第2章 秘密ノ謳
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あぁ゙あぁぁぁぁ…
──我、願う…
ぁ゙ぁぁ…
コ…コロス──…
=金曜の夜に=
金曜の夜の森には必ず楽しそうな声が二つ響く。
いつもは寝静まっている森の動物達はその片方を警戒し、話し声が止むまで…警戒対象が森を出るまで気配を殺し、様子を見続けた。森中の気が乱れている。
『じゃあまた来るわね、トム…ッ』
麗がそう言いながら立ち上がると、トムは麗の腕を掴んで自分に引き寄せた。
自然と麗がトムの膝の上に座る形になる。
「もう帰るのか?」
『今日はやる事があるの…来週会いましょ、ね』
トムが渋々麗の腕を離し、麗は再び立ち上がった。
「麗…やはり俺と来ないか?」
『私はまだ学生よ、トム』
「じゃあ、卒業したらだ」
麗は可笑しそうにクスクス笑うと首を傾げて見せた。
『さあ、どうかしらね』
「卒業の日に迎えに行くぞ」
『分からないわよ?無駄足かもしれないわ…決めるのはその時の私だから』
「それまでにお前を靡 かせれば良いんだろ?」
麗はホグワーツに向かって二・三歩進むとトムを振り返った。
月は今日も綺麗だ。
『そうよ、それだけの話…だけどそれはとても難しいわ』
そう聞いたトムはニヤリと口角を上げて笑った。何か手を考えたのだろうか…
「ククッ…誰にものを言っている」
『そうね…でも貴方でも難しいわ』
「有り得んな」
相手はトムだ。何を考えているかなんて私にはまだ予想もつかない。
『はいはい、頑張って下さいな…私も頑張るわ』
「どうせ俺様の勝ちだ。さっさと靡けば良いものを」
『ふふ、時間はまだまだ有るわ…御休みなさい、トム』
麗はそう言って微笑むとホグワーツに帰って行った。
誰もいない夜中の冷たい廊下を灯り一つつけずに、グリフィンドールの開かずの間に向かった。
絵画達もぐっすりと眠っている時間だった。隠し通路を使って開かずの間に帰ってきた麗は、翡翠達を起こさない様にそっと扉を開いた。
「どこ行ってたんだよ」
瞬間、暗い室内にそう翡翠の声が響いた。
麗は魔法で灯りをつけると、リビングへと進み、ニッコリと微笑んだ。
『ただいま、翡翠…それに皆』
リビングには翡翠や蒼、紙園の他に騎龍、椿、凌、西煌、桜華が揃っていた。七叉と楓はお留守番かしら。
「御帰りね、麗」
『ふふ…只今、西煌』
「ただいまじゃねぇ…西煌も返すな。どこ行ってたか聞いてんだ」
麗に対して常に優しい翡翠が、そう口にしながら珍しく麗を睨み付けた。
『教え無いわ。それより何で皆がいるの?』
麗がそう尋ねると、翡翠は不機嫌そうに眉を寄せた。
「麗が毎週金曜の夜になると消えるから…お前が消える度に馬鹿鳥が外へ出た…成果が無くて今日は俺がコイツ等を呼んだ……蛇以外はな。けど見付からなかった…麗、もう我慢の限界だ。どこに行ってたか教えろ」
ソファーの背凭れに腰掛けていた桜華は溜め息を吐いて立ち上がると、麗の隣に立った。
「妾は反対したんじゃぞ。妾は麗のする事に口出しする気は無いからの…じゃが此奴等は違う。御主が心配で堪らんのじゃ」
桜華の言う事は確かだった。
皆が私の心配をしている事は昔から身を持って知っている。知っているのに、愚かな私は更に心配を掛けてしまうのだ。
『……心配掛けている事については済まない…だがな、教える気は無いし見付かる訳が無い。結界を張り、幻術を使っているから』
