第2章 秘密ノ謳
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57
『ああ、駄目よピーター、そんな事したら爆発するわ』
グリフィンドール寮の談話室の片隅で、私のやるべき事は今日も変ら無い。
『分量が逆よ』
「え…ぁ、ご、ごめん」
麗の指摘に、ピーターは書いた答えを慌てて消した。
『実際に薬を作ってるわけじゃないから大丈夫…作る時は気を付けてね?』
疲れた。少し頭が痛い。
別にピーターの勉強を見るのに疲れたわけじゃ無い。
ピーターは出来無いんじゃなくてうっかりミスが多いだけだから基本的に見ているだけで大丈夫だし、第一私はピーターと過ごす時間が癒されて好きだ。弟が出来たみたいで、実の弟を亡くしている私としては実は少し嬉しい…但し今日は話が別だ。病明けの身体でホグズミードに行っては流石に疲れる。
でも楽しかったな…
ホグズミード──…
=残してきたもの=
『紙園、準備出来た~?』
麗は、寝室の扉の前に立つと中で着替えている紙園にそう呼び掛けた。
「…出来た…が…」
『じゃあ、出て来て!』
麗の言葉に合わせ、麗の肩に乗った紅葉が急かす様に一鳴きした。
麗はクスクスみ笑うと、紅葉の頭を撫でてやった。
『紅葉が早くって』
寝室の扉がゆっくりと開き、部屋の中から人型の紙園が現れた。その姿は人型を取った時の紙園お決まりのハイネックとズボンでは無い。
『まぁ、ピッタリね…良く似合ってるわ。凄く格好良いよ、紙園』
麗は何処か落ち着きの無い紙園の手を取ると楽しそうにその場をクルクルと回った。
「着方は当ってるか…?」
『えぇ、完璧よ』
麗は回るのを止めると、リビングに向かって声を上げた。
『皆、紙園の支度出来たからもう出掛けるわよ!』
こちらの世界に来て初めての家族水入らずの外出だった。
皆で普段着ない服を着た。
着物しか着ない桜華にも目立つから洋服を着せた。豪奢な髪飾りを外して綺麗な白髪を一つに纏め、ズボンを履かせた。
今まで当たり前の様に着ていた着物やシンプルな洋服とは違った服を着た私達は…家族からしてみれば凄く不思議な光景だった。
生徒達の目もあるので紙園達とはホグズミードで待ち合わせをし、翡翠と二人で部屋を後にした。
腕を組んで並んで歩いていると、懐かしさが込み上げた。途中までとはいえ、翡翠と二人っきりでこうして出掛けるのは何時以来だろう。
ホグズミードに着くまでの短い間だったが、二人で色々な事を話した。
ホグズミードに着くと先に着いて待っていた皆と合流した。
蒼の肩に乗っていた紅葉が麗の胸へ飛び移り、それを受け止めた麗は、紅葉を一撫ですると肩に乗せて歩き出した。
『良い天気~』
「そ…」
「せやな!」
紙園の言葉を遮り返事をしたのは砕覇だった。
砕覇は麗の後頭部にキスを落とすと、後ろから抱き付いた。麗の肩の紅葉を摘み上げて自分の頭に乗せる。
「俺様の麗から離れろ、狼」
「はー、出たわ。お・れ・の・麗やから良ぇんですー」
「てか何でテメェ等が居るんだ、失せろ」
翡翠は居る意味が分からないとばかりに砕覇と騎龍を睨み付けた。騎龍は麗に抱き付いている砕覇の首根っこを掴んで引き剥がしながら軽く翡翠と目を合わせた。
「西煌達も居るだろ」
「そうね。皆、麗の家族だから居るね。麗が望むのだから仕方無いよ」
西煌はニコニコ笑いながら翡翠の隣に並ぶと、宥める様に翡翠の肩を叩いた。後ろの方にいた椿と凌はとばっちりを受けたく無いのか黙って事の行く末を見ている。
「童じゃないんだから大人しくせぬか」
「西煌達は良いが…蛇と狼は嫌だ。帰れ」
「うぜぇ」
「私情かいな!!」
「餓鬼か」
「子供ね」
「な、こんな奴等連れてくるなら七叉の方が良いだろ!」
「はは、無理ね。今の七叉、人間に見えないね」
『それに翡翠、口が悪い』
「そうじゃぞ!主 等は仲が悪い以上に口が悪過ぎじゃ!!もっと普通に話せんのか?」
『……桜華…迫力が無い』
喧嘩の仲裁に入った桜華を見て麗はそう洩らした。
洋服を身に纏った桜華は可愛かったが、いつもの迫力が無くなっていた。着物姿が見慣れている所為だからだろうか?
