burrasca
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5
『気になりますよね、ハヤト社長』
「ニゥ!」
僕の一言に、舟 から身を乗り出したハヤト社長はそう応えた。
身体が長い為、舟 に付いた短い足がプルプルと震えていて今にも舟 から落ちそうだった。
『ハヤト社長…止めないと落っこちますよ』
=寄り道=
合同練習を休んで行った食材の買い出しを終えたケイトは、ある事に気付いて舟 を止めた。
「ニィニ?」
『ハヤト社長‥何か凄くいい匂いしません?』
冷たい風に乗って流れてくる匂いを辿ると、近くにあった狭い水路に辿り着いた。
『ここからですね…』
「ニゥ…」
これって何の料理の匂いだったっけ……ド忘れしちゃって思い出せ無いや。
ケイトは“そうだ”と呟くとハヤトに目をやった。
『ハヤト社長、匂いの正体を突き止めてクロアさんへのお土産にしましょう!』
「ニゥ!」
元気に返事をするハヤトに、白い息を吐いたケイトは楽しそうに笑うと狭い水路へと舟 を進めた。
水路は見た目よりも遥かに狭かった。自分が通るので精一杯なこの水路は、向こう側から舟 が来たら元来た道を引き返すしか無い。
こんなに狭い水路は初めてだ。
「ニィ…」
『大丈夫ですよ、社長』
匂いは近付いても遠退いてもいない…と言う事は匂いの正体を持った人物が僕等の前を舟 で進んでいるという事だ。スピードを上げれば追い付く。
『速度上げますよ、社長!』
そう言うとこの水路で出来る限り速いスピードで舟 を漕いだ。
追えば追う程、匂いの正体…料理が何なのかが気になる。見失う訳にはいかない。
「ニィ、ニゥニゥ!」
はしゃいで舟 の上を飛び回るハヤトを無視したケイトは、唯ひたすら漕ぎ続けた。
ハヤト社長に構ってたら舟 を水路の壁にぶつけてしまいそうだ。
勢い良く水路を抜けると、開けた所に出た。
『うわぁ…‥』
水面に沈み行く夕陽がこんなに大きく見えたのはいつぶりだろう…
夕陽に見とれていたケイトは、ふと辺りを見渡した。辺りには全くと言って良い程人気が無く、あの匂いも消えていた。
『逃がしちゃいました、社長』
「ニゥゥ‥」
『でも代わりに景色の綺麗な良い近道見付けましたね』
この水路は意外と颯 の近くに繋がっていた。
今度から夕暮れ時にはここを通ろうかな‥
夕陽を見ながらゆっくりと颯 に帰ると、クロアさんがもう帰って来ていた。急いで舟 を杭に繋ぐと、荷物を抱えて颯 に駆け込んだ。
『お帰り、ケイト』
優しい笑顔と声が出迎えてくれて、思わず表情が緩んだ。
『只今戻りました、クロアさん』
荷物を抱えたままキッチンへと向かったケイトは、買ってきた物をしまいながら口を開いた。
『今日は新しい水路を見付けたんですよ』
『新しい水路?』
『はい、その水路凄く狭くて行き違えないんですよ』
ケイトがそう言うと、クロアは小さく“そうか”と呟いた。
買ってきた物を仕舞い終わったケイトは、腕捲りをしながら口を開いた。
『夕飯何にしましょうか?』
昨日はクロアさんの好きな和食で一昨日はシーフードドリアだった。
『中華にでもしますか?』
『いや、今日はもう用意してあるんだ』
そういってクロアさんが向かったリビングテーブルには、広げたクロスが何かに被せられていた。
冷めない様に掛けておいたであろうクロスをクロアさんが取ると、見知った物がそこにあった。
『マルガリータの特大ピッツァ‥食べたくて帰りに買ってきた』
『うわぁ‥このピザ久しぶりですね』
『特別お腹が空いてないと食べきれない大きさだからな』
このピザは元々二人で食べる大きさじゃ無い上、クロアさんが少食過ぎるのもあって颯 ではなかなか食べられない代物だ。
…‥あれ‥この匂い…‥
