじゃな?」
最悪だ。
六幻を構えたユウは、状況を見てそう思った。
急に現れたターバン野朗のノアに探索部隊の連中は一瞬で殺された。ノアは別に何もしていない。
探索部隊の奴等が急に目や耳から血を流して倒れたんだ。
念動力かなんか知らねぇが、厄介な事この上無い。
モヤシとも連絡つかねぇし…
「何だテメェは」
チッと舌打ちをしたユウが漸くそう口を開き、ノアはニッコリと笑った。
「“アルマ”という名を知っておるか?」
コムイ達教団の幹部以外から聞くとは思わなかった名前だった。
随分と長い間、聞いていなかった名前だった…
「…知っておるな」
黙りこくったユウを見てノアはそう言うと口角を上げてニヤリと笑った。
「おぬしの脳…我等のパーティーに使わせてもらうぞ」
=party=
「来ましたネ♡我輩の目の上のタンコぶぉ!!♡」
方舟から飛び出して来たアレンとティキに踏み潰され、千年伯爵の言葉は途切れた。
「どけって言ったろ、千年公?」
「は、伯爵?!」
何でこんな…
「……言ったよな?」
ティキは“ま、いっか”と言ってアレンを見てニッコリと笑った。
「ようこそ、アレン・ウォーカー」
辺りを見回して“ようこそ”と言われた意味を理解した。
壁際に沿って同じ様に並ばされた教団関係者…何か始める気だ。
見知った顔もあった。
ルベリエ長官、北米支部長、新しい本部の科学班の班長さんにバクさん…
「ジョニーにリーバー班長まで?!」
「すまん、アレン…」
「また人質に…」
「あ!そういえば今日、北米で会議があるって」
って事はここは北米支部?
ふと部屋の中央に転がったモノに気付いた。
真後ろにあった為気付かなかったが、あれは人だ……あれ?
「……神田…?え、何で…ヨルダンの陣営を守ってたんじゃ」
「陣営ならとうに全滅したよ…驚いたかい?お前はこのカラスを助けに来たつもりだったんだものね」
そう言う先程自分を襲撃したノアの一人が椅子代わりにしている棺の下に挟まれる様に、自分がティキを追って来た理由であるブラックパールが挟まっていた。
「ブラックパール!!」
「こ…いつ、ネンドウリョクが…ツカえる…ウゴけな…い」
「そうだよ~このカラスは勿論、残念ながらこの支部の人間全ては既にこの僕“デザイアス”が掌握している」
「デザイアス…」
「そう、欲のノアだよ。言っとくが僕はドSだ、これ以上仲間を犠牲に…ていうかあられもないポーズにされたくなかったら言う通りにしなさい」
「……黙ってあんた達に殺されろって事ですか」
ホント最悪…ノアって変態ばっかなんだろうか。…レイは除くけど。
「やだな、ノアはそんなつまんない事言わないさ、ただ…」
そう言ってデザイアスは僕等の足許を指差した。
「僕等の千年公を踏み潰したまま忘れ去らないでもらえる?」
完全に忘れてた。
居たんだ、千年伯爵…
下敷きにしていた千年伯爵の身体を押す様にフニフニと足踏みをしたアレンの隣で同じ様に千年伯爵の上に立っていたティキは、デザイアスの“ティキも何してんの!”という言葉をアハハと笑って誤魔化した。
「少年、俺らはお前を迎えに来たんだぜ?」
「はぁ?迎えにって僕はあんた達のて」
最後まで言い切れなかった。
急に起き上がった伯爵に頭を鷲掴みにされて床に叩き付けられたのだ。
「ぐ…ッ!!?」
「アレン・ウォーカー…お前は二度と教団へは帰しまセ〜ン♡お前は“14番目”が残した奏者の資格ではナイ!」
クソ、動けな…
「“14番目”本人だったのでスネ♡」
……なんで…
「いやあ、まんまと騙されましたよ、この道化メ♡」
何で千年伯爵にバレてるんだ?!
