第2章 秘密ノ謳
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「もうやだ寂しい、死んじゃう」
「悲しんでも麗が苦しむだけだぞ」
「それは嫌」
「ならば呼ばれるまで眠るが良い。出れぬのには理由があるのだ」
「レイだけ…?」
「我が花嫁が我を呼ばぬのは腹立たしいが…それにも理由があるのだろう。我も待つよ」
「じゃあ…我慢する。レイ寝てるよ」
=魔具=
その夜、ホグワーツには麗の詩が響き渡っていた。
防音の為に張った結界は疾うに破れていたが、麗は全く気付かずに謳い続け、蒼はその詩が生徒に聴こえない様に詩の漏れを最小限に抑え続けた。
翡翠と揉めた事により、麗は魔具を造り直す事を決め、次の日の夜から実行していた。
家族に心配を掛け無い為に…
そして今日は謳い始めて二日目の夜…そろそろ終わっても良い頃だった。
麗の力は以前造った時と比べ、かなり上がっている。麻痺が和らぎ、新しい能力が体に馴染んでコントロール出来る様になったのだろう。
瞬間、麗が膝を折って倒れた。
蒼は慌てて駆け寄ると、麗を優しく抱き起こした。
「麗、大丈夫か?!」
蒼がそう声を掛けるが、麗は全く反応しない。
目は開いているが焦点が合っていなく、まるで等身大の精巧人形の様だった。
「麗!!」
蒼は麗を片腕で支えると、もう片方の手で魔法を使おうとする。が…魔法をかけようとした瞬間、別の声が部屋に響いた。
「放っておけ」
声に反応して振り返ると、部屋の一番奥の窓の窓枠に騎龍が座っていた。
全く気配が無く、力の差を見せつけられた気がした。
「…どういう意味だ」
主を放っておけとは何事か…
「麗は今、そいつと同調してる…一体化しようとしてるんだ…ククッ、翡翠がキレそうだな」
騎龍は愉快そうにケラケラ笑うと窓枠から降り、部屋の扉へと向かって歩いて行った。
「残ら無いのか?」
麗を自分のモノだと言い、大切にしているのにこの状態で置いて行くというのだろうか?
「麗は強いからな…それくらいじゃ死なねぇし、寿命が縮む事もねぇ。これ位で心配してたら切りがねぇぞ、小僧。
それに今更厄介なのが増えてもあんま変わんねぇからな…麗は俺様のだ。
何もかも…真に麗と同調 してるのも俺様だ。それだけハッキリしてりゃあ充分なんだよ、分かったか、小僧?」
そう自身たっぷりに話した騎龍は蒼に近寄り屈むと、人形状態の麗の額にキスを落とした。
「頑張れよ、麗…」
騎龍は“後は頼んだぞ、小僧”と言い残すと部屋を出て行った。
麗…
皆がついてる……頑張れよ…
麗──…
誰…?
小さく響いた…あの声は誰だろう?
そう思いながら閉じた目を開くと、辺りは暗闇だった。
永遠の闇の中にあるのは…
本?
黒の表紙の本が最上段が見えないほど高く終わりが見えないほど長い漆黒の本棚にズラリと並び、溢れた本が漆黒の床に転がったり山積みにされたりしている。
ここはまるで…
『世界の境みたい…』
そうだ。此の空間はイアンと初めて会ったあの空間と同じ造りなんだ…違うのは大量の鏡が彼方此方に転がったり、本棚に掛ったりしている事だけだ。
何故だろう…何だか…
『落ち着く…』
「落ち着くのは当たり前だ」
誰も居ないだろうと油断していた麗は慌てて後ろを振り返った。
気配などまるで無かったのに…
「麗」
麗が振り返った先には一人の青年がいた。
長い黒髪に褐色の肌…切れ長の目に銀色の瞳がとても綺麗だった。
青年はイアンにどこか似ていた。
『だ…れ……?』
青年は微笑むと麗に歩み寄り、優しく麗を抱き締めた。
「やっと会えた」
『やっと…?誰?』
麗がそう問い掛けると、青年は麗を離した。
「此の空間は…そして我はお前に造られた」
『私に…?』
ゆっくりと頷いた青年を見て、麗は首を傾げた。
麗にはこの青年を造った覚えが無かった。
「我の名は月影…お前の魔具の本体だ。覚えが無いと思うがお前が造った」
『私…が…?』
この青年が聖珠の化身…?