そう聞いてより一層表情を歪めた翡翠は、一瞬で麗の目の前に立つと麗の両手首を締め上げ、身体ごと壁に押し付けた。
『痛…ッ』
「良いか…お前に何かあってからじゃ遅いんだ!!前も変な奴に襲われただろ!」
胸が痛かった。
翡翠の乱れた気が伝わってきたから。翡翠の顔が泣きそうに歪んだから。翡翠の弱さを知っているから…
「言え、どこで何をし」
翡翠が言い終わらない内に、麗は翡翠の前から消え去り、ソファーに座る騎龍の腕の中に収まっていた。
「蛇…麗と話してるのは俺だ。勝手に盗ってんじゃねぇよ」
翡翠が両手を付いた壁が鈍い音を立てながらひび割れ崩れていき、爪が伸びて先が鋭く尖った。
殺気を剥き出しにして…
「煩ぇよ“話してる”じゃなくて“脅してる”の間違いだろ?第一、麗は俺様のだ、手ぇ出すんじゃねぇよ」
「何だと…」
翡翠が鋭い爪で騎龍を斬り裂こうと飛び掛かったが、麗を抱き締めた騎龍の目前で何かにぶつかり、その身体は壁際まで弾き飛ばされた。
「ッ…麗、お前」
麗の張った結界が麗と騎龍を取り囲んだからだ。結界が翡翠と騎龍を遮る。
喧嘩はしても良いが、誰かが傷を負う様な喧嘩は嫌だった。
「なぁ、麗…彼奴に会うのは悪い事じゃねぇけどさぁ…気を付けろよ?」
麗は自分を抱き締める騎龍を見上げた。
『騎龍、貴方…』
「騎龍の言う通りだよ、麗~あんまり心配させると学校で暴れちゃうよ~?」
騎龍が麗の首元に顔を埋め、椿はその隣に座り、凌も静かに麗の側に寄った。
『三人共気付いてたの?』
「俺様はさっき森の近くで面白いチビを見付けてなぁ」
「俺は凌に聞いたんだ~」
「済みません、麗様…無礼を働きまして…」
騎龍がニヤリと笑い、椿もニッコリと笑ったが、凌だけは申し訳なさそうに眉を寄せていた。
『そうか…そうだったな、忘れていた』
騎龍が見付けたのはトムの蛇であるナギニ…凌は結界も幻覚も効か無い…だから私を見付け、椿に知らせた。そんな所だろう…
『……森へ行っていた』
静かな室内には、翡翠の唸る声だけが低く響いていた。
『会っていたのはトム・M・リドル』
それは彼の嫌いな名前…
彼の好きな名は…
『闇の帝王、ヴォルデモート卿』
翡翠、蒼、紙園は驚いて目を見開き、西煌と桜華は気付いていたらしく納得した様に笑った。
「お前、そんな危ない事!!」
翡翠が結界を破って内に侵入しようとする中、麗はニッコリと微笑むと口を開いた。
『西煌』
瞬間、西煌が消え、翡翠が前のめりに倒れた。
麗は倒れる翡翠を抱き止めた西煌に歩み寄ると、そっと翡翠の頭を撫でた。
『“御”』
瞬間、翡翠が小さな狐に姿を変え、麗の腕に収まった。
『昔から頭に血が上ると歯止めが利か無くなる…何時まで経っても直らんな』
麗は薄く微笑みながら狐となった翡翠の頭を優しく撫でた。
『蒼』
「何だ…?」
『明日、魔具を造り直す…サポート頼める?』
「分かった」
麗は微笑むと翡翠を抱き締めたまま寝室に入って行った。
目が覚めたら目の前に麗の顔があった。
「そっか…俺」
西煌に何かされたんだろう…頭に血が上っていた所為か良く覚えていないが、最後にニッコリと笑った西煌が目の前に現れたのだけは覚えている。
翡翠は人型になると、目の前で寝ている麗を抱き締めた。
「無茶すんなよな…」
お前が大切なんだ。
凄く好きだから…
