第1章 始マリノ謳
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23
『綺麗だね』
何時もは空を覆う雲に、今日は世界の光を消し去ってもらい…上に立つ。
貴方の腕に抱かれ、上弦の月と満天の星の下で、私はそうは言ったが…
本当は…
=月と星=
冬の寒さが更に厳しくなった月の見えぬ曇り空の夜。
眠れぬ私の前に、久しぶりにイアンが現れた。
「何日目だ」
『眠れ無いの…』
「分かってる。何日目だ」
『分からない…』
ベッドの上に座った麗は、ベッドの脇の窓へ手を掛け、曇った夜空を見上げるとそう呟いた。
雲の上では月が光を受けて輝いているのだろう。仄かに雲が輝いている。
イアンを困らせているのは分かっていた。
イアンには私が眠れぬ原因を絶つ事等出来無いのも分かっていた。
眠れぬ原因は…
私に在るのだから──…
「夢が恐ろしいか」
イアンの言葉に反応し、麗は微かに肩を震わせた。
『…知ってるの?』
イアンは答えなかった。でも沈黙は答えだとも思った。
『……怖いよ…怖くて堪らない。でもこれは…魂と…私の心が私に科した罰なんだ』
受け無い訳にはいかない。
麗は目を閉じると、首に提げられた術具のネックレスに触れた。
「散歩行くか」
『散歩?』
イアンは麗の手を取るとベッドから降ろし、室内で一番大きな窓へと向かって麗をズルズルと引き摺った。
「自分で飛べよ」
そう口にしたイアンは、窓を押し開けると麗ごと窓から飛び降りた。
何て強引な人だろうか…
でも嫌いでは無い。
麗は目を閉じると、小さく詠唱をしてその背から己の翼を生やした。
艶やかで美しい烏の様な黒い翼を…
「白よりは似合っている」
そう言うイアンの言葉を聞き、麗はイアンを見ると“有難う”と呟いた。
イアンには翼も何も無く、いつものイアンと何等変らぬ姿で空を飛んでいた。
『…気持ち良い』
空を飛ぶのは何年経っても、どんなに慣れても気持ち良い。
麗は頬を掠める冬の冷たい風を術で防いだ。
身体をイアンに任せ、目を閉じる。
──こうやって麗と飛ぶのも良ぇけど、いつか人型で一緒に飛びたいわ~
───そうだね。
──その時は俺様が先だな。
──何でやねん、蛇!!
俺が提案したんやから普通、俺が先やろ!
──俺様が先だ。
──何やねん!
此の自己中俺様蛇が!!
──んだと、此の糞狼が!!
───止めなさい!
全く、何年経っても変わらない…
懐かしい思い出に浸り、目を開くと、大きな上弦の月が綺麗に浮んでいた。
星々も綺麗に輝いている。
『月…綺麗だね』
上弦の月と満天の星の下で、私はそうは言ったが…実際は月光を浴びたイアンの髪の方が美しいと思っていた。
でもそれを言葉にしたら、きっと照れたイアンは抱き締めた私を離す。
それは嫌だった。
離れたく無い気分だった。
それに実際に上弦の月はとても綺麗だった。
嘘は吐いていない。
「お前は月に似ている」
『え?』
麗は耳を疑った。
イアンがそんな事を言うなんて思いもしなかった。第一に…
「お前は色々な面を持ち過ぎていて…探ろうと見れば雲に隠れる」
『…褒め言葉として受け取っておくよ』
麗は月に似てるな…
私に…
最初にそう言ったのは誰だっただろうか?
分からない…
分からない…
どうしても分からない…
大切な人の筈なのに…
思い出せ無い馬鹿な自分に…
酷く腹が立った──…
『綺麗だね』
何時もは空を覆う雲に、今日は世界の光を消し去ってもらい…上に立つ。
貴方の腕に抱かれ、上弦の月と満天の星の下で、私はそうは言ったが…
本当は…
=月と星=
冬の寒さが更に厳しくなった月の見えぬ曇り空の夜。
眠れぬ私の前に、久しぶりにイアンが現れた。
「何日目だ」
『眠れ無いの…』
「分かってる。何日目だ」
『分からない…』
ベッドの上に座った麗は、ベッドの脇の窓へ手を掛け、曇った夜空を見上げるとそう呟いた。
雲の上では月が光を受けて輝いているのだろう。仄かに雲が輝いている。
イアンを困らせているのは分かっていた。
イアンには私が眠れぬ原因を絶つ事等出来無いのも分かっていた。
眠れぬ原因は…
私に在るのだから──…
「夢が恐ろしいか」
イアンの言葉に反応し、麗は微かに肩を震わせた。
『…知ってるの?』
イアンは答えなかった。でも沈黙は答えだとも思った。
『……怖いよ…怖くて堪らない。でもこれは…魂と…私の心が私に科した罰なんだ』
受け無い訳にはいかない。
麗は目を閉じると、首に提げられた術具のネックレスに触れた。
「散歩行くか」
『散歩?』
イアンは麗の手を取るとベッドから降ろし、室内で一番大きな窓へと向かって麗をズルズルと引き摺った。
「自分で飛べよ」
そう口にしたイアンは、窓を押し開けると麗ごと窓から飛び降りた。
何て強引な人だろうか…
でも嫌いでは無い。
麗は目を閉じると、小さく詠唱をしてその背から己の翼を生やした。
艶やかで美しい烏の様な黒い翼を…
「白よりは似合っている」
そう言うイアンの言葉を聞き、麗はイアンを見ると“有難う”と呟いた。
イアンには翼も何も無く、いつものイアンと何等変らぬ姿で空を飛んでいた。
『…気持ち良い』
空を飛ぶのは何年経っても、どんなに慣れても気持ち良い。
麗は頬を掠める冬の冷たい風を術で防いだ。
身体をイアンに任せ、目を閉じる。
──こうやって麗と飛ぶのも良ぇけど、いつか人型で一緒に飛びたいわ~
───そうだね。
──その時は俺様が先だな。
──何でやねん、蛇!!
俺が提案したんやから普通、俺が先やろ!
──俺様が先だ。
──何やねん!
此の自己中俺様蛇が!!
──んだと、此の糞狼が!!
───止めなさい!
全く、何年経っても変わらない…
懐かしい思い出に浸り、目を開くと、大きな上弦の月が綺麗に浮んでいた。
星々も綺麗に輝いている。
『月…綺麗だね』
上弦の月と満天の星の下で、私はそうは言ったが…実際は月光を浴びたイアンの髪の方が美しいと思っていた。
でもそれを言葉にしたら、きっと照れたイアンは抱き締めた私を離す。
それは嫌だった。
離れたく無い気分だった。
それに実際に上弦の月はとても綺麗だった。
嘘は吐いていない。
「お前は月に似ている」
『え?』
麗は耳を疑った。
イアンがそんな事を言うなんて思いもしなかった。第一に…
「お前は色々な面を持ち過ぎていて…探ろうと見れば雲に隠れる」
『…褒め言葉として受け取っておくよ』
麗は月に似てるな…
私に…
最初にそう言ったのは誰だっただろうか?
分からない…
分からない…
どうしても分からない…
大切な人の筈なのに…
思い出せ無い馬鹿な自分に…
酷く腹が立った──…