第2章 秘密ノ謳
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「森にのぅ」
『そうなのニつばかし仕掛けをしたくて』
麗はティーカップを手にニッコリと笑った。
『森で魔法を…術を使いたいのよ』
「ふむ…」
『森に問題は無いと思うし、ホグワーツに掛かった魔法にも影響は無いと思うわ』
「見てても良いかの」
『えぇ、外からなら』
「ならここから拝見しようかのぅ」
来る日に為に…
隠しておくのも悪く無い。
これで最悪は避けられるだろう。
=森の隠し事=
日が傾きつつあるホグワーツの森を人とは違う…人の形を保っている何かが数体、歩いていた。
その中心にいる唯一人の人間、麗は自分の影から銀狼を二匹招き出した。
麗の足に纏わり付く様に歩き回る二匹を見た麗は、愛おしそうに微笑んだ。
『森中を隈無 くね』
麗がそう呟くと同時に、二匹の銀狼はそれぞれ違う方へ走り去った。
「麗、本当にやるね?まあ、我を含め、誰も反対しないと思うけども」
麗の後ろを歩いていた西煌が隣に並び、そう口にした。
『勿論。準備ももう出来てるわ』
麗は数十メートル先の地に書いてある魔法陣の様な陣に向かい歩き続ける。
『翡翠は北、凌は東、騎龍は西、椿は南、西煌は北西、紙園は南西、蒼は北東、桜華は南東にそれぞれ陣が書いてある、陣で待て…蒼と紙園はやり方を知らんだろうから陣に魔力を送るだけで良い』
「一体何をするつもりなんだ」
『簡単に言うと予防線を張るのよ。悪いけど人手が足りないから協力してね』
無理をする事は無い。
呼び寄せ、定着させるだけなのだから…
『では“散”』
麗がそう合図を出すと、各々が本来の姿に戻り指定された方角へと走り去った。
皆を見送った麗は、陣の中央へ立つと耳を済ませる。
瞬間、二つの声が麗の頭に響いた。
〔変ナノ二匹見付ケタ〕
〔変ナノ二匹〕
『二匹…?』
二匹の銀狼の声の中にあった“二匹”という言葉に麗は首を傾げた。
〔二匹歩イテタ〕
〔森歩イテタ〕
〔一匹、俺達ト似タ匂スル〕
〔ドウスル、ママ?〕
森の中を歩いていた二匹…似た匂いがする?
〔食ッテ良イ…?〕
〔食ッテ良イ…?〕
『連れて来なさい』
今の状態では相手が何か分から無い。
唯の獣なのか妖かしなのか…はたまた別のモノなのか…
〔分カッタ、連レテク〕
〔連レテク、ママノ所ニ〕
二匹の返事を聞いた麗は、懐から扇を取り出すとそれを口許へ当てた。
《南東、到着じゃ》
《北、翡翠着いたぜ、麗》
《麗~南、着いたよ~》
《東、凌着きました麗様》
《北西、西煌着いたね》
《北東着いたぞ》
《南西、紙園…着いた》
持ち場に着いた者が次々と麗に報告する中、少し遅れて騎龍の声が響いた。
《西、着いたぜ、麗》
《遅ぇよ、蛇》
《馬ー鹿、良く考えて喋れ》
確かに獣の翡翠より騎龍が遅れるのは当たり前だ。
麗は“喧嘩をするな”と二人を戒めると、口に当てていた扇を開いた。
パンッと開かれた扇から青い蝶の様な光が飛ぶ。
『始める』
麗が合図をすると全員が呪文を唱え始め、術を知らない蒼と紙園は陣に魔力を送り始める。
陣が蒼白い光を放ち、各々を包み込んだ。
『“さあ、我が…────よ…”』
麗は目を瞑り腕を広げると謳い出した。
風が麗の周りに集まり、麗を包む様に吹き荒れる。
風が撫でた近くの湖の水面には波紋が広がった。
詩が…
森中に響き渡る──…
そんな術は五分足らずで終った。終わらせた。
一気に陣に魔力を注ぎ、早く終らせた方が皆の疲労が少ないからだ。
私が体調を崩すことも無い。
