burrasca
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7
『さっむ~』
いつもの制服では無く私服で身を包んだケイトは、雪の降り積もる田舎道を歩きながらそう呟いた。
吐き出した息が白い煙の様に昇って消えて行く。
『ケイト、こっちよ』
少し前を歩くクロアが振り返ってそう口にすると、ケイトは嬉しそうに微笑んだ。
『はい、クロアさん』
=ささやかな時間=
地球の日本の田舎そっくりに作られたグランマの住む街は、僕には少し懐かしかった。
僕の曾祖母は日本人で、曾祖母のアルバムに移る地球の日本の風景は昔から好きだった。
目の前に広がる昔の日本そっくりの風景は、なんだか子供時代に戻った気分になれた。
振り返ればそこには自分を抱き締める様に抱えてアルバムを広げる祖母が居そうな気がした。
『ケイト』
『はい』
勿論実際には僕の後ろに祖母等居ない…だけど僕の前にはクロアさんが居る。
『着いたんですか?』
『えぇ、ここよ』
目の前の短くきつい坂道を登ると、小さな古い日本家屋が立っていて、玄関の前には見慣れた人が立っていた。
『グランマ!』
そう言って駆け寄って抱き付けば、グランマは優しく背に腕を回してくれた。
「いらっしゃい、ケイトちゃん。ケイトちゃんはグランマの家は初めてだったわね」
『灯里達は夏に来たんでしょ?』
「えぇ、来ましたよ」
今まで颯 にグランマが来る事はあったが、僕がグランマの家に来る事は無かった。
なのに昨日、クロアさんがいきなり“明日は休みだから出掛ける”と言い出したのだ。
最初は驚いたが、凄く嬉しかった。
祖母が亡くなっている僕にはグランマが本当の祖母の様に感じられた。
家の中に入ると、床のへこんだ所に砂がしかれていて、そこで火が燃えていた。何だっけあれ‥
『掘りごたつ!』
「残念、これは囲炉裏だねぇ」
ケイトは靴を脱ぎ捨てると、囲炉裏に駆け寄った。肩に掛けた荷物を下ろすと囲炉裏の前に座り込む。
後から家に入ったクロアは、ケイトの脱ぎ捨てられた靴を揃えてから上がった。
『急に御免なさい、グランマ』
「あら、良いのよ。もっと頻繁にいらっしゃい」
グランマがそう言えば、クロアは嬉しそうに微かに微笑んだ。
そんなクロアを見て今度はケイトが微笑んだ。
「ケイトちゃん、冷えたでしょ‥お風呂に入っておいで」
『あ‥ならクロアさん先に』
『入っておいで、ケイト』
クロアがそう言うと、ケイトは素直に席を立って荷物を持つと、グランマに教わった通りに部屋を出て風呂場に向かった。
「良く懐かれてるね」
『…そう見えますか』
「見えるねぇ…自分でもそう思ってるだろ?」
『……そうですね…』
グランマはお茶を煎れると、そっと湯呑みをクロアに差し出した。
「辛いかい?」
『何がです』
クロアがそう問い返せば、グランマはお茶を一口口にしてから口を開いた。
「色々とだよ」
『……そうですね‥』
「“自分が選んだ事だから”といって無理をしない様にね」
『‥はい、グランマ』
暫くするとケイトが風呂から上がって部屋に帰って来た。
頬を火照らせた顔を見ると、良く温まれた様だ。
「行っておいで、クロア」
グランマの言葉に合わせた様に立ち上がったクロアは、自分の荷物を持つと部屋を後にした。
「温まれたかしら?」
『はい、良い湯でした』
“そう、良かった”と言って微笑んだグランマは、そっと湯呑みを差し出してくれた。
緑茶の良い香りがした。
「ねぇ、ケイトちゃん‥」
『はい?』
「何か…グランマに聞きたい事があるんじゃないかしら?」
『え…?』
心を見透かされた様な気がして酷くびっくりした。
「前から気になってたの‥聞きたい事があるんでしょ?」
黙り込んだケイトは、暫くすると口を開いた。
『聞きたい事は山程あるけど』
クロアさんは僕が知りたい事を何も話してくれない。
だけど…
『クロアさんから直接聞きたい』
一瞬素に戻りそうになったが、グランマは何も言わずに唯“そう”と言って微笑んだ。
『ぁ…一つだけ良いですか?』
「あら、何かしら?」
『なんでクロアさんに“星屑の幻想 ”を?』
「それはね…」
《貴女が来るなんて凄く久し振りだったから楽しかったわ》
受話器から響くグランマの声に、クロアは困った様に眉を寄せた。
『また伺います』
《そうしてちょうだい。ケイトちゃんも相変わらず良い子ね》
受話器越しにグランマは楽しそうに笑った。孫でも出来た気分なのだろう。
《あの子を‥悲しませない様にね》
『……はい‥グランマ』
耳にあてた受話器を両手で包み込みながら、クロアはそう呟いた。
三人で囲炉裏を囲んだ数時間‥
あのささやかな時がずっと…
ずっと続けば良いのに——…‥
.