考えられぬ事では無い。けど…
「名は月影…お前の力の結晶、お前の護宝石、聖珠。我はお前の一部だ」
『私の…一部』
月影は再度麗を抱き締めると、その耳に唇を寄せた。
「我はお前と共に在り…我は全ての術からお前を護る」
元から暗い辺りが更に暗くなり、唯一見えていた本棚も鏡も闇に溶けて見えなくなった。そして徐々に抱き締められている感覚がなくなる。
『月影…』
「麗…」
何時の間にか閉じていた目を開けると、そこには蒼がいた。
心配そうな顔で私の顔を覗き込んでいる。
『蒼…』
麗は蒼に抱えられる様に横たわっていた身体を起こすと、辺りを見回した。
普段と変わらない自分の部屋だ。
夢…だったのかな…?
そう思いながら首に違和感を感じた麗は、そっと首に手をやった。
手に冷たい感覚を覚えた。
「麗、大丈夫か?」
蒼は確認する様に麗の空いている方の手をそっと握った。
『…蒼』
「何だ?」
麗は伏せていた顔を上げると嬉しそうに微笑んだ。
『完成だ』
麗の首に付いた漆黒の首輪の様なチョーカーが月明かりに照らされ光っていた。
『夢じゃ無かったの!!』
ニコニコと嬉しそうに笑いながら話す麗と不機嫌そうに聞くイアン。不思議な空気が流れていた。
『イアンも月影に会ってみると良いわ』
溜め息を吐いたイアンは、麗に歩み寄ると、そっとチョーカーに触れた。
チョーカーは麗の首に綺麗に嵌っている。
「外れないな…」
『そう、外せなくて…首輪見たいでしょ?』
びくともしなかった。外す金具も付いていないし、外れる様子も無い。
イアンは不機嫌そうに舌打ちをすると、麗の首輪掴む様に手を回した。
「硬い…かなり硬度があるな。それに元々の役割の他に障壁の役割も果たしてる」
『あら、良く分かったわね』
「…形はどうであれ良く出来てるだろ」
イアンがそう言うと麗は唯嬉しそうに微笑んだ。
『有難う』
これでこの身体でも向かい打てる。
ヴォルデモートだろうが、アレンを襲ったものだろうが、何だろうが…
纏めて相手してやる──…
「もうやだ寂しい、死んじゃう」
「悲しんでも麗が苦しむだけだぞ」
「それは嫌」
「ならば呼ばれるまで眠るが良い。出れぬのには理由があるのだ」
「レイだけ…?」
「我が花嫁が我を呼ばぬのは腹立たしいが…それにも理由があるのだろう。我も待つよ」
「じゃあ…我慢する。レイ寝てるよ」
=魔具=
その夜、ホグワーツには麗の詩が響き渡っていた。
防音の為に張った結界は疾うに破れていたが、麗は全く気付かずに謳い続け、蒼はその詩が生徒に聴こえない様に詩の漏れを最小限に抑え続けた。
翡翠と揉めた事により、麗は魔具を造り直す事を決め、次の日の夜から実行していた。
家族に心配を掛け無い為に…
そして今日は謳い始めて二日目の夜…そろそろ終わっても良い頃だった。
麗の力は以前造った時と比べ、かなり上がっている。麻痺が和らぎ、新しい能力が体に馴染んでコントロール出来る様になったのだろう。
瞬間、麗が膝を折って倒れた。
蒼は慌てて駆け寄ると、麗を優しく抱き起こした。
「麗、大丈夫か?!」
蒼がそう声を掛けるが、麗は全く反応しない。
目は開いているが焦点が合っていなく、まるで等身大の精巧人形の様だった。
「麗!!」
蒼は麗を片腕で支えると、もう片方の手で魔法を使おうとする。が…魔法をかけようとした瞬間、別の声が部屋に響いた。
「放っておけ」
声に反応して振り返ると、部屋の一番奥の窓の窓枠に騎龍が座っていた。
全く気配が無く、力の差を見せつけられた気がした。
「…どういう意味だ」
主を放っておけとは何事か…
「麗は今、そいつと同調してる…一体化しようとしてるんだ…ククッ、翡翠がキレそうだな」
騎龍は愉快そうにケラケラ笑うと窓枠から降り、部屋の扉へと向かって歩いて行った。
「残ら無いのか?」
麗を自分のモノだと言い、大切にしているのにこの状態で置いて行くというのだろうか?
