第2章 秘密ノ謳
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
42
頰を包まれ、ボロボロ零れ落ちる涙を指の腹で拭われた。
優しく抱き締められて静かに紡がれる言葉に、耳を傾け、身を任せた。
=希望=
広い、広い、大広間の高い天井から絶える事無く淡い色合いの桜の花が舞降りてくる。
そんな大広間に皆が制服でいる中、一人着物を着た生徒がグリフィンドール席に一人…勿論、麗だ。
花見に行けなかったアルバスの提案で、今日の夕飯は宴だった。幻術で出来た桜の花びらが舞い散る大広間で、日本の料理やお菓子を囲む。
そんな中、麗は舞う様に頼まれてそれを引き受けた。
「凄く綺麗だったわ、麗!」
「何言ってるんだ、ハニー!麗はいつも綺麗じゃないか!」
「黙れジェームズ」
「本当に最近君は僕に厳しいね?!そんな君も素敵だよ、ハニー!」
「黙れ」
「で、でも本当に綺麗だった!僕、び、びっくりしちゃった!」
「ん、この餅っての美味いな!変な食感だけど」
「やーねー、これだから男は」
「あ?んだよ、シーラ」
「うちの妹がこ〜んなに可愛いのに餅だなんて!」
「でもこれ美味しいわよ〜」
「んな事は知ってんのよ!」
呆れた様に溜め息を吐いた翡翠は、隣に座った麗に寄り掛かかる様に身体を倒した。
「いつもの事だが騒がしい奴等だなか」
『ふふ、賑やかで良いじゃない』
笑った麗は“お団子美味しいわ”と言って餡ころ餅を口に運んだ。
「お前、踊らされたのにご機嫌だな」
『久し振りの和菓子美味しいわ』
こちらに来て日本食を作る事は何度もあったが、和菓子を使った事は無かった。作るという考えにも当たらなかった。
「お前餅好きだもんな」
『うん、それもあるけどね』
麗は続けてずんだを口に運ぶと、美味しそうにふにゃっと笑った。
「はい、麗」
湯呑みを差し出され、受け取った麗は、お茶を一口飲んだ。
『有難う、リーマス』
「幸せそうな麗を見てる方が楽しいからねぇ」
『え?そんな変な顔してた?』
「全然。凄く可愛いよ」
リーマスは本当に恥ずかしい事をさらっと言う。麗は“有難う”とだけ口にすると、もう一口お茶を飲んだ。
「ねぇ、麗。アンタのその髪どうなってるの?」
『簪で止めてあるだけよ?』
「かんざし?その髪飾り?」
『そうよ、付けてみる?』
「えぇ、やって頂戴」
リザにそう言われて立ち上がろうとすると、翡翠は長椅子を超えて立ち上がり、麗を抱き上げて立たせた。
『有難う、翡翠』
リザの後ろに回って髪を纏めると、袖の中に手を隠し、術で手元に簪を出す。そして刺した。
綺麗に結い上げられた髪にそっと触れてリザはふふっと嬉しそうに笑った。
「麗!私も!!」
「あ、私もね」
『え、シーラとリリーも?』
シーラはツインテールが可愛いし似合ってるからそれを崩さない様に。リリーはリザと同じ様に結い上げた。
「その袖どんだけ簪入ってるの〜?」
『もう無いわよ』
もう術で出したのを誤魔化すのも限界だ。やって欲しいと言う子もいるけどこれにて終了。
「えー、俺もやって欲しかったのに」
『貴方は別の物で出来るわ、シリウス』
シリウスの少し長い髪を飾り紐で纏めて結う中、周りの子に“いいな〜”と言われて“私は麗の姉だもの”と自慢しているシーラを抑えて大人しく座らせる。
『姉様、あまり自慢すると姉様の分を他の子に回しますよ』
「大人しくしてるわ」
「ふふん、これだから中身までお子ちゃまなちびっ子は」
「はぁ?黙れ貧乳!!」
「何よ、牛」
『二人共本当に止めて』
溜め息を吐いた麗が顔を上げると、丁度こちらに向かって手を振っているラバスタンと目が合った。
『私ちょっと…』
そう言った麗がスリザリンの席に向かおうと踏み出した瞬間、シリウスは麗の腕を掴み、無理矢理自分の隣に座らせた。
『何…?』
「ここに居ろ」
『でも…』
ちらちらとスリザリンの席を見る麗を見て、シリウスは溜め息を吐くと麗の手を握った。
「俺と居るのは嫌か?」
『嫌じゃ無いけど…』
「じゃあ、ここに居ろ」
『うん…』
