第1章 始マリノ謳
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25
「此の世界は醜い」
そう呟いたイアンを横目に、麗は眉を寄せた。
『醜い?何を言ってるのイアン“世界に”醜さなんて存在しないわ』
いつだって汚すのは人間だ。
それにイアンは何を美しいと見なし、何を醜いと言うのだろうか…
「醜いさ…まぁ、別に此の世界の醜さくらいどうでも良い。此の世界はお前にやったんだから」
ある意味では有り難い話だが、重大なモノを軽々と投げ渡され、麗の表情は更に歪んだ。
『大事にするわ』
=水曜日の図書室=
「こうなるから教本を無視して逆回しに混ぜるんだ。その方が手早い上に上質なのが出来る」
『入れる順番を変えるのは?』
「試してみろ、爆発するぞ」
『止めとくわ』
麗は黒髪を掻き上げると、魔法薬の本を睨み付けた。
薬学が一番苦手だ。見慣れない物をそれぞれ必要な物を必要なだけ選び、手順通りにしなければならないのだからやる事が沢山だ。
「毎回毎回、俺との勉強の時は出来るのに何故実習で出来んのだ…」
だって…芋虫なんか刻みたく無い。
『…虫は好きじゃ無いんだ』
セブルスは軽く溜め息を吐くと、眉間の皺を増やした。
「授業なんだ仕方無いだろ」
確かにそうだけど…
『私だって芋虫を“刻め”とか“擦り潰せ”とか言われなきゃちゃんと受けられるわ』
「……確かにあれは嫌だが…」
『でしょ?私はあれが最高に嫌なのよ』
気持ち悪くて仕方が無い。虫を薬に使う習慣が消えて無くなれば良いのに…
「しかし試験はどうする?再来年は本格的な試験があるんだぞ」
試験か…何とかして自分の世界に戻ろうとは思っているが、手段が思い付かない今の状態ではそれは何時になるか分からない。卒業も視野に入れた方が良いだろう。
卒業……してしまったらその後はどうしようかな…
『…私、イモリ受けようと思うんだけど』
「じゃあ芋虫くらい我慢しろ」
『はい…』
「それから」
不意にセブルスは麗の肩に乗っている鼬 の紙園を指差した。
「それは今度から置いて来い…鬱陶しい」
セブルスの言葉が気に食わなかったらしく、紙園は麗の肩から机の上に飛び降りると唸り声を上げてセブルスを威嚇した。
〔餓鬼が…鬱陶しいだと?〕
『紙園、先に帰ってて』
〔しかしだな〕
『帰っててね』
ニッコリと微笑む麗に逆らえず、紙園はチラチラと何度か振り返りながら渋々図書室を後にした。
「…利口な鼬だな」
『えぇ、とってもね』
麗は先程セブルスに言われた通りに書くと、羊皮紙をセブルスに見せた。
『これで良いかしら、先生?』
「あぁ」
『じゃあ、私もう帰るわね。何時も有難う…また宜しくね』
セブルスの教え方は解り易くて好きだ。教科書に沿って無いが…
「分かった。いつも通りの時間に来い」
『はい、先生』
そう言って笑った麗は、本やペン等の荷物を纏めると席を立つ。
『あ…』
すっかり忘れる所だった。
麗は席を越え机の上に座ってセブルスの側によると、セブルスの首にネックレスを掛けた。
「おい…机の上に乗るな」
『あの人が見てなければ平気よ』
「そういう問題じゃ」
『サブ』
「…何だ」
『これは御守りなの…御願いだから片時も外さ無いで欲しいの』
「嫌だ」
『御願い…外さ無いで‥』
「こういう物は信じない。大体何でこんな」
『セブルス』
「……分かった。分かったから司書に見付かる前に机から降りろ」
“怒られるぞ”と言うセブルスに、麗は嬉しそうに微笑んだ。
『セブル』
「麗、何してる!!机から降りろ!」
『はいぃぃ!!』
図書室に響いた司書の怒鳴り声に驚いた麗は、ビクリと身体を震わせた。
身体を支える手がズルッと滑りバランスが崩れる。
落ちる。
そうは勿論思ったし、痣でもできるかなとも思った。体勢を立て直すのは容易いが、別にこの高さから落ちても痛くは無いし、不自然な動きをしてしまうかも知れない。
まあ、いいや。
そうは思ったものの、中々身体に衝撃が走ら無いのを不思議に思う。
麗は辺りを見回し、自分の下を見た瞬間、顔を真っ青に染めた。
セブルスが下敷になってる。
『大丈夫?!』
慌ててセブルスの腕に抱かれたまま、セブルスの顔を覗き込んだ。
何て事だろうか…セブルスを下敷にしてしまうなんて…ちゃんと立て直せば良かった。
「っ…平気だ」
平気じゃ無い筈だ。
『御免なさい…』
セブルスは落ちた私を庇い、私を抱き締めた状態で床に転がっている。私の体重が全部セブルスに掛かっているのだから痛く無い筈は無い。
頭を打って無いだろうか…
「何をしているんだ、麗?」
『ルシウス…』
麗が顔を上げると、引きつった笑みを浮かべたルシウスが抱き合ったまま図書室の床に転がっている二人を見下していた。
ルシウスが手を差し出し、麗はルシウスの手を借りて立ち上がると、セブルスを助け起した。
『セブ…本当に大丈夫?』
「大丈夫だ」
『今度ちゃんと御礼するわね』
今度、セブルスを食事に誘おう。
夕食を作って序でにデザートも作って…セブルスの好きな紅茶を出してあげるんだ。
「何があったんだ?」
ルシウスが不思議そうに二人を見比べた。
こんな所で抱き合ったまま床に寝転んでいれば不思議に思われても無理は無い。
『机から落ちた私をセブルスが助けてくれたの』
「机に乗ってたのか」
『…御免なさい』
ルシウスはそう謝る麗の頭を優しく撫でた。
「帰る」
瞬間、セブルスはそう言って不機嫌そうに表情を歪ませると、自分の教材を持ってさっさと図書室を後にしてしまった。
『行っちゃった…』
「アイツはいつも不機嫌そうだな」
『ちゃんと話さないからそう見えるのよ…セブルスは凄く優しい人よ』
「そうは見えんし、アイツは穢れた」
『ルシウスの倍は優しいわ』
麗はニッコリ微笑むと誇らしげにそう言い、尚も話を続ける。
『多分、リーマスに並ぶんじゃないかしら?