愛してるから…
だから…
だから何があっても…
俺はお前を…
麗を護るよ──…
あぁ゙あぁぁぁぁ…
──我、願う…
ぁ゙ぁぁ…
コ…コロス──…
=金曜の夜に=
金曜の夜の森には必ず楽しそうな声が二つ響く。
いつもは寝静まっている森の動物達はその片方を警戒し、話し声が止むまで…警戒対象が森を出るまで気配を殺し、様子を見続けた。森中の気が乱れている。
『じゃあまた来るわね、トム…ッ』
麗がそう言いながら立ち上がると、トムは麗の腕を掴んで自分に引き寄せた。
自然と麗がトムの膝の上に座る形になる。
「もう帰るのか?」
『今日はやる事があるの…来週会いましょ、ね』
トムが渋々麗の腕を離し、麗は再び立ち上がった。
「麗…やはり俺と来ないか?」
『私はまだ学生よ、トム』
「じゃあ、卒業したらだ」
麗は可笑しそうにクスクス笑うと首を傾げて見せた。
『さあ、どうかしらね』
「卒業の日に迎えに行くぞ」
『分からないわよ?無駄足かもしれないわ…決めるのはその時の私だから』
「それまでにお前を
麗はホグワーツに向かって二・三歩進むとトムを振り返った。
月は今日も綺麗だ。
『そうよ、それだけの話…だけどそれはとても難しいわ』
そう聞いたトムはニヤリと口角を上げて笑った。何か手を考えたのだろうか…
「ククッ…誰にものを言っている」
『そうね…でも貴方でも難しいわ』
「有り得んな」
相手はトムだ。何を考えているかなんて私にはまだ予想もつかない。
『はいはい、頑張って下さいな…私も頑張るわ』
「どうせ俺様の勝ちだ。さっさと靡けば良いものを」
『ふふ、時間はまだまだ有るわ…御休みなさい、トム』
麗はそう言って微笑むとホグワーツに帰って行った。
誰もいない夜中の冷たい廊下を灯り一つつけずに、グリフィンドールの開かずの間に向かった。
絵画達もぐっすりと眠っている時間だった。隠し通路を使って開かずの間に帰ってきた麗は、翡翠達を起こさない様にそっと扉を開いた。
「どこ行ってたんだよ」
瞬間、暗い室内にそう翡翠の声が響いた。
麗は魔法で灯りをつけると、リビングへと進み、ニッコリと微笑んだ。
『ただいま、翡翠…それに皆』
リビングには翡翠や蒼、紙園の他に騎龍、椿、凌、西煌、桜華が揃っていた。七叉と楓はお留守番かしら。
「御帰りね、麗」
『ふふ…只今、西煌』
「ただいまじゃねぇ…西煌も返すな。どこ行ってたか聞いてんだ」
麗に対して常に優しい翡翠が、そう口にしながら珍しく麗を睨み付けた。
『教え無いわ。それより何で皆がいるの?』
麗がそう尋ねると、翡翠は不機嫌そうに眉を寄せた。
「麗が毎週金曜の夜になると消えるから…お前が消える度に馬鹿鳥が外へ出た…成果が無くて今日は俺がコイツ等を呼んだ……蛇以外はな。けど見付からなかった…麗、もう我慢の限界だ。どこに行ってたか教えろ」
ソファーの背凭れに腰掛けていた桜華は溜め息を吐いて立ち上がると、麗の隣に立った。
「妾は反対したんじゃぞ。妾は麗のする事に口出しする気は無いからの…じゃが此奴等は違う。御主が心配で堪らんのじゃ」
桜華の言う事は確かだった。
皆が私の心配をしている事は昔から身を持って知っている。知っているのに、愚かな私は更に心配を掛けてしまうのだ。
『……心配掛けている事については済まない…だがな、教える気は無いし見付かる訳が無い。結界を張り、幻術を使っているから』
