第2章 秘密ノ謳
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
59
蒼みがかった月の下を‥
クルリ‥クルリ…
回る‥回る…‥
夜を制する月は───…‥
==
「ライブ‥?」
『そう、ライブ』
金曜の夜のホグワーツの森には、必ず話し声が響いた。
金曜の夜…トムとの約束の日だ。
麗は相変わらずトムを怖れず、良ければとライブに誘っていた。
『後ね、二十五日にパーティーがあるの…トムも来ない?』
「どちらにしろ俺様が行ったら会場が混乱するぞ」
分かってる。
トムはヴォルデモート‥
皆の言う所の“例のあの人”なのだから…
『正体がバレなきゃ平気よ』
私は貴方との思い出が…
記憶が‥記録が欲しい。
『二十五日のパーティーはホグワーツの大広間で行われるの。
一日のライブ会場は当日になれば分かるわ』
そう言うと麗は立ち上がった。
少し伸びた黒髪が風に揺れた。
「帰るのか?」
『うん、宿題あるし』
「もう少し付き合え」
そう言って立ち上がったトムは麗の手を取ると踊り出した。
クルリ‥クルリと…
「ほう、踊れるのか」
『まあね』
「東洋人はワルツを踊れぬと思っていた」
『あら、失礼ね』
確かに東洋人で踊れる者は習っている者以外はとても少ない。
『私の御祖父様がね“何にでも対処出来ぬと婿が取れん”って言って何でも仕込んだの』
御祖父様は何でも自分で熟せる様に私を育てた。
私を最強の術者の地位に置き‥
“気高く聡明で在れ”と…
“決して配下や眷属に弱みを見せるな”と…
そう私に望み、叩き込んだ…‥
「麗‥一人で全てを行え。
継承を終えたら儂やお前の親は記憶を失う。
助けてはやれん‥助言も出来ん、常に自分は一人だと思え。
誘い込む時以外に敵や眷属に付け入る隙を与えるな。
我が一族は‥
決して絶えてはならぬのだ」
自分にでさえも‥
心を許す事は許さない。
家族をもった私にそれを実行する事は叶わなかったが、私は家族以外に気を許そうとはしなかった。
私自身にでさえも心を許さず…
私は家族への思いを御祖父様に悟られぬ様に装い続けた。
ふとトムが踊るのを止めた。
麗が顔を上げれば、トムは麗を優しく抱き締めた。
『トム‥?』
「貰い手がいなければ俺様が貰ってやろう」
意地悪だけど優しい声だった。
優しくて嬉しい言葉だった‥
嬉しそうに微笑んだ麗は、そっとトムに身を任せた。
『トム、合わせてね』
そう言った麗がワルツの曲を歌いだし、それに合わせてトムが麗をリードして踊る。
クルリ‥クルリ…
回る…回る…‥
メロディーと貴方と月の下を…
クルリ‥クルリ…
貴方が手を引き、私は歌いながらそれを追う。
貴方に身を任せて‥
右に左に…前に後ろに…
クルリ‥クルリ…
‥クルリ…クルリ…‥
私は月…
時に雲に隠れ、朱くもなり蒼くもなり様々に代わりゆく‥
欠けたり満ちたり…
ただ…それを繰り返す…‥
一定に見えて‥
真は不安定なモノ――…‥
あぁ‥
最初に私を月だと言ったのは誰だっただろうか?
まだ思い出せない――…‥
「お帰り、麗~」
「御帰りなさい、麗様」
部屋に帰ると、椿と凌がリビングのソファーで寛いで待っていた。
『ただいま』
立ち上がって一礼をする凌に頭を上げさせながら麗は微笑むとそう答えた。
この二人には社が無い為、普段はピアスに憑いてもらっている。
二人は元々、膨大な力を麗を源にして制御されている。
そして“月門”という封印具を社代わりにする事で、制御に鍵を掛けて安定させているのだが、此の世界では月門が無い為、麗が月門の役割もを果さなければならなかった。
故に二人は麗のピアスに憑き、力をなるべく抑える為に殆どの時間を寝て過ごす。
二人が私の元に来る時は決って、二人が寂しくなった時か私がトムに会う金曜だった。
麗に駈け寄って来た椿が麗の手を取るとソファーへと引き、凌は後をついていきながら口を開いた。
「あの‥
お怪我はありませんか、麗様‥」
「大丈夫だよ~
麗は強いんだからさ~」
椿は笑いながらソファに座り、麗の手を引いて隣りに座らせる。
「でも‥
麗様は一人で抱え込んで無理をなさいますから…」
心配そうに眉を寄せる凌に、麗は微笑んで見せた。
『大丈夫よ。
だから凌も座りなさい』
「はい‥」
凌が麗の隣にゆっくりと腰を降ろす中、麗はライ達を捜した。
珍しく出て来無いからだった。
気配を探ると、寝室から気を感じた。
何故か騎龍や砕覇達も一緒だ。
『珍しい‥
ライ達は寝たのね…しかも皆一緒に』
そう麗が呟いた瞬間、椿が声を上げて笑い出した。
何か変な事を言っただろうか?