「ウフフ、ご存知でしょう?♡千年伯爵はAKUMA製造者、AKUMAは我輩の手足であり目でアル!!
お前はあの時、AKUMA越しに我輩へ呼びかけたのでショウ?」
「あの時…?」
「ルル=ベルがお世話になったジャないですカ♡忘れたとは言わせませんヨ♡」
ルル=ベル…卵を取り戻しに本部を襲撃してきたノア……それは覚えてる。
でも“呼びかけた”って何の事だ?
覚えが…覚えがまるで無い……
「大変な衝撃でシタァ♡」
ワカラナイ…
「何の事だ…ッ、僕はそんな事!!!」
瞬間、脳がグルンと揺さぶられた様な感覚がした。
胃が引っ繰り返る様で気持ち悪い…鼓動が……何だこれ…ッ…何かが体の中で疼く様な…
「ソノ通リダヨ」
何だよコレ…
「オ前ニ伝エタカッタンダ、オレガ戻ッテキタコト」
「14…番目…ッ」
口が手が…勝手に動く…何だよ、コレ!!
僕は…僕はこんな!!
「来テクレルト思ッタヨ兄弟…」
アレンの体は、そっと千年伯爵の頬に手を添えると、ニヤリと口角を上げて笑った。
「今度コソ、オマエ殺ス」
「!」
「大丈夫“レイ”ハ存在シ続ケル。昔モ今モ…レイハ“オレ”ノダ。
アイツハオレヲ裏切ラナイ、アイツノ奏者ハオレ一人!ダカラ心置キ無ク実行デキル」
「レイ…」
「オマエヲ殺シテ、オレガ千年伯爵ニナル!!」
「それが…望みなのデスガ“14番目”」
違う…違う違う違う!!!
「ち…がう…ッ、ちがうっ!僕は“14番目”じゃない…!!」
何なんだ…この体の中がグチャグチャになる感覚…
ゴフッと口から溢れる血…激しい頭痛にアレンは頭を抱える様に押さえた。
「フフッ…レイが自分のモノですッテ?♡」
支配…されつつある…?
あの日、師匠が言ってた…
14番目になったら“大事な人間を殺さなきゃいけない”って…
「無理デスよ♡あの子は我輩の可愛い」
そんなの…
そんなの絶対に…絶対に…
「いやだぁ!!!」
そう叫んで押さえ込まれていた体を起き上げたアレンは、千年伯爵の顔面目掛けて頭を突き出した。
「ぅぶ!!」
千年伯爵は、そうもらすと顔を押さえて後ろに倒れ込んだ。
「頭突…っ♡」
顔面に入れたから相当痛そうだが、そんな事はもう知った事では無い。
「いいですか伯爵…あと14番目もよーく聞け…」
皆が唖然としている中、魔眼を持つワイズリーだけが楽しそうに笑っていた。
「僕はエクソシストのアレン・ウォーカーです、それ以外には死んでもならない!!あんたら兄弟のよく判らん喧嘩に人を勝手に巻き込むな!」
知らない間に宿主にされて、その事を最近始めて知って…自分が自分じゃなくなった挙句大切な人を殺さなきゃいけないと宣告されて……何が起きてるのかと思ったら、唯の兄弟喧嘩じゃないか。
「迷惑です!!」
馬鹿馬鹿しい!
