第2章 秘密ノ謳
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47
私が何よりも薬学を深く学んだのは“貴方を救いたかったから”
その理由が大半を締めていたのは明らかで…
今も変らず…満月の夜は貴方を想う。
=真夏の夜=
蒸し暑いある日の夕方、リーマスは小さな箱とバスケットを手に裏庭から森に入った。
山道を一時間程進み、洞窟へと足を踏み入れる。暫く歩くと洞窟の壁へ不自然に取り付けられた小さな扉を押し開いて中へ入った。
そこへ広がる部屋はリーマスの隠れ家だった。
テーブルの上に手に持っていた箱を置くと、箱は綺麗な音色を奏で始めた。
ソファーに座ると、バスケットの中からサンドイッチを取り出して口に押し込んだ。食欲は無いが食べておかないと後がキツイ。
最後にボトルを取り出して中身を飲み干すと、リーマスは背凭れへと沈む様に寄りかかった。その顔は真っ青では無いが、良いとは言える色でも無い。
今夜は満月…
仕掛人達の御陰でいくら満月の夜を好きになっても、仕掛人達がいない満月の夜はリーマスにとって地獄でしかなかった。しかし今年の夏は違う。
リーマスはクリスマスに麗から貰ったオルゴールの御陰でいつもの様に一人苦しむ事は無かった。
「麗…」
リーマスはオルゴールを見つめ贈り主である麗の名前を呟いた。
麗に会いたい…
『なぁに?』
「…………はい…?」
空耳か?聞こえる筈の無い声が聞こえた気がする。
「あ──…よっぽど疲れてるんだな、僕…」
『え、嘘、大丈夫?!』
今度こそはっきり聞こえた声に、リーマスは目を見開いて慌てて体を起こした。
『リーマス、大丈夫なの?』
「え、あ、だ、だ、大丈夫…」
『何かピーターみたいね?』
リーマスは麗の声のするオルゴールを手に取ると、ソファーに座り直した。
「あ──…えっと…麗?」
『何?』
「…えっと…シャントゥール?」
『どうしたの?』
「ディーヴァ?」
『ちょっと待ってなさい。今直ぐ行くから』
「何を…っ?!!」
リーマスが言葉の意味を問い掛け様とした瞬間、部屋が紅い光りに包まれた。
少しチカチカする目を擦って開けると、そこには着物を纏った麗が立っていた。
『久し振り、リーマス!』
リーマスは思わず落としそうになったオルゴールを慌てて持ち直した。
「久しぶり…」
麗はリーマスの隣に腰掛けると、額にそっと手を当てた。
『熱は無いわね…一応オルゴールが効いてる様ね』
「あの…何で」
『このオルゴール、非常用にパートキーにもなってるのよ』
“リーマスに何かあったら困るもの”と言って笑う麗を見て、リーマスは“そっか”と嬉しそうに笑った。
『ねぇ、そう言えば“ディーヴァ”って何?』
「雑誌見てないのかい?“世界のディーヴァ”って題名で麗の特集がくまれてから君はディーヴァって呼ばれてるんだ」
『あー…そういう事か」
「ジェームズが悔しがってたよ」
『ジェームズが?』
「“麗の仕掛人用の名前ディーヴァにしようと思ってたのに!!”って」
『ジェームズらしい』
麗は笑いながらリーマスの手を取ると、ベッドへ寝かせた。
『そろそろ時間よ』
リーマスは納得した様で、困った様に笑うと目を閉じた。人狼になる時が来た。
麗はベッドに腰掛けるとリーマスの手を握り直す。
『大丈夫…今日は私が謳うわ』
リーマスは麗の手を握り返すと消えそうな声で呟いた。
「麗、好きだよ」
『私も好きよ』
リーマスは困ったように苦笑すると麗を見据えた。
「違うよ麗、そうじゃない…愛してるの方だよ」
麗は目を見開き、硬直していたが、ゆっくりと口を開いた。
『駄目よ、リーマス』
「ダメ?無理じゃなくて?」
『私では駄目なのよ…』
「僕は麗が良いんだ」
