夢に落ちるその前に
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3
「何処に行ったのかしら?」
その見た目通り厳格な女性、ミズ・リーの後について、小夜は自分に割り当てられた部屋に足を踏み入れた。
カイとリクを連れてベトナムへと来た私は、今日から調査の為、この“リセ・ドゥ・サンクフレシュ”に生徒として入る事になった。
学園の教師であるミズ・リーで、私は寮の部屋に案内された。同室の子は留守の様だ…
だがそれはさして問題では無いらしく、ミズ・リーは話を続けた。
「小夜、貴女の机とベッドは左側です」
必要な物しか設置されていない質素な造りの部屋だった。
自分の机とベッドに目をやると、ベッドの上に置かれた一枚のカードが目についた。小学生の様な字で“よろしくね”と日本語で書かれている。
一生懸命書いてくれたのだろう…自然に顔が綻ぶ。
「分かりましたか?」
「…はい」
実際、ミズ・リーの話等聞いていなかったが、小夜は慌ててそう返事をした。
「…この学園は知性と品性を兼ね備えた淑女を育成する事を基本方針としています。総ての規則に従い」
「済みません、遅れました!」
瞬間、そう一人の少女がミズ・リーの話を遮って慌だしく部屋に入って来た。前髪をピンでとめた眼鏡の可愛い少女だった。
慌ただしく入ってきた少女にミズ・リーは少しも驚きもせず話し続ける。
「小夜、こちらが同室のミンです」
振り返った小夜と目が合った瞬間、ミンは大きな目を更に大きく見開いた。
「ローズ?!!」
「……ミン、ローズではなく“小夜”です」
「ぁ‥は、はい!」
大きな声で叫んだ所為か威圧的に話すミズ・リーに慌ててそう返したミンは、小夜に手を差し出してニッコリと笑った。
「よろしくね、小夜!」
「よろしく‥」
ローズ…?
=リセ・ドゥ・サンクフレシュ=
「ミンと同室なんて、大変!」
教室の雰囲気や対応は日本とさして変わり無かった。
明らかな違いがあるとすれば、生徒が女子だけな為、私には新鮮味があるという程度だ。
休み時間になると数人の女子に囲まれる…こんな所も変わりない。
「勝手に喋らせとけば良いからね」
そう言った子の言葉に周りの子達が笑う。
どうやらと言うか、やっぱりと言うか…ミンはお喋りらしい。
「ねぇねぇ、日本のどこから来たの?」
「沖縄」
「海があるのよ!私、日本語勉強したんだから」
転校生に向けてのありがちな質問だった。
何どこから来たのかとか…
何が好きかとか…‥
「ローズとは姉妹…もしかして双子なの?」
「ローズ…?」
また“ローズ”だ。
人の名前だろうが、一体誰の事を言っているのか私には全く分からない。
「違うの?」
「えっと…」
違うのかと聞かれれば違う。
けど、私は一年以上前の記憶が無いから…そんなに似ているのなら、もしかしたらとも思ってしまうのが現実だった。
「あのね小夜、違うクラスに小夜にそっくりな子がいるの!小夜が少し髪を伸ばした感じの子なんだけど…だから最初小夜を見た時驚いちゃった」
私が“髪を少し伸ばしてオッドアイにした感じ”がローズらしい。
“上品だけど明るく元気で社交的”皆の話でのローズの印象はそんな感じだった。
午前の授業が終わると、調査の対象でもあるリセの伝説ファントムを“見に”中庭に向かった。
ミンの推測にすぎないので、中庭のファントムは本物では無いと思うが…
「私はね、あの人がファントムだと思うの!」
あの人って…ハジだ。
中庭に着くと、庭師に扮したハジがいた。
「ね、メチャクチャ格好良いでしょ!最近入ってきた庭師なの」
あれは明らかにハジだ。
ハジがファントムなわけ無い。ファントムだなんて揃いも揃って大いなる勘違いだ。
「もう、彼がファントムだったら永遠の愛なんていくらでも誓っちゃう!!」
ミンは大燥ぎ…私は隣りで呆然とハジを見ていた。
「アレ…が…」
絶対に有り得ないよ、ミン…
「あ、ファントム候補はもう一人いるのよ!」
「もう一人…?」
「裏庭に時々姿を現す庭師なんだけどね、その人もメチャクチャ格好良いの!!あの人と同じ黒髪蒼眼でね…裏庭のファントムの方が髪長いけど」
「今日はその人いるかな?」
もしかしたらその人がファントム…翼手かもしれない。
「さぁ…あ、ローズに聞いたら分かるかもしれないよ」
「ローズに…?」
「ローズと裏庭のファントムは恋人らしいの。夜、二人でいるのを見た子がいるんだって!」
「恋人?!」
「実際どうかは分からないけどね」
私そっくりな子、ローズ…貴女は私の姉妹なの?