「放っておけ、麗」
桜華は不機嫌そうに眉を寄せると、そっぽを向いてしまった。
「麗…コイツ等煩すぎだ」
痺れをきらした紙園が麗の手を取って軽く引き、麗は小さく声を洩らした。
『そうね…騎龍と桜華には悪いけど、四人置いてどっか行こうか?』
「それが良い」
『少し懲らしめてやりましょ』
近くにいた蒼に紙園が理由を話すと、蒼はあっさりと承諾した。
「麗、気付かれるなよ」
『任せたよ、蒼』
先頭を歩いていた麗達は気を消すと、直ぐ後ろを歩きながら喧嘩をしている翡翠達に向き合った。麗が紙園を連れて四人の横を摺り抜けて後ろに付くと、蒼は魔法を使った。それを麗が防ぐと、紙園が西煌の背を押して歩き出す。
「行くぞ」
「どうしたね?」
誰一人動かなくなったホグズミードを歩く人々、それを見て不思議そうにしている西煌とそれを押す紙園、そんな二人の横をすれ違う様に通り過ぎた麗は、椿と凌の腕に自分の腕を絡め駆け出した。紙園達を追い抜くと、直ぐに走って後を追って来てくれた。
「麗様!」
戸惑う凌が声を上げると、椿は楽しそうに声を上げて笑い出した。
「麗ってば最高!!術が解けたら四人共きっと怒るよ~」
『騎龍と桜華には悪いけどね』
「ビックリね、全く」
困った様に眉を寄せた西煌がそう口にし、麗は西煌を振り返った。
『あら、私はギリギリまで多目に見たわよ!』
「…それもそうね」
困った様に…しかし楽しそうに西煌が笑い出し、椿は変わらず笑い続けた。
「でも丁度良かったよ〜、凌キレそうだったし」
「椿!!麗様、私は」
『凌、楽しい?』
自分の言葉を遮った麗の言葉に、凌は口を噤んで嬉しそうに微笑んだ。
「はい、麗様」
「………あ゙ぁ?!彼奴等、どこ行きやがった!」
蒼が一定距離離れた事によって魔法が解けた四人の中で、真っ先に異変に気付いたのは騎龍だった。
三人は弾かれた様辺りを見回した。変わらぬ風景の中、麗達だけが一瞬で消えた。
「麗、何処じゃ?!」
「西煌も居ねぇから危ない目に遭ってるわけじゃ無ぇとは思うが…」
「感知出来無ぇ、麗の奴結界張りやがった!」
「鼻も効かへん!!麗~出て来てやぁ──!!」
「クソ、貴様等の所為で置いてかれちまったじゃねぇか!」
「何だと?!」
「何故じゃ、麗!!妾は何もしとらんじゃないか!」
「最悪や!!九尾と蛇の所為やで!」
「どう考えたってテメェと翡翠だろうが!!」
長三人が取っ組合いの喧嘩を始めそうな中、桜華は拳を握りしめて天を仰いだ。
「主等の所為で妾はまた巻き添えじゃ、馬鹿者──!!」
四人を残してホグズミードを満喫した六人と一匹は、ホグズミードを抜けると最後に森へ向かった。
一息吐いた麗は、歩きながら両腕を上に伸ばしてグッと伸びをした。
『もー、お腹いっぱい!』
「珍しく沢山食べてたね」
『甘い物も久々に食べたわ』
「コレも美味しいね、麗!!」
「椿、いい加減に…それ麗様の」
『良いのよ、凌…紙園は美味しい?』
「ん、旨い…」
『そう、良かった』
椿はバタービールを気に入ったらしく、凌が止めるのも聞かず麗の飲みかけのバタービールまで飲み干した。甘い物が苦手な蒼だけは珈琲の入ったカップを口にする。
「どこに向かっているんだ」
『話した海 の所…もう着くわよ』
「そうか…何をしに行くんだ?」
『頼み事があるの』
慣れた足取りで森を進んだ麗は、一本の木の前に立つとそっと幹に触れた。
『久しぶり、海』
〔久しぶり…今年初めてのホグズミードか?〕
頭に響く声に、麗は嬉しそうに微笑んだ。
『そうよ。あのね私、海に頼みがあるの』
〔何だ、言ってみろ〕
貴方なら出来ると信じていた。
貴方なら直ぐに承諾してくれると知っていた。
『あのね───…』
大切なモノは…
信頼している人にしか任せられ無い──…
『ああ、駄目よピーター、そんな事したら爆発するわ』