『貴方には私なんかより貴方を想ってくれる人がいるわ』
リーマスは無意識に握っていた麗の手を堅く握り絞めた。
「…こんな身体の僕を理解する人がいるわけ無いよ」
麗はゆっくりと自分の手を握っているリーマスの手に自分のもう片方の手を乗せた。
『その子は貴方の為に悩んでくれるし、泣いてくれる…何より貴方を愛してくれるわ。少し遅くなってしまうけど…確かにその子はいるのよリーマス』
「麗だって悩んでくれたじゃないか…泣いてだってくれるだろ?」
『えぇ、確かにそうよ…貴方の為だったら笑うし、怒るし、悩むし、泣くし…それに命だって張るわ』
リーマスの言う通りだった。私は大切なモノの為ならば何でも出来る。
「なら」
『でもね、リーマス…私のそれはあの子の愛には勝てないもの。勝負するにも値しない…それくらい貴方に対するあの子の気持ちは強いのよ。私の愛ではあの子の本物の愛には勝てないわ』
リーマスは唯、麗の話を黙って聞いていた。
『だけどね、リーマス…私はその子以外に負けるつもりは無いわ。ジェームズ達は勿論、誰にも負けるつもりは無いわ。絶対に譲ったりしないもの』
麗の笑顔を見て、リーマスは微笑んだ…が、それは長くは続かなかった。
「ッ…ぐ、あ゙…」
『リーマス…』
狼化が始まった。
麗はリーマスの手を握ったまま、慌てて謳い出した。
私が薬学を深く学んだのは、この人を助ける為だ。
人狼でなくなり、完璧に人間に戻る薬を…
そんな夢の様なモノを…
私はこの人に託したい──…
「寝たか?」
『えぇ…』
麗はイアンと話しながら、ベッドに横たわり眠っている大きな狼の頭を優しく撫でた。
「…薬は出来そうか?」
『まだまだ時間は掛かるけど…順調に完成に近付いているわ。やはり、サブに基礎を教えてもらって正解だった』
「しかしアイツは」
『大丈夫よ』
麗はイアンの言葉を遮ると微笑んだ。
『まだ大丈夫』
此の世界は…
まだ修正可能なのよ──…
私が何よりも薬学を深く学んだのは“貴方を救いたかったから”
その理由が大半を締めていたのは明らかで…
今も変らず…満月の夜は貴方を想う。
=真夏の夜=
蒸し暑いある日の夕方、リーマスは小さな箱とバスケットを手に裏庭から森に入った。
山道を一時間程進み、洞窟へと足を踏み入れる。暫く歩くと洞窟の壁へ不自然に取り付けられた小さな扉を押し開いて中へ入った。
そこへ広がる部屋はリーマスの隠れ家だった。
テーブルの上に手に持っていた箱を置くと、箱は綺麗な音色を奏で始めた。
ソファーに座ると、バスケットの中からサンドイッチを取り出して口に押し込んだ。食欲は無いが食べておかないと後がキツイ。
最後にボトルを取り出して中身を飲み干すと、リーマスは背凭れへと沈む様に寄りかかった。その顔は真っ青では無いが、良いとは言える色でも無い。
今夜は満月…
仕掛人達の御陰でいくら満月の夜を好きになっても、仕掛人達がいない満月の夜はリーマスにとって地獄でしかなかった。しかし今年の夏は違う。
リーマスはクリスマスに麗から貰ったオルゴールの御陰でいつもの様に一人苦しむ事は無かった。
「麗…」
リーマスはオルゴールを見つめ贈り主である麗の名前を呟いた。
麗に会いたい…
『なぁに?』
「…………はい…?」
空耳か?聞こえる筈の無い声が聞こえた気がする。
「あ──…よっぽど疲れてるんだな、僕…」
『え、嘘、大丈夫?!』
今度こそはっきり聞こえた声に、リーマスは目を見開いて慌てて体を起こした。
『リーマス、大丈夫なの?』
「え、あ、だ、だ、大丈夫…」
『何かピーターみたいね?』
リーマスは麗の声のするオルゴールを手に取ると、ソファーに座り直した。
「あ──…えっと…麗?」
『何?』
「…えっと…シャントゥール?」