親戚?それとも赤の他人?
貴女は…
誰──…
「小夜が来た」
真夜中の裏庭…
ローズとクロムは月の下で身体を寄せ合い言葉を交わす。
『小夜姉様…まぁ、ファントムの物語と過去の事件を照らし合わせれば赤い楯も動くわよね』
「あいつ等との接触は良くない」
『そうね…楽しいからと言ったって長く居すぎたわね』
小夜姉様が来る頃には次の場所に移動している予定だったのに…顔を合わせない様に気を付けないといけない。
「ハジとの接触は今の所避けてはいるが…どうする?」
『ハジは…私達を警戒するかしら』
「二百年振りだからな」
ローズは困った様に眉を寄せると夜空を見上げた。
『哀しいわね…まぁ、それも定めだわ。ディーヴァにも会わなきゃね…ディーヴァが目覚めたら行ってみましょ』
「そうだな…」
『ハジには私から接触するわ…クロムはいつも通り庭師として過ごして』
「分かった」
恐らくあの子が小夜姉様に何か仕掛けるとしたら…
パーティーの夜…
そしてきっと…
ディーヴァが…
もう直ぐ目覚める──…
「何処に行ったのかしら?」
その見た目通り厳格な女性、ミズ・リーの後について、小夜は自分に割り当てられた部屋に足を踏み入れた。
カイとリクを連れてベトナムへと来た私は、今日から調査の為、この“リセ・ドゥ・サンクフレシュ”に生徒として入る事になった。
学園の教師であるミズ・リーで、私は寮の部屋に案内された。同室の子は留守の様だ…
だがそれはさして問題では無いらしく、ミズ・リーは話を続けた。
「小夜、貴女の机とベッドは左側です」
必要な物しか設置されていない質素な造りの部屋だった。
自分の机とベッドに目をやると、ベッドの上に置かれた一枚のカードが目についた。小学生の様な字で“よろしくね”と日本語で書かれている。
一生懸命書いてくれたのだろう…自然に顔が綻ぶ。
「分かりましたか?」
「…はい」
実際、ミズ・リーの話等聞いていなかったが、小夜は慌ててそう返事をした。
「…この学園は知性と品性を兼ね備えた淑女を育成する事を基本方針としています。総ての規則に従い」
「済みません、遅れました!」
瞬間、そう一人の少女がミズ・リーの話を遮って慌だしく部屋に入って来た。前髪をピンでとめた眼鏡の可愛い少女だった。
慌ただしく入ってきた少女にミズ・リーは少しも驚きもせず話し続ける。
「小夜、こちらが同室のミンです」
振り返った小夜と目が合った瞬間、ミンは大きな目を更に大きく見開いた。
「ローズ?!!」
「……ミン、ローズではなく“小夜”です」
「ぁ‥は、はい!」
大きな声で叫んだ所為か威圧的に話すミズ・リーに慌ててそう返したミンは、小夜に手を差し出してニッコリと笑った。
「よろしくね、小夜!」
「よろしく‥」
ローズ…?
