第2章 秘密ノ謳
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『えぇ、ですからお断りします』
そう言って麗は笑った。
一歩一歩前へ進みながら話し続ける麗の後ろには楓と七叉が控えていた。
『貴方に恨みがあろうと、今を生きているのはこの人達だから。いくら頼まれても見逃しはしないし、貴方の代わりに命を奪うこともしない。でもね、罪を犯したモノにはそれ相応の罰は降るものよ』
小さく口にする呪文が“それ”を包み、拘束する。
『だからね』
淡く光る“それ”は顔を歪めて涙を流した。
『眠りなさい』
=台帳=
『えぇ、ですからお断りします!』
受話器を片手にそう口にした麗は、鈴久 の差し出したグラスを受け取った。冷えたグラスの中で氷がカランと音を立てる。
「七叉様、楓様、どうぞ。お茶菓子もお召し上がりになって下さいな」
「あぁ」
「有難う、童」
どう見ても子供の七叉にそう言われ、鈴久は首を傾げながら微笑んだ。
『えぇ、でも私は向いてないもの。だから仮に試験を受けても入る気は無いのよ』
受話器の向こう側に断り続ける麗を見ながら、楓と七叉はお茶を口にした。
「麗も大変じゃな」
「えぇ…しかし賢明かと。これ以上仕事が増えても身体に障ります」
『小父様、また今度御話し致しましょう』
麗は“それでは”と言ってさっさと受話器を置いた。
「大丈夫ですか?」
『大丈夫よ、鈴久』
「麗様、除霊でお疲れでしょう?今日は泊まっていったらどうかしら?」
『まぁ、楽しそうね!でも今日は帰らないと…皆に泊まるなんて言ってないから心配するわ』
最近は皆、部屋に居たがるから余計に帰らないと大変な事になる。
「麗、ファッジは何と?」
『諦めてないわね…仕事を手伝わせたいみたい。最悪でも卒業後にね』
“手が足りてないのよ”と言って麗はお茶を口にした。
「仕事?ファッジという人は術者なのですか?」
『まぁ、そうかな?あの…簡単に言うと組合があるのよ』
そこで楓がブハッと小さく吹き出した。珍しい事もあるものだ。
「楓様?」
『あのね、鈴久。組合の決まりで…学生の間は仕事をしてはいけないのよ。でも色々な理由でそうもいかないから、通ってる学校の校長から組合に話を通して貰って私は仕事をしているの』
間違ってはいない。
仕事では術しか使わない予定だが、何が未成年の魔法使用に引っ掛かるか、そもそも術は全て引っ掛からないのか、私もアルバスもさっぱり分からなかったから先に許可を取った。それだけの話だ。そして少し言い換えただけだ。
「なるほど…それで許可を出している代わりに働けとでも?」
『まぁ、そうかしらね。強制ではないけど、将来的なスカウトをしたいんじゃないかしら』
「困ったものですね。ただでさえ麗様は忙しいのに」
「そうじゃ童、もっと言うてやれ」
クスクス笑う麗が手を出すと、鈴久は薬箱の一番下の棚の奥から台帳を出して麗に渡した。
「だいぶ依頼が増えました」
『色々な意味で他に言えないのよ』
新参者の私へ依頼してくるのは、偶然行き着いたか、他で断られた、他に話せないか、探りを入れたいか嫌がらせか。兎に角大抵はろくなものではないだろう。
麗は台帳をパラパラと捲りながら溜め息を吐いた。
『依頼順に片付けても良いけど…』
本人が書いたものなら術で辿れるが、これは電話を受けた鈴久達が書いたものだ。
「大丈夫ですよ、麗様」
『え?』
「キャンセルは基本的に料金を頂きます。冷やかしや偵察など悪質と受け取った場合は+α請求いたしますので悪しからず。主人は優秀ですので何かあれば簡単にバレますよ。って伝えてあるので、取り敢えず冷やかしはほぼ取り除けているかと」
「童はしっかりしておるな」
本当に。私もそう思う。
『では順番に片付けていこうか』
麗は台帳から二枚、頁を引き千切ると、鈴久に差し出した。
『次の週末で確認を』
「はい、麗様」