椿は目に涙を浮かべて笑いながら話し出した。
「ククク…ライ達はな、クク‥凌が倒しちまったんだよ、それで寝ちまってるククク‥」
凌が…倒した‥?!
『な、何で?』
強いが大人しい凌は、喧嘩等しないのに‥
椿は笑うのを止め、目に溜った涙を拭い取りながら口を開く。
「アイツ等、いつもみたいに喧嘩しててさ~」
「あの‥麗様は疲れて帰ってくると思ったので、九尾達の喧嘩は煩いだろうと思って…」
「で、ヤッちまったって訳~」
何時もの様に喧嘩をして、普段は優しい凌を怒らせちゃった訳か。
「寝室の床に皆、転がって寝てるよ~」
「一応布団は掛けといたんですが…」
喧嘩ね…
桜華は兎も角‥
『西煌は巻き込まれた訳か…』
「済みません…」
凌が俯き、それを見た麗は凌の頭を優しく撫でた。
『凌、私の事を考えてくれたんでしょ?
有難う‥嬉しいよ』
「はい‥麗様」
凌は麗を見据えると嬉しそうに微笑んだ。
何か凌って…
『凌って女の子みたい』
「ぇ…」
「女ぁ~?」
麗の一言に凌は言葉を失い、椿は意味が分からないと首を傾げた。
『笑顔が綺麗だから‥』
麗の言葉に、言葉を失っていた凌は顔を赤く染めた。
「ん~…まぁ、俺やライ達とは笑った感じが違‥」
「あ、あの‥!!
わ、私なんかより麗様の方が綺麗です!」
椿の言葉を遮り叫んだ凌を見、麗は可笑しそうにクスクスと笑い出した。
恥ずかしそうに頬を赤く染めている凌は実に可愛らしい。
『有難う、凌』
私は何処まで進めたかな‥
曲がらずに…
真っ直ぐ進めてるかな‥
真っ直ぐ進めたなら…
きっと上手くいく。
そう思える‥
そう信じている。
少しでも救い出せていると…
今宵も月が夜空に輝く…
刻はもう直ぐ日の出‥
今日も晴れると良いな…
蒼みがかった月の下を‥
クルリ‥クルリ…
回る‥回る…‥
夜を制する月は───…‥
==
「ライブ‥?」
『そう、ライブ』
金曜の夜のホグワーツの森には、必ず話し声が響いた。
金曜の夜…トムとの約束の日だ。
麗は相変わらずトムを怖れず、良ければとライブに誘っていた。
『後ね、二十五日にパーティーがあるの…トムも来ない?』
「どちらにしろ俺様が行ったら会場が混乱するぞ」
分かってる。
トムはヴォルデモート‥
皆の言う所の“例のあの人”なのだから…
『正体がバレなきゃ平気よ』
私は貴方との思い出が…
記憶が‥記録が欲しい。
『二十五日のパーティーはホグワーツの大広間で行われるの。
一日のライブ会場は当日になれば分かるわ』
そう言うと麗は立ち上がった。
少し伸びた黒髪が風に揺れた。
「帰るのか?」
『うん、宿題あるし』
「もう少し付き合え」
そう言って立ち上がったトムは麗の手を取ると踊り出した。
クルリ‥クルリと…
「ほう、踊れるのか」
『まあね』
「東洋人はワルツを踊れぬと思っていた」
『あら、失礼ね』
確かに東洋人で踊れる者は習っている者以外はとても少ない。
『私の御祖父様がね“何にでも対処出来ぬと婿が取れん”って言って何でも仕込んだの』
御祖父様は何でも自分で熟せる様に私を育てた。
私を最強の術者の地位に置き‥
“気高く聡明で在れ”と…
“決して配下や眷属に弱みを見せるな”と…
そう私に望み、叩き込んだ…‥
「麗‥一人で全てを行え。
継承を終えたら儂やお前の親は記憶を失う。
助けてはやれん‥助言も出来ん、常に自分は一人だと思え。
誘い込む時以外に敵や眷属に付け入る隙を与えるな。
我が一族は‥
決して絶えてはならぬのだ」
自分にでさえも‥
心を許す事は許さない。
家族をもった私にそれを実行する事は叶わなかったが、私は家族以外に気を許そうとはしなかった。
私自身にでさえも心を許さず…
私は家族への思いを御祖父様に悟られぬ様に装い続けた。
ふとトムが踊るのを止めた。
麗が顔を上げれば、トムは麗を優しく抱き締めた。
『トム‥?』
「貰い手がいなければ俺様が貰ってやろう」
意地悪だけど優しい声だった。
優しくて嬉しい言葉だった‥
嬉しそうに微笑んだ麗は、そっとトムに身を任せた。
『トム、合わせてね』
そう言った麗がワルツの曲を歌いだし、それに合わせてトムが麗をリードして踊る。
クルリ‥クルリ…
回る…回る…‥
メロディーと貴方と月の下を…
クルリ‥クルリ…
貴方が手を引き、私は歌いながらそれを追う。
貴方に身を任せて‥
右に左に…前に後ろに…
クルリ‥クルリ…
‥クルリ…クルリ…‥
私は月…
時に雲に隠れ、朱くもなり蒼くもなり様々に代わりゆく‥
欠けたり満ちたり…
ただ…それを繰り返す…‥
一定に見えて‥
真は不安定なモノ――…‥
あぁ‥
最初に私を月だと言ったのは誰だっただろうか?