グリフィンドール寮の談話室の片隅で、私のやるべき事は今日も変ら無い。
『分量が逆よ』
「え…ぁ、ご、ごめん」
麗の指摘に、ピーターは書いた答えを慌てて消した。
『実際に薬を作ってるわけじゃないから大丈夫…作る時は気を付けてね?』
疲れた。少し頭が痛い。
別にピーターの勉強を見るのに疲れたわけじゃ無い。
ピーターは出来無いんじゃなくてうっかりミスが多いだけだから基本的に見ているだけで大丈夫だし、第一私はピーターと過ごす時間が癒されて好きだ。弟が出来たみたいで、実の弟を亡くしている私としては実は少し嬉しい…但し今日は話が別だ。病明けの身体でホグズミードに行っては流石に疲れる。
でも楽しかったな…
ホグズミード──…
=残してきたもの=
『紙園、準備出来た~?』
麗は、寝室の扉の前に立つと中で着替えている紙園にそう呼び掛けた。
「…出来た…が…」
『じゃあ、出て来て!』
麗の言葉に合わせ、麗の肩に乗った紅葉が急かす様に一鳴きした。
麗はクスクスみ笑うと、紅葉の頭を撫でてやった。
『紅葉が早くって』
寝室の扉がゆっくりと開き、部屋の中から人型の紙園が現れた。その姿は人型を取った時の紙園お決まりのハイネックとズボンでは無い。
『まぁ、ピッタリね…良く似合ってるわ。凄く格好良いよ、紙園』
麗は何処か落ち着きの無い紙園の手を取ると楽しそうにその場をクルクルと回った。
「着方は当ってるか…?」
『えぇ、完璧よ』
麗は回るのを止めると、リビングに向かって声を上げた。
『皆、紙園の支度出来たからもう出掛けるわよ!』
こちらの世界に来て初めての家族水入らずの外出だった。
皆で普段着ない服を着た。
着物しか着ない桜華にも目立つから洋服を着せた。豪奢な髪飾りを外して綺麗な白髪を一つに纏め、ズボンを履かせた。
今まで当たり前の様に着ていた着物やシンプルな洋服とは違った服を着た私達は…家族からしてみれば凄く不思議な光景だった。
生徒達の目もあるので紙園達とはホグズミードで待ち合わせをし、翡翠と二人で部屋を後にした。
腕を組んで並んで歩いていると、懐かしさが込み上げた。途中までとはいえ、翡翠と二人っきりでこうして出掛けるのは何時以来だろう。
ホグズミードに着くまでの短い間だったが、二人で色々な事を話した。
ホグズミードに着くと先に着いて待っていた皆と合流した。
蒼の肩に乗っていた紅葉が麗の胸へ飛び移り、それを受け止めた麗は、紅葉を一撫ですると肩に乗せて歩き出した。
『良い天気~』
「そ…」
「せやな!」
紙園の言葉を遮り返事をしたのは砕覇だった。
砕覇は麗の後頭部にキスを落とすと、後ろから抱き付いた。麗の肩の紅葉を摘み上げて自分の頭に乗せる。
「俺様の麗から離れろ、狼」
「はー、出たわ。お・れ・の・麗やから良ぇんですー」
「てか何でテメェ等が居るんだ、失せろ」
翡翠は居る意味が分からないとばかりに砕覇と騎龍を睨み付けた。騎龍は麗に抱き付いている砕覇の首根っこを掴んで引き剥がしながら軽く翡翠と目を合わせた。
「西煌達も居るだろ」
「そうね。皆、麗の家族だから居るね。麗が望むのだから仕方無いよ」
西煌はニコニコ笑いながら翡翠の隣に並ぶと、宥める様に翡翠の肩を叩いた。後ろの方にいた椿と凌はとばっちりを受けたく無いのか黙って事の行く末を見ている。
「童じゃないんだから大人しくせぬか」
「西煌達は良いが…蛇と狼は嫌だ。帰れ」
「うぜぇ」
「私情かいな!!」
「餓鬼か」
「子供ね」
「な、こんな奴等連れてくるなら七叉の方が良いだろ!」
「はは、無理ね。今の七叉、人間に見えないね」
『それに翡翠、口が悪い』
「そうじゃぞ!
『……桜華…迫力が無い』
喧嘩の仲裁に入った桜華を見て麗はそう洩らした。
洋服を身に纏った桜華は可愛かったが、いつもの迫力が無くなっていた。着物姿が見慣れている所為だからだろうか?
