第1章 始マリノ謳
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「ほら、麗“あ~ん”」
『ぁ、あ~…ん』
意地悪く…でもどこか楽しそうに笑いながらフォークを口元に突き付けられて、断り切れずにそう口を開いた。
何でこうなったのか…
全ては“約束”から始まった。
=デート=
「今度は俺と二人でホグズミード行こうぜ」
そう約束をしたのは慌ただしいハロウィーンの日だった。
リーマスとホグズミードに出掛けて、御祖父様とミネルとお茶して、宴で謳って、今の時代のトムに初めて会って、七叉と楓と蒼に怒られて、シリウスに不安がられて、シャントゥールの名を貰って…そんな慌ただしい日の中での約束だった。レギュラスもだけど。
しかし忙しかったからといって約束をした事を忘れた訳では無い。ちゃんと覚えていたし、行く気もあった。けど…
「今日はデートだからな。麗は今日一日“俺の彼女”だ」
支度を終えて降りて行った談話室で、約束の相手であるシリウスにそう言われて頭の中が一瞬にして真っ白になった。
『……はい?』
友達として行く気はあったが、そんなつもりは無かった。彼女ってどうしたら良いのか全く分からなし…
でもレギュラスとのデートの練習にはなるかな?でもそれだと失礼か…
“行くぞ”と言って手を取って引かれ、心臓がドキンと一際高く鳴った。
何だろう…
唯手を繋いで歩いてるだけなのに、この指を絡めた手の繋ぎ方だと少しドキドキする。
『あの…シリウス?』
「何だ?」
『“彼女”って…私、どうしたら良いの?』
麗が歩きながらそう申し訳無さそうに訊ねると、一瞬の間をおいてシリウスは何かを思い付いた様にニヤリと笑った。
「俺が教えてやるよ」
こういう言い方は何だが…
余りにも“良い顔”をするものだから、シリウスが何かを企んでいるのは容易に分かった。
ちょっと…嫌な予感がする。
そんな小さな不安はあったが、ホグワーツとホグズミードは近いもので…しかも着くまでの間、シリウスが話し続けるものだから、彼が何をするか何て考えている暇も無かった。
着いてからも、雑貨に服にアクセサリーに魔具に本に悪戯専門店…兎に角あちこち回った。
「はぁ──…疲れた!」
椅子の背凭れに背を預けたシリウスは“でも楽しかったな”と笑った。
そんなシリウスを見て笑った麗は、ケーキと紅茶を運んできた店員に小さく頭を下げた。
「麗って店員とかにちょくちょく頭下げるよな」
『日本人は大抵こうよ。“有難う”とか“済みません”って意味ね』
日本人のこれはもう癖だ。
意識しない限り治る事は無いだろう。
麗はティーカップを置いてフォークを手に取ると、ベリータルトを一口、食べた。
数種類のベリーの歯応えが程良く甘酸っぱくて美味しい。
「麗」
『何?』
シリウスはニッコリ微笑むと、自分のチーズケーキを一口乗せたフォークを麗に差し出した。
「あ~ん」
『え…?』
「え?じゃなくてほら、口開けろ」
『ッ…』
口開けろってまさか…
「ほら、麗“あ~ん”」
『ぁ、あ~…ん』
意地悪く…でもどこか楽しそうに笑いながらフォークを口元に突き付けられて、断り切れずにそう口を開いた。
直ぐに口内に濃厚なチーズケーキの味が広がる。
「顔、真っ赤だぜ」
ほんのりと頬を赤くした麗に、シリウスはそう口角上げて笑いながら言った。
あぁ…確実に楽しんでいる。
恐らく本当に顔を赤くしているであろう私を見てシリウスは楽しんでいる。
全く…意地悪なんだから…
「麗、俺にはくれないのか?」
そう言って笑うシリウスに、麗はベリータルトを一口フォークで挿すと、シリウスの口許に差し出した。
「“あ~ん”は?」
『ぁ、あ~…ん』
満足そうに笑ったシリウスが麗の差し出したベリータルトを口にした瞬間だった。
「何してんだ?餓鬼」
低く響いた声に反応して視線を上げると、そこには引き攣った表情の翡翠が立っていた。
「げ…」
『翡翠…』
喫茶店の入り口の方に翡翠と一緒に来たであろうジェームズとリリー…そして黒いオーラを纏ったリーマスとシーラ、慌てふためくピーターと大笑いをしているリザが見え、シリウスはサッと顔色を青く染めた。
「良い度胸だ、餓鬼」
バキバキと指を鳴らす翡翠と、こっちへ向かって歩いてくるリーマスとシーラ…
“あ…俺死ぬな”そう思ったシリウスは、そっと…
そっと目を閉じた。
その日…
手を繋いでホグズミードに向かうシリウスと麗を目撃した生徒達による“シリウス・ブラックが翡翠から麗を奪った”という噂は…