『“御疲れ、皆…”』
麗は薄く微笑むと陣の中央に座り込み“二匹”を待った。陣の中に座っていれば、こうして休んでる間に溢れた力も無駄にする事は無い。
暫くすると森の中から銀狼が一匹、麗に向かって駆けて来て、麗の頬や身体に擦り寄った。
「主、連レテキタ!変ナノ二匹連レテキタ!」
嬉しそうに微笑んだ麗は、擦り寄ってくる銀狼の頭を優しく撫でてやった。
『御疲れ様』
「オ前、狡イ!!ママ、俺モ撫デテ!!」
声のした方を見るともう一匹の銀狼が鳶色の髪の少年の服の裾を噛んで“早くしろとばかりに”引っ張っていた。
少年の後ろからは黒髪の少年が顔を出した。
『リーマス、シリウス!!』
「「麗!」」
リーマスの服を噛んでいた銀狼はリーマスを離すと麗に走り寄り、もう一匹の銀狼の様に麗に擦り寄った。
「ママ、俺モ撫デテ!」
『はい、はい…見て来てくれて有難う、二人共』
麗はクスクス笑いながら、銀狼の頭を撫でてやる。
「ママ、ママ!アイツ等森歩イテタ変ナノ二匹!」
「俺達チャント連レテキタ」
「食ベテ良イ?」
「食ベテ良イ?」
麗は首を傾げる二匹を再度優しく撫でてやり、一度抱き締めるとゆっくりと立ち上がった。
『御疲れ様。でも食べちゃ駄目よ?』
「…分カッタ、食ベナイ」
「分カッタ…我慢スル」
狼が喋る事に驚いていたリーマスとシリウスは、気になる単語に思わず口を開いた。
「「食べ…?」」
『この子達、貴方達を食べようとしてたのよ』
麗は銀狼に視線を戻すと優しく微笑む。
『他に異常は無かった…?』
「無カッタ」
「怪シイノ、アイツ等ダケ」
「他ハ異常無イ」
「チャント森中見テキタ」
「後捜シタケド見付カラナカッタ」
「アレ見付カラナイ」
麗は二匹に視線を合わせると“そうか”と呟いた。
『分かった、有難う二人共』
「ママ、マタ遊ボウ?」
「遊ブ、遊ブ!!」
『えぇ、遊びましょうね』
麗が銀狼の頭を優しく撫でると、二匹は麗の影に沈む様にして消え去り、シリウスとリーマスは唯、目を見開いてそれを見ていた。
『で、二人は何をしてたの?』
二人は少しの間黙っていたが、リーマスがニッコリ微笑むと口を開いた。
「別に何もしてないよ」
『何もしてないの?周りをキョロキョロ見渡したりもしなかった?』
何も返事を返さない二人を見、麗は続ける。
『したのね?挙動不審だからあの子達に怪しまれたのよ…私が呼んだのが砕覇だったら今頃二人は仲良く狼の御腹の中よ?』
「砕覇…?」
二人には聞いた事が無い名前だった。
『あの子達…狼達を纏めている大狼よ。翡翠とまではいかないけど…あれ位大きいの』
「あ…それは…食べられそう」
『何をしてたかは知ら無いけど…もう、森の中で余りキョロキョロし無い事ね。動物達に警戒されるわ』
本当は麗を捜してた。
リーマスと話をしていたら、森に入る麗を見掛けた。その様子を可笑しく思って、後をつけたら翡翠や蒼達と合流して更に森の中に入って行った。
麗達は話に集中していたし、俺達が遠過ぎて気付かなかったみたいだが…騎龍は絶対気付いていたと思う。
アイツはこっちを見て馬鹿にしたように笑ったから。
その後も後をつけたが、途中で見失ってしまい、取敢えず周りを見渡しながら歩いていたら変な男に会った。
俺達を完全に無視した男は羽織ったローブを更に深く被ると、ブツブツと何かを呟きながら去って行った。
その後銀の狼が二匹現れ、リーマスの服の裾を咥えると誘導する様引っ張って行った。
『シリウス?』
「……何でもない」
狼達は怪しい者はいなかったと言った。