「放っておけ、麗」
桜華は不機嫌そうに眉を寄せると、そっぽを向いてしまった。
「麗…コイツ等煩すぎだ」
痺れをきらした紙園が麗の手を取って軽く引き、麗は小さく声を洩らした。
『そうね…騎龍と桜華には悪いけど、四人置いてどっか行こうか?』
「それが良い」
『少し懲らしめてやりましょ』
近くにいた蒼に紙園が理由を話すと、蒼はあっさりと承諾した。
「麗、気付かれるなよ」
『任せたよ、蒼』
先頭を歩いていた麗達は気を消すと、直ぐ後ろを歩きながら喧嘩をしている翡翠達に向き合った。麗が紙園を連れて四人の横を摺り抜けて後ろに付くと、蒼は魔法を使った。それを麗が防ぐと、紙園が西煌の背を押して歩き出す。
「行くぞ」
「どうしたね?」
誰一人動かなくなったホグズミードを歩く人々、それを見て不思議そうにしている西煌とそれを押す紙園、そんな二人の横をすれ違う様に通り過ぎた麗は、椿と凌の腕に自分の腕を絡め駆け出した。紙園達を追い抜くと、直ぐに走って後を追って来てくれた。
「麗様!」
戸惑う凌が声を上げると、椿は楽しそうに声を上げて笑い出した。
「麗ってば最高!!術が解けたら四人共きっと怒るよ~」
『騎龍と桜華には悪いけどね』
「ビックリね、全く」
困った様に眉を寄せた西煌がそう口にし、麗は西煌を振り返った。
『あら、私はギリギリまで多目に見たわよ!』
「…それもそうね」
困った様に…しかし楽しそうに西煌が笑い出し、椿は変わらず笑い続けた。
「でも丁度良かったよ〜、凌キレそうだったし」
「椿!!麗様、私は」
『凌、楽しい?』
自分の言葉を遮った麗の言葉に、凌は口を噤んで嬉しそうに微笑んだ。
「はい、麗様」
「………あ゙ぁ?!彼奴等、どこ行きやがった!」
蒼が一定距離離れた事によって魔法が解けた四人の中で、真っ先に異変に気付いたのは騎龍だった。
三人は弾かれた様辺りを見回した。変わらぬ風景の中、麗達だけが一瞬で消えた。
「麗、何処じゃ?!」
「西煌も居ねぇから危ない目に遭ってるわけじゃ無ぇとは思うが…」
「感知出来無ぇ、麗の奴結界張りやがった!」
「鼻も効かへん!!麗~出て来てやぁ──!!」
「クソ、貴様等の所為で置いてかれちまったじゃねぇか!」
「何だと?!」
「何故じゃ、麗!!妾は何もしとらんじゃないか!」
「最悪や!!九尾と蛇の所為やで!」
「どう考えたってテメェと翡翠だろうが!!」
長三人が取っ組合いの喧嘩を始めそうな中、桜華は拳を握りしめて天を仰いだ。
「主等の所為で妾はまた巻き添えじゃ、馬鹿者──!!」
四人を残してホグズミードを満喫した六人と一匹は、ホグズミードを抜けると最後に森へ向かった。
一息吐いた麗は、歩きながら両腕を上に伸ばしてグッと伸びをした。
『もー、お腹いっぱい!』
「珍しく沢山食べてたね」
『甘い物も久々に食べたわ』
「コレも美味しいね、麗!!」
「椿、いい加減に…それ麗様の」
『良いのよ、凌…紙園は美味しい?』
「ん、旨い…」
『そう、良かった』
椿はバタービールを気に入ったらしく、凌が止めるのも聞かず麗の飲みかけのバタービールまで飲み干した。甘い物が苦手な蒼だけは珈琲の入ったカップを口にする。
「どこに向かっているんだ」
『話した
「そうか…何をしに行くんだ?」
『頼み事があるの』
慣れた足取りで森を進んだ麗は、一本の木の前に立つとそっと幹に触れた。
『久しぶり、海』
〔久しぶり…今年初めてのホグズミードか?〕
頭に響く声に、麗は嬉しそうに微笑んだ。
『そうよ。あのね私、海に頼みがあるの』
〔何だ、言ってみろ〕
貴方なら出来ると信じていた。
貴方なら直ぐに承諾してくれると知っていた。
『あのね───…』
大切なモノは…
信頼している人にしか任せられ無い──…