そう聞いてより一層表情を歪めた翡翠は、一瞬で麗の目の前に立つと麗の両手首を締め上げ、身体ごと壁に押し付けた。
『痛…ッ』
「良いか…お前に何かあってからじゃ遅いんだ!!前も変な奴に襲われただろ!」
胸が痛かった。
翡翠の乱れた気が伝わってきたから。翡翠の顔が泣きそうに歪んだから。翡翠の弱さを知っているから…
「言え、どこで何をし」
翡翠が言い終わらない内に、麗は翡翠の前から消え去り、ソファーに座る騎龍の腕の中に収まっていた。
「蛇…麗と話してるのは俺だ。勝手に盗ってんじゃねぇよ」
翡翠が両手を付いた壁が鈍い音を立てながらひび割れ崩れていき、爪が伸びて先が鋭く尖った。
殺気を剥き出しにして…
「煩ぇよ“話してる”じゃなくて“脅してる”の間違いだろ?第一、麗は俺様のだ、手ぇ出すんじゃねぇよ」
「何だと…」
翡翠が鋭い爪で騎龍を斬り裂こうと飛び掛かったが、麗を抱き締めた騎龍の目前で何かにぶつかり、その身体は壁際まで弾き飛ばされた。
「ッ…麗、お前」
麗の張った結界が麗と騎龍を取り囲んだからだ。結界が翡翠と騎龍を遮る。
喧嘩はしても良いが、誰かが傷を負う様な喧嘩は嫌だった。
「なぁ、麗…彼奴に会うのは悪い事じゃねぇけどさぁ…気を付けろよ?」
麗は自分を抱き締める騎龍を見上げた。
『騎龍、貴方…』
「騎龍の言う通りだよ、麗~あんまり心配させると学校で暴れちゃうよ~?」
騎龍が麗の首元に顔を埋め、椿はその隣に座り、凌も静かに麗の側に寄った。
『三人共気付いてたの?』
「俺様はさっき森の近くで面白いチビを見付けてなぁ」
「俺は凌に聞いたんだ~」
「済みません、麗様…無礼を働きまして…」
騎龍がニヤリと笑い、椿もニッコリと笑ったが、凌だけは申し訳なさそうに眉を寄せていた。
『そうか…そうだったな、忘れていた』
騎龍が見付けたのはトムの蛇であるナギニ…凌は結界も幻覚も効か無い…だから私を見付け、椿に知らせた。そんな所だろう…
『……森へ行っていた』
静かな室内には、翡翠の唸る声だけが低く響いていた。
『会っていたのはトム・M・リドル』
それは彼の嫌いな名前…
彼の好きな名は…
『闇の帝王、ヴォルデモート卿』
翡翠、蒼、紙園は驚いて目を見開き、西煌と桜華は気付いていたらしく納得した様に笑った。
「お前、そんな危ない事!!」
翡翠が結界を破って内に侵入しようとする中、麗はニッコリと微笑むと口を開いた。
『西煌』
瞬間、西煌が消え、翡翠が前のめりに倒れた。
麗は倒れる翡翠を抱き止めた西煌に歩み寄ると、そっと翡翠の頭を撫でた。
『“御”』
瞬間、翡翠が小さな狐に姿を変え、麗の腕に収まった。
『昔から頭に血が上ると歯止めが利か無くなる…何時まで経っても直らんな』
麗は薄く微笑みながら狐となった翡翠の頭を優しく撫でた。
『蒼』
「何だ…?」
『明日、魔具を造り直す…サポート頼める?』
「分かった」
麗は微笑むと翡翠を抱き締めたまま寝室に入って行った。
目が覚めたら目の前に麗の顔があった。
「そっか…俺」
西煌に何かされたんだろう…頭に血が上っていた所為か良く覚えていないが、最後にニッコリと笑った西煌が目の前に現れたのだけは覚えている。
翡翠は人型になると、目の前で寝ている麗を抱き締めた。
「無茶すんなよな…」
お前が大切なんだ。
凄く好きだから…
愛してるから…
だから…
だから何があっても…
俺はお前を…
麗を護るよ──…