第2章 秘密ノ謳
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52
『霹麗 、御免ね』
違和感にはちゃんと気付いていた。
『もう少しだけ我慢して…』
でも私は…
『力が完璧に戻るまで』
止まる事が出来無い──…
=意識の先に=
ハロウィーンの宴で今年も歌う事になった麗は、歌い終わると、静かさを求めてスリザリンの席に向かった。
身に纏った黒いドレスの裾を持って、ヒールで裾を踏まない様に気を付けて歩いた。少しふらついていたから。
翡翠が心配そうにこちらを見てるのが見えた。手を少し上げてまだそこに居る様に足す。
此の頃…何故か気持ち悪いくらい眠くて仕方無かった。
睡魔で身体はふらふらだし、機嫌も悪くなる。
グリフィンドールの席に座らなくて良かった。グリフィンドールは四つの寮の中で一番祭り事が好きなので、静かにしろという方が間違いだ。
案の定凄く騒いでるし…
「麗…何か食べるか?」
『食べる…』
左隣には優しいセブルス。
「飲み物はどうかね、麗」
『飲む~』
右隣には紳士的なルシウス。
ベラトリックスはロドルファスが、レギュラスとラバスタンはナルシッサとアンドロメダが抑えててくれたので、スリザリン寮の席は静かだった。言う事無しだ。
「他に何かいるか、麗?」
ルシウスは紅茶を手渡しながらそう問い掛け、麗はそれを受取り一口飲むと微笑んだ。
『有難う、ルシウス…でもこれで十分よ。とっても美味しいもの』
ルシウスとセブルスは気が利く。
仕掛人達とは違い、二人は紅茶の中から私の好きな紅茶を探り当て、差し出してくる。
プライベートな時間であれば、自ら入れてくれる始末だ。
「麗、本当に大丈夫?」
『大丈夫よ、レギュー…寝不足なだけなの』
「寝れないのか?添い寝してやろうか?」
『ふふ、有難うラバスタン』
「麗」
綺麗に切り分けたケーキを乗せた皿を麗の前へと置いた。
「これで良いか?」
『有難う、セブ』
一緒に御菓子を食べるならリーマスかルシウスが良いかもしれない。
甘党のリーマスは、常に部屋に御菓子を絶さないし、ルシウスは此の世界にしか無い珍しい御菓子を色々て教えてくれて楽しい。
何より二人共、御菓子についてで話が出来る。
そう考えると、ルシウスとの御茶が一番楽しい気さえする。
一番自分に適していると思えたセブルスは、御菓子に関しては疎い上、余り甘い物は好きでは無いのだ。でも落ち着けるのは…
『やっぱり家族が一番かしら』
誰にも聞こえぬ程度にそう呟くと、セブルスに貰ったケーキを口に含む。
ケーキは久しぶりだ。クリームの甘い味や柔らかい食感が口に広がる。甘い…
「美味いか‥?」
『うん、美味しい』
麗は嬉しそうに微笑み、返事をするとぼやける目を手で擦った。
「眠れそうか?」
『ん……多分…』
セブルスは麗が食べ終るの待ち、紅茶を飲み終えふらふらと舟を漕ぐ麗を支えて立ち上がらせた。
「一人で大丈夫か‥?」
『うん…一人で帰る』
寧ろ迷惑を掛けそうなので一人で帰りたい。
第一スリザリンの寮はグリフィンドールの寮の反対側だ。セブルスに悪過ぎる。
『…御休み、セブルス』
「あぁ、おやすみ」
「気を付けなさい、麗…転んで怪我等をしては大変。してからでは遅いわ」
綺麗な金髪の少女が麗を心配そうに見据える。
心配そうだが、言葉はハキハキとしているし、何処か厳しいものがあった。正にそれは貴族のそれだ。
「ナルシッサの言う通りだぞ、麗」
『大丈夫だよ。有難う…ナルシッサ、ルシウス』
麗はスリザリンの面々に“御休み”と微笑み手を振ると、翡翠をちらりと見て大広間を後にした。
誰もいない廊下は酷く静かで薄暗く、長く冷たい廊下を麗は一人ふらふらと歩き、寮に向かった。
ここ数日で一気に体調を崩した。
崩したと言っても眠いだけだから困る。夜完璧に眠れない訳じゃないし…何でこんな…
身体の機能が…低下する…
麗はふと立ち止まると、俯き気味だった顔を上げた。まだ麻痺していて良く分から無いが、確かに周りに沢山いる。
『誰…』
そう呟くと、柱の陰や近くの部屋から見た事のある黒子が沢山出てきた。
「お久しぶりです、姫」
一人の黒子が喋り出した。
聞き覚えのある声…
『あら貴方、前に来た方ね』