でも一番は蒼ね!あと、翡翠とここだと紙園とか』
麗がブツブツ言っていると、ふとルシウスが麗の手を取って甲に口付けた。
『…何?』
「私の順位がかなり下なのが不服でね」
『ルシウス、意地悪ばっかりで優しくは無いじゃない。蒼も意地悪だけど不器用なだけだし…あ、でも紳士的な人だったら三番位には入ってる筈よ』
的ってだけで紳士なのかはちょっと不明だけど…一応は紳士だと思う。
「それはそれは、また微妙な称号と微妙な順位で」
『最下位より良いと思うわ』
「……そうだな」
ルシウスが微笑み、麗も楽しそうにクスクス笑った。
二人が自然に笑い合える様になったのは大きな進歩ではないだろうか。
水曜日の夕刻…
私の楽しい時間…
クィディッチの所為でセブルスによって週一回にされてしまったこの時間のこの図書室で…時々、色々な人と出会す。
スリザリンとか、グリフィンドールとか…
将来の敵だとか、味方だとか。そんな事は関係無く。
こんな日が…
ずっと続けば良い。
「此の世界は醜い」
そう呟いたイアンを横目に、麗は眉を寄せた。
『醜い?何を言ってるのイアン“世界に”醜さなんて存在しないわ』
いつだって汚すのは人間だ。
それにイアンは何を美しいと見なし、何を醜いと言うのだろうか…
「醜いさ…まぁ、別に此の世界の醜さくらいどうでも良い。此の世界はお前にやったんだから」
ある意味では有り難い話だが、重大なモノを軽々と投げ渡され、麗の表情は更に歪んだ。
『大事にするわ』
=水曜日の図書室=
「こうなるから教本を無視して逆回しに混ぜるんだ。その方が手早い上に上質なのが出来る」
『入れる順番を変えるのは?』
「試してみろ、爆発するぞ」
『止めとくわ』
麗は黒髪を掻き上げると、魔法薬の本を睨み付けた。
薬学が一番苦手だ。見慣れない物をそれぞれ必要な物を必要なだけ選び、手順通りにしなければならないのだからやる事が沢山だ。
「毎回毎回、俺との勉強の時は出来るのに何故実習で出来んのだ…」
だって…芋虫なんか刻みたく無い。
『…虫は好きじゃ無いんだ』
セブルスは軽く溜め息を吐くと、眉間の皺を増やした。
「授業なんだ仕方無いだろ」
確かにそうだけど…
『私だって芋虫を“刻め”とか“擦り潰せ”とか言われなきゃちゃんと受けられるわ』
「……確かにあれは嫌だが…」
『でしょ?私はあれが最高に嫌なのよ』
気持ち悪くて仕方が無い。虫を薬に使う習慣が消えて無くなれば良いのに…
「しかし試験はどうする?再来年は本格的な試験があるんだぞ」
試験か…何とかして自分の世界に戻ろうとは思っているが、手段が思い付かない今の状態ではそれは何時になるか分からない。卒業も視野に入れた方が良いだろう。
卒業……してしまったらその後はどうしようかな…
『…私、イモリ受けようと思うんだけど』
「じゃあ芋虫くらい我慢しろ」
『はい…』
「それから」
不意にセブルスは麗の肩に乗っている
「それは今度から置いて来い…鬱陶しい」
セブルスの言葉が気に食わなかったらしく、紙園は麗の肩から机の上に飛び降りると唸り声を上げてセブルスを威嚇した。
〔餓鬼が…鬱陶しいだと?〕
『紙園、先に帰ってて』
〔しかしだな〕
『帰っててね』
ニッコリと微笑む麗に逆らえず、紙園はチラチラと何度か振り返りながら渋々図書室を後にした。
「…利口な鼬だな」
『えぇ、とってもね』
麗は先程セブルスに言われた通りに書くと、羊皮紙をセブルスに見せた。
『これで良いかしら、先生?』
「あぁ」
『じゃあ、私もう帰るわね。何時も有難う…また宜しくね』
セブルスの教え方は解り易くて好きだ。教科書に沿って無いが…
「分かった。いつも通りの時間に来い」
『はい、先生』
そう言って笑った麗は、本やペン等の荷物を纏めると席を立つ。
『あ…』
すっかり忘れる所だった。
麗は席を越え机の上に座ってセブルスの側によると、セブルスの首にネックレスを掛けた。