他人を巻き込んで兄弟喧嘩だなんて最悪だ。
ふんっ、と鼻を鳴らしたアレンを見て、ワイズリーは楽しそうに笑った。
「ロード、あの小僧なかなか面白いの」
ワイズリーがそう口にした瞬間“バシュッ”という音と一筋の風と共に、胡坐をかいて座っていたワイズリーの足許に居たぬいぐるみのロードが消え去った。
青くなったワイズリーが“千年公!!”と叫んだ瞬間、千年伯爵に斬り掛かった神田の攻撃を、ティムが防いだ。
「ム!?♡」
「ちっ」
そう舌打ちをした神田の口には、しっかりとぬいぐるみのロードが銜えられていた。
「僕のロードォォォ!!何やってんの、ワイズリー!!」
「ワ、ワタシは武闘派ではないのだ…」
神田が飛び上がってティキ達から距離を取る中、アレンはワイズリーに文句を言うのに夢中なデザイアスのしたの棺を蹴り上げて、ブラックパールを抱き上げた。
バランスを崩したデザイアスが床に倒れ、ティキは“おぉ”と楽しそうに笑った。
「大丈夫ですか、ブラックパール」
“ガァ…”と小さく返事をしたブラックパールを抱えて神田と合流したアレンは、じっと神田を見据えた。
「神田、キミ動けたんですね」
「悪いかよ」
「悪かない…ですが、だったら何で今まで固まってたのか大変気になります」
「脳天潰されて起きたらココに居たんだ。状況理解すんのに時間掛かったんだよ」
そう言いながら、神田は徐にロードの首に付いたリボンを解いた。
「ギャー、何すんのエッチ!!」
「るせぇ、テメェの兄弟が髪紐壊しやがったんだ、リボンよこせ」
「追剥する為に捕まえたんかい」
「イマのうちに、いったんヒけ」
“ナニやってんダ、オマエら”とブラックパールに言われ、二人は出口を目掛けて走り出したが、二人と一羽が部屋の外へ出る事は無かった。
道管が床に埋め込まれた水槽を破ってきたのだ。
「な、何ですか、あれ!!」
まるで生き物の様に蠢く道管が凄い速さで伸び、出口を塞いだ。
「っ、クソ、出口が…!」
「“二度と教団へは帰さないっ”って言ったよね?」
デザイアスの能力か…
「ブラックパール、いける?」
「アァ…」
アレンの手を離れてふわりと飛び上がると、一声鳴いた。
《イノセンス開放“一雫ノ支配者”》
今から少し前へ飛んだブラックパールは、天井近くから室内を見下ろした。
神田が動き出した刻だった。
「僕のロードォォォ!!何やってんの、ワイズリー!!」
「ワ、ワタシは武闘派ではないのだ…」
神田が飛び上がってティ達から距離を取る中、アレンはワイズリーに文句を言うのに夢中なデザイアスのしたの棺を蹴り上げた。
「ブラックパール?」
棺の下に何も無い事を不審に思っているアレンへ向かって急降下すると、肩に飛び乗った。
「ココだ」
バランスを崩して床に倒れたデザイアスを見てティキが楽しそうに笑う中、アレンは神田に向かって走り出した。
「大丈夫ですか、ブラックパール」
“あぁ”と短く返事をしたブラックパールは、アレンが神田と合流すると、口早に用件を伝えた。
「いったんヒけ!デザイアスにデグチをフサがれる、イソゲ!!」
そう言うブラックパールの言葉に、二人は弾かれた様に走り出した。
ノア達がギャアギャア揉めている中、一気に部屋を駆け抜けた。
しかし、もう少しという所で出口の前にティキが立ち塞がり、直ぐに床を突き破って出て来た道管が出口を塞いだ。
「下等生物め…本当に状況を理解してるのか?」
ロードを捕まえられた所為か、デザイアスは酷く不機嫌そうだった。
クソ…折角ブラックパールが“戻った”のに…
「少年、無駄だよ。そのカラスがどんなイノセンスを持っていようとさ、こっちには魔眼のワイズリーが居るんだから」
“丸見えだよ”と言って笑うティキを前に、ブラックパールは小さく舌打ちをした。
床を貫いた道管がうねうねと動いて床の中の水槽に居た少年を高々と持ち上げた。
「アレン・ウォーカー、キミが自ら進んで教団を捨てられるようにしてあげまショウ♡今日はキミの退団パーティーでス♡」
退団って…誰がするか。
「誰ですか、その人」
生きているかも分からないが、少年があんな風に宙に吊らされてると気分が悪い。
「第二エクソシスト“アルマ=カルマ”
神田 ユウと同じ人造使徒の被験体だ」
人造使徒…神田が……?