「その通りですよ、姫…今日こそは御主人様の所へ御連れします」
麗は愛想良くニッコリと微笑むと、口を開いた。
『私ね、眠たいの…早く寮に帰りたいからそこを退きなさい』
「そうはいきませんよ、姫」
そう口にした黒子を中心に、黒子達が麗を取り囲み、全員のローブの下から杖の先が出された。その全てが麗に向けられる。
『機嫌悪いわ…怒らせない方が身の為よ』
“機嫌悪い”なんて口に出したのは初めてかもしれない。
「失礼、姫」
全ての杖が蒼白く光り、麗に向かって放たれた。が、光は麗に触れると“パンッ”と大きな音を立てて飛び散り消え去った。
「「「「ッ…!!?」」」」
『残念ね…貴方達の魔法は私には効かないわ』
私には月影がついている…術系統のモノは効かない。
「来るなら武術で来なさい。じゃないと…」
麗は右手を目の高さまで上げると呟いた。
『“reveris”』
「「「「ッ…あ゙ぁあ゙あぁあ!!!」」」」
目を剥き出しにした黒子達が頭を抑え、悲痛な叫び声を上げてのたうち回るのを見るのは、生きている心地がしなくて気持ち悪かった。
ククク…
『ッ…』
麗は左手で頭を押えると、上げていた右手を降ろした。
術のきれた黒子達は床に転がったまま荒々しく肩で息をしながら震えていた。
『“zethpa”』
麗が再び呟くと、今度は黒子の足元の床が引き裂けた。
裂けた廊下の石畳の欠片が私の魔力を含んでカタカタと揺れた。
「ッ…」
『行きなさい…見逃して上げるから、もうホグワーツに入ら無いで』
ヒッ…と小さく悲鳴にも似た声を上げ、黒子達は慌ててその場を去った。
あぁ…懐かしくて嫌な光景だ。
クク…キャハハハハハハ!!
来ないで…
来ないで…来ナイデ…
『眠…い…』
膝から崩れた麗を受け止めたのは楓だった。
意識を失った麗をジッと見詰めた楓は、麗を抱き上げた。
沈む…深く、深く…
暗い…何処を見ても此の暗闇は変わらない。
沈んでいく…
そんな気がする。
深く…深く───…‥
暫くすると、少し離れた所に少しずつ少しずつ…トムが現れたのが分かった。
『…トム……?』
思わずそう呟いたが、トムには聞こえていない様で…唯、無表情なトムの頬を涙が伝った。
『何で…何で泣いてるの…』
何で…何で……貴方が…
『…トム…どうしたの?』
麗が手を伸ばし、トムに触れ様とするとトムは消えてしまった。
『…トム』
何で…貴方が泣くの──…
『…ト…ム……』
「ヴォルデモート卿にやられたのか?」
『……紙園…』
目を開けると、そこは医務室だった。
人型の紙園が私の手を握り、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
『違う…夢を見たんだ』
「夢か…」
『それに私は眠くて倒れただけよ』
麗はゆっくりと起き上がるとベッドの背に凭れ掛かった。
倒れた理由は別にあった…
だが麗は紙園に話さなかった。
大切な事なのに、自分だけに終い込んだのだ。
「無理はするなと言った」
『御免…ありがとう』
「礼はアレンに言え」
紙園が近くのソファーで寝ているアレンを指差す。アレンは大きな身体を小さく丸めて眠っていた。
「麗を見付けて此処まで運んだのはアイツだ」
『そう…御礼をしないとね。取り合えず布団くらいは…』
麗は指を鳴らして魔法を発動すると、アレンに布団が掛けた。
「……術を使わないのか?」
いつもの麗ならば、魔法ではなくて術の方を使う。慣れ親しんでいて使い勝手が良いからだ。
『暫く使わ無い事にした…翡翠と蒼は?』
「喧嘩をしていてポンフリーに追い出された」
『蒼が?』
「そうだ」
麗は驚いて固まっていたが、少しすると楽しそうにクスクスと笑いだした。
『蒼がねぇ…』
「…麗…?」
『貴重なモノを見逃したな』
笑い声が安眠を妨害してしまったのか、寝ていたアレンが目を擦りながら起き上がった。まだ眠そうだ。
「ん…元気そうだな」
そう言ったアレンが微笑み、麗も応える様に微笑み返した。
『色々有難う、アレン』
「どういたしまして」
ソファーを後にしたアレンが麗が座っているベッドの脇の椅子に座り、麗は魔法で小さな箱を取り出すと、中からピアスを一つ出し、アレンに手渡した。
『付けてて』
「ピアス?」
『うん…御守り。アレンを護ってくれるから』