『どうしたの?』
「ディーヴァ?」
『ちょっと待ってなさい。今直ぐ行くから』
「何を…っ?!!」
リーマスが言葉の意味を問い掛け様とした瞬間、部屋が紅い光りに包まれた。
少しチカチカする目を擦って開けると、そこには着物を纏った麗が立っていた。
『久し振り、リーマス!』
リーマスは思わず落としそうになったオルゴールを慌てて持ち直した。
「久しぶり…」
麗はリーマスの隣に腰掛けると、額にそっと手を当てた。
『熱は無いわね…一応オルゴールが効いてる様ね』
「あの…何で」
『このオルゴール、非常用にパートキーにもなってるのよ』
“リーマスに何かあったら困るもの”と言って笑う麗を見て、リーマスは“そっか”と嬉しそうに笑った。
『ねぇ、そう言えば“ディーヴァ”って何?』
「雑誌見てないのかい?“世界のディーヴァ”って題名で麗の特集がくまれてから君はディーヴァって呼ばれてるんだ」
『あー…そういう事か」
「ジェームズが悔しがってたよ」
『ジェームズが?』
「“麗の仕掛人用の名前ディーヴァにしようと思ってたのに!!”って」
『ジェームズらしい』
麗は笑いながらリーマスの手を取ると、ベッドへ寝かせた。
『そろそろ時間よ』
リーマスは納得した様で、困った様に笑うと目を閉じた。人狼になる時が来た。
麗はベッドに腰掛けるとリーマスの手を握り直す。
『大丈夫…今日は私が謳うわ』
リーマスは麗の手を握り返すと消えそうな声で呟いた。
「麗、好きだよ」
『私も好きよ』
リーマスは困ったように苦笑すると麗を見据えた。
「違うよ麗、そうじゃない…愛してるの方だよ」
麗は目を見開き、硬直していたが、ゆっくりと口を開いた。
『駄目よ、リーマス』
「ダメ?無理じゃなくて?」
『私では駄目なのよ…』
「僕は麗が良いんだ」
『貴方には私なんかより貴方を想ってくれる人がいるわ』
リーマスは無意識に握っていた麗の手を堅く握り絞めた。
「…こんな身体の僕を理解する人がいるわけ無いよ」
麗はゆっくりと自分の手を握っているリーマスの手に自分のもう片方の手を乗せた。
『その子は貴方の為に悩んでくれるし、泣いてくれる…何より貴方を愛してくれるわ。少し遅くなってしまうけど…確かにその子はいるのよリーマス』
「麗だって悩んでくれたじゃないか…泣いてだってくれるだろ?」
『えぇ、確かにそうよ…貴方の為だったら笑うし、怒るし、悩むし、泣くし…それに命だって張るわ』
リーマスの言う通りだった。私は大切なモノの為ならば何でも出来る。
「なら」
『でもね、リーマス…私のそれはあの子の愛には勝てないもの。勝負するにも値しない…それくらい貴方に対するあの子の気持ちは強いのよ。私の愛ではあの子の本物の愛には勝てないわ』
リーマスは唯、麗の話を黙って聞いていた。
『だけどね、リーマス…私はその子以外に負けるつもりは無いわ。ジェームズ達は勿論、誰にも負けるつもりは無いわ。絶対に譲ったりしないもの』
麗の笑顔を見て、リーマスは微笑んだ…が、それは長くは続かなかった。
「ッ…ぐ、あ゙…」
『リーマス…』
狼化が始まった。
麗はリーマスの手を握ったまま、慌てて謳い出した。
私が薬学を深く学んだのは、この人を助ける為だ。
人狼でなくなり、完璧に人間に戻る薬を…
そんな夢の様なモノを…
私はこの人に託したい──…
「寝たか?」
『えぇ…』
麗はイアンと話しながら、ベッドに横たわり眠っている大きな狼の頭を優しく撫でた。
「…薬は出来そうか?」
『まだまだ時間は掛かるけど…順調に完成に近付いているわ。やはり、サブに基礎を教えてもらって正解だった』
「しかしアイツは」
『大丈夫よ』
麗はイアンの言葉を遮ると微笑んだ。
『まだ大丈夫』
此の世界は…
まだ修正可能なのよ──…