第1章 始マリノ謳
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コツ…と音を立てて暖炉から踏み出した麗が手を離すと、黒いドレスの裾が重力に従って落ちた。
結い上げた銀髪を撫で、伏せていた緋色の瞳が室内を見渡す。
騒つく客達から隠す様に先に着いていた蒼が前に立った。
「麗様ですね。ラバスタン様から仰せつかりました」
そう声を掛けてきた背筋のピンッと伸びた男は明らかに客とは違った。
『御迎え有難う御座います』
「いえ…」
「傷一つ付けず返すと誓え」
『蒼ったら…大丈夫よ』
麗はニッコリ笑うと男に向かって手を差し出した。
『行きましょうか』
=パーティー=
姿現わしで辿り着いた先には大きな御屋敷が建っていた。室内から漏れる煌びやかな光が屋敷を照らす。
男に手を引かれて進むと、男が招待状を確認する者に声を掛けた。
「麗・皐月様です。欠席扱いになってると思いますが、レストレンジ家の…」
「麗〜!!!」
中から駆け出て来たラバスタンに抱き付かれ、麗は楽しそうに笑った。
『ふふ、今日も元気ねラース』
「おう、俺はいつでも元気だぞ」
可愛い可愛いと言いながら抱き締められる麗を見ていた男は、ラバスタンの腕にそっと触れた。
「ラバスタン様、麗様が困ってますし他の来賓が…あまりお騒ぎになりませんよう」
「あー、はいはい。分かったよ」
「それでは私は」
『有難う、えっと…』
「私なんぞの名は覚えなくて結構です。どうぞお楽しみ下さい、麗様」
そう言って男は姿くらましで消え去った。
「気にしなくて良いよ、麗。あいつ無愛想なんだ」
『あら、凄く良い人だったわ』
「なら良いけど」
『レストレンジ家は雇ってる方達に厳しくないのね』
「まぁ、マルフォイやブラックに比べるとやっぱりねー」
やはりその二つは厳しいのか…まぁ、何となく想像は付いていたけど。
純血主義で人を雇っている家はどうしても家族以外に厳しいイメージがある。もしかしたら家族にも…
「麗?」
ラバスタンに案内されてホールを進んでいると、そう声を掛けられた。
『レギュラス』
振り返った先にはグラスを持ったレギュラスが立って居た。
驚いたレギュラスの表情が直ぐに不機嫌そうに歪む。
「どういう事」
『ぁ…御免なさい、私』
「何?お前も麗誘ったの?」
「煩いよ、ラバスタン」
『レギュラス…』
「俺も断られたんだよ。麗は俺の押しに負けてここに居るだけ」
「……」
『御免ね、連絡すれば良かったんだけど…ここに来れば会えると思って』
「大丈夫、麗?用事あったんでしょ、無理してない?」
そう言われて少し驚いた麗は瞬間、嬉しそうに笑った。
『優しいのね、レギュラス』
“大丈夫よ”と言うとレギュラスは持っていたグラスを麗に差し出した。
「まだ口付けてないから飲みなよ」
『まぁ、有難う』
「あらヤダ、何で純血じゃない小娘が居るのよ」
さっきからあちこちでヒソヒソ話す声は聞こえていたが、ここまでハッキリ言われると清々しい。
カツンと一際大きな音を立てて立ち止まった女は、くるくるの長い黒髪を後ろに流した。
「ルシウスが招待してる筈だ。今日は客なんだから文句言うなよ」
「そうだよベラ姉、止めろよな」
「あら、純血じゃない者は必要無いわ」
「だーかーらー」
「麗、気にしなくて良いから」
『ぁ、えぇ…有難う、レギュラス』
「何?あんたら揃ってこんな小娘に熱上げてるわけ?」
「ベラトリックス」
「はいはい、分かったわよ」