もう二度と失わない。
きっと…
きっと護ってみせるから──…
『
違和感にはちゃんと気付いていた。
『もう少しだけ我慢して…』
でも私は…
『力が完璧に戻るまで』
止まる事が出来無い──…
=意識の先に=
ハロウィーンの宴で今年も歌う事になった麗は、歌い終わると、静かさを求めてスリザリンの席に向かった。
身に纏った黒いドレスの裾を持って、ヒールで裾を踏まない様に気を付けて歩いた。少しふらついていたから。
翡翠が心配そうにこちらを見てるのが見えた。手を少し上げてまだそこに居る様に足す。
此の頃…何故か気持ち悪いくらい眠くて仕方無かった。
睡魔で身体はふらふらだし、機嫌も悪くなる。
グリフィンドールの席に座らなくて良かった。グリフィンドールは四つの寮の中で一番祭り事が好きなので、静かにしろという方が間違いだ。
案の定凄く騒いでるし…
「麗…何か食べるか?」
『食べる…』
左隣には優しいセブルス。
「飲み物はどうかね、麗」
『飲む~』
右隣には紳士的なルシウス。
ベラトリックスはロドルファスが、レギュラスとラバスタンはナルシッサとアンドロメダが抑えててくれたので、スリザリン寮の席は静かだった。言う事無しだ。
「他に何かいるか、麗?」
ルシウスは紅茶を手渡しながらそう問い掛け、麗はそれを受取り一口飲むと微笑んだ。
『有難う、ルシウス…でもこれで十分よ。とっても美味しいもの』
ルシウスとセブルスは気が利く。
仕掛人達とは違い、二人は紅茶の中から私の好きな紅茶を探り当て、差し出してくる。
プライベートな時間であれば、自ら入れてくれる始末だ。
「麗、本当に大丈夫?」
『大丈夫よ、レギュー…寝不足なだけなの』
「寝れないのか?添い寝してやろうか?」
『ふふ、有難うラバスタン』
「麗」
綺麗に切り分けたケーキを乗せた皿を麗の前へと置いた。
「これで良いか?」
『有難う、セブ』
一緒に御菓子を食べるならリーマスかルシウスが良いかもしれない。
甘党のリーマスは、常に部屋に御菓子を絶さないし、ルシウスは此の世界にしか無い珍しい御菓子を色々て教えてくれて楽しい。
何より二人共、御菓子についてで話が出来る。
そう考えると、ルシウスとの御茶が一番楽しい気さえする。
一番自分に適していると思えたセブルスは、御菓子に関しては疎い上、余り甘い物は好きでは無いのだ。でも落ち着けるのは…
『やっぱり家族が一番かしら』
誰にも聞こえぬ程度にそう呟くと、セブルスに貰ったケーキを口に含む。
ケーキは久しぶりだ。クリームの甘い味や柔らかい食感が口に広がる。甘い…
「美味いか‥?」
『うん、美味しい』
麗は嬉しそうに微笑み、返事をするとぼやける目を手で擦った。
「眠れそうか?」
『ん……多分…』
セブルスは麗が食べ終るの待ち、紅茶を飲み終えふらふらと舟を漕ぐ麗を支えて立ち上がらせた。
「一人で大丈夫か‥?」
『うん…一人で帰る』
寧ろ迷惑を掛けそうなので一人で帰りたい。
第一スリザリンの寮はグリフィンドールの寮の反対側だ。セブルスに悪過ぎる。
『…御休み、セブルス』
「あぁ、おやすみ」
「気を付けなさい、麗…転んで怪我等をしては大変。してからでは遅いわ」
綺麗な金髪の少女が麗を心配そうに見据える。
心配そうだが、言葉はハキハキとしているし、何処か厳しいものがあった。正にそれは貴族のそれだ。
「ナルシッサの言う通りだぞ、麗」
『大丈夫だよ。有難う…ナルシッサ、ルシウス』
麗はスリザリンの面々に“御休み”と微笑み手を振ると、翡翠をちらりと見て大広間を後にした。
誰もいない廊下は酷く静かで薄暗く、長く冷たい廊下を麗は一人ふらふらと歩き、寮に向かった。
ここ数日で一気に体調を崩した。
崩したと言っても眠いだけだから困る。夜完璧に眠れない訳じゃないし…何でこんな…
身体の機能が…低下する…
麗はふと立ち止まると、俯き気味だった顔を上げた。まだ麻痺していて良く分から無いが、確かに周りに沢山いる。
『誰…』
そう呟くと、柱の陰や近くの部屋から見た事のある黒子が沢山出てきた。
「お久しぶりです、姫」
一人の黒子が喋り出した。
聞き覚えのある声…
『あら貴方、前に来た方ね』
「その通りですよ、姫…今日こそは御主人様の所へ御連れします」
