burrasca
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16
たった一つの願いの為に‥
私は嘘を吐く。
=霧包み=
眠い目を擦りながら起きたケイトは、身震いをすると、大きなくしゃみを一つした。
『ぅ——…‥何、この肌寒さ‥』
まだ夏だというのに、今朝は夏のパジャマでは少し肌寒いくらいだった。
火炎之番人 達に何かあったんだろうか?
手早く制服に着替えたケイトは、部屋に備え付けられたら流しで顔を洗うと、寝癖を引っ張りながらリビングへと向かった。
二度寝せずにそうした理由は、この時間なら今日の朝食当番のクロアが起きてると思ったからだった。
案の定、リビングに行けばキッチンから“トントントントントン”と一定のリズムを保った音がした。
『クロアさん、おはようございます』
キッチンを覗いてそう声を掛ければ、クロアさんは不思議そうな顔をした。
『ケイト…どうした?』
『目が覚めちゃいました』
“そうか”と返したクロアは、ふと大根を切っていた手を止めた。
『外を見たか?』
『いえ、まだです』
ケイトの返事を聞いて少し考えたクロアは、楽しそうに微笑んだ。
『ケイト、散歩に行こう』
『散歩‥ですか?』
コンロの火を止めたクロアはエプロンを取るとケイトの手を取って歩き出した。
颯 の扉を潜り外に出ると、辺りは霧に包まれていた。
『凄い‥』
幻想的なそれは本来出来無いものの筈であった。
やはり火炎之番人 達に何かあったんだろうか‥
そのまま桟橋に降りて自分の舟 に乗る様に足された。前に停めてあるクロアさんの舟 がゆっくり動き出す。
霧の中を舟 で進むのは幻想的で酷く綺麗だった。
でもそれよりも‥霧の中を進むクロアさんの方が美しいと思えた。
『クロアさん、どこへ?』
『‥秘密』
小さくそう返したクロアさんを見失わない様にクロアさんの舟 ギリギリに舟 を寄せてついて行った。
着いたのはいつだかハヤト社長と通った舟 一艘が漸く通れる水路だった。
『危ないから私が行って少し経ってから来なさい』
『はい‥』
ケイトがそう返事をすれば、クロアは薄く微笑むと水路に吸い込まれる様に入って行った。確かにこの視界の悪さでこの通路を通るのは危ないと思う。二艘続けて何て論外だ。
だからクロアさんの言った通り、少し時間を開けてから僕は水路に入った。
相変わらず狭い‥今日は視界が悪いから先が見えなくて尚進み難い。
クロアさんは何でここを通ろうと思ったんだろう‥?
この水路に何かあるんだろうか?
少し考え込んだケイトは“あ‥”と声を漏らした。
クロアさんはもしかしたらこの水路の先のひらけた場所で朝日を見る気かもしれない。
クロアさんと一緒に朝日か…
何かそれって凄く‥
『早く出よ』
早くクロアさんに会いたくなった。
少し速度を上げて、水路を突き進む。
早く…早く…早く…‥
勢い良く水路を抜けると、そこには誰も居なかった。
誰も居ない様に見えた…‥霧の中、人影は一つも無い。
『クロアさん…?』
『随分勢い良く出て来たのね』
静寂の中、そうクスクス笑うクロアさんの声が後ろから聞こえて凄く安心した。
『クロアさんが居ないと思ってビックリしましたよ』
そう言って声のした方を振り向けば、クロアさんが必ず居ると思った。
『え‥?』
居なかった。
人影はどこにも無い。振り返った先には、クロアさんの舟 が寂しく波に揺れていた。
…‥波に?
ここに波があるはずなんて無い。
考えられるのは唯一つ…
『クロアさん!!』
僕の悲鳴の様な叫び声と‥
水しぶきの音が…
静寂を切り裂いた——…‥
.
たった一つの願いの為に‥
私は嘘を吐く。
=霧包み=
眠い目を擦りながら起きたケイトは、身震いをすると、大きなくしゃみを一つした。
『ぅ——…‥何、この肌寒さ‥』
まだ夏だというのに、今朝は夏のパジャマでは少し肌寒いくらいだった。
手早く制服に着替えたケイトは、部屋に備え付けられたら流しで顔を洗うと、寝癖を引っ張りながらリビングへと向かった。
二度寝せずにそうした理由は、この時間なら今日の朝食当番のクロアが起きてると思ったからだった。
案の定、リビングに行けばキッチンから“トントントントントン”と一定のリズムを保った音がした。
『クロアさん、おはようございます』
キッチンを覗いてそう声を掛ければ、クロアさんは不思議そうな顔をした。
『ケイト…どうした?』
『目が覚めちゃいました』
“そうか”と返したクロアは、ふと大根を切っていた手を止めた。
『外を見たか?』
『いえ、まだです』
ケイトの返事を聞いて少し考えたクロアは、楽しそうに微笑んだ。
『ケイト、散歩に行こう』
『散歩‥ですか?』
コンロの火を止めたクロアはエプロンを取るとケイトの手を取って歩き出した。
『凄い‥』
幻想的なそれは本来出来無いものの筈であった。
やはり
そのまま桟橋に降りて自分の
霧の中を
でもそれよりも‥霧の中を進むクロアさんの方が美しいと思えた。
『クロアさん、どこへ?』
『‥秘密』
小さくそう返したクロアさんを見失わない様にクロアさんの
着いたのはいつだかハヤト社長と通った
『危ないから私が行って少し経ってから来なさい』
『はい‥』
ケイトがそう返事をすれば、クロアは薄く微笑むと水路に吸い込まれる様に入って行った。確かにこの視界の悪さでこの通路を通るのは危ないと思う。二艘続けて何て論外だ。
だからクロアさんの言った通り、少し時間を開けてから僕は水路に入った。
相変わらず狭い‥今日は視界が悪いから先が見えなくて尚進み難い。
クロアさんは何でここを通ろうと思ったんだろう‥?
この水路に何かあるんだろうか?
少し考え込んだケイトは“あ‥”と声を漏らした。
クロアさんはもしかしたらこの水路の先のひらけた場所で朝日を見る気かもしれない。
クロアさんと一緒に朝日か…
何かそれって凄く‥
『早く出よ』
早くクロアさんに会いたくなった。
少し速度を上げて、水路を突き進む。
早く…早く…早く…‥
勢い良く水路を抜けると、そこには誰も居なかった。
誰も居ない様に見えた…‥霧の中、人影は一つも無い。
『クロアさん…?』
『随分勢い良く出て来たのね』
静寂の中、そうクスクス笑うクロアさんの声が後ろから聞こえて凄く安心した。
『クロアさんが居ないと思ってビックリしましたよ』
そう言って声のした方を振り向けば、クロアさんが必ず居ると思った。
『え‥?』
居なかった。
人影はどこにも無い。振り返った先には、クロアさんの
…‥波に?
ここに波があるはずなんて無い。
考えられるのは唯一つ…
『クロアさん!!』
僕の悲鳴の様な叫び声と‥
水しぶきの音が…
静寂を切り裂いた——…‥
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