「カンダ ユウじゃな?」
最悪だ。
六幻を構えたユウは、状況を見てそう思った。
急に現れたターバン野朗のノアに探索部隊の連中は一瞬で殺された。ノアは別に何もしていない。
探索部隊の奴等が急に目や耳から血を流して倒れたんだ。
念動力かなんか知らねぇが、厄介な事この上無い。
モヤシとも連絡つかねぇし…
「何だテメェは」
チッと舌打ちをしたユウが漸くそう口を開き、ノアはニッコリと笑った。
「“アルマ”という名を知っておるか?」
コムイ達教団の幹部以外から聞くとは思わなかった名前だった。
随分と長い間、聞いていなかった名前だった…
「…知っておるな」
黙りこくったユウを見てノアはそう言うと口角を上げてニヤリと笑った。
「おぬしの脳…我等のパーティーに使わせてもらうぞ」
=party=
「来ましたネ♡我輩の目の上のタンコぶぉ!!♡」
方舟から飛び出して来たアレンとティキに踏み潰され、千年伯爵の言葉は途切れた。
「どけって言ったろ、千年公?」
「は、伯爵?!」
何でこんな…
「……言ったよな?」
ティキは“ま、いっか”と言ってアレンを見てニッコリと笑った。
「ようこそ、アレン・ウォーカー」
辺りを見回して“ようこそ”と言われた意味を理解した。
壁際に沿って同じ様に並ばされた教団関係者…何か始める気だ。
見知った顔もあった。
ルベリエ長官、北米支部長、新しい本部の科学班の班長さんにバクさん…
「ジョニーにリーバー班長まで?!」
「すまん、アレン…」
「また人質に…」
「あ!そういえば今日、北米で会議があるって」
って事はここは北米支部?
ふと部屋の中央に転がったモノに気付いた。
真後ろにあった為気付かなかったが、あれは人だ……あれ?
「……神田…?え、何で…ヨルダンの陣営を守ってたんじゃ」
「陣営ならとうに全滅したよ…驚いたかい?お前はこのカラスを助けに来たつもりだったんだものね」
そう言う先程自分を襲撃したノアの一人が椅子代わりにしている棺の下に挟まれる様に、自分がティキを追って来た理由であるブラックパールが挟まっていた。
「ブラックパール!!」
「こ…いつ、ネンドウリョクが…ツカえる…ウゴけな…い」
「そうだよ~このカラスは勿論、残念ながらこの支部の人間全ては既にこの僕“デザイアス”が掌握している」
「デザイアス…」
「そう、欲のノアだよ。言っとくが僕はドSだ、これ以上仲間を犠牲に…ていうかあられもないポーズにされたくなかったら言う通りにしなさい」
「……黙ってあんた達に殺されろって事ですか」
ホント最悪…ノアって変態ばっかなんだろうか。…レイは除くけど。
「やだな、ノアはそんなつまんない事言わないさ、ただ…」
そう言ってデザイアスは僕等の足許を指差した。
「僕等の千年公を踏み潰したまま忘れ去らないでもらえる?」
完全に忘れてた。
居たんだ、千年伯爵…
下敷きにしていた千年伯爵の身体を押す様にフニフニと足踏みをしたアレンの隣で同じ様に千年伯爵の上に立っていたティキは、デザイアスの“ティキも何してんの!”という言葉をアハハと笑って誤魔化した。
「少年、俺らはお前を迎えに来たんだぜ?」
「はぁ?迎えにって僕はあんた達のて」
最後まで言い切れなかった。
急に起き上がった伯爵に頭を鷲掴みにされて床に叩き付けられたのだ。
「ぐ…ッ!!?」
「アレン・ウォーカー…お前は二度と教団へは帰しまセ〜ン♡お前は“14番目”が残した奏者の資格ではナイ!」
クソ、動けな…
「“14番目”本人だったのでスネ♡」
……なんで…
「いやあ、まんまと騙されましたよ、この道化メ♡」
何で千年伯爵にバレてるんだ?!