「おい…机の上に乗るな」
『あの人が見てなければ平気よ』
「そういう問題じゃ」
『サブ』
「…何だ」
『これは御守りなの…御願いだから片時も外さ無いで欲しいの』
「嫌だ」
『御願い…外さ無いで‥』
「こういう物は信じない。大体何でこんな」
『セブルス』
「……分かった。分かったから司書に見付かる前に机から降りろ」
“怒られるぞ”と言うセブルスに、麗は嬉しそうに微笑んだ。
『セブル』
「麗、何してる!!机から降りろ!」
『はいぃぃ!!』
図書室に響いた司書の怒鳴り声に驚いた麗は、ビクリと身体を震わせた。
身体を支える手がズルッと滑りバランスが崩れる。
落ちる。
そうは勿論思ったし、痣でもできるかなとも思った。体勢を立て直すのは容易いが、別にこの高さから落ちても痛くは無いし、不自然な動きをしてしまうかも知れない。
まあ、いいや。
そうは思ったものの、中々身体に衝撃が走ら無いのを不思議に思う。
麗は辺りを見回し、自分の下を見た瞬間、顔を真っ青に染めた。
セブルスが下敷になってる。
『大丈夫?!』
慌ててセブルスの腕に抱かれたまま、セブルスの顔を覗き込んだ。
何て事だろうか…セブルスを下敷にしてしまうなんて…ちゃんと立て直せば良かった。
「っ…平気だ」
平気じゃ無い筈だ。
『御免なさい…』
セブルスは落ちた私を庇い、私を抱き締めた状態で床に転がっている。私の体重が全部セブルスに掛かっているのだから痛く無い筈は無い。
頭を打って無いだろうか…
「何をしているんだ、麗?」
『ルシウス…』
麗が顔を上げると、引きつった笑みを浮かべたルシウスが抱き合ったまま図書室の床に転がっている二人を見下していた。
ルシウスが手を差し出し、麗はルシウスの手を借りて立ち上がると、セブルスを助け起した。
『セブ…本当に大丈夫?』
「大丈夫だ」
『今度ちゃんと御礼するわね』
今度、セブルスを食事に誘おう。
夕食を作って序でにデザートも作って…セブルスの好きな紅茶を出してあげるんだ。
「何があったんだ?」
ルシウスが不思議そうに二人を見比べた。
こんな所で抱き合ったまま床に寝転んでいれば不思議に思われても無理は無い。
『机から落ちた私をセブルスが助けてくれたの』
「机に乗ってたのか」
『…御免なさい』
ルシウスはそう謝る麗の頭を優しく撫でた。
「帰る」
瞬間、セブルスはそう言って不機嫌そうに表情を歪ませると、自分の教材を持ってさっさと図書室を後にしてしまった。
『行っちゃった…』
「アイツはいつも不機嫌そうだな」
『ちゃんと話さないからそう見えるのよ…セブルスは凄く優しい人よ』
「そうは見えんし、アイツは穢れた」
『ルシウスの倍は優しいわ』
麗はニッコリ微笑むと誇らしげにそう言い、尚も話を続ける。
『多分、リーマスに並ぶんじゃないかしら?
でも一番は蒼ね!あと、翡翠とここだと紙園とか』
麗がブツブツ言っていると、ふとルシウスが麗の手を取って甲に口付けた。
『…何?』
「私の順位がかなり下なのが不服でね」
『ルシウス、意地悪ばっかりで優しくは無いじゃない。蒼も意地悪だけど不器用なだけだし…あ、でも紳士的な人だったら三番位には入ってる筈よ』
的ってだけで紳士なのかはちょっと不明だけど…一応は紳士だと思う。
「それはそれは、また微妙な称号と微妙な順位で」
『最下位より良いと思うわ』
「……そうだな」
ルシウスが微笑み、麗も楽しそうにクスクス笑った。
二人が自然に笑い合える様になったのは大きな進歩ではないだろうか。
水曜日の夕刻…
私の楽しい時間…
クィディッチの所為でセブルスによって週一回にされてしまったこの時間のこの図書室で…時々、色々な人と出会す。
スリザリンとか、グリフィンドールとか…
将来の敵だとか、味方だとか。そんな事は関係無く。
こんな日が…
ずっと続けば良い。