『クロアさん‥今日どこを通ってきました?』
このピザの匂い‥さっきの水路に広がっていた匂いと似てる気がする。
捲った袖を戻しながらそう問い掛けたケイトに、クロアはハヤトを席に着かせながら“いつも通りだよ”と答えた。
『何時も通り‥』
じゃあ違うかな…気の所為か‥
『さぁ、食べようケイト』
暖炉とピザの熱々のチーズが‥
冷えた僕等を温める——…
『気になりますよね、ハヤト社長』
「ニゥ!」
僕の一言に、
身体が長い為、
『ハヤト社長…止めないと落っこちますよ』
=寄り道=
合同練習を休んで行った食材の買い出しを終えたケイトは、ある事に気付いて
「ニィニ?」
『ハヤト社長‥何か凄くいい匂いしません?』
冷たい風に乗って流れてくる匂いを辿ると、近くにあった狭い水路に辿り着いた。
『ここからですね…』
「ニゥ…」
これって何の料理の匂いだったっけ……ド忘れしちゃって思い出せ無いや。
ケイトは“そうだ”と呟くとハヤトに目をやった。
『ハヤト社長、匂いの正体を突き止めてクロアさんへのお土産にしましょう!』
「ニゥ!」
元気に返事をするハヤトに、白い息を吐いたケイトは楽しそうに笑うと狭い水路へと
水路は見た目よりも遥かに狭かった。自分が通るので精一杯なこの水路は、向こう側から
こんなに狭い水路は初めてだ。
「ニィ…」
『大丈夫ですよ、社長』
匂いは近付いても遠退いてもいない…と言う事は匂いの正体を持った人物が僕等の前を
『速度上げますよ、社長!』
そう言うとこの水路で出来る限り速いスピードで
追えば追う程、匂いの正体…料理が何なのかが気になる。見失う訳にはいかない。
「ニィ、ニゥニゥ!」
はしゃいで
ハヤト社長に構ってたら
勢い良く水路を抜けると、開けた所に出た。
『うわぁ…‥』
水面に沈み行く夕陽がこんなに大きく見えたのはいつぶりだろう…
夕陽に見とれていたケイトは、ふと辺りを見渡した。辺りには全くと言って良い程人気が無く、あの匂いも消えていた。
『逃がしちゃいました、社長』
「ニゥゥ‥」
『でも代わりに景色の綺麗な良い近道見付けましたね』
この水路は意外と
今度から夕暮れ時にはここを通ろうかな‥
夕陽を見ながらゆっくりと
『お帰り、ケイト』
優しい笑顔と声が出迎えてくれて、思わず表情が緩んだ。
『只今戻りました、クロアさん』
荷物を抱えたままキッチンへと向かったケイトは、買ってきた物をしまいながら口を開いた。
『今日は新しい水路を見付けたんですよ』
『新しい水路?』
『はい、その水路凄く狭くて行き違えないんですよ』
ケイトがそう言うと、クロアは小さく“そうか”と呟いた。
買ってきた物を仕舞い終わったケイトは、腕捲りをしながら口を開いた。
『夕飯何にしましょうか?』
昨日はクロアさんの好きな和食で一昨日はシーフードドリアだった。
『中華にでもしますか?』
『いや、今日はもう用意してあるんだ』
そういってクロアさんが向かったリビングテーブルには、広げたクロスが何かに被せられていた。
冷めない様に掛けておいたであろうクロスをクロアさんが取ると、見知った物がそこにあった。
『マルガリータの特大ピッツァ‥食べたくて帰りに買ってきた』
『うわぁ‥このピザ久しぶりですね』
『特別お腹が空いてないと食べきれない大きさだからな』
このピザは元々二人で食べる大きさじゃ無い上、クロアさんが少食過ぎるのもあって
…‥あれ‥この匂い…‥
『クロアさん‥今日どこを通ってきました?』
このピザの匂い‥さっきの水路に広がっていた匂いと似てる気がする。
捲った袖を戻しながらそう問い掛けたケイトに、クロアはハヤトを席に着かせながら“いつも通りだよ”と答えた。
『何時も通り‥』
じゃあ違うかな…気の所為か‥
『さぁ、食べようケイト』
暖炉とピザの熱々のチーズが‥
冷えた僕等を温める——…