=リセ・ドゥ・サンクフレシュ=
「ミンと同室なんて、大変!」
教室の雰囲気や対応は日本とさして変わり無かった。
明らかな違いがあるとすれば、生徒が女子だけな為、私には新鮮味があるという程度だ。
休み時間になると数人の女子に囲まれる…こんな所も変わりない。
「勝手に喋らせとけば良いからね」
そう言った子の言葉に周りの子達が笑う。
どうやらと言うか、やっぱりと言うか…ミンはお喋りらしい。
「ねぇねぇ、日本のどこから来たの?」
「沖縄」
「海があるのよ!私、日本語勉強したんだから」
転校生に向けてのありがちな質問だった。
何どこから来たのかとか…
何が好きかとか…‥
「ローズとは姉妹…もしかして双子なの?」
「ローズ…?」
また“ローズ”だ。
人の名前だろうが、一体誰の事を言っているのか私には全く分からない。
「違うの?」
「えっと…」
違うのかと聞かれれば違う。
けど、私は一年以上前の記憶が無いから…そんなに似ているのなら、もしかしたらとも思ってしまうのが現実だった。
「あのね小夜、違うクラスに小夜にそっくりな子がいるの!小夜が少し髪を伸ばした感じの子なんだけど…だから最初小夜を見た時驚いちゃった」
私が“髪を少し伸ばしてオッドアイにした感じ”がローズらしい。
“上品だけど明るく元気で社交的”皆の話でのローズの印象はそんな感じだった。
午前の授業が終わると、調査の対象でもあるリセの伝説ファントムを“見に”中庭に向かった。
ミンの推測にすぎないので、中庭のファントムは本物では無いと思うが…
「私はね、あの人がファントムだと思うの!」
あの人って…ハジだ。
中庭に着くと、庭師に扮したハジがいた。
「ね、メチャクチャ格好良いでしょ!最近入ってきた庭師なの」
あれは明らかにハジだ。
ハジがファントムなわけ無い。ファントムだなんて揃いも揃って大いなる勘違いだ。
「もう、彼がファントムだったら永遠の愛なんていくらでも誓っちゃう!!」
ミンは大燥ぎ…私は隣りで呆然とハジを見ていた。
「アレ…が…」
絶対に有り得ないよ、ミン…
「あ、ファントム候補はもう一人いるのよ!」
「もう一人…?」
「裏庭に時々姿を現す庭師なんだけどね、その人もメチャクチャ格好良いの!!あの人と同じ黒髪蒼眼でね…裏庭のファントムの方が髪長いけど」
「今日はその人いるかな?」
もしかしたらその人がファントム…翼手かもしれない。
「さぁ…あ、ローズに聞いたら分かるかもしれないよ」
「ローズに…?」
「ローズと裏庭のファントムは恋人らしいの。夜、二人でいるのを見た子がいるんだって!」
「恋人?!」
「実際どうかは分からないけどね」
私そっくりな子、ローズ…貴女は私の姉妹なの?
親戚?それとも赤の他人?
貴女は…
誰──…
「小夜が来た」
真夜中の裏庭…
ローズとクロムは月の下で身体を寄せ合い言葉を交わす。
『小夜姉様…まぁ、ファントムの物語と過去の事件を照らし合わせれば赤い楯も動くわよね』
「あいつ等との接触は良くない」
『そうね…楽しいからと言ったって長く居すぎたわね』
小夜姉様が来る頃には次の場所に移動している予定だったのに…顔を合わせない様に気を付けないといけない。
「ハジとの接触は今の所避けてはいるが…どうする?」
『ハジは…私達を警戒するかしら』
「二百年振りだからな」
ローズは困った様に眉を寄せると夜空を見上げた。
『哀しいわね…まぁ、それも定めだわ。ディーヴァにも会わなきゃね…ディーヴァが目覚めたら行ってみましょ』
「そうだな…」
『ハジには私から接触するわ…クロムはいつも通り庭師として過ごして』
「分かった」
恐らくあの子が小夜姉様に何か仕掛けるとしたら…
パーティーの夜…
そしてきっと…
ディーヴァが…
もう直ぐ目覚める──…