『さっむ~』
いつもの制服では無く私服で身を包んだケイトは、雪の降り積もる田舎道を歩きながらそう呟いた。
吐き出した息が白い煙の様に昇って消えて行く。
『ケイト、こっちよ』
少し前を歩くクロアが振り返ってそう口にすると、ケイトは嬉しそうに微笑んだ。
『はい、クロアさん』
=ささやかな時間=
地球の日本の田舎そっくりに作られたグランマの住む街は、僕には少し懐かしかった。
僕の曾祖母は日本人で、曾祖母のアルバムに移る地球の日本の風景は昔から好きだった。
目の前に広がる昔の日本そっくりの風景は、なんだか子供時代に戻った気分になれた。
振り返ればそこには自分を抱き締める様に抱えてアルバムを広げる祖母が居そうな気がした。
『ケイト』
『はい』
勿論実際には僕の後ろに祖母等居ない…だけど僕の前にはクロアさんが居る。
『着いたんですか?』
『えぇ、ここよ』
目の前の短くきつい坂道を登ると、小さな古い日本家屋が立っていて、玄関の前には見慣れた人が立っていた。
『グランマ!』
そう言って駆け寄って抱き付けば、グランマは優しく背に腕を回してくれた。
「いらっしゃい、ケイトちゃん。ケイトちゃんはグランマの家は初めてだったわね」
『灯里達は夏に来たんでしょ?』
「えぇ、来ましたよ」
今まで
なのに昨日、クロアさんがいきなり“明日は休みだから出掛ける”と言い出したのだ。
最初は驚いたが、凄く嬉しかった。
祖母が亡くなっている僕にはグランマが本当の祖母の様に感じられた。
家の中に入ると、床のへこんだ所に砂がしかれていて、そこで火が燃えていた。何だっけあれ‥
『掘りごたつ!』
「残念、これは囲炉裏だねぇ」
ケイトは靴を脱ぎ捨てると、囲炉裏に駆け寄った。肩に掛けた荷物を下ろすと囲炉裏の前に座り込む。
後から家に入ったクロアは、ケイトの脱ぎ捨てられた靴を揃えてから上がった。
『急に御免なさい、グランマ』
「あら、良いのよ。もっと頻繁にいらっしゃい」
グランマがそう言えば、クロアは嬉しそうに微かに微笑んだ。
そんなクロアを見て今度はケイトが微笑んだ。
「ケイトちゃん、冷えたでしょ‥お風呂に入っておいで」
『あ‥ならクロアさん先に』
『入っておいで、ケイト』
クロアがそう言うと、ケイトは素直に席を立って荷物を持つと、グランマに教わった通りに部屋を出て風呂場に向かった。
「良く懐かれてるね」
『…そう見えますか』
「見えるねぇ…自分でもそう思ってるだろ?」
『……そうですね…』
グランマはお茶を煎れると、そっと湯呑みをクロアに差し出した。
「辛いかい?」
『何がです』
クロアがそう問い返せば、グランマはお茶を一口口にしてから口を開いた。
「色々とだよ」
『……そうですね‥』
「“自分が選んだ事だから”といって無理をしない様にね」
『‥はい、グランマ』
暫くするとケイトが風呂から上がって部屋に帰って来た。
頬を火照らせた顔を見ると、良く温まれた様だ。
「行っておいで、クロア」
グランマの言葉に合わせた様に立ち上がったクロアは、自分の荷物を持つと部屋を後にした。
「温まれたかしら?」
『はい、良い湯でした』
“そう、良かった”と言って微笑んだグランマは、そっと湯呑みを差し出してくれた。
緑茶の良い香りがした。
「ねぇ、ケイトちゃん‥」
『はい?』
「何か…グランマに聞きたい事があるんじゃないかしら?」
『え…?』
心を見透かされた様な気がして酷くびっくりした。
「前から気になってたの‥聞きたい事があるんでしょ?」
黙り込んだケイトは、暫くすると口を開いた。
『聞きたい事は山程あるけど』
クロアさんは僕が知りたい事を何も話してくれない。
だけど…
『クロアさんから直接聞きたい』
一瞬素に戻りそうになったが、グランマは何も言わずに唯“そう”と言って微笑んだ。
『ぁ…一つだけ良いですか?』
「あら、何かしら?」
『なんでクロアさんに“
「それはね…」
《貴女が来るなんて凄く久し振りだったから楽しかったわ》
受話器から響くグランマの声に、クロアは困った様に眉を寄せた。
『また伺います』
《そうしてちょうだい。ケイトちゃんも相変わらず良い子ね》
受話器越しにグランマは楽しそうに笑った。孫でも出来た気分なのだろう。
《あの子を‥悲しませない様にね》
『……はい‥グランマ』
耳にあてた受話器を両手で包み込みながら、クロアはそう呟いた。
三人で囲炉裏を囲んだ数時間‥
あのささやかな時がずっと…
ずっと続けば良いのに——…‥
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