麗は愛想良くニッコリと微笑むと、口を開いた。
『私ね、眠たいの…早く寮に帰りたいからそこを退きなさい』
「そうはいきませんよ、姫」
そう口にした黒子を中心に、黒子達が麗を取り囲み、全員のローブの下から杖の先が出された。その全てが麗に向けられる。
『機嫌悪いわ…怒らせない方が身の為よ』
“機嫌悪い”なんて口に出したのは初めてかもしれない。
「失礼、姫」
全ての杖が蒼白く光り、麗に向かって放たれた。が、光は麗に触れると“パンッ”と大きな音を立てて飛び散り消え去った。
「「「「ッ…!!?」」」」
『残念ね…貴方達の魔法は私には効かないわ』
私には月影がついている…術系統のモノは効かない。
「来るなら武術で来なさい。じゃないと…」
麗は右手を目の高さまで上げると呟いた。
『“reveris”』
「「「「ッ…あ゙ぁあ゙あぁあ!!!」」」」
目を剥き出しにした黒子達が頭を抑え、悲痛な叫び声を上げてのたうち回るのを見るのは、生きている心地がしなくて気持ち悪かった。
ククク…
『ッ…』
麗は左手で頭を押えると、上げていた右手を降ろした。
術のきれた黒子達は床に転がったまま荒々しく肩で息をしながら震えていた。
『“zethpa”』
麗が再び呟くと、今度は黒子の足元の床が引き裂けた。
裂けた廊下の石畳の欠片が私の魔力を含んでカタカタと揺れた。
「ッ…」
『行きなさい…見逃して上げるから、もうホグワーツに入ら無いで』
ヒッ…と小さく悲鳴にも似た声を上げ、黒子達は慌ててその場を去った。
あぁ…懐かしくて嫌な光景だ。
クク…キャハハハハハハ!!
来ないで…
来ないで…来ナイデ…
『眠…い…』
膝から崩れた麗を受け止めたのは楓だった。
意識を失った麗をジッと見詰めた楓は、麗を抱き上げた。
沈む…深く、深く…
暗い…何処を見ても此の暗闇は変わらない。
沈んでいく…
そんな気がする。
深く…深く───…‥
暫くすると、少し離れた所に少しずつ少しずつ…トムが現れたのが分かった。
『…トム……?』
思わずそう呟いたが、トムには聞こえていない様で…唯、無表情なトムの頬を涙が伝った。
『何で…何で泣いてるの…』
何で…何で……貴方が…
『…トム…どうしたの?』
麗が手を伸ばし、トムに触れ様とするとトムは消えてしまった。
『…トム』
何で…貴方が泣くの──…
『…ト…ム……』
「ヴォルデモート卿にやられたのか?」
『……紙園…』
目を開けると、そこは医務室だった。
人型の紙園が私の手を握り、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
『違う…夢を見たんだ』
「夢か…」
『それに私は眠くて倒れただけよ』
麗はゆっくりと起き上がるとベッドの背に凭れ掛かった。
倒れた理由は別にあった…
だが麗は紙園に話さなかった。
大切な事なのに、自分だけに終い込んだのだ。
「無理はするなと言った」
『御免…ありがとう』
「礼はアレンに言え」
紙園が近くのソファーで寝ているアレンを指差す。アレンは大きな身体を小さく丸めて眠っていた。
「麗を見付けて此処まで運んだのはアイツだ」
『そう…御礼をしないとね。取り合えず布団くらいは…』
麗は指を鳴らして魔法を発動すると、アレンに布団が掛けた。
「……術を使わないのか?」
いつもの麗ならば、魔法ではなくて術の方を使う。慣れ親しんでいて使い勝手が良いからだ。
『暫く使わ無い事にした…翡翠と蒼は?』
「喧嘩をしていてポンフリーに追い出された」
『蒼が?』
「そうだ」
麗は驚いて固まっていたが、少しすると楽しそうにクスクスと笑いだした。
『蒼がねぇ…』
「…麗…?」
『貴重なモノを見逃したな』
笑い声が安眠を妨害してしまったのか、寝ていたアレンが目を擦りながら起き上がった。まだ眠そうだ。
「ん…元気そうだな」
そう言ったアレンが微笑み、麗も応える様に微笑み返した。
『色々有難う、アレン』
「どういたしまして」
ソファーを後にしたアレンが麗が座っているベッドの脇の椅子に座り、麗は魔法で小さな箱を取り出すと、中からピアスを一つ出し、アレンに手渡した。
『付けてて』
「ピアス?」
『うん…御守り。アレンを護ってくれるから』
もう二度と失わない。
きっと…
きっと護ってみせるから──…