ものの数時間で消え去った。
「ほら、麗“あ~ん”」
『ぁ、あ~…ん』
意地悪く…でもどこか楽しそうに笑いながらフォークを口元に突き付けられて、断り切れずにそう口を開いた。
何でこうなったのか…
全ては“約束”から始まった。
=デート=
「今度は俺と二人でホグズミード行こうぜ」
そう約束をしたのは慌ただしいハロウィーンの日だった。
リーマスとホグズミードに出掛けて、御祖父様とミネルとお茶して、宴で謳って、今の時代のトムに初めて会って、七叉と楓と蒼に怒られて、シリウスに不安がられて、シャントゥールの名を貰って…そんな慌ただしい日の中での約束だった。レギュラスもだけど。
しかし忙しかったからといって約束をした事を忘れた訳では無い。ちゃんと覚えていたし、行く気もあった。けど…
「今日はデートだからな。麗は今日一日“俺の彼女”だ」
支度を終えて降りて行った談話室で、約束の相手であるシリウスにそう言われて頭の中が一瞬にして真っ白になった。
『……はい?』
友達として行く気はあったが、そんなつもりは無かった。彼女ってどうしたら良いのか全く分からなし…
でもレギュラスとのデートの練習にはなるかな?でもそれだと失礼か…
“行くぞ”と言って手を取って引かれ、心臓がドキンと一際高く鳴った。
何だろう…
唯手を繋いで歩いてるだけなのに、この指を絡めた手の繋ぎ方だと少しドキドキする。
『あの…シリウス?』
「何だ?」
『“彼女”って…私、どうしたら良いの?』
麗が歩きながらそう申し訳無さそうに訊ねると、一瞬の間をおいてシリウスは何かを思い付いた様にニヤリと笑った。
「俺が教えてやるよ」
こういう言い方は何だが…
余りにも“良い顔”をするものだから、シリウスが何かを企んでいるのは容易に分かった。
ちょっと…嫌な予感がする。
そんな小さな不安はあったが、ホグワーツとホグズミードは近いもので…しかも着くまでの間、シリウスが話し続けるものだから、彼が何をするか何て考えている暇も無かった。
着いてからも、雑貨に服にアクセサリーに魔具に本に悪戯専門店…兎に角あちこち回った。
「はぁ──…疲れた!」
椅子の背凭れに背を預けたシリウスは“でも楽しかったな”と笑った。
そんなシリウスを見て笑った麗は、ケーキと紅茶を運んできた店員に小さく頭を下げた。
「麗って店員とかにちょくちょく頭下げるよな」
『日本人は大抵こうよ。“有難う”とか“済みません”って意味ね』
日本人のこれはもう癖だ。
意識しない限り治る事は無いだろう。
麗はティーカップを置いてフォークを手に取ると、ベリータルトを一口、食べた。
数種類のベリーの歯応えが程良く甘酸っぱくて美味しい。
「麗」
『何?』
シリウスはニッコリ微笑むと、自分のチーズケーキを一口乗せたフォークを麗に差し出した。
「あ~ん」
『え…?』
「え?じゃなくてほら、口開けろ」
『ッ…』
口開けろってまさか…
「ほら、麗“あ~ん”」
『ぁ、あ~…ん』
意地悪く…でもどこか楽しそうに笑いながらフォークを口元に突き付けられて、断り切れずにそう口を開いた。
直ぐに口内に濃厚なチーズケーキの味が広がる。
「顔、真っ赤だぜ」
ほんのりと頬を赤くした麗に、シリウスはそう口角上げて笑いながら言った。
あぁ…確実に楽しんでいる。
恐らく本当に顔を赤くしているであろう私を見てシリウスは楽しんでいる。
全く…意地悪なんだから…
「麗、俺にはくれないのか?」
そう言って笑うシリウスに、麗はベリータルトを一口フォークで挿すと、シリウスの口許に差し出した。
「“あ~ん”は?」
『ぁ、あ~…ん』
満足そうに笑ったシリウスが麗の差し出したベリータルトを口にした瞬間だった。
「何してんだ?餓鬼」
低く響いた声に反応して視線を上げると、そこには引き攣った表情の翡翠が立っていた。
「げ…」
『翡翠…』
喫茶店の入り口の方に翡翠と一緒に来たであろうジェームズとリリー…そして黒いオーラを纏ったリーマスとシーラ、慌てふためくピーターと大笑いをしているリザが見え、シリウスはサッと顔色を青く染めた。
「良い度胸だ、餓鬼」
バキバキと指を鳴らす翡翠と、こっちへ向かって歩いてくるリーマスとシーラ…
“あ…俺死ぬな”そう思ったシリウスは、そっと…
そっと目を閉じた。
その日…
手を繋いでホグズミードに向かうシリウスと麗を目撃した生徒達による“シリウス・ブラックが翡翠から麗を奪った”という噂は…
ものの数時間で消え去った。