バッチリ目が合ってしまったのでラバスタンには悪いとは思ったが、何故か嫌だとは言え無かった。席を立つのは少し様子を見てからでも良いかな。
『ねぇ、シリウス…』
麗は手を繋いでいない方の手で杖を持つと、魔法でお茶と和菓子を引き寄せた。
「何だ」
麗は顔を上げるとシリウスに向かってニッコリと微笑みかけた。
『来年も一緒に居れると良いね』
シリウスは仄かに頬を赤く染めると、お茶を一口口にした。
「絶対…一緒に居てやる」
『有難う』
暫くシリウスの隣に座って皆と話をしていた麗は、痺れを切らしたラバスタンに連れられスリザリンの席へ行ったりして宴を楽しんだ。
お開きの時間になると“校長室で着替えるから”と嘘を吐いて皆を大広間で見送った。
沢山居た生徒と先生達が居なくなったのを確認して大広間から出る。そして真っ直ぐに八階へ向かうと必要な部屋の前に立った。
現れた扉を押し開くと、一台のピアノと小さな窓のある部屋がそこにはあった。
「麗」
そう呼ばれて麗が振り返ると、楓が立っていた。
『御免なさい、頼み事しておいて直ぐに応えられないなんて』
「仕方無い、宴だったんだろう?」
『……どうだった』
「駄目だった」
そう一言だけ言われて、麗は表情を歪めた。
「一年掛けて国中のあらゆる所を巡ったが、先代達は見付からなかった」
『…そう』
「ここはまるで違う世界だ」
『…そう…』
「過去でも未来でも無い。俺たちの世界と同じ人間も…怪異も存在しない」
『そう…』
「麗…」
『じゃあ、元の世界に戻らないと皆に会えないのね』
「…そうなるな」
『じゃあ…』
頰を包まれ、顔を上げさせられる。ボロボロ零れ落ちる涙を指の腹で拭われた。
『もう、父様と母様には会えないのね』
「遺体は桜華達が供養したと言っていた。この世界は全くの別物だ…幼い先代も年老いた先代も別次元の先代も居ない」
優しく抱き締められて静かに紡がれる言葉に、耳を傾け、身を任せた。
「俺達が居る」
『…うん』
「家族が沢山居る」
『…うん』
「何があろうともお前の家族がお前をあの世界に帰すよ」
だから先代達だけは…
諦めるんだ──…
頰を包まれ、ボロボロ零れ落ちる涙を指の腹で拭われた。
優しく抱き締められて静かに紡がれる言葉に、耳を傾け、身を任せた。
=希望=
広い、広い、大広間の高い天井から絶える事無く淡い色合いの桜の花が舞降りてくる。
そんな大広間に皆が制服でいる中、一人着物を着た生徒がグリフィンドール席に一人…勿論、麗だ。
花見に行けなかったアルバスの提案で、今日の夕飯は宴だった。幻術で出来た桜の花びらが舞い散る大広間で、日本の料理やお菓子を囲む。
そんな中、麗は舞う様に頼まれてそれを引き受けた。
「凄く綺麗だったわ、麗!」
「何言ってるんだ、ハニー!麗はいつも綺麗じゃないか!」
「黙れジェームズ」
「本当に最近君は僕に厳しいね?!そんな君も素敵だよ、ハニー!」
「黙れ」
「で、でも本当に綺麗だった!僕、び、びっくりしちゃった!」
「ん、この餅っての美味いな!変な食感だけど」
「やーねー、これだから男は」
「あ?んだよ、シーラ」
「うちの妹がこ〜んなに可愛いのに餅だなんて!」
「でもこれ美味しいわよ〜」
「んな事は知ってんのよ!」
呆れた様に溜め息を吐いた翡翠は、隣に座った麗に寄り掛かかる様に身体を倒した。
「いつもの事だが騒がしい奴等だなか」
『ふふ、賑やかで良いじゃない』
笑った麗は“お団子美味しいわ”と言って餡ころ餅を口に運んだ。
「お前、踊らされたのにご機嫌だな」
『久し振りの和菓子美味しいわ』
こちらに来て日本食を作る事は何度もあったが、和菓子を使った事は無かった。作るという考えにも当たらなかった。
「お前餅好きだもんな」
『うん、それもあるけどね』
麗は続けてずんだを口に運ぶと、美味しそうにふにゃっと笑った。
「はい、麗」
湯呑みを差し出され、受け取った麗は、お茶を一口飲んだ。
『有難う、リーマス』
「幸せそうな麗を見てる方が楽しいからねぇ」
『え?そんな変な顔してた?』
「全然。凄く可愛いよ」