「ウフフ、ご存知でしょう?♡千年伯爵はAKUMA製造者、AKUMAは我輩の手足であり目でアル!!
お前はあの時、AKUMA越しに我輩へ呼びかけたのでショウ?」
「あの時…?」
「ルル=ベルがお世話になったジャないですカ♡忘れたとは言わせませんヨ♡」
ルル=ベル…卵を取り戻しに本部を襲撃してきたノア……それは覚えてる。
でも“呼びかけた”って何の事だ?
覚えが…覚えがまるで無い……
「大変な衝撃でシタァ♡」
ワカラナイ…
「何の事だ…ッ、僕はそんな事!!!」
瞬間、脳がグルンと揺さぶられた様な感覚がした。
胃が引っ繰り返る様で気持ち悪い…鼓動が……何だこれ…ッ…何かが体の中で疼く様な…
「ソノ通リダヨ」
何だよコレ…
「オ前ニ伝エタカッタンダ、オレガ戻ッテキタコト」
「14…番目…ッ」
口が手が…勝手に動く…何だよ、コレ!!
僕は…僕はこんな!!
「来テクレルト思ッタヨ兄弟…」
アレンの体は、そっと千年伯爵の頬に手を添えると、ニヤリと口角を上げて笑った。
「今度コソ、オマエ殺ス」
「!」
「大丈夫“レイ”ハ存在シ続ケル。昔モ今モ…レイハ“オレ”ノダ。
アイツハオレヲ裏切ラナイ、アイツノ奏者ハオレ一人!ダカラ心置キ無ク実行デキル」
「レイ…」
「オマエヲ殺シテ、オレガ千年伯爵ニナル!!」
「それが…望みなのデスガ“14番目”」
違う…違う違う違う!!!
「ち…がう…ッ、ちがうっ!僕は“14番目”じゃない…!!」
何なんだ…この体の中がグチャグチャになる感覚…
ゴフッと口から溢れる血…激しい頭痛にアレンは頭を抱える様に押さえた。
「フフッ…レイが自分のモノですッテ?♡」
支配…されつつある…?
あの日、師匠が言ってた…
14番目になったら“大事な人間を殺さなきゃいけない”って…
「無理デスよ♡あの子は我輩の可愛い」
そんなの…
そんなの絶対に…絶対に…
「いやだぁ!!!」
そう叫んで押さえ込まれていた体を起き上げたアレンは、千年伯爵の顔面目掛けて頭を突き出した。
「ぅぶ!!」
千年伯爵は、そうもらすと顔を押さえて後ろに倒れ込んだ。
「頭突…っ♡」
顔面に入れたから相当痛そうだが、そんな事はもう知った事では無い。
「いいですか伯爵…あと14番目もよーく聞け…」
皆が唖然としている中、魔眼を持つワイズリーだけが楽しそうに笑っていた。
「僕はエクソシストのアレン・ウォーカーです、それ以外には死んでもならない!!あんたら兄弟のよく判らん喧嘩に人を勝手に巻き込むな!」
知らない間に宿主にされて、その事を最近始めて知って…自分が自分じゃなくなった挙句大切な人を殺さなきゃいけないと宣告されて……何が起きてるのかと思ったら、唯の兄弟喧嘩じゃないか。
「迷惑です!!」
馬鹿馬鹿しい!