「麗は強いからな…それくらいじゃ死なねぇし、寿命が縮む事もねぇ。これ位で心配してたら切りがねぇぞ、小僧。
それに今更厄介なのが増えてもあんま変わんねぇからな…麗は俺様のだ。
何もかも…真に麗と
そう自身たっぷりに話した騎龍は蒼に近寄り屈むと、人形状態の麗の額にキスを落とした。
「頑張れよ、麗…」
騎龍は“後は頼んだぞ、小僧”と言い残すと部屋を出て行った。
麗…
皆がついてる……頑張れよ…
麗──…
誰…?
小さく響いた…あの声は誰だろう?
そう思いながら閉じた目を開くと、辺りは暗闇だった。
永遠の闇の中にあるのは…
本?
黒の表紙の本が最上段が見えないほど高く終わりが見えないほど長い漆黒の本棚にズラリと並び、溢れた本が漆黒の床に転がったり山積みにされたりしている。
ここはまるで…
『世界の境みたい…』
そうだ。此の空間はイアンと初めて会ったあの空間と同じ造りなんだ…違うのは大量の鏡が彼方此方に転がったり、本棚に掛ったりしている事だけだ。
何故だろう…何だか…
『落ち着く…』
「落ち着くのは当たり前だ」
誰も居ないだろうと油断していた麗は慌てて後ろを振り返った。
気配などまるで無かったのに…
「麗」
麗が振り返った先には一人の青年がいた。
長い黒髪に褐色の肌…切れ長の目に銀色の瞳がとても綺麗だった。
青年はイアンにどこか似ていた。
『だ…れ……?』
青年は微笑むと麗に歩み寄り、優しく麗を抱き締めた。
「やっと会えた」
『やっと…?誰?』
麗がそう問い掛けると、青年は麗を離した。
「此の空間は…そして我はお前に造られた」
『私に…?』
ゆっくりと頷いた青年を見て、麗は首を傾げた。
麗にはこの青年を造った覚えが無かった。
「我の名は月影…お前の魔具の本体だ。覚えが無いと思うがお前が造った」
『私…が…?』
この青年が聖珠の化身…?
考えられぬ事では無い。けど…
「名は月影…お前の力の結晶、お前の護宝石、聖珠。我はお前の一部だ」
『私の…一部』
月影は再度麗を抱き締めると、その耳に唇を寄せた。
「我はお前と共に在り…我は全ての術からお前を護る」
元から暗い辺りが更に暗くなり、唯一見えていた本棚も鏡も闇に溶けて見えなくなった。そして徐々に抱き締められている感覚がなくなる。
『月影…』
「麗…」
何時の間にか閉じていた目を開けると、そこには蒼がいた。
心配そうな顔で私の顔を覗き込んでいる。
『蒼…』
麗は蒼に抱えられる様に横たわっていた身体を起こすと、辺りを見回した。
普段と変わらない自分の部屋だ。
夢…だったのかな…?
そう思いながら首に違和感を感じた麗は、そっと首に手をやった。
手に冷たい感覚を覚えた。
「麗、大丈夫か?」
蒼は確認する様に麗の空いている方の手をそっと握った。
『…蒼』
「何だ?」
麗は伏せていた顔を上げると嬉しそうに微笑んだ。
『完成だ』
麗の首に付いた漆黒の首輪の様なチョーカーが月明かりに照らされ光っていた。
『夢じゃ無かったの!!』
ニコニコと嬉しそうに笑いながら話す麗と不機嫌そうに聞くイアン。不思議な空気が流れていた。
『イアンも月影に会ってみると良いわ』
溜め息を吐いたイアンは、麗に歩み寄ると、そっとチョーカーに触れた。
チョーカーは麗の首に綺麗に嵌っている。
「外れないな…」
『そう、外せなくて…首輪見たいでしょ?』
びくともしなかった。外す金具も付いていないし、外れる様子も無い。
イアンは不機嫌そうに舌打ちをすると、麗の首輪掴む様に手を回した。
「硬い…かなり硬度があるな。それに元々の役割の他に障壁の役割も果たしてる」
『あら、良く分かったわね』
「…形はどうであれ良く出来てるだろ」
イアンがそう言うと麗は唯嬉しそうに微笑んだ。
『有難う』
これでこの身体でも向かい打てる。
ヴォルデモートだろうが、アレンを襲ったものだろうが、何だろうが…
纏めて相手してやる──…