リーマスは本当に恥ずかしい事をさらっと言う。麗は“有難う”とだけ口にすると、もう一口お茶を飲んだ。
「ねぇ、麗。アンタのその髪どうなってるの?」
『簪で止めてあるだけよ?』
「かんざし?その髪飾り?」
『そうよ、付けてみる?』
「えぇ、やって頂戴」
リザにそう言われて立ち上がろうとすると、翡翠は長椅子を超えて立ち上がり、麗を抱き上げて立たせた。
『有難う、翡翠』
リザの後ろに回って髪を纏めると、袖の中に手を隠し、術で手元に簪を出す。そして刺した。
綺麗に結い上げられた髪にそっと触れてリザはふふっと嬉しそうに笑った。
「麗!私も!!」
「あ、私もね」
『え、シーラとリリーも?』
シーラはツインテールが可愛いし似合ってるからそれを崩さない様に。リリーはリザと同じ様に結い上げた。
「その袖どんだけ簪入ってるの〜?」
『もう無いわよ』
もう術で出したのを誤魔化すのも限界だ。やって欲しいと言う子もいるけどこれにて終了。
「えー、俺もやって欲しかったのに」
『貴方は別の物で出来るわ、シリウス』
シリウスの少し長い髪を飾り紐で纏めて結う中、周りの子に“いいな〜”と言われて“私は麗の姉だもの”と自慢しているシーラを抑えて大人しく座らせる。
『姉様、あまり自慢すると姉様の分を他の子に回しますよ』
「大人しくしてるわ」
「ふふん、これだから中身までお子ちゃまなちびっ子は」
「はぁ?黙れ貧乳!!」
「何よ、牛」
『二人共本当に止めて』
溜め息を吐いた麗が顔を上げると、丁度こちらに向かって手を振っているラバスタンと目が合った。
『私ちょっと…』
そう言った麗がスリザリンの席に向かおうと踏み出した瞬間、シリウスは麗の腕を掴み、無理矢理自分の隣に座らせた。
『何…?』
「ここに居ろ」
『でも…』
ちらちらとスリザリンの席を見る麗を見て、シリウスは溜め息を吐くと麗の手を握った。
「俺と居るのは嫌か?」
『嫌じゃ無いけど…』
「じゃあ、ここに居ろ」
『うん…』
バッチリ目が合ってしまったのでラバスタンには悪いとは思ったが、何故か嫌だとは言え無かった。席を立つのは少し様子を見てからでも良いかな。
『ねぇ、シリウス…』
麗は手を繋いでいない方の手で杖を持つと、魔法でお茶と和菓子を引き寄せた。
「何だ」
麗は顔を上げるとシリウスに向かってニッコリと微笑みかけた。
『来年も一緒に居れると良いね』
シリウスは仄かに頬を赤く染めると、お茶を一口口にした。
「絶対…一緒に居てやる」
『有難う』
暫くシリウスの隣に座って皆と話をしていた麗は、痺れを切らしたラバスタンに連れられスリザリンの席へ行ったりして宴を楽しんだ。
お開きの時間になると“校長室で着替えるから”と嘘を吐いて皆を大広間で見送った。
沢山居た生徒と先生達が居なくなったのを確認して大広間から出る。そして真っ直ぐに八階へ向かうと必要な部屋の前に立った。
現れた扉を押し開くと、一台のピアノと小さな窓のある部屋がそこにはあった。
「麗」
そう呼ばれて麗が振り返ると、楓が立っていた。
『御免なさい、頼み事しておいて直ぐに応えられないなんて』
「仕方無い、宴だったんだろう?」
『……どうだった』
「駄目だった」
そう一言だけ言われて、麗は表情を歪めた。
「一年掛けて国中のあらゆる所を巡ったが、先代達は見付からなかった」
『…そう』
「ここはまるで違う世界だ」
『…そう…』
「過去でも未来でも無い。俺たちの世界と同じ人間も…怪異も存在しない」
『そう…』
「麗…」
『じゃあ、元の世界に戻らないと皆に会えないのね』
「…そうなるな」
『じゃあ…』
頰を包まれ、顔を上げさせられる。ボロボロ零れ落ちる涙を指の腹で拭われた。
『もう、父様と母様には会えないのね』
「遺体は桜華達が供養したと言っていた。この世界は全くの別物だ…幼い先代も年老いた先代も別次元の先代も居ない」
優しく抱き締められて静かに紡がれる言葉に、耳を傾け、身を任せた。
「俺達が居る」
『…うん』
「家族が沢山居る」
『…うん』
「何があろうともお前の家族がお前をあの世界に帰すよ」
だから先代達だけは…
諦めるんだ──…