ベラトリックスと一緒に居た男の一言で、ベラトリックスはそう突っ掛かるのを止めた。
「麗は二人に会った事ある?」
『え?あぁ、多分無いと思うわ』
「ベラトリックス・ブラック、レギュラスのイトコ。こっちは俺の兄貴でロドルファス」
『麗・皐月です。宜しく』
「はぁ?宜しくしないわよ」
「ベラトリックス…」
ロドルファスに声を掛けられベラトリックスはふんっと鼻を鳴らした。
『あの、ナルシッサのお姉さんよね』
「シシーにも手を出してるの?」
「もう、ベラトリックス黙って」
「何でよ」
「ベラトリックスが喋るとろくな事ない」
「煩いわよ、ちびっ子」
「これから成長するし」
「無理無理、きっとチビのまんまよ」
「煩い厚化粧」
「はぁ?!」
ゲラゲラ笑うラバスタンに寄り添うと、そっと腕を絡める。
『いつもこうなの?』
「そうそう、いつもこんなんだよ」
他の寮生よりも落ち着いている様に見えるスリザリン生達もやはりまだ子供だ。ラバスタンは元々賑やかだけど。
「麗、アミカスとアレクトも知らないだろ?あいつら授業以外で寮から出無いし」
『そうね、知ら無いわ』
「じゃあ、マルフォイに挨拶がてら探して紹介するよ」
とても助かる。顔を覚えておいて損は無いし、知り合えるのは好都合だ。
「俺も行く」
「何だよもー、俺のパートナーの意味無いじゃん」
「さっさと行きなさい」
『じゃあ、また話しましょうね。ベラトリックス、ロドルファス』
「話さないわよ」
困った様に溜め息を吐いたロドルファスに頭を撫でられ、麗はラバスタンとレギュラスと歩き出した。
この子達が…と言う問題では無いが分かる。
ここは“いけないもの”が潜んでる。
闇に染まるわけでは無いが、知る事は必要だ。
可能なら子供達以外も紹介して貰って情報を集めよう。
そう、そして…
こうして…
闇に向かって足を進める──…
コツ…と音を立てて暖炉から踏み出した麗が手を離すと、黒いドレスの裾が重力に従って落ちた。
結い上げた銀髪を撫で、伏せていた緋色の瞳が室内を見渡す。
騒つく客達から隠す様に先に着いていた蒼が前に立った。
「麗様ですね。ラバスタン様から仰せつかりました」
そう声を掛けてきた背筋のピンッと伸びた男は明らかに客とは違った。
『御迎え有難う御座います』
「いえ…」
「傷一つ付けず返すと誓え」
『蒼ったら…大丈夫よ』
麗はニッコリ笑うと男に向かって手を差し出した。
『行きましょうか』
=パーティー=
姿現わしで辿り着いた先には大きな御屋敷が建っていた。室内から漏れる煌びやかな光が屋敷を照らす。
男に手を引かれて進むと、男が招待状を確認する者に声を掛けた。
「麗・皐月様です。欠席扱いになってると思いますが、レストレンジ家の…」
「麗〜!!!」
中から駆け出て来たラバスタンに抱き付かれ、麗は楽しそうに笑った。
『ふふ、今日も元気ねラース』
「おう、俺はいつでも元気だぞ」
可愛い可愛いと言いながら抱き締められる麗を見ていた男は、ラバスタンの腕にそっと触れた。
「ラバスタン様、麗様が困ってますし他の来賓が…あまりお騒ぎになりませんよう」
「あー、はいはい。分かったよ」
「それでは私は」
『有難う、えっと…』
「私なんぞの名は覚えなくて結構です。どうぞお楽しみ下さい、麗様」
そう言って男は姿くらましで消え去った。
「気にしなくて良いよ、麗。あいつ無愛想なんだ」
『あら、凄く良い人だったわ』
「なら良いけど」
『レストレンジ家は雇ってる方達に厳しくないのね』
「まぁ、マルフォイやブラックに比べるとやっぱりねー」