と言う事はアイツは直ぐにアイツらが感知できない所まで行ったと言う事だ。
あのローブの男は一体──…
「森にのぅ」
『そうなのニつばかし仕掛けをしたくて』
麗はティーカップを手にニッコリと笑った。
『森で魔法を…術を使いたいのよ』
「ふむ…」
『森に問題は無いと思うし、ホグワーツに掛かった魔法にも影響は無いと思うわ』
「見てても良いかの」
『えぇ、外からなら』
「ならここから拝見しようかのぅ」
来る日に為に…
隠しておくのも悪く無い。
これで最悪は避けられるだろう。
=森の隠し事=
日が傾きつつあるホグワーツの森を人とは違う…人の形を保っている何かが数体、歩いていた。
その中心にいる唯一人の人間、麗は自分の影から銀狼を二匹招き出した。
麗の足に纏わり付く様に歩き回る二匹を見た麗は、愛おしそうに微笑んだ。
『森中を
麗がそう呟くと同時に、二匹の銀狼はそれぞれ違う方へ走り去った。
「麗、本当にやるね?まあ、我を含め、誰も反対しないと思うけども」
麗の後ろを歩いていた西煌が隣に並び、そう口にした。
『勿論。準備ももう出来てるわ』
麗は数十メートル先の地に書いてある魔法陣の様な陣に向かい歩き続ける。
『翡翠は北、凌は東、騎龍は西、椿は南、西煌は北西、紙園は南西、蒼は北東、桜華は南東にそれぞれ陣が書いてある、陣で待て…蒼と紙園はやり方を知らんだろうから陣に魔力を送るだけで良い』
「一体何をするつもりなんだ」
『簡単に言うと予防線を張るのよ。悪いけど人手が足りないから協力してね』
無理をする事は無い。
呼び寄せ、定着させるだけなのだから…
『では“散”』
麗がそう合図を出すと、各々が本来の姿に戻り指定された方角へと走り去った。
皆を見送った麗は、陣の中央へ立つと耳を済ませる。
瞬間、二つの声が麗の頭に響いた。
〔変ナノ二匹見付ケタ〕
〔変ナノ二匹〕
『二匹…?』
二匹の銀狼の声の中にあった“二匹”という言葉に麗は首を傾げた。
〔二匹歩イテタ〕
〔森歩イテタ〕
〔一匹、俺達ト似タ匂スル〕
〔ドウスル、ママ?〕
森の中を歩いていた二匹…似た匂いがする?
〔食ッテ良イ…?〕
〔食ッテ良イ…?〕
『連れて来なさい』
今の状態では相手が何か分から無い。
唯の獣なのか妖かしなのか…はたまた別のモノなのか…
〔分カッタ、連レテク〕
〔連レテク、ママノ所ニ〕
二匹の返事を聞いた麗は、懐から扇を取り出すとそれを口許へ当てた。
《南東、到着じゃ》
《北、翡翠着いたぜ、麗》
《麗~南、着いたよ~》
《東、凌着きました麗様》
《北西、西煌着いたね》
《北東着いたぞ》
《南西、紙園…着いた》
持ち場に着いた者が次々と麗に報告する中、少し遅れて騎龍の声が響いた。
《西、着いたぜ、麗》
《遅ぇよ、蛇》
《馬ー鹿、良く考えて喋れ》
確かに獣の翡翠より騎龍が遅れるのは当たり前だ。
麗は“喧嘩をするな”と二人を戒めると、口に当てていた扇を開いた。
パンッと開かれた扇から青い蝶の様な光が飛ぶ。
『始める』
麗が合図をすると全員が呪文を唱え始め、術を知らない蒼と紙園は陣に魔力を送り始める。
陣が蒼白い光を放ち、各々を包み込んだ。
『“さあ、我が…────よ…”』
麗は目を瞑り腕を広げると謳い出した。
風が麗の周りに集まり、麗を包む様に吹き荒れる。
風が撫でた近くの湖の水面には波紋が広がった。
詩が…
森中に響き渡る──…
そんな術は五分足らずで終った。終わらせた。
一気に陣に魔力を注ぎ、早く終らせた方が皆の疲労が少ないからだ。
私が体調を崩すことも無い。
『“御疲れ、皆…”』