二枚の紙を受け取った鈴久は、ニッコリと笑うと台帳を棚に戻し、取っ手をとんとんと二度だけ叩いた。
『えぇ、ですからお断りします』
そう言って麗は笑った。
一歩一歩前へ進みながら話し続ける麗の後ろには楓と七叉が控えていた。
『貴方に恨みがあろうと、今を生きているのはこの人達だから。いくら頼まれても見逃しはしないし、貴方の代わりに命を奪うこともしない。でもね、罪を犯したモノにはそれ相応の罰は降るものよ』
小さく口にする呪文が“それ”を包み、拘束する。
『だからね』
淡く光る“それ”は顔を歪めて涙を流した。
『眠りなさい』
=台帳=
『えぇ、ですからお断りします!』
受話器を片手にそう口にした麗は、
「七叉様、楓様、どうぞ。お茶菓子もお召し上がりになって下さいな」
「あぁ」
「有難う、童」
どう見ても子供の七叉にそう言われ、鈴久は首を傾げながら微笑んだ。
『えぇ、でも私は向いてないもの。だから仮に試験を受けても入る気は無いのよ』
受話器の向こう側に断り続ける麗を見ながら、楓と七叉はお茶を口にした。
「麗も大変じゃな」
「えぇ…しかし賢明かと。これ以上仕事が増えても身体に障ります」
『小父様、また今度御話し致しましょう』
麗は“それでは”と言ってさっさと受話器を置いた。
「大丈夫ですか?」
『大丈夫よ、鈴久』
「麗様、除霊でお疲れでしょう?今日は泊まっていったらどうかしら?」
『まぁ、楽しそうね!でも今日は帰らないと…皆に泊まるなんて言ってないから心配するわ』
最近は皆、部屋に居たがるから余計に帰らないと大変な事になる。
「麗、ファッジは何と?」
『諦めてないわね…仕事を手伝わせたいみたい。最悪でも卒業後にね』
“手が足りてないのよ”と言って麗はお茶を口にした。
「仕事?ファッジという人は術者なのですか?」
『まぁ、そうかな?あの…簡単に言うと組合があるのよ』
そこで楓がブハッと小さく吹き出した。珍しい事もあるものだ。
「楓様?」
『あのね、鈴久。組合の決まりで…学生の間は仕事をしてはいけないのよ。でも色々な理由でそうもいかないから、通ってる学校の校長から組合に話を通して貰って私は仕事をしているの』
間違ってはいない。
仕事では術しか使わない予定だが、何が未成年の魔法使用に引っ掛かるか、そもそも術は全て引っ掛からないのか、私もアルバスもさっぱり分からなかったから先に許可を取った。それだけの話だ。そして少し言い換えただけだ。
「なるほど…それで許可を出している代わりに働けとでも?」
『まぁ、そうかしらね。強制ではないけど、将来的なスカウトをしたいんじゃないかしら』
「困ったものですね。ただでさえ麗様は忙しいのに」
「そうじゃ童、もっと言うてやれ」
クスクス笑う麗が手を出すと、鈴久は薬箱の一番下の棚の奥から台帳を出して麗に渡した。
「だいぶ依頼が増えました」
『色々な意味で他に言えないのよ』
新参者の私へ依頼してくるのは、偶然行き着いたか、他で断られた、他に話せないか、探りを入れたいか嫌がらせか。兎に角大抵はろくなものではないだろう。
麗は台帳をパラパラと捲りながら溜め息を吐いた。
『依頼順に片付けても良いけど…』
本人が書いたものなら術で辿れるが、これは電話を受けた鈴久達が書いたものだ。
「大丈夫ですよ、麗様」
『え?』
「キャンセルは基本的に料金を頂きます。冷やかしや偵察など悪質と受け取った場合は+α請求いたしますので悪しからず。主人は優秀ですので何かあれば簡単にバレますよ。って伝えてあるので、取り敢えず冷やかしはほぼ取り除けているかと」
「童はしっかりしておるな」
本当に。私もそう思う。
『では順番に片付けていこうか』
麗は台帳から二枚、頁を引き千切ると、鈴久に差し出した。
『次の週末で確認を』
「はい、麗様」
二枚の紙を受け取った鈴久は、ニッコリと笑うと台帳を棚に戻し、取っ手をとんとんと二度だけ叩いた。