他人を巻き込んで兄弟喧嘩だなんて最悪だ。
ふんっ、と鼻を鳴らしたアレンを見て、ワイズリーは楽しそうに笑った。
「ロード、あの小僧なかなか面白いの」
ワイズリーがそう口にした瞬間“バシュッ”という音と一筋の風と共に、胡坐をかいて座っていたワイズリーの足許に居たぬいぐるみのロードが消え去った。
青くなったワイズリーが“千年公!!”と叫んだ瞬間、千年伯爵に斬り掛かった神田の攻撃を、ティムが防いだ。
「ム!?♡」
「ちっ」
そう舌打ちをした神田の口には、しっかりとぬいぐるみのロードが銜えられていた。
「僕のロードォォォ!!何やってんの、ワイズリー!!」
「ワ、ワタシは武闘派ではないのだ…」
神田が飛び上がってティキ達から距離を取る中、アレンはワイズリーに文句を言うのに夢中なデザイアスのしたの棺を蹴り上げて、ブラックパールを抱き上げた。
バランスを崩したデザイアスが床に倒れ、ティキは“おぉ”と楽しそうに笑った。
「大丈夫ですか、ブラックパール」
“ガァ…”と小さく返事をしたブラックパールを抱えて神田と合流したアレンは、じっと神田を見据えた。
「神田、キミ動けたんですね」
「悪いかよ」
「悪かない…ですが、だったら何で今まで固まってたのか大変気になります」
「脳天潰されて起きたらココに居たんだ。状況理解すんのに時間掛かったんだよ」
そう言いながら、神田は徐にロードの首に付いたリボンを解いた。
「ギャー、何すんのエッチ!!」
「るせぇ、テメェの兄弟が髪紐壊しやがったんだ、リボンよこせ」
「追剥する為に捕まえたんかい」
「イマのうちに、いったんヒけ」
“ナニやってんダ、オマエら”とブラックパールに言われ、二人は出口を目掛けて走り出したが、二人と一羽が部屋の外へ出る事は無かった。
道管が床に埋め込まれた水槽を破ってきたのだ。
「な、何ですか、あれ!!」
まるで生き物の様に蠢く道管が凄い速さで伸び、出口を塞いだ。
「っ、クソ、出口が…!」
「“二度と教団へは帰さないっ”って言ったよね?」
デザイアスの能力か…
「ブラックパール、いける?」
「アァ…」
アレンの手を離れてふわりと飛び上がると、一声鳴いた。
《イノセンス開放“一雫ノ支配者”》
今から少し前へ飛んだブラックパールは、天井近くから室内を見下ろした。
神田が動き出した刻だった。
「僕のロードォォォ!!何やってんの、ワイズリー!!」
「ワ、ワタシは武闘派ではないのだ…」
神田が飛び上がってティ達から距離を取る中、アレンはワイズリーに文句を言うのに夢中なデザイアスのしたの棺を蹴り上げた。
「ブラックパール?」
棺の下に何も無い事を不審に思っているアレンへ向かって急降下すると、肩に飛び乗った。
「ココだ」
バランスを崩して床に倒れたデザイアスを見てティキが楽しそうに笑う中、アレンは神田に向かって走り出した。
「大丈夫ですか、ブラックパール」
“あぁ”と短く返事をしたブラックパールは、アレンが神田と合流すると、口早に用件を伝えた。
「いったんヒけ!デザイアスにデグチをフサがれる、イソゲ!!」
そう言うブラックパールの言葉に、二人は弾かれた様に走り出した。
ノア達がギャアギャア揉めている中、一気に部屋を駆け抜けた。
しかし、もう少しという所で出口の前にティキが立ち塞がり、直ぐに床を突き破って出て来た道管が出口を塞いだ。
「下等生物め…本当に状況を理解してるのか?」
ロードを捕まえられた所為か、デザイアスは酷く不機嫌そうだった。
クソ…折角ブラックパールが“戻った”のに…
「少年、無駄だよ。そのカラスがどんなイノセンスを持っていようとさ、こっちには魔眼のワイズリーが居るんだから」
“丸見えだよ”と言って笑うティキを前に、ブラックパールは小さく舌打ちをした。
床を貫いた道管がうねうねと動いて床の中の水槽に居た少年を高々と持ち上げた。
「アレン・ウォーカー、キミが自ら進んで教団を捨てられるようにしてあげまショウ♡今日はキミの退団パーティーでス♡」
退団って…誰がするか。
「誰ですか、その人」
生きているかも分からないが、少年があんな風に宙に吊らされてると気分が悪い。
「第二エクソシスト“アルマ=カルマ”
神田 ユウと同じ人造使徒の被験体だ」
人造使徒…神田が……?