まだ思い出せない――…‥
「お帰り、麗~」
「御帰りなさい、麗様」
部屋に帰ると、椿と凌がリビングのソファーで寛いで待っていた。
『ただいま』
立ち上がって一礼をする凌に頭を上げさせながら麗は微笑むとそう答えた。
この二人には社が無い為、普段はピアスに憑いてもらっている。
二人は元々、膨大な力を麗を源にして制御されている。
そして“月門”という封印具を社代わりにする事で、制御に鍵を掛けて安定させているのだが、此の世界では月門が無い為、麗が月門の役割もを果さなければならなかった。
故に二人は麗のピアスに憑き、力をなるべく抑える為に殆どの時間を寝て過ごす。
二人が私の元に来る時は決って、二人が寂しくなった時か私がトムに会う金曜だった。
麗に駈け寄って来た椿が麗の手を取るとソファーへと引き、凌は後をついていきながら口を開いた。
「あの‥
お怪我はありませんか、麗様‥」
「大丈夫だよ~
麗は強いんだからさ~」
椿は笑いながらソファに座り、麗の手を引いて隣りに座らせる。
「でも‥
麗様は一人で抱え込んで無理をなさいますから…」
心配そうに眉を寄せる凌に、麗は微笑んで見せた。
『大丈夫よ。
だから凌も座りなさい』
「はい‥」
凌が麗の隣にゆっくりと腰を降ろす中、麗はライ達を捜した。
珍しく出て来無いからだった。
気配を探ると、寝室から気を感じた。
何故か騎龍や砕覇達も一緒だ。
『珍しい‥
ライ達は寝たのね…しかも皆一緒に』
そう麗が呟いた瞬間、椿が声を上げて笑い出した。
何か変な事を言っただろうか?
椿は目に涙を浮かべて笑いながら話し出した。
「ククク…ライ達はな、クク‥凌が倒しちまったんだよ、それで寝ちまってるククク‥」
凌が…倒した‥?!
『な、何で?』
強いが大人しい凌は、喧嘩等しないのに‥
椿は笑うのを止め、目に溜った涙を拭い取りながら口を開く。
「アイツ等、いつもみたいに喧嘩しててさ~」
「あの‥麗様は疲れて帰ってくると思ったので、九尾達の喧嘩は煩いだろうと思って…」
「で、ヤッちまったって訳~」
何時もの様に喧嘩をして、普段は優しい凌を怒らせちゃった訳か。
「寝室の床に皆、転がって寝てるよ~」
「一応布団は掛けといたんですが…」
喧嘩ね…
桜華は兎も角‥
『西煌は巻き込まれた訳か…』
「済みません…」
凌が俯き、それを見た麗は凌の頭を優しく撫でた。
『凌、私の事を考えてくれたんでしょ?
有難う‥嬉しいよ』
「はい‥麗様」
凌は麗を見据えると嬉しそうに微笑んだ。
何か凌って…
『凌って女の子みたい』
「ぇ…」
「女ぁ~?」
麗の一言に凌は言葉を失い、椿は意味が分からないと首を傾げた。
『笑顔が綺麗だから‥』
麗の言葉に、言葉を失っていた凌は顔を赤く染めた。
「ん~…まぁ、俺やライ達とは笑った感じが違‥」
「あ、あの‥!!
わ、私なんかより麗様の方が綺麗です!」
椿の言葉を遮り叫んだ凌を見、麗は可笑しそうにクスクスと笑い出した。
恥ずかしそうに頬を赤く染めている凌は実に可愛らしい。
『有難う、凌』
私は何処まで進めたかな‥
曲がらずに…
真っ直ぐ進めてるかな‥
真っ直ぐ進めたなら…
きっと上手くいく。
そう思える‥
そう信じている。
少しでも救い出せていると…
今宵も月が夜空に輝く…
刻はもう直ぐ日の出‥
今日も晴れると良いな…