麗は薄く微笑むと陣の中央に座り込み“二匹”を待った。陣の中に座っていれば、こうして休んでる間に溢れた力も無駄にする事は無い。
暫くすると森の中から銀狼が一匹、麗に向かって駆けて来て、麗の頬や身体に擦り寄った。
「主、連レテキタ!変ナノ二匹連レテキタ!」
嬉しそうに微笑んだ麗は、擦り寄ってくる銀狼の頭を優しく撫でてやった。
『御疲れ様』
「オ前、狡イ!!ママ、俺モ撫デテ!!」
声のした方を見るともう一匹の銀狼が鳶色の髪の少年の服の裾を噛んで“早くしろとばかりに”引っ張っていた。
少年の後ろからは黒髪の少年が顔を出した。
『リーマス、シリウス!!』
「「麗!」」
リーマスの服を噛んでいた銀狼はリーマスを離すと麗に走り寄り、もう一匹の銀狼の様に麗に擦り寄った。
「ママ、俺モ撫デテ!」
『はい、はい…見て来てくれて有難う、二人共』
麗はクスクス笑いながら、銀狼の頭を撫でてやる。
「ママ、ママ!アイツ等森歩イテタ変ナノ二匹!」
「俺達チャント連レテキタ」
「食ベテ良イ?」
「食ベテ良イ?」
麗は首を傾げる二匹を再度優しく撫でてやり、一度抱き締めるとゆっくりと立ち上がった。
『御疲れ様。でも食べちゃ駄目よ?』
「…分カッタ、食ベナイ」
「分カッタ…我慢スル」
狼が喋る事に驚いていたリーマスとシリウスは、気になる単語に思わず口を開いた。
「「食べ…?」」
『この子達、貴方達を食べようとしてたのよ』
麗は銀狼に視線を戻すと優しく微笑む。
『他に異常は無かった…?』
「無カッタ」
「怪シイノ、アイツ等ダケ」
「他ハ異常無イ」
「チャント森中見テキタ」
「後捜シタケド見付カラナカッタ」
「アレ見付カラナイ」
麗は二匹に視線を合わせると“そうか”と呟いた。
『分かった、有難う二人共』
「ママ、マタ遊ボウ?」
「遊ブ、遊ブ!!」
『えぇ、遊びましょうね』
麗が銀狼の頭を優しく撫でると、二匹は麗の影に沈む様にして消え去り、シリウスとリーマスは唯、目を見開いてそれを見ていた。
『で、二人は何をしてたの?』
二人は少しの間黙っていたが、リーマスがニッコリ微笑むと口を開いた。
「別に何もしてないよ」
『何もしてないの?周りをキョロキョロ見渡したりもしなかった?』
何も返事を返さない二人を見、麗は続ける。
『したのね?挙動不審だからあの子達に怪しまれたのよ…私が呼んだのが砕覇だったら今頃二人は仲良く狼の御腹の中よ?』
「砕覇…?」
二人には聞いた事が無い名前だった。
『あの子達…狼達を纏めている大狼よ。翡翠とまではいかないけど…あれ位大きいの』
「あ…それは…食べられそう」
『何をしてたかは知ら無いけど…もう、森の中で余りキョロキョロし無い事ね。動物達に警戒されるわ』
本当は麗を捜してた。
リーマスと話をしていたら、森に入る麗を見掛けた。その様子を可笑しく思って、後をつけたら翡翠や蒼達と合流して更に森の中に入って行った。
麗達は話に集中していたし、俺達が遠過ぎて気付かなかったみたいだが…騎龍は絶対気付いていたと思う。
アイツはこっちを見て馬鹿にしたように笑ったから。
その後も後をつけたが、途中で見失ってしまい、取敢えず周りを見渡しながら歩いていたら変な男に会った。
俺達を完全に無視した男は羽織ったローブを更に深く被ると、ブツブツと何かを呟きながら去って行った。
その後銀の狼が二匹現れ、リーマスの服の裾を咥えると誘導する様引っ張って行った。
『シリウス?』
「……何でもない」
狼達は怪しい者はいなかったと言った。
と言う事はアイツは直ぐにアイツらが感知できない所まで行ったと言う事だ。
あのローブの男は一体──…