やはりその二つは厳しいのか…まぁ、何となく想像は付いていたけど。
純血主義で人を雇っている家はどうしても家族以外に厳しいイメージがある。もしかしたら家族にも…
「麗?」
ラバスタンに案内されてホールを進んでいると、そう声を掛けられた。
『レギュラス』
振り返った先にはグラスを持ったレギュラスが立って居た。
驚いたレギュラスの表情が直ぐに不機嫌そうに歪む。
「どういう事」
『ぁ…御免なさい、私』
「何?お前も麗誘ったの?」
「煩いよ、ラバスタン」
『レギュラス…』
「俺も断られたんだよ。麗は俺の押しに負けてここに居るだけ」
「……」
『御免ね、連絡すれば良かったんだけど…ここに来れば会えると思って』
「大丈夫、麗?用事あったんでしょ、無理してない?」
そう言われて少し驚いた麗は瞬間、嬉しそうに笑った。
『優しいのね、レギュラス』
“大丈夫よ”と言うとレギュラスは持っていたグラスを麗に差し出した。
「まだ口付けてないから飲みなよ」
『まぁ、有難う』
「あらヤダ、何で純血じゃない小娘が居るのよ」
さっきからあちこちでヒソヒソ話す声は聞こえていたが、ここまでハッキリ言われると清々しい。
カツンと一際大きな音を立てて立ち止まった女は、くるくるの長い黒髪を後ろに流した。
「ルシウスが招待してる筈だ。今日は客なんだから文句言うなよ」
「そうだよベラ姉、止めろよな」
「あら、純血じゃない者は必要無いわ」
「だーかーらー」
「麗、気にしなくて良いから」
『ぁ、えぇ…有難う、レギュラス』
「何?あんたら揃ってこんな小娘に熱上げてるわけ?」
「ベラトリックス」
「はいはい、分かったわよ」
ベラトリックスと一緒に居た男の一言で、ベラトリックスはそう突っ掛かるのを止めた。
「麗は二人に会った事ある?」
『え?あぁ、多分無いと思うわ』
「ベラトリックス・ブラック、レギュラスのイトコ。こっちは俺の兄貴でロドルファス」
『麗・皐月です。宜しく』
「はぁ?宜しくしないわよ」
「ベラトリックス…」
ロドルファスに声を掛けられベラトリックスはふんっと鼻を鳴らした。
『あの、ナルシッサのお姉さんよね』
「シシーにも手を出してるの?」
「もう、ベラトリックス黙って」
「何でよ」
「ベラトリックスが喋るとろくな事ない」
「煩いわよ、ちびっ子」
「これから成長するし」
「無理無理、きっとチビのまんまよ」
「煩い厚化粧」
「はぁ?!」
ゲラゲラ笑うラバスタンに寄り添うと、そっと腕を絡める。
『いつもこうなの?』
「そうそう、いつもこんなんだよ」
他の寮生よりも落ち着いている様に見えるスリザリン生達もやはりまだ子供だ。ラバスタンは元々賑やかだけど。
「麗、アミカスとアレクトも知らないだろ?あいつら授業以外で寮から出無いし」
『そうね、知ら無いわ』
「じゃあ、マルフォイに挨拶がてら探して紹介するよ」
とても助かる。顔を覚えておいて損は無いし、知り合えるのは好都合だ。
「俺も行く」
「何だよもー、俺のパートナーの意味無いじゃん」
「さっさと行きなさい」
『じゃあ、また話しましょうね。ベラトリックス、ロドルファス』
「話さないわよ」
困った様に溜め息を吐いたロドルファスに頭を撫でられ、麗はラバスタンとレギュラスと歩き出した。
この子達が…と言う問題では無いが分かる。
ここは“いけないもの”が潜んでる。
闇に染まるわけでは無いが、知る事は必要だ。
可能なら子供達以外も紹介して貰って情報を集めよう。
そう、そして…
こうして